282 / 462
282 世界の力の枯渇の原因
しおりを挟む
爪をむき出しにして襲いかかってくる獅子の獣人。腕を振り下ろした瞬間、その姿は歪んで消えた。
「ばーか。誰がこんな物に引っかかるか」
私は神父様の結界を黒く口を開けた穴に滑り込ませながら、背後に向かって言った。
そこには吹雪の中、こちらに視線を向けながら唸り声を上げている獅子王の姿があった。そう、視線が合っているのだ。
「いい加減に気づいてよね。この魔力を聖力に変換するシステムが崩壊しているって」
「アンジュ。そんな事を言ってもただの幻影だろう?」
次の階層に向かう階段に入ってしまったために、その幻影の獅子王がどのような反応をしたかはわからない。けれど、視線が私と合っていたのは確かだ。
幻影が私を認識していたのだ。
「ルディ。そうでもないかもだよ?」
私は暗闇しかない前方を見て言う。誰かの意思が関与した幻影。ならば、私の言葉が届いていてもおかしくはない。
「まぁ、聞こえていなくても、聞こえていても、私には関係ないよ。私は魔力を無尽蔵に取り込む月の聖女じゃないからね」
次の階層の入口が見えてきた。しかし、入口から光が漏れている。
暗闇ではないということは、また火の海ってこと?
火の海でもこの結界があれば、なにも問題はないけどね。
二十五階層に入り、その眩しさに思わず、手をかざした。眩しさに目を細めていると、耳に悲鳴が届く。
何が起こっているの?
目が慣れて見た光景に私は思わず、上に視線を向けてしまった。深呼吸をして再び、見せつけられている光景に視線を向ける。
「言葉もないよ」
私は見せつけられている光景に、心が冷えていく思いだ。ああ、なんだっけ?
確か冬は凍てつくほど寒くて、夏は灼熱の大地だったかな?
「これが聖女を生贄にしようとした、発端ですか」
神父様が目の前の光景を見て言った。
確かにそうかも知れない。何故なら世界に太陽が戻ってきているのだから。
世界に再び太陽を昇らすためにしなければならないこと、それは聖気を再び世界に満たせばいいのだ。
「狂っている」
ファルが言うように狂っている。いや、既に狂っていたかだ。
「王とは……王とはなんだ? 民を守るために剣を奮うのではなく、何故剣を民に向け殺している」
ルディは何かに耐えるように言葉にした。そう、獅子王は残った民たちを虐殺している。
怒っているように咆哮を上げ、悲しんでいるように叫び、何がおかしいのか笑い声を上げている。狂っているようにしか思えない。
だけど、それしか解決策を見いだせなかったのだろう。
「多分さぁ。獣人、一人ひとりに聖気で加護でも与えていたとしたら、その聖気を世界に返すためには、殺すことしか考えつかなかったのかもしれないね」
「それでも、これは王としては絶対にしてはならない」
ルディの言うとおりだ。しかし、そもそも世界の力が枯渇するなんて、普通はあり得ないと思う。そんな膨大な力を使い切るなんて、海の水を使い切るぐらいのことだ。
はっきり言って無理だ。だけど、獅子王が治めている獣人に何かしらの加護を与え、楽園を作り上げ、一国という大きさで桃源郷でも作ったと……桃源郷?
私は自分の思った言葉に、身の毛がよだった。
私は直視することをしていなかった、獅子王に剣で切られた獣人をよく見る。上半身と下半身が切られて別れてしまっているというのに、切られてしまった下半身の元に移動しようとしている上半身がいる。首が切られているというのに、その首をつけようと、腕に掲げているものの、うまく付かないともがいている獣人。
ある意味怖い。だけど、獅子王が民に手をかけている理由がこれだ。世界の力をつかって、獣人に不老不死の肉体を与えたのだ。
これだ!これが獣人と人との間にあった格差を生み出した原因だ!
何をしても死なない存在に抵抗するのも無意味だと、人は獣人に付き従うようになってしまった。
しかし、新たな世界の力である魔力はその獣人を傷つけることができた。
ということは、敢えて世界は人に新たな力を与えたと思わざる得ない。
「あぁー! ここに来て大体のからくりが分かってきた!」
全て!全て!あの獅子王が悪い!
何が聖王だ!獅子王は獣人の願いを叶え続けた結果が、世界の崩壊だ。そして己の過ちを精算すべく、獣人を殺し世界に力を返そうとしている。
そして今の時代に獣人が存在しない理由と飛行船やそれと同等の技術が残っていない理由がコレだ!
