206 / 461
206 ファル様に任せるよ!
しおりを挟む
ルディに握られた手をそっと下ろし、痛いから緩めて欲しいなという視線を、ルディに送ってみる。しかし、ルディは神父様を睨んでおり、私の送っている視線には気がついていない。
しかも、リザ姉の身体強化が効いている所為かいつもより痛い気がする。
「ルディ。手が痛い」
私が言葉にすれば、やっと普通に握ってもらえた。離してはくれないんだね。
「どうしましたか?アンジュ」
「たった今、私は失敗したことに気が付きました」
私はこの選択肢を間違えてしまったことを神父様に言う。
「何がですか?」
私の言葉に神父様は動揺することもなく、いつも通りニコニコとした笑みを浮かべていた。
「この結界です。これは世界に干渉している結界なので、もしかしたら世界から強制解除の手が入るかもしれません」
「強制解除ですか?確かにヒューゲルボルカとアストヴィエントの二人がかりで維持が難しいということは、考えられることですね。それで、どうしたのです?」
はぁ。神父様は私の選択したことが失敗するかもしれないことを理解していた。だったら、私が言っているときに指摘してよ!
「神という存在を弱らせることができるのならいいのだけど、私は最悪難しいと考えています。だから、最善は尽くしますが、駄目ならここに常闇を開きます。それもかなり大きなものではないと、ここにいる存在を呑み込めないでしょう。ですから、そうなった場合に皆を更に後方に下げてください」
私は常闇を開くのにこの場から動けない。そして、常闇を強制的に開くと、第9部隊の管轄地で起きたときのように、黒い鎖が飛び出してくる可能性が高い。あの時はワイバーンが居たため、上空に上りながら避けたけれど、今は狼型の騎獣だ。ワイバーンほど機動力がないので、最悪黒い鎖に捕まってしまう可能性が出てきたから、それは神父様から指揮をとってもらわないといけない。
「そうですね。軟弱な者はそのまま常闇に落ちればいいということには賛成ですね」
ちょっと待って!そんなこと一言も言っていないから!神父様が最近の騎士団の者たちの質が悪いと言っているだけで、共犯者みたいな扱いはしないでほしい。
「リザ姉とロゼは常闇に落とさないでよね。じゃ、なるべく早く決着をつけるので、全力で行ってきまーす!」
双子が結界で時間加速をしてくれたけれど、その時間さえもある意味ないと言える。だから、私も出し惜しみはしない。
「アンジュ待て!」
豪雨と言っていい雨の中に飛び出す私を引き止めるルディの声を背に、私は右目に手を当てて天使の聖痕を取り出して、頭上に掲げる。そして、重力の聖痕で龍神の女将さんを見下ろすように宙に漂う。
私の存在に気がついた龍神の女将さんはノロノロと顔を上げる動作がみられた。
その前に私はやるべきことをしよう。
「『苦雨はやがて甘露の雨となり、天の恵みとなろう。降り注ぐ太陽の陽は冬の終わりを告げ、恵みの春を迎え、やがて豊葦原之千秋長五百秋之水穂国に至ることだろう』」
私の天使の聖痕が太陽の聖痕だというのであれば、雪ぐらい溶かせるのではないのかと安易な考えからの、ぶっつけ本番の聖痕と魔術の併用だ。
言い換えれば、人々を苦しめる雨は人々に恵みをもたらす雨となり、太陽は雪を解かして春となり、恵みの雨と共に瑞穂の国を創ることだろうという意味。
私はここでこの大量に積もった雪を解かせばいい。後はファルの仕事だ。
「アンジュ!本当にこれでなんとかなるんだろうな!」
下で叫んでいるファルにさっさとヤレと視線で促す。
雪はほどんど溶けてきている。上から見ると龍神の女将さんの足元が薄っすらと見えてきた。
うん。島だね。そして、女将さんと目が合ってしまった。驚きと困惑の視線だ。
「アンジュ。だから、行動を起こす前に言うようにと言っているだろう」
背後にいつの間にか魔王様が降臨していた。神父様にお願いをしているときから、黒いモヤのようなモノが出てきていたけれど、それから逃げるべく飛び出して来たものの、私の魔術を模倣することに長けたルディから逃げることは出来なかった。
魔王様は透明な盾の上に立って私を見下ろしていた。
「ルディ、ファル様が頑張っていてくれているから、水が無くなったら、総攻撃だよ」
私の行動に対して文句を言っているルディにしれっと話を変えて返事をする。
ファルには雪解けの水をどうにかして欲しいと頼んだ。結界を張れば結界の内側だけが水に満たされ、水の逃げ場がなく溜まり続けることになる。
その水をファルの植物に吸い取ってもらっているのだ。水生木。
