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海の神の癒し
「やはりもうこの世界はリセットした方がいいか」
「うむ。ジェラールが生まれて期待したが……」
そう話す二人の神の前で、ジェラールがゆっくりと体を起こした。
彼はマルセラン神とアルマン神によって死体安置所から神殿に移動させられていた。
こんなことは初めてだ。
彼女から離したことに文句を言ってやりたいところだが、今の彼にその気力はなく。
神を見もせずに神殿の出口へと歩き出した。
この時の彼はどうしようもない焦燥感に駆られていた。
犯人をこの手で殺さなければならないのだ。
「ジェラール、待ちなさい」
マルセラン神がそう言っても止まらない。
「エレンは安置所にはいないよ。彼女は今癒されている。君とも火傷跡を治すって約束していただろう。目を覚ました時彼女がいないと君が大騒ぎするだろうからここに連れてきたんだよ」
アルマン神の言葉にやっとジェラールは振り向いた。
「癒されている? それは生き返るということですか?」
生気を失った青い瞳に微かに光が射した。
いつものように後ろに椅子が現れたので彼は脱力したようにトスンと座った。
そういえばこの二人は曲がりなりにも神だったと思い出す。
しかしマルセラン神の言葉ですぐに希望の光は消えた。
「肉体を癒すだけだから魂が戻るかはわからない」
「なんだ……」
死んでいる肉体の傷を治しても壊れた人形を修理するのと同じだ。
治してくれるのは有難いが、生き返らなければ意味が無い。
神のくせに生き返らせることもできずに“わからない”なんて言うとは、なんともお粗末なことだとジェラールは思った。
さらにがっかりすることを聞かされて彼の心は深く沈む。
「彼女の魂がそこに戻るか戻らないかは彼女次第」
(……だったら戻ってこないかもしれない……)
マルセラン神は俯くジェラールを水瓶の置かれてある部屋へ連れて行った。
その水瓶は馬車の車輪の二倍くらいの大きさはある。
「見ていなさい。ここに映っているのは海中だ」
水瓶の水面を見つめていると、暗い海中の一点に光が現れそれは次第に大きくなっていく。
大きく見開かれたジェラールの瞳に、足を抱えて丸まっているエレンが映った。
金髪が自ら発光しているようにキラキラと輝き揺らめいている。
思わず水瓶の中に手を伸ばして触れようとしたがもちろん触れることなどできず。
「これはエレンが癒されている海中の様子を映し出しているだけだ」
「海で?」
「彼女がいるのはただの海じゃなくてマルセランの特別なエネルギーで満たされている場所なんだよ。普通の人間が行ける場所じゃない。死んだ人間を強制的に生き返らせることは許されることではないから肉体だけでも癒して彼女の魂が戻ってくるのを自然と待つこの方法が最適なんだ」
ジェラールのイメージとしては傷跡に手をかざすと光が出て一瞬で治るというものだった。
でもどんな方法だとしても、実際に癒されている場面を見ると彼は大きく安心した。
もしずっと安置所に置かれていたら明日には埋葬されていただろう。
だからこれが彼女に対してできることの最大限のことなのだ。
「死んだばかりの彼女の魂はまだ人間の世界にある。だからそんなに落ち込むことは無いよ。魂が戻らない可能性の肉体をマルセランが癒すと思うかい? 彼女を信じるんだ。彼女は君の魂を幸せにするために人間の世界に落ちて行ったんだからね」
アルマン神の話に再び希望が見えてきた彼は水瓶に映るエレンを見つめながら元気を取り戻していった。
その様子にマルセラン神は微笑んだ。
「どれくらいで治りますか」
「三か月後に来たまえ」
そんなのあっという間だ。
(早く犯人を捕まえてしまおう! 三か月ものさばらせてなるものか!)