「ん?でも全てを世界に力を返したのに、何故未だに世界は飢えているのだろう?」
獅子王の行動は自己精算をしているだけだ。これが完結すれば、世界は正常化するはず。だけど、常闇は閉じることなく、二百年に一度の割合で世界は異物を取り込もうと口を開く。
見せられているものと、現状があってこなかった。
「ばーか。誰がこんな物に引っかかるか」
私は神父様の結界を黒く口を開けた穴に滑り込ませながら、背後に向かって言った。
そこには吹雪の中、こちらに視線を向けながら唸り声を上げている獅子王の姿があった。そう、視線が合っているのだ。
「いい加減に気づいてよね。この魔力を聖力に変換するシステムが崩壊しているって」
「アンジュ。そんな事を言ってもただの幻影だろう?」
次の階層に向かう階段に入ってしまったために、その幻影の獅子王がどのような反応をしたかはわからない。けれど、視線が私と合っていたのは確かだ。
幻影が私を認識していたのだ。
「ルディ。そうでもないかもだよ?」
私は暗闇しかない前方を見て言う。誰かの意思が関与した幻影。ならば、私の言葉が届いていてもおかしくはない。
「まぁ、聞こえていなくても、聞こえていても、私には関係ないよ。私は魔力を無尽蔵に取り込む月の聖女じゃないからね」
次の階層の入口が見えてきた。しかし、入口から光が漏れている。
暗闇ではないということは、また火の海ってこと?
火の海でもこの結界があれば、なにも問題はないけどね。
二十五階層に入り、その眩しさに思わず、手をかざした。眩しさに目を細めていると、耳に悲鳴が届く。
何が起こっているの?
目が慣れて見た光景に私は思わず、上に視線を向けてしまった。深呼吸をして再び、見せつけられている光景に視線を向ける。
「言葉もないよ」
私は見せつけられている光景に、心が冷えていく思いだ。ああ、なんだっけ?
確か冬は凍てつくほど寒くて、夏は灼熱の大地だったかな?
「これが聖女を生贄にしようとした、発端ですか」
神父様が目の前の光景を見て言った。
確かにそうかも知れない。何故なら世界に太陽が戻ってきているのだから。
世界に再び太陽を昇らすためにしなければならないこと、それは聖気を再び世界に満たせばいいのだ。
「狂っている」
ファルが言うように狂っている。いや、既に狂っていたかだ。
「王とは……王とはなんだ? 民を守るために剣を奮うのではなく、何故剣を民に向け殺している」
ルディは何かに耐えるように言葉にした。そう、獅子王は残った民たちを虐殺している。
怒っているように咆哮を上げ、悲しんでいるように叫び、何がおかしいのか笑い声を上げている。狂っているようにしか思えない。
だけど、それしか解決策を見いだせなかったのだろう。
「多分さぁ。獣人、一人ひとりに聖気で加護でも与えていたとしたら、その聖気を世界に返すためには、殺すことしか考えつかなかったのかもしれないね」
「それでも、これは王としては絶対にしてはならない」
ルディの言うとおりだ。しかし、そもそも世界の力が枯渇するなんて、普通はあり得ないと思う。そんな膨大な力を使い切るなんて、海の水を使い切るぐらいのことだ。
はっきり言って無理だ。だけど、獅子王が治めている獣人に何かしらの加護を与え、楽園を作り上げ、一国という大きさで桃源郷でも作ったと……桃源郷?
私は自分の思った言葉に、身の毛がよだった。
私は直視することをしていなかった、獅子王に剣で切られた獣人をよく見る。上半身と下半身が切られて別れてしまっているというのに、切られてしまった下半身の元に移動しようとしている上半身がいる。首が切られているというのに、その首をつけようと、腕に掲げているものの、うまく付かないともがいている獣人。
ある意味怖い。だけど、獅子王が民に手をかけている理由がこれだ。世界の力をつかって、獣人に不老不死の肉体を与えたのだ。
これだ!これが獣人と人との間にあった格差を生み出した原因だ!
何をしても死なない存在に抵抗するのも無意味だと、人は獣人に付き従うようになってしまった。
しかし、新たな世界の力である魔力はその獣人を傷つけることができた。
ということは、敢えて世界は人に新たな力を与えたと思わざる得ない。
「あぁー! ここに来て大体のからくりが分かってきた!」
全て!全て!あの獅子王が悪い!
何が聖王だ!獅子王は獣人の願いを叶え続けた結果が、世界の崩壊だ。そして己の過ちを精算すべく、獣人を殺し世界に力を返そうとしている。
そして今の時代に獣人が存在しない理由と飛行船やそれと同等の技術が残っていない理由がコレだ!
