聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

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210 世界の貪食

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 二人の貫いた剣はそのまま黒い鎖の塊を引き裂くように、切り刻む。このまま常闇に堕ちてくれればいい。
 落ちていく鎖の塊とその下に広がる徐々に動き出した常闇を見る。
 突然常闇から何かが飛び出してきた。何?玄武が復活した?

 いや、手だとても大きな巨人のような漆黒をまとった手が出てきた。

「ルディ!神父様!上空に退避して!」

 私は鎖の塊に気を取られている二人に更に上空に上るように言う。私の言葉に瞬間移動したように直ぐ様私の側に現れた二人。ちょっと怖いよ。

「アンジュ、何があった!」
「問題が起こったのですか?」

 二人から理解していない言葉が出てきた。おかしい、あんなに巨大な手が空をつかもうと常闇から出てきているのに……もしかして、見えていない?

「常闇から巨大な黒い手が出て来て……今、黒い鎖の塊を鷲掴みしました」

 巨大は漆黒の手が手のひらを握り込んだ瞬間、大気が揺れたような気がした。ドンッと振動が心臓を掴んだような感覚だ。

「その黒い手が常闇に沈んでいっているのだけど、二人共見えていない?」

「龍神が常闇に沈んで行っているのは見えますが、巨大な黒い手というものは見えないですね」
「それはもしかしたら、アンジュしか見えない黒い鎖と同じモノなのかもしれないな」

 二人共見えていなかった。そして、ルディは死の鎖と同じモノなのではないのかと言った。それだと色々考えされられる。……世界が獲物を逃さないと言わんばかりに出てきたと。

 完全に常闇の中に鎖の塊が消えた途端、常闇が勢いよく縮小しだした。
 え?私何もしていないよ?これは世界が自ら常闇を閉じた?

 世界が自ら開いた常闇は世界が閉じることができる?データが足りなすぎてわからないなぁ。

「今回は凄く綺麗に消えたな」
「飛び出てきた黒い鎖も一緒に飲み込まれましたね」

 そう、二人が言っているように、今回は違っていた。私が無理やり閉じたときは、渦を巻き世界の奥深くに落とし込みながら常闇を収縮させていくように閉じていっていたのだけど、世界が自ら閉じた常闇は空間が閉じるという感覚に近かった。その時に黒い霧と共に黒い鎖も吸い込まれていった。そして、いつの間にか巨大な玄武の姿も居なくなっていた。

「なんという貪食力」

 いや、そもそも世界が己のテリトリーに異界のモノを引き込んだのだ。

「何故、世界はそのまま食べないのだろう?」

 ふと疑問に思った。異界のモノから力を得るのであれば、そのまま力に変換するようにすればいいと思う。そうすれば、この世界の住人は異形の脅威にさらされることはないというのに。

 しかし、今回も無事に解決をした。いっときは本当に無理じゃないのかと思ったけれど……本当に巨大亀が出てきたときは、無理だと思ったね。

「さて、何事もそのまま食べるとお腹を壊すので調理が必要なのではないのですかね」

 神父様が真顔でおかしなことを言っている。いや、私達が生食でお腹を壊さないように火を通すのはわかるけど、異形を調理って……はははは……私達はコックか!と突っ込むところだね。
 そして、これは私は笑ってあげた方がいいのだろうか。

「リュミエール神父の仮説ですと、弱らせなければ、取り込めないということでしょうか?」

 え?ルディも真面目に答えている。言われれば死の鎖が出てくるのは弱らせないと出てこない。けれど、活きが良いまま食べるのも良いかもしれないよ?
 しかし、考えても世界のことなんてわかりはしないので、取り敢えず皆のところに行こう。


 私は重力の聖痕を使って、皆が集まっているところに飛んでいく。ルディと神父様はよくわからない仮説を立てていると良いよ。

「アンジュ!」
「さて我々も戻りましょうか」

 雨によってグジュグジュになった雪の上には降り立ちたくないので、空中で浮遊したまま皆の前に立った。

「アンジュ!すごーい!やったね!」

 ロゼが微妙な感じで褒めてくれた。ロゼは騎獣に乗って結界を張っていただけだからね。

「アンジュちゃん。冷えるから早く戻りましょうね」

 リザ姉。寒いから帰りたいと。まぁ、私も疲れたし早く眠りたいね。
 私は今回の一番の功労者に声をかける。

「ファル様!今回は凄く助かったよ。なんか聖剣モドキ作れたし」

「いや、俺は敵の動きを止めていただけだ。聖剣モドキと言っても神の動きを止めるぐらいしかできなかったぞ」

 確かに龍神に致命傷を与えることはできなかったけれど、龍神の動きを止めるなんて凄いと思う。それに……私はルディと神父様に指をさして言う。

「ほら、二人の木の枝が聖剣モドキに変化したよ」

 すると皆の視線はルディの漆黒の剣身と神父様の白銀の剣身に向けられている。ルディの漆黒の剣身は闇を映したかのように底しれぬ恐ろしさを感じさせるものだ。逆に神父様の剣身は光り輝くような神々しさを感じさせる。本当に相対する剣だった。

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