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379 海水か真水か
お昼過ぎにダラニースエル地方にたどり着くことができた。流石チート神父様。
そして私は針の筵から解放されるのだ。
「これは予想以上ですね」
響声を使って神父様が声をかけてきた。予想以上、それは上空からみればよく分かる。
先程まで緑豊かな森が広がっていたのに、見渡す限り海と言っていい状況だった。もしかしたら国境より向こう側も海になってしまっている可能性がある。
「中核都市であるゲルニードも海に沈んでいるのか?」
「隊長。第七部隊はオランディラに拠点を移したとありましたわ」
「高台にある町なので海に浮いているように見えるそうですよ」
第十二部隊さんの言葉にリザ姉とロゼが答える。
高台にある町だけど物資はどうしているのだろう?
いや、これはただの幻覚で、海の下の陸地は歩ける?いや、神父様から見せてもらった調書には本物の海とあった。でも、どう本物だったかの具体的な内容は書かれていなかった。
しかし、本物だったとしてもこれほどの海水を用意するのは普通ではできない。それこそ王都を水に沈めただろう龍神のおかみさんと玄武の力が……あれ?
これはまさか!雪解け水が低い土地に流れて溜まっただけでは?
だってあのおかみさんがいた場所ってここから見える場所だよね!
っということは海水ではなく真水。それも神の水と言っていいかも。
駄目だ。この水をどうにかしようとはすることはできない。自然に蒸発するのを待つか、どこかに流す水路を築くかしないと無理。
それに一気に流すと、いらないものまで水が掴んで共に流れていくことになる。
しかし、冬なのにあの雪が全て解けてしまったというのもおかしなものだ。
取り敢えず、下にある水が真水か海水か。
「シュレイン。どうしますか?」
「中核都市ゲルニードは水底だ。オランディラに向かおう」
神父様の言葉に、ルディは海の上に浮いた町に行くように指示を出した。今回は神父様は補助要員だと自称して甲冑はまとっておらず、いつもの神父服で腰に剣を佩いている。
なんというか違和感がない。神父服に剣って似合わないと思っていたら、神父様だとしっくりきてしまう。
「はぁ。ルディ。ちょっと気になることがあるから、そこで旋回していて」
私はルディの腕から逃れて、そのまま下に落ちた。
「アンジュ!」
「あ、すぐに戻ってくるから」
針の筵から逃げたかったのもある。まぁ、怒られるのはいつものこと。
私は重力の聖痕で加速し、水面にぶつかる直前で止まった。
そして水に手を伸ばす。
水の感触がある。そのまま掬って口に含む。
ガツンと来る塩っ辛さはない。そしてその水は吐き出した。
「ん?手が濡れていない」
私は水を掬った手を見る。どこかで拭いたわけでもないのに、手に水滴がついていない。
もう一度つける。水の感覚はある。出す。指先から水は滴らない。
なにこの水!不思議水じゃない!面白い!
顔を水につける。息を吐く。泡が出ない。
は?空気の泡が出ないってなに?
これはもしかして……口を開けて吸う。息ができる。
そのまま水に沈み、更に下に行く。水底にある街に向かうためだ。
「へー。髪も服も水の抵抗を受けている。だけど、呼吸はできる。幻覚というには、あまりにも水っぽい。ん?幻覚を現実に?これってダンジョンの仕様に似ている」
ということは、これは魔力の塊と言える。いや、神力の塊と言える。
「ということは雪はあの丸い鳥の所為であって、神の力が行き場がなく、そのまま残って水に戻ったと考えられる」
あれ?本体は世界に食われるのに、力は食べられずに残っている。これこそ食べるべきじゃないのかな?
街についた私は辺りを見渡した。恐らく一気に水が押し寄せてきたのだろう。本物の水と思い込むと、幻覚は本当になり、人々を呑み込んでいった。
そこら中に人が水の中を漂っている。
ん?水死体って醜いと聞いたことがあるけど、すべてが生前さながらの姿のままだ。
神水だから?
「アンジュ様」
その声に振り向くと茨木と酒吞がいた。
「ツクヨミの旦那がすっげー怒っているぞ。アマテラス」
「はははは。ごめん。ごめん。ちょっと気になってしまってね。でもだいたいわかったから戻るよ」
しかし、ここには酒吞と茨木しかこれなかったということかな?