エレンが生き返ったなら犯人は聞けば分かるがそれまで待つことはできそうもなかった。
ジェラールは帝国中の人間をしらみつぶしに探してやると意気込み神殿を後にしたが、その翌日、エレンを殺害した犯人が遺書を残して自殺したという知らせが入った。
「うむ。ジェラールが生まれて期待したが……」
そう話す二人の神の前で、ジェラールがゆっくりと体を起こした。
彼はマルセラン神とアルマン神によって死体安置所から神殿に移動させられていた。
こんなことは初めてだ。
彼女から離したことに文句を言ってやりたいところだが、今の彼にその気力はなく。
神を見もせずに神殿の出口へと歩き出した。
この時の彼はどうしようもない焦燥感に駆られていた。
犯人をこの手で殺さなければならないのだ。
「ジェラール、待ちなさい」
マルセラン神がそう言っても止まらない。
「エレンは安置所にはいないよ。彼女は今癒されている。君とも火傷跡を治すって約束していただろう。目を覚ました時彼女がいないと君が大騒ぎするだろうからここに連れてきたんだよ」
アルマン神の言葉にやっとジェラールは振り向いた。
「癒されている? それは生き返るということですか?」
生気を失った青い瞳に微かに光が射した。
いつものように後ろに椅子が現れたので彼は脱力したようにトスンと座った。
そういえばこの二人は曲がりなりにも神だったと思い出す。
しかしマルセラン神の言葉ですぐに希望の光は消えた。
「肉体を癒すだけだから魂が戻るかはわからない」
「なんだ……」
死んでいる肉体の傷を治しても壊れた人形を修理するのと同じだ。
治してくれるのは有難いが、生き返らなければ意味が無い。
神のくせに生き返らせることもできずに“わからない”なんて言うとは、なんともお粗末なことだとジェラールは思った。
さらにがっかりすることを聞かされて彼の心は深く沈む。
「彼女の魂がそこに戻るか戻らないかは彼女次第」
(……だったら戻ってこないかもしれない……)
マルセラン神は俯くジェラールを水瓶の置かれてある部屋へ連れて行った。
その水瓶は馬車の車輪の二倍くらいの大きさはある。
「見ていなさい。ここに映っているのは海中だ」
水瓶の水面を見つめていると、暗い海中の一点に光が現れそれは次第に大きくなっていく。
大きく見開かれたジェラールの瞳に、足を抱えて丸まっているエレンが映った。
金髪が自ら発光しているようにキラキラと輝き揺らめいている。
思わず水瓶の中に手を伸ばして触れようとしたがもちろん触れることなどできず。
「これはエレンが癒されている海中の様子を映し出しているだけだ」
「海で?」
「彼女がいるのはただの海じゃなくてマルセランの特別なエネルギーで満たされている場所なんだよ。普通の人間が行ける場所じゃない。死んだ人間を強制的に生き返らせることは許されることではないから肉体だけでも癒して彼女の魂が戻ってくるのを自然と待つこの方法が最適なんだ」
ジェラールのイメージとしては傷跡に手をかざすと光が出て一瞬で治るというものだった。
でもどんな方法だとしても、実際に癒されている場面を見ると彼は大きく安心した。
もしずっと安置所に置かれていたら明日には埋葬されていただろう。
だからこれが彼女に対してできることの最大限のことなのだ。
「死んだばかりの彼女の魂はまだ人間の世界にある。だからそんなに落ち込むことは無いよ。魂が戻らない可能性の肉体をマルセランが癒すと思うかい? 彼女を信じるんだ。彼女は君の魂を幸せにするために人間の世界に落ちて行ったんだからね」
アルマン神の話に再び希望が見えてきた彼は水瓶に映るエレンを見つめながら元気を取り戻していった。
その様子にマルセラン神は微笑んだ。
「どれくらいで治りますか」
「三か月後に来たまえ」
そんなのあっという間だ。
(早く犯人を捕まえてしまおう! 三か月ものさばらせてなるものか!)
エレンが生き返ったなら犯人は聞けば分かるがそれまで待つことはできそうもなかった。
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