聖痕の聖騎士〜溺愛?狂愛?私に結婚以外の選択肢はありますか?〜

白雲八鈴

文字の大きさ
256 / 461

256 異様なのどの渇き

しおりを挟む

「違いますよ」

 直ぐに神父様から否定された。え?こんなに広いのに違う?

「これは幻影ですか?」
「ニセモンくせーな」

 鬼の二人は神父様作、収納拡張袋から荷物を出しながら言ってきた。これが幻影?でも言われてみれば、草木の匂いがしない。

「じゃ、ここは何?」

「何でしょうね?」

 一度来たことがある神父様がわからないのだから、私がわかるはずないよね。

「以前来たときも、ただの風景だったんだ。別の方向に進めるのかと何度か試したが、壁にぶつかってしまったから、元は上の階層と変わらない通路なんだろうと結論づけた」

 ファルは以前来た時に何度か試したものの、進める方向は決まっていたと言う。それは果てしなく続くわだちの道ということだろう。

「ふーん。で、この風景がどこの風景かぐらいは調べているんだよね」

 神父様とファルの言葉の端からは、あと十階層もこのような風景だけの通路が続くと予想ができる。しかし、ただ風景を見せつけるためだけに、十階層も使うだろうか。

 まぁいい。今は喉が乾いたから、お茶が飲みたい。ん?さっきまで、何も思わなかったのに、異様に喉の乾きを感じる。

 暑い?別に暑いわけじゃない。では、空気が乾燥している。これはダンジョン内なので、あり得ないことはない。
 あとは緊張……プレッシャー。何か術が発動している?

 そもそも、使えないという魔力はどういう状況なのだろう。

「ここは国の最東端の場所ですよ」

 東……第9部隊の管轄地だね。うーん?あの時はかなり国境近くだったけれど、この風景に全く見覚えがない。

「神話時代のといえばいいでしょうか?」

「どっから神話時代が出てきたわけ?そんな資料は残ってないと思うけど?」

 この国の歴史は千年前の初代国王から始まっている。それ以前が神話時代とされているけれど、神々が人という神に似せた存在を創ったという、ありきたりな話しか存在しない。
 そこには太陽の聖王も月の王妃の話も出てくることはない。

「残ってはいませんが、進めばわかりますよ」

 進めばわかる。この轍の道をということなのだろう。

「まぁいいけど、喉が渇いたから冷たいお茶が飲みたい」

 さっきから異様に喉が渇く。もしかして最近、何かと甘い物を食べていたから、糖尿病に……私、ヤバいかもしれない。

「どうぞ、アンジュ様」

 茨木が立ったままの私に、ひんやりと冷えたカップを渡してくれた。あ……入れ物ごと冷やしたっていう感じね。

 因みに私が背負っているリュックの中にも、水は入っている。だけど残念ながら常温の水なので、今はぐぐっと冷たい水を飲みたい気分なのだ。

 私は茨木の妖力でカップごと冷やされたお茶を飲む。ひんやりと冷えたお茶が、体に染み渡る……今思ったけど、妖力で冷やされているって言うことは、茨木の妖力が混じっているって事無いよね。

「ん?あれ?」

「どうした?アンジュ?」

 ルディが何かあったのかと、私の顔を覗き込んできたのだけど、私は気がついてしまった。

「魔力。使えないということではなくて、奪い取られているってこと?」

 私は天使の聖痕を出現させる度に、魔力を奪い取られ、聖痕を仕舞うと意識を失う状態になってしまうので、魔力を維持するために、ちょっと自分の中に仕掛けを施していた。
 魔力は魔脈を伝って流れるのなら、流れないほど強固に固めて蓄積しておけはいいのではないのかと。

 これは体の中で魔石を作ることと同意義で、危険なのは変わりない。しかし、魔力の枯渇をするか、体の中に魔石を作るかという選択肢をするのであれば、魔石を作るほうがいいと私は考えた。

 先程、私の中に茨木の妖力が込められた異物が入って気がついた。私の中の魔石から徐々に魔力が体に流れていき、霧のようにふわりと消えていくのだ。
 これは魔力が使えないように封じられているわけではなく、魔力が奪い取られているということだ。

 ならば、この風景の幻影が作られた原理がわかるというものだ。

「奪い取られている?そうなのか?」
「アンジュ。魔力を奪い取ったからといっても、この先なんて魔物は全く出ないぞ」
「何故、そう思ったのですかね?」

 私の言葉に三人がそれぞれに反応を返してきた。

「魔力を奪い取られることが多いからね。ちょっと工夫をしてみたの。ある程度までは奪い取られるけど、それ以上は普通では奪い取られないようにね」

 するとファルから呆れた視線を向けられ、神父様からは胡散臭い笑顔を向けられた。

「アンジュ。それはどうやっているんだ?」

「それは秘密」

 これがバレたら絶対に怒られると思うんだよね。魔物じゃないんだぞみたいな感じで。

「さっきまで、すごく喉が渇いていてね。意味がわからなかったのだけど、外部干渉を受けているからかなって思ったんだよね」

 ルディ。私を抱き上げて、締め上げても、その干渉から逃れることはできないと思う。

「それは第一階層のことですか?」

「違う違う。今もってこと。この幻影を構成している魔力は、皆から集めた魔力で作られている。魔力を奪い取るために、干渉し続けられている。まぁ、これは私の魔力が全て奪われていないからだと思うけどね」

 そもそも、こんなに大規模な幻影を作り出すことが、無理な話なのだ。どこにそんな魔力を投じて維持し続けられる人物がいるというのだろう。はっきり言っていない。
 ならば、複数人の魔力を投じれば、可能ということになるのだが、どうやって魔力を奪いとったかという話になるのだった。


しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした

楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。 仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。 ◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪ ◇全三話予約投稿済みです

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

【完結】小公爵様の裏の顔をわたしだけが知っている

おのまとぺ
恋愛
公爵令息ルシアン・ド・ラ・パウルはいつだって王国の令嬢たちの噂の的。見目麗しさもさることながら、その立ち居振る舞いの上品さ、物腰の穏やかさに女たちは熱い眼差しを向ける。 しかし、彼の裏の顔を知る者は居ない。 男爵家の次女マリベルを除いて。 ◇素直になれない男女のすったもんだ ◇腐った令嬢が登場したりします ◇50話完結予定 2025.2.14 タイトルを変更しました。(完結済みなのにすみません、ずっとモヤモヤしていたので……!)

【完結】すり替わられた小間使い令嬢は、元婚約者に恋をする

白雨 音
恋愛
公爵令嬢オーロラの罪は、雇われのエバが罰を受ける、 12歳の時からの日常だった。 恨みを持つエバは、オーロラの14歳の誕生日、魔力を使い入れ換わりを果たす。 それ以来、オーロラはエバ、エバはオーロラとして暮らす事に…。 ガッカリな婚約者と思っていたオーロラの婚約者は、《エバ》には何故か優しい。 『自分を許してくれれば、元の姿に戻してくれる』と信じて待つが、 魔法学校に上がっても、入れ換わったままで___ (※転生ものではありません) ※完結しました

転生貧乏令嬢メイドは見なかった!

seo
恋愛
 血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。  いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。  これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。 #逆ハー風なところあり #他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)

[完結]私を巻き込まないで下さい

シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。 魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。 でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。 その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。 ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。 え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。 平凡で普通の生活がしたいの。 私を巻き込まないで下さい! 恋愛要素は、中盤以降から出てきます 9月28日 本編完結 10月4日 番外編完結 長い間、お付き合い頂きありがとうございました。

「結婚しよう」

まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。 一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

処理中です...