「他の皆は上ってことでいいよね?」
「やはり幻覚と割り切れるかどうかが問題になってきますね」
「ちょっとクセがある幻覚だな」
「クセ?」
「たぶん力がつえぇヤツが作った幻覚なんだろうな。水が掴めるっておもしれー」
確かに。幻覚と理解しても髪や服が水の抵抗を受けている。意識がないものに影響を与えているのだ。
この水。何が起こるかわからないよね。
本物の水の方が百倍マシかもしれない。
そして私は針の筵から解放されるのだ。
「これは予想以上ですね」
響声を使って神父様が声をかけてきた。予想以上、それは上空からみればよく分かる。
先程まで緑豊かな森が広がっていたのに、見渡す限り海と言っていい状況だった。もしかしたら国境より向こう側も海になってしまっている可能性がある。
「中核都市であるゲルニードも海に沈んでいるのか?」
「隊長。第七部隊はオランディラに拠点を移したとありましたわ」
「高台にある町なので海に浮いているように見えるそうですよ」
第十二部隊さんの言葉にリザ姉とロゼが答える。
高台にある町だけど物資はどうしているのだろう?
いや、これはただの幻覚で、海の下の陸地は歩ける?いや、神父様から見せてもらった調書には本物の海とあった。でも、どう本物だったかの具体的な内容は書かれていなかった。
しかし、本物だったとしてもこれほどの海水を用意するのは普通ではできない。それこそ王都を水に沈めただろう龍神のおかみさんと玄武の力が……あれ?
これはまさか!雪解け水が低い土地に流れて溜まっただけでは?
だってあのおかみさんがいた場所ってここから見える場所だよね!
っということは海水ではなく真水。それも神の水と言っていいかも。
駄目だ。この水をどうにかしようとはすることはできない。自然に蒸発するのを待つか、どこかに流す水路を築くかしないと無理。
それに一気に流すと、いらないものまで水が掴んで共に流れていくことになる。
しかし、冬なのにあの雪が全て解けてしまったというのもおかしなものだ。
取り敢えず、下にある水が真水か海水か。
「シュレイン。どうしますか?」
「中核都市ゲルニードは水底だ。オランディラに向かおう」
神父様の言葉に、ルディは海の上に浮いた町に行くように指示を出した。今回は神父様は補助要員だと自称して甲冑はまとっておらず、いつもの神父服で腰に剣を佩いている。
なんというか違和感がない。神父服に剣って似合わないと思っていたら、神父様だとしっくりきてしまう。
「はぁ。ルディ。ちょっと気になることがあるから、そこで旋回していて」
私はルディの腕から逃れて、そのまま下に落ちた。
「アンジュ!」
「あ、すぐに戻ってくるから」
針の筵から逃げたかったのもある。まぁ、怒られるのはいつものこと。
私は重力の聖痕で加速し、水面にぶつかる直前で止まった。
そして水に手を伸ばす。
水の感触がある。そのまま掬って口に含む。
ガツンと来る塩っ辛さはない。そしてその水は吐き出した。
「ん?手が濡れていない」
私は水を掬った手を見る。どこかで拭いたわけでもないのに、手に水滴がついていない。
もう一度つける。水の感覚はある。出す。指先から水は滴らない。
なにこの水!不思議水じゃない!面白い!
顔を水につける。息を吐く。泡が出ない。
は?空気の泡が出ないってなに?
これはもしかして……口を開けて吸う。息ができる。
そのまま水に沈み、更に下に行く。水底にある街に向かうためだ。
「へー。髪も服も水の抵抗を受けている。だけど、呼吸はできる。幻覚というには、あまりにも水っぽい。ん?幻覚を現実に?これってダンジョンの仕様に似ている」
ということは、これは魔力の塊と言える。いや、神力の塊と言える。
「ということは雪はあの丸い鳥の所為であって、神の力が行き場がなく、そのまま残って水に戻ったと考えられる」
あれ?本体は世界に食われるのに、力は食べられずに残っている。これこそ食べるべきじゃないのかな?
街についた私は辺りを見渡した。恐らく一気に水が押し寄せてきたのだろう。本物の水と思い込むと、幻覚は本当になり、人々を呑み込んでいった。
そこら中に人が水の中を漂っている。
ん?水死体って醜いと聞いたことがあるけど、すべてが生前さながらの姿のままだ。
神水だから?
「アンジュ様」
その声に振り向くと茨木と酒吞がいた。
「ツクヨミの旦那がすっげー怒っているぞ。アマテラス」
「はははは。ごめん。ごめん。ちょっと気になってしまってね。でもだいたいわかったから戻るよ」
しかし、ここには酒吞と茨木しかこれなかったということかな?
「他の皆は上ってことでいいよね?」
「やはり幻覚と割り切れるかどうかが問題になってきますね」
「ちょっとクセがある幻覚だな」
「クセ?」
「たぶん力がつえぇヤツが作った幻覚なんだろうな。水が掴めるっておもしれー」
確かに。幻覚と理解しても髪や服が水の抵抗を受けている。意識がないものに影響を与えているのだ。
この水。何が起こるかわからないよね。
本物の水の方が百倍マシかもしれない。
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