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即位と処刑執行
再びエレンと離れ離れになったジェラールは、跡を継いでもらうエルネストにだけ三年後のことを伝えた。
エルネストは非常に驚いて、泣いたり引きとめたり自分には無理だと言って一通り反抗したが、数日かけての説得に結局は折れた。
そこからの彼は人が変わったようになり、ジェラールと一緒にお忍びに行くと言って民の様子を観察したり両陛下と周りの貴族にばれないよう密かに勉強も始めた。
タイミングが良いことに、彼は三年後に十八歳となり即位できる年齢になる。
今から一緒に政治を動かして行けば政権の移譲がスムーズになるのは明白だ。
そしてジェラールは誕生日を迎え、皇帝の譲位と即位式が執り行われた。
民は待ちに待ったこの瞬間に歓喜した。
一週間に渡って祭りが催され、華やかに飾り付けられた街並みは平民の苦しい生活を忘れさせるものだった。
広場では大道芸人や紙芝居、寸劇などを楽しむ人々で溢れかえったが、その広場はまた公的な事にも使われる。
風がそよりとも吹かないまだまだ残暑が厳しい九月。
皇帝になってからの最初の大きな仕事が処刑であることに難色を示す臣下もいたが、新皇帝の考えを貴族や平民に知らしめるのにこれほどいい機会はないと、ジェラールは譲らなかった。
皇都の中央広場。
元侯爵家嫡男の火あぶりというそんな興味の湧く瞬間を見逃すまいと、まだ何も用意されていない広場には朝早くから多くが集まっていた。
まるで興業が催されるのを楽しみにして待つかのごとく人々の顔には笑顔が溢れ、これから残酷な処刑が始まるなど微塵も感じさせない雰囲気だ。
役人と兵士に囲まれたガリアスとジャックが連れられて磔にされると一斉にワーッという怒声が湧き起こる。
それまでの楽しげな雰囲気が一瞬にして怒りと蔑みの雰囲気に変わり、罵声が飛び交い石も飛ぶ。
罪状は、皇太子の婚約者となる女性の殺害、放火殺人、そして目撃者の殺害、計三人の殺人罪。
ジャックは震えて失禁し声も出せない。
ガリアスは「俺は貴族だぞ! 母上! 母上!」と叫び、時にはジャックに悪態をついてジェラールを呪う言葉を吐く。
だが点火されると次第に声は悲鳴へと変わる。
炎の勢いが増して悲鳴が聞こえれば聞こえる程、聴衆の顔からは怒りの表情が消えていく。
そして彼らは正義感に満ちた悪魔の笑みを隠すことなく、自分たちが悪人に鉄槌を下しているかのような満足感を覚えるのだ。
平民にとっての憂さ晴らしのショー、そしてジェラールにとっての犯罪者の処刑はもうすぐ終わる。
二人の悲鳴は徐々に聞こえなくなっていき、長い苦しみの中死んでいくという最期を迎えた。
元侯爵夫人であった母親は、処刑の場には姿を現さなかった。
歴史上、貴族同士の犯罪で貴族が斬首されることはあっても、貴族の平民に対する殺人はそれほど重い罪にはなっていなかった。
平民ですらそれが当然だと思って諦めているほど長年の慣習だ。
だがそれは近年においてはひとえに平民からなる自警団と貴族の癒着によるところが大きく、貴族の罪が隠ぺいされていたからに他ならない。
平民に対する殺人でしかも火あぶりの刑になることは前代未聞の事であり、元貴族のガリアスが処刑されたのは他の貴族たちへの見せしめになった。
誰であっても罪を犯したらその程度によって罰を与える。
彼らの処刑はジェラール新皇帝の考えを示すものとして多くの民に受け入れられた。
この考えはエルネストも同じだった。
※※※
ジェラールは処刑直前にガリアスとジャックそれぞれにエレンが神によって癒され生き返ったことを教えた。
彼が処刑をすぐに実行しなかったのはこのためだ。
さぞ悔しがるだろう姿を見るためと、生き返っても処刑は免れないという絶望を味わわせるため。
思った通りガリアスは生き返ったなら牢から出してくれと懇願した。
ナタリーとヨルゴを殺したことを忘れているのか、それとも平民を殺したことは罪にならないと思っているのか。
後者であることは想像に難くない。
父親が自殺したことを知っても反応は無かった。
ジャックは何故エレンが神に助けられたのか知りたそうにしていたのでジェラールは理由を教えてやることにした。
