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リセット(二)
エレンを諦めるなんて冗談じゃない。
ジェラールは思い悩んだ末に自分が神の世界で暮らせば解決することだとひらめいた。
無茶なことかもしれないが彼女とずっと共にいるにはそれしか方法が無い。
しかしその考えはマルセラン神に当然のごとく拒否された。
「君が入れるのはここまでだと前にも言ったはずだ」
「でも、死なないで神の世界に入れる身体が手に入る機会があったとアルマン神が仰っていたのを覚えています! できるのでしょう? 俺にもその機会を与えてください!」
簡単に引き下がってなるものかとジェラールは必死の形相で二人の神を見つめた。
マルセラン神がアルマン神を横目で睨むと、アルマン神はやれやれといった風に肩をすくめた。
「覚えてたんだ。あれから何も言ってこないから忘れているのかと思っていたよ」
二人の神は「少し待っていたまえ」と言って少し離れた所でヒソヒソと話をし始めた。
話し合うということは聞き入れてくれる余地があるという事だとジェラールは勝ち誇った気持ちになった。
そして心細そうにしているエレンに言った。
「大丈夫だよ。いつかは必ず思い出すことができる。それまで俺がサポートするから安心してくれ」
「……。あの……。私たちは愛し合っていたのですか」
「それはもちろん――」
言葉の途中で突然再会した時の彼女の表情が頭に浮かんだ。
彼女は困った顔こそしていたが決して嬉しそうではなく、しかもエレンである事をずっと黙っていた。
極めつけは愛していると言われたことが無い。
恐ろしい考えが彼の頭を過る。
(いや、あれはカリーヌに遠慮していたからだ。現にペンダントをずっと持っていてくれたではないか)
それが彼女を信じる唯一の拠り所になり、一瞬途切れた言葉を何事もなかったように繋いだ。
「――そうだ」
エレンはその言葉にぎこちなく微笑んだ。
少しして二人の神の話し合いが終わり、ジェラールは期待に瞳を輝かせた。
「それでは君に一度だけチャンスをあげよう。今後三年間、帝国に繁栄をもたらす政治を行ったら、神の世界で暮らせる身体を授けるとしよう」
「本当ですか! 三年でいいのですね! ありがとうございます! 立派な皇帝になってみせます!」
マルセラン神はハハハと笑って、「君たちは二人で意識せずに二回もリセットを延期させたね」と呟いた。
喜びに興奮しながらもジェラールはその言葉を聞き逃さなかった。
安置所から連れてこられた時に聞いた言葉だ。
「リセットとはどういう意味ですか、マルセラン神」
「帝国を滅亡させ新たな文明を興すことだ。ガイアマーレ帝国の南端に巨大な休火山があるだろう。あれを爆発させれば一週間で帝国は滅びる」
(何を言っているんだ? この神は)
良い事ではないと想像はついていたが、さらっといわれたその言葉にジェラールの思考が止まる。
彼はさらに説明を求めた。
まず、神殿に入れる皇族がどんどん少なくなり人心も劣化した帝国をリセットするつもりでいたが、コラリーヌが人間の世界に転生してその後ジェラールが生まれたため延期したのが一回目。
しかしコラリーヌの願いも空しく無残にも殺されてしまっては、もう延期する意味は無い。
それでリセットしようとしたら、ジェラールが神の世界で暮らせる体を求めたため再び延ばすことにしたのが二回目ということだった。
その期間は三年。
「そんなの駄目だ! どれだけの人が生活していると思っているんだ! 悪い人間ばかりじゃない! 動物だって死んでしまうではないか!」
「延期したと言っただろう」
「中止にしてください」
「帝国を見捨てて神の世界に入ろうと思っている君がどうしてそこまで熱くなる」
「それとこれとは……!」
「文明には寿命がある。人心の劣化した今がその時なのだ。我々はこれまで何度もそうしてきた。この文明は千年もったが、もう千年と続くことはできないだろう」
「……じゃあ俺が三年間帝国を繁栄させることに何の意味が? その後リセットするつもりなんだろう?」
「それが今君がやるべきことだからだ。君に課した条件とリセットは関係ない」
「俺は帝国を見捨てるつもりはありません。俺より頭のいい弟が跡を継ぎます。だからリセットは考え直してください!」
「君が皇帝の座を降りることを民は望んでいないというのに」
「民が安心して暮らせる礎を築きます! そうすれば民も神殿に入れる皇帝に拘ることはなくなるはずです」
二人のやりとりの途中で突然エレンが小さく声を発した。
「私も、帝国が滅びるのは望んでいません」
それを聞いたマルセラン神は信じられないといった顔をして言った。
「何の罪もなく人間の世界で殺されたのだぞ」
「それでも、私の知らない所では沢山の善良な人々が生活しています。少数の悪人のせいでその人たちに死んで欲しくありません」
「善良な者の魂はその程度によって高次の神の世界に転生することがある。それは死ぬことによってしかなしえない。だから君が善良な者の死を心配する必要は無い」
「でも……」
エレンはアルマン神をチラッと見て助けを求めた。
「あー、そんな目で見ないでくれ。神は悪人ではないよ。マルセラン、エレンがそう言うのなら三年後のリセットは見合わせたらどうだろう。今後何が起こるかわからないしね」
「君までそんなことを言うのか」
そんなこんなでマルセラン神は渋々承諾した。
ジェラールはひとまず安心したが、アルマン神から発せられた次の言葉に再び衝撃を受けることになる。
ジェラールは思い悩んだ末に自分が神の世界で暮らせば解決することだとひらめいた。
無茶なことかもしれないが彼女とずっと共にいるにはそれしか方法が無い。
しかしその考えはマルセラン神に当然のごとく拒否された。
「君が入れるのはここまでだと前にも言ったはずだ」
「でも、死なないで神の世界に入れる身体が手に入る機会があったとアルマン神が仰っていたのを覚えています! できるのでしょう? 俺にもその機会を与えてください!」
簡単に引き下がってなるものかとジェラールは必死の形相で二人の神を見つめた。
マルセラン神がアルマン神を横目で睨むと、アルマン神はやれやれといった風に肩をすくめた。
「覚えてたんだ。あれから何も言ってこないから忘れているのかと思っていたよ」
二人の神は「少し待っていたまえ」と言って少し離れた所でヒソヒソと話をし始めた。
話し合うということは聞き入れてくれる余地があるという事だとジェラールは勝ち誇った気持ちになった。
そして心細そうにしているエレンに言った。
「大丈夫だよ。いつかは必ず思い出すことができる。それまで俺がサポートするから安心してくれ」
「……。あの……。私たちは愛し合っていたのですか」
「それはもちろん――」
言葉の途中で突然再会した時の彼女の表情が頭に浮かんだ。
彼女は困った顔こそしていたが決して嬉しそうではなく、しかもエレンである事をずっと黙っていた。
極めつけは愛していると言われたことが無い。
恐ろしい考えが彼の頭を過る。
(いや、あれはカリーヌに遠慮していたからだ。現にペンダントをずっと持っていてくれたではないか)
それが彼女を信じる唯一の拠り所になり、一瞬途切れた言葉を何事もなかったように繋いだ。
「――そうだ」
エレンはその言葉にぎこちなく微笑んだ。
少しして二人の神の話し合いが終わり、ジェラールは期待に瞳を輝かせた。
「それでは君に一度だけチャンスをあげよう。今後三年間、帝国に繁栄をもたらす政治を行ったら、神の世界で暮らせる身体を授けるとしよう」
「本当ですか! 三年でいいのですね! ありがとうございます! 立派な皇帝になってみせます!」
マルセラン神はハハハと笑って、「君たちは二人で意識せずに二回もリセットを延期させたね」と呟いた。
喜びに興奮しながらもジェラールはその言葉を聞き逃さなかった。
安置所から連れてこられた時に聞いた言葉だ。
「リセットとはどういう意味ですか、マルセラン神」
「帝国を滅亡させ新たな文明を興すことだ。ガイアマーレ帝国の南端に巨大な休火山があるだろう。あれを爆発させれば一週間で帝国は滅びる」
(何を言っているんだ? この神は)
良い事ではないと想像はついていたが、さらっといわれたその言葉にジェラールの思考が止まる。
彼はさらに説明を求めた。
まず、神殿に入れる皇族がどんどん少なくなり人心も劣化した帝国をリセットするつもりでいたが、コラリーヌが人間の世界に転生してその後ジェラールが生まれたため延期したのが一回目。
しかしコラリーヌの願いも空しく無残にも殺されてしまっては、もう延期する意味は無い。
それでリセットしようとしたら、ジェラールが神の世界で暮らせる体を求めたため再び延ばすことにしたのが二回目ということだった。
その期間は三年。
「そんなの駄目だ! どれだけの人が生活していると思っているんだ! 悪い人間ばかりじゃない! 動物だって死んでしまうではないか!」
「延期したと言っただろう」
「中止にしてください」
「帝国を見捨てて神の世界に入ろうと思っている君がどうしてそこまで熱くなる」
「それとこれとは……!」
「文明には寿命がある。人心の劣化した今がその時なのだ。我々はこれまで何度もそうしてきた。この文明は千年もったが、もう千年と続くことはできないだろう」
「……じゃあ俺が三年間帝国を繁栄させることに何の意味が? その後リセットするつもりなんだろう?」
「それが今君がやるべきことだからだ。君に課した条件とリセットは関係ない」
「俺は帝国を見捨てるつもりはありません。俺より頭のいい弟が跡を継ぎます。だからリセットは考え直してください!」
「君が皇帝の座を降りることを民は望んでいないというのに」
「民が安心して暮らせる礎を築きます! そうすれば民も神殿に入れる皇帝に拘ることはなくなるはずです」
二人のやりとりの途中で突然エレンが小さく声を発した。
「私も、帝国が滅びるのは望んでいません」
それを聞いたマルセラン神は信じられないといった顔をして言った。
「何の罪もなく人間の世界で殺されたのだぞ」
「それでも、私の知らない所では沢山の善良な人々が生活しています。少数の悪人のせいでその人たちに死んで欲しくありません」
「善良な者の魂はその程度によって高次の神の世界に転生することがある。それは死ぬことによってしかなしえない。だから君が善良な者の死を心配する必要は無い」
「でも……」
エレンはアルマン神をチラッと見て助けを求めた。
「あー、そんな目で見ないでくれ。神は悪人ではないよ。マルセラン、エレンがそう言うのなら三年後のリセットは見合わせたらどうだろう。今後何が起こるかわからないしね」
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そんなこんなでマルセラン神は渋々承諾した。
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