大量の水を取り除く方法を考えてはみたものの、神が作り出した水を下賤なる者である我々の火で蒸発出来るのか?蒸発しても上空に行けば再び地上に降り注ぐだけなのではないのだろうか。
ならば、消そうとするのではなく消費しようという考えだ。
ファルの聖痕によって生み出された植物は中央の女将さんがいる島に根を絡ませるように大きく成長していっている。その成長スピードは早くすでに100メルは超えているだろう。私の太陽の聖痕で溶けた雪の水は半分以下まで減っており、残りの水を吸い取るためにか、双子の結界に沿うように紅樹のような植物が生えて来た。
さて、舞台は整った。蛇が出るか鬼が出るかと言いたいところだけど、龍神の女将さんと亀が相手だ。
ここからが本番だ!
しかも、リザ姉の身体強化が効いている所為かいつもより痛い気がする。
「ルディ。手が痛い」
私が言葉にすれば、やっと普通に握ってもらえた。離してはくれないんだね。
「どうしましたか?アンジュ」
「たった今、私は失敗したことに気が付きました」
私はこの選択肢を間違えてしまったことを神父様に言う。
「何がですか?」
私の言葉に神父様は動揺することもなく、いつも通りニコニコとした笑みを浮かべていた。
「この結界です。これは世界に干渉している結界なので、もしかしたら世界から強制解除の手が入るかもしれません」
「強制解除ですか?確かにヒューゲルボルカとアストヴィエントの二人がかりで維持が難しいということは、考えられることですね。それで、どうしたのです?」
はぁ。神父様は私の選択したことが失敗するかもしれないことを理解していた。だったら、私が言っているときに指摘してよ!
「神という存在を弱らせることができるのならいいのだけど、私は最悪難しいと考えています。だから、最善は尽くしますが、駄目ならここに常闇を開きます。それもかなり大きなものではないと、ここにいる存在を呑み込めないでしょう。ですから、そうなった場合に皆を更に後方に下げてください」
私は常闇を開くのにこの場から動けない。そして、常闇を強制的に開くと、第9部隊の管轄地で起きたときのように、黒い鎖が飛び出してくる可能性が高い。あの時はワイバーンが居たため、上空に上りながら避けたけれど、今は狼型の騎獣だ。ワイバーンほど機動力がないので、最悪黒い鎖に捕まってしまう可能性が出てきたから、それは神父様から指揮をとってもらわないといけない。
「そうですね。軟弱な者はそのまま常闇に落ちればいいということには賛成ですね」
ちょっと待って!そんなこと一言も言っていないから!神父様が最近の騎士団の者たちの質が悪いと言っているだけで、共犯者みたいな扱いはしないでほしい。
「リザ姉とロゼは常闇に落とさないでよね。じゃ、なるべく早く決着をつけるので、全力で行ってきまーす!」
双子が結界で時間加速をしてくれたけれど、その時間さえもある意味ないと言える。だから、私も出し惜しみはしない。
「アンジュ待て!」
豪雨と言っていい雨の中に飛び出す私を引き止めるルディの声を背に、私は右目に手を当てて天使の聖痕を取り出して、頭上に掲げる。そして、重力の聖痕で龍神の女将さんを見下ろすように宙に漂う。
私の存在に気がついた龍神の女将さんはノロノロと顔を上げる動作がみられた。
その前に私はやるべきことをしよう。
「『苦雨はやがて甘露の雨となり、天の恵みとなろう。降り注ぐ太陽の陽は冬の終わりを告げ、恵みの春を迎え、やがて豊葦原之千秋長五百秋之水穂国に至ることだろう』」
私の天使の聖痕が太陽の聖痕だというのであれば、雪ぐらい溶かせるのではないのかと安易な考えからの、ぶっつけ本番の聖痕と魔術の併用だ。
言い換えれば、人々を苦しめる雨は人々に恵みをもたらす雨となり、太陽は雪を解かして春となり、恵みの雨と共に瑞穂の国を創ることだろうという意味。
私はここでこの大量に積もった雪を解かせばいい。後はファルの仕事だ。
「アンジュ!本当にこれでなんとかなるんだろうな!」
下で叫んでいるファルにさっさとヤレと視線で促す。
雪はほどんど溶けてきている。上から見ると龍神の女将さんの足元が薄っすらと見えてきた。
うん。島だね。そして、女将さんと目が合ってしまった。驚きと困惑の視線だ。
「アンジュ。だから、行動を起こす前に言うようにと言っているだろう」
背後にいつの間にか魔王様が降臨していた。神父様にお願いをしているときから、黒いモヤのようなモノが出てきていたけれど、それから逃げるべく飛び出して来たものの、私の魔術を模倣することに長けたルディから逃げることは出来なかった。