「ん?でも全てを世界に力を返したのに、何故未だに世界は飢えているのだろう?」
獅子王の行動は自己精算をしているだけだ。これが完結すれば、世界は正常化するはず。だけど、常闇は閉じることなく、二百年に一度の割合で世界は異物を取り込もうと口を開く。
見せられているものと、現状があってこなかった。
85
あなたにおすすめの小説
【完結】お見合いに現れたのは、昨日一緒に食事をした上司でした
楠結衣
恋愛
王立医務局の調剤師として働くローズ。自分の仕事にやりがいを持っているが、行き遅れになることを家族から心配されて休日はお見合いする日々を過ごしている。
仕事量が多い連休明けは、なぜか上司のレオナルド様と二人きりで仕事をすることを不思議に思ったローズはレオナルドに質問しようとするとはぐらかされてしまう。さらに夕食を一緒にしようと誘われて……。
◇表紙のイラストは、ありま氷炎さまに描いていただきました♪
◇全三話予約投稿済みです
【完結】すり替わられた小間使い令嬢は、元婚約者に恋をする
白雨 音
恋愛
公爵令嬢オーロラの罪は、雇われのエバが罰を受ける、
12歳の時からの日常だった。
恨みを持つエバは、オーロラの14歳の誕生日、魔力を使い入れ換わりを果たす。
それ以来、オーロラはエバ、エバはオーロラとして暮らす事に…。
ガッカリな婚約者と思っていたオーロラの婚約者は、《エバ》には何故か優しい。
『自分を許してくれれば、元の姿に戻してくれる』と信じて待つが、
魔法学校に上がっても、入れ換わったままで___
(※転生ものではありません) ※完結しました
【完結】小公爵様の裏の顔をわたしだけが知っている
おのまとぺ
恋愛
公爵令息ルシアン・ド・ラ・パウルはいつだって王国の令嬢たちの噂の的。見目麗しさもさることながら、その立ち居振る舞いの上品さ、物腰の穏やかさに女たちは熱い眼差しを向ける。
しかし、彼の裏の顔を知る者は居ない。
男爵家の次女マリベルを除いて。
◇素直になれない男女のすったもんだ
◇腐った令嬢が登場したりします
◇50話完結予定
2025.2.14
タイトルを変更しました。(完結済みなのにすみません、ずっとモヤモヤしていたので……!)
転生貧乏令嬢メイドは見なかった!
seo
恋愛
血筋だけ特殊なファニー・イエッセル・クリスタラーは、名前や身元を偽りメイド業に勤しんでいた。何もないただ広いだけの領地はそれだけでお金がかかり、古い屋敷も修繕費がいくらあっても足りない。
いつものようにお茶会の給仕に携わった彼女は、令息たちの会話に耳を疑う。ある女性を誰が口説き落とせるかの賭けをしていた。その対象は彼女だった。絶対こいつらに関わらない。そんな決意は虚しく、親しくなれるように手筈を整えろと脅され断りきれなかった。抵抗はしたものの身分の壁は高く、メイドとしても令嬢としても賭けの舞台に上がることに。
これは前世の記憶を持つ貧乏な令嬢が、見なかったことにしたかったのに巻き込まれ、自分の存在を見なかったことにしない人たちと出会った物語。
#逆ハー風なところあり
#他サイトさまでも掲載しています(作者名2文字違いもあり)
嫌われていると思って彼を避けていたら、おもいっきり愛されていました
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のアメリナは、幼馴染の侯爵令息、ルドルフが大好き。ルドルフと少しでも一緒にいたくて、日々奮闘中だ。ただ、以前から自分に冷たいルドルフの態度を気にしていた。
そんなある日、友人たちと話しているルドルフを見つけ、近づこうとしたアメリナだったが
“俺はあんなうるさい女、大嫌いだ。あの女と婚約させられるくらいなら、一生独身の方がいい!”
いつもクールなルドルフが、珍しく声を荒げていた。
うるさい女って、私の事よね。以前から私に冷たかったのは、ずっと嫌われていたからなの?
いつもルドルフに付きまとっていたアメリナは、完全に自分が嫌われていると勘違いし、彼を諦める事を決意する。
一方ルドルフは、今までいつも自分の傍にいたアメリナが急に冷たくなったことで、完全に動揺していた。実はルドルフは、誰よりもアメリナを愛していたのだ。アメリナに冷たく当たっていたのも、アメリナのある言葉を信じたため。
お互い思い合っているのにすれ違う2人。
さらなる勘違いから、焦りと不安を募らせていくルドルフは、次第に心が病んでいき…
※すれ違いからのハッピーエンドを目指していたのですが、なぜかヒーローが病んでしまいました汗
こんな感じの作品ですが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m
[完結]私を巻き込まないで下さい
シマ
恋愛
私、イリーナ15歳。賊に襲われているのを助けられた8歳の時から、師匠と一緒に暮らしている。
魔力持ちと分かって魔法を教えて貰ったけど、何故か全然発動しなかった。
でも、魔物を倒した時に採れる魔石。石の魔力が無くなると使えなくなるけど、その魔石に魔力を注いで甦らせる事が出来た。
その力を生かして、師匠と装具や魔道具の修理の仕事をしながら、のんびり暮らしていた。
ある日、師匠を訪ねて来た、お客さんから生活が変わっていく。
え?今、話題の勇者様が兄弟子?師匠が王族?ナニそれ私、知らないよ。
平凡で普通の生活がしたいの。
私を巻き込まないで下さい!
恋愛要素は、中盤以降から出てきます
9月28日 本編完結
10月4日 番外編完結
長い間、お付き合い頂きありがとうございました。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
「結婚しよう」
まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。
一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる