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成長 ソフィア視点
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六年後
嵐の夜、仕事から無事に帰って来たソーハンと一緒に私はベッドに入った。
そして朝目が覚めると、嵐が去った後の窓の外はキラキラ輝き、空気は澄み渡って清々しい……はずなのに、なんだか下半身が冷たくて変な感じがする。
恐る恐る見てみると、シーツが真っ赤!
頭がクラクラ、涙がポロポロ出てきた。
その様子に、「どうした?」と目を擦りながらソーハンが起き出した。
「死ぬ、死ぬ。うわーん!」
「あ? 何言ってんだ?」
シーツに目を落としたソーハンの顔が青ざめた。
黙ったまま何かを考えているようだけど、私の病気に絶望しているのかもしれない。
医者はお金がかかる。
私の為にお金を使って欲しくない。
だから死んだらソーハンの守護霊になって彼を守ろうと心に誓った。
するとさっきまで青白かったソーハンの顔に血の気が戻って来た。
もう私の事を諦めたのかもしれない。それでいい……それでいいけど……なんかそれも嫌で悲しい。
「おい、お前いくつになる?」
「うっ、ひっく……いくつって?」
「ばか、年齢だよ」
「十二」
「……あー。うん、そうか、ソフィア。多分心配ない。死にゃあしないよ。それはあれだ、月のものっていってな――」
その日の夕食はソーハンが特別に御馳走を作ってくれた。
***
最近私は二人分の朝食を用意するため、朝ちょっとだけ早く起きている。
台所に一人で立ってももう危ないって注意されることもなくなって、信頼されているようで嬉しい。
髪だって以前はソーハンが可愛く結ってくれてたけど、今は自分で結えるようになった。
そんな鏡に映る自分がちょっとだけ誇らしい。
でも買ってもらったばかりの靴はすぐに履けなくなるし、大好きだった洋服はなんだかつんつるてんでかっこ悪い。
ソーハンにあんまりお金を使わせたくないから大きくなるのも善し悪しだ。
子どもの頃が懐かしくて少しだけ胸がキュッとする。
飾り気のない家の中は、私が少しずつ手を加えていくとまるで魔法にかかったように色彩豊かになっていった。
無機質だった家全体が命を吹き込まれたようだ。
ソーハンもどんどん変わっていく自分の家にまんざらでもないようで、やり甲斐がある。
そうしていつの間にか過ぎて行く季節の中で、一緒に馬に乗ったりピクニックに連れて行ってもらったり、そんな楽しい時間を重ねるうちに、私の心にたくさんの思い出が刻まれていった。
そして私は十五歳になった。
ソーハンは今二十七歳。
彼の年の離れた妹という設定で、昔から私の長い金髪は彼と同じ赤色に染めている。
瞳は碧色でソーハンの薄茶と違うからせめて髪の色くらいは同じにしておいた方が怪しまれないという彼の提案だ。
十五になって、街に出てみたいと思う時もたまにあるけどそれは我慢。
街のあちこちに私の顔が書かれた手配書が貼りだされていて、捕まったら多分殺される。
ソーハンが言うには、手配書の絵姿はご丁寧に成長後の顔に描きかえられているらしい。
ただ私とあまり似ていなくて、私の方が格段に美人だから同一人物と思う人はあまりいないだろうと言った。
じゃあ出てみようかなと軽口をたたくと、それでも鼻が利く奴はどこにでもいるからいくら髪を染めていても引っ込んでいた方が無難だと、慌てて行くのを止める。
街に出るなんて冗談だ。
いつまでも彼と一緒に暮らせるなら私は一生この村から出なくても構わない。
「街には出ない」と安心させるため言うと、彼は「いい子だ」と言って頭を撫でてくれる。
それだけで幸せだ。
でも最近ソーハンが何かを深く考え込んでいるような時が増えた。
聞いてもなんでもないって言われるけどなんだか嫌な予感がする。
数日後、その予感は的中した。
ある日、ソーハンがテーブルの上に大きなずだ袋をバンと置いた。
ジャラジャラお金の音がする。
「何これ」
「お前はもう働ける年齢だ。これ持ってここを出ろ。隣国のランシアならこの国にいるより安全だろう」
「急に何言い出すの? 出て行けって何?」
「前々から考えていた事だ。言うことを聞け。ここにずっといてもお前の将来は無い」
「やだ、絶対やだ! 私はソーハンのお嫁さんになるのよ!」
「馬鹿なことを言うな」
「ソーハンが好きなの! ずっと一緒にいるんだから!」
「いい加減にしろ!」
ソーハンがバンッとテーブルを拳で叩いてコップが跳ねた。
今までそんな風に怒られたことは無い。
ビクッと身がすくんでしまい、涙が溢れてきた。
「ソーハンの馬鹿ーーー!」
急に突き放すなんてあんまりだ。
私はその場にいるのが辛くて泣きながら部屋に走った。
嵐の夜、仕事から無事に帰って来たソーハンと一緒に私はベッドに入った。
そして朝目が覚めると、嵐が去った後の窓の外はキラキラ輝き、空気は澄み渡って清々しい……はずなのに、なんだか下半身が冷たくて変な感じがする。
恐る恐る見てみると、シーツが真っ赤!