魔王様は透明な盾の上に立って私を見下ろしていた。
「ルディ、ファル様が頑張っていてくれているから、水が無くなったら、総攻撃だよ」
私の行動に対して文句を言っているルディにしれっと話を変えて返事をする。
ファルには雪解けの水をどうにかして欲しいと頼んだ。結界を張れば結界の内側だけが水に満たされ、水の逃げ場がなく溜まり続けることになる。
その水をファルの植物に吸い取ってもらっているのだ。水生木。
大量の水を取り除く方法を考えてはみたものの、神が作り出した水を下賤なる者である我々の火で蒸発出来るのか?蒸発しても上空に行けば再び地上に降り注ぐだけなのではないのだろうか。
ならば、消そうとするのではなく消費しようという考えだ。
ファルの聖痕によって生み出された植物は中央の女将さんがいる島に根を絡ませるように大きく成長していっている。その成長スピードは早くすでに100メルは超えているだろう。私の太陽の聖痕で溶けた雪の水は半分以下まで減っており、残りの水を吸い取るためにか、双子の結界に沿うように紅樹のような植物が生えて来た。
さて、舞台は整った。蛇が出るか鬼が出るかと言いたいところだけど、龍神の女将さんと亀が相手だ。
ここからが本番だ!
21
あなたにおすすめの小説
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
【完結】小公爵様の裏の顔をわたしだけが知っている
おのまとぺ
恋愛
公爵令息ルシアン・ド・ラ・パウルはいつだって王国の令嬢たちの噂の的。見目麗しさもさることながら、その立ち居振る舞いの上品さ、物腰の穏やかさに女たちは熱い眼差しを向ける。
しかし、彼の裏の顔を知る者は居ない。
男爵家の次女マリベルを除いて。
◇素直になれない男女のすったもんだ
◇腐った令嬢が登場したりします
◇50話完結予定
2025.2.14
タイトルを変更しました。(完結済みなのにすみません、ずっとモヤモヤしていたので……!)
【完結】すり替わられた小間使い令嬢は、元婚約者に恋をする
白雨 音
恋愛
公爵令嬢オーロラの罪は、雇われのエバが罰を受ける、
12歳の時からの日常だった。
恨みを持つエバは、オーロラの14歳の誕生日、魔力を使い入れ換わりを果たす。
それ以来、オーロラはエバ、エバはオーロラとして暮らす事に…。
ガッカリな婚約者と思っていたオーロラの婚約者は、《エバ》には何故か優しい。
『自分を許してくれれば、元の姿に戻してくれる』と信じて待つが、
魔法学校に上がっても、入れ換わったままで___
(※転生ものではありません) ※完結しました
転生貧乏令嬢メイドは見なかった!
seo
恋愛
血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。
いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。
これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。
#逆ハー風なところあり
#他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)
[完結]私を巻き込まないで下さい
シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。
魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。
でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。
その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。
ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。
え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。
平凡で普通の生活がしたいの。
私を巻き込まないで下さい!
恋愛要素は、中盤以降から出てきます
9月28日 本編完結
10月4日 番外編完結
長い間、お付き合い頂きありがとうございました。
「結婚しよう」
まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。
一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる