聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

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238 シンラ

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 うん。上手い言いわけだ。しかし、本当のことだ。ここ最近ルディから、外は寒いから第13部隊の詰め所には行かなくてもいいとか言われて、部屋から出してくれない。
 散歩に行きたいといえば、ルディが手を繋いでついてくるから、あっちこっちに行けない。
 いや、案内人としては有能だった。ここの建物が何かと尋ねれば、きちんと答えてくれる。しかし突然、手を引っ張られ方向転換をさせられるのだ。

 理由を聞けば『そっちは危険だから行くな』らしい。この聖騎士団の敷地内で何が危険なことがあるのだろう。絶対に何か隠していると思った。だって、普通に騎士シュヴァリエたちが行き来しているのを見れば、何も危険なことはないとわかる。

 結局ルディが行っていいと判断したところしか散歩ができなかった。

「シュレイン。アンジュの束縛をほどほどにしないと、誓約など簡単に引きちぎって飛んでいくと、言ったのを聞いていなかったのですか?ある程度の範囲の自由行動を認めなさい」

 おお!神父様が私を擁護してくれた。もっとルディに言って欲しい。

「自由にさせ過ぎると、調子に乗り出すので、そこはきっちりとシメるべきですがね」

 違った。甘い汁を与えて、地獄に叩き落す方法をルディに教えていた。

「それでアンジュ。いい加減に聖剣の名は思いつきましたか?」

 悪魔神父は諦めてはいなかった。
 私はへろりと笑って答える。もう、適当でいいや。

「『神羅しんら』」

 下手に変な名を与えると後が恐ろしいので、チートな神父様にはこれで良いと思う。
 あ、これはただ単に神聖ローマ帝国の略語ね。マルスなんとかかんとかっていう名前を魔鳥につけているぐらいだから、いいと思う。

 すると神父様の腰に佩いている剣が、目が開けられないぐらいに光りだした。くっ!名前に大した意味を持たさなかったのに、この光よう。これが物語なら勇者誕生って騒がれてもいいぐらい。大分年齢が上の勇者になってしまうけど。

「アンジュ様。それは森羅万象の森羅でしょうか?」

 背後から声を掛けられたので振り向けば、茨木が考え深げな表情をして立っていた。その横では、大きな荷物を担いだ酒吞がいる。
 もちろんこの二人もダンジョン探索に参加するのだ。

「違うよ。ローマ帝国の神羅。森羅万象だなんて恐ろしい名前はつけないよ」

 神父様の聖痕『天上天下』と『森羅万象』だなんて、世界を破壊しそうな組み合わせになるじゃない。

羅馬ロウマですか。景教を広めている国ですよね。刀に付けるには過ぎた名かと思いますが」

 ……ローマ帝国って言う名前、ヤバかった?恐る恐る光が収まった神父様の剣を見る。





 見なかったことにしよう。

「さて、少し早いけど、皆集まったことだし、ダンジョンへ行こう!」

 私は突っ込まれる前に、移動を試みるも……強固に握られた手が引っ張られ、ここから立ち去ることができなかった。

「アンジュ。あれはなんだ?」

 今日は何故か朝からご機嫌斜めな魔王様が、私を見下ろしながら聞いてきた。

「あれって何かな?」

 私はへろりと笑う。私に聞かれてもわからないからね。できればそのままスルーして欲しい。

「何故。リュミエール神父の剣は名前を付けただけで変化した?」

 瞳孔が開いた目で見下さないで欲しい。いくら聞かれても私はわからないし
 、答えを持っていない。

「さぁ?私にはわからないよ」

「だったら『シンラ』とはどういう意味だ?イバラキは名付けるべきではないと言っていたな」

 意味……さっき言ったけど国という意味以外はない。ん?ローマ帝国がどういう国かということだろうか。簡単に言えば……

「強国?」

「なぜ、疑問形なんだ?」

 何を説明すれば良いのだろう?うーん?

「都市国家から始まり、四百四十万平方キロメルまで国土を広げ、多民族・多人種・多宗教を内包しつつも大きな領域を統治する国家の呼び名の一つ」

 すると上から大きなため息が降ってきた。

「イバラキが正しい」

 いや、普通は神羅なんて呼ばないからね。ローマ帝国だからね。

「ただの国の名前だし、神父様が急かすし、だって後思いつくのが、『悪魔の偽装』しか無かったし、チート過ぎる神父様に意味がある名前をつけると、後が面倒くさそうだし」
「それはどういう意味ですかね。アンジュ」

 直ぐ近くで、悪魔神父の声が聞こえてきた。恐る恐る振り向けば、目が笑っていない笑顔の神父様が私を見下ろしていた。
 いくら私の背が低いからっと言って、二人して威圧的に見下ろしてくるのはどうかと思う。

「皇帝みたいな名前を魔鳥につけているから、神羅でいいんじゃない?って感じでつけました。特に意味は無いです」

 いつもなら、へろりと笑うところだけど、私は真剣な顔つきで言った。これは意味がないということを強調するためだった。

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