頭がクラクラ、涙がポロポロ出てきた。
その様子に、「どうした?」と目を擦りながらソーハンが起き出した。
「死ぬ、死ぬ。うわーん!」
「あ? 何言ってんだ?」
シーツに目を落としたソーハンの顔が青ざめた。
黙ったまま何かを考えているようだけど、私の病気に絶望しているのかもしれない。
医者はお金がかかる。
私の為にお金を使って欲しくない。
だから死んだらソーハンの守護霊になって彼を守ろうと心に誓った。
するとさっきまで青白かったソーハンの顔に血の気が戻って来た。
もう私の事を諦めたのかもしれない。それでいい……それでいいけど……なんかそれも嫌で悲しい。
「おい、お前いくつになる?」
「うっ、ひっく……いくつって?」
「ばか、年齢だよ」
「十二」
「……あー。うん、そうか、ソフィア。多分心配ない。死にゃあしないよ。それはあれだ、月のものっていってな――」
その日の夕食はソーハンが特別に御馳走を作ってくれた。
***
最近私は二人分の朝食を用意するため、朝ちょっとだけ早く起きている。
台所に一人で立ってももう危ないって注意されることもなくなって、信頼されているようで嬉しい。
髪だって以前はソーハンが可愛く結ってくれてたけど、今は自分で結えるようになった。
そんな鏡に映る自分がちょっとだけ誇らしい。
でも買ってもらったばかりの靴はすぐに履けなくなるし、大好きだった洋服はなんだかつんつるてんでかっこ悪い。
ソーハンにあんまりお金を使わせたくないから大きくなるのも善し悪しだ。
子どもの頃が懐かしくて少しだけ胸がキュッとする。
飾り気のない家の中は、私が少しずつ手を加えていくとまるで魔法にかかったように色彩豊かになっていった。
無機質だった家全体が命を吹き込まれたようだ。
ソーハンもどんどん変わっていく自分の家にまんざらでもないようで、やり甲斐がある。
そうしていつの間にか過ぎて行く季節の中で、一緒に馬に乗ったりピクニックに連れて行ってもらったり、そんな楽しい時間を重ねるうちに、私の心にたくさんの思い出が刻まれていった。
そして私は十五歳になった。
ソーハンは今二十七歳。
彼の年の離れた妹という設定で、昔から私の長い金髪は彼と同じ赤色に染めている。
瞳は碧色でソーハンの薄茶と違うからせめて髪の色くらいは同じにしておいた方が怪しまれないという彼の提案だ。
十五になって、街に出てみたいと思う時もたまにあるけどそれは我慢。
街のあちこちに私の顔が書かれた手配書が貼りだされていて、捕まったら多分殺される。
ソーハンが言うには、手配書の絵姿はご丁寧に成長後の顔に描きかえられているらしい。
ただ私とあまり似ていなくて、私の方が格段に美人だから同一人物と思う人はあまりいないだろうと言った。
じゃあ出てみようかなと軽口をたたくと、それでも鼻が利く奴はどこにでもいるからいくら髪を染めていても引っ込んでいた方が無難だと、慌てて行くのを止める。
街に出るなんて冗談だ。
いつまでも彼と一緒に暮らせるなら私は一生この村から出なくても構わない。
「街には出ない」と安心させるため言うと、彼は「いい子だ」と言って頭を撫でてくれる。
それだけで幸せだ。
でも最近ソーハンが何かを深く考え込んでいるような時が増えた。
聞いてもなんでもないって言われるけどなんだか嫌な予感がする。
数日後、その予感は的中した。
ある日、ソーハンがテーブルの上に大きなずだ袋をバンと置いた。
ジャラジャラお金の音がする。
「何これ」
「お前はもう働ける年齢だ。これ持ってここを出ろ。隣国のランシアならこの国にいるより安全だろう」
「急に何言い出すの? 出て行けって何?」
「前々から考えていた事だ。言うことを聞け。ここにずっといてもお前の将来は無い」
「やだ、絶対やだ! 私はソーハンのお嫁さんになるのよ!」
「馬鹿なことを言うな」
「ソーハンが好きなの! ずっと一緒にいるんだから!」
「いい加減にしろ!」
ソーハンがバンッとテーブルを拳で叩いてコップが跳ねた。
今までそんな風に怒られたことは無い。
ビクッと身がすくんでしまい、涙が溢れてきた。
「ソーハンの馬鹿ーーー!」
急に突き放すなんてあんまりだ。
私はその場にいるのが辛くて泣きながら部屋に走った。
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