エレンの魂が神の世界の住人のものだと知った彼の顔は忌々しそうに歪んだが、それも徐々に消え、俯いて膝を抱えた。
彼は命乞いはしなかった。
だが彼らにそれを言ってもジェラールの胸が空くことはなく、彼は心の中で二人の心臓に剣を突き刺した。
そしてまだカレンの処刑が残っている。
エルネストは非常に驚いて、泣いたり引きとめたり自分には無理だと言って一通り反抗したが、数日かけての説得に結局は折れた。
そこからの彼は人が変わったようになり、ジェラールと一緒にお忍びに行くと言って民の様子を観察したり両陛下と周りの貴族にばれないよう密かに勉強も始めた。
タイミングが良いことに、彼は三年後に十八歳となり即位できる年齢になる。
今から一緒に政治を動かして行けば政権の移譲がスムーズになるのは明白だ。
そしてジェラールは誕生日を迎え、皇帝の譲位と即位式が執り行われた。
民は待ちに待ったこの瞬間に歓喜した。
一週間に渡って祭りが催され、華やかに飾り付けられた街並みは平民の苦しい生活を忘れさせるものだった。
広場では大道芸人や紙芝居、寸劇などを楽しむ人々で溢れかえったが、その広場はまた公的な事にも使われる。
風がそよりとも吹かないまだまだ残暑が厳しい九月。
皇帝になってからの最初の大きな仕事が処刑であることに難色を示す臣下もいたが、新皇帝の考えを貴族や平民に知らしめるのにこれほどいい機会はないと、ジェラールは譲らなかった。
皇都の中央広場。
元侯爵家嫡男の火あぶりというそんな興味の湧く瞬間を見逃すまいと、まだ何も用意されていない広場には朝早くから多くが集まっていた。
まるで興業が催されるのを楽しみにして待つかのごとく人々の顔には笑顔が溢れ、これから残酷な処刑が始まるなど微塵も感じさせない雰囲気だ。
役人と兵士に囲まれたガリアスとジャックが連れられて磔にされると一斉にワーッという怒声が湧き起こる。
それまでの楽しげな雰囲気が一瞬にして怒りと蔑みの雰囲気に変わり、罵声が飛び交い石も飛ぶ。
罪状は、皇太子の婚約者となる女性の殺害、放火殺人、そして目撃者の殺害、計三人の殺人罪。
ジャックは震えて失禁し声も出せない。
ガリアスは「俺は貴族だぞ! 母上! 母上!」と叫び、時にはジャックに悪態をついてジェラールを呪う言葉を吐く。
だが点火されると次第に声は悲鳴へと変わる。
炎の勢いが増して悲鳴が聞こえれば聞こえる程、聴衆の顔からは怒りの表情が消えていく。
そして彼らは正義感に満ちた悪魔の笑みを隠すことなく、自分たちが悪人に鉄槌を下しているかのような満足感を覚えるのだ。
平民にとっての憂さ晴らしのショー、そしてジェラールにとっての犯罪者の処刑はもうすぐ終わる。
二人の悲鳴は徐々に聞こえなくなっていき、長い苦しみの中死んでいくという最期を迎えた。
元侯爵夫人であった母親は、処刑の場には姿を現さなかった。
歴史上、貴族同士の犯罪で貴族が斬首されることはあっても、貴族の平民に対する殺人はそれほど重い罪にはなっていなかった。
平民ですらそれが当然だと思って諦めているほど長年の慣習だ。
だがそれは近年においてはひとえに平民からなる自警団と貴族の癒着によるところが大きく、貴族の罪が隠ぺいされていたからに他ならない。
平民に対する殺人でしかも火あぶりの刑になることは前代未聞の事であり、元貴族のガリアスが処刑されたのは他の貴族たちへの見せしめになった。
誰であっても罪を犯したらその程度によって罰を与える。
彼らの処刑はジェラール新皇帝の考えを示すものとして多くの民に受け入れられた。
この考えはエルネストも同じだった。
※※※
ジェラールは処刑直前にガリアスとジャックそれぞれにエレンが神によって癒され生き返ったことを教えた。
彼が処刑をすぐに実行しなかったのはこのためだ。
さぞ悔しがるだろう姿を見るためと、生き返っても処刑は免れないという絶望を味わわせるため。
思った通りガリアスは生き返ったなら牢から出してくれと懇願した。
ナタリーとヨルゴを殺したことを忘れているのか、それとも平民を殺したことは罪にならないと思っているのか。
後者であることは想像に難くない。
父親が自殺したことを知っても反応は無かった。
ジャックは何故エレンが神に助けられたのか知りたそうにしていたのでジェラールは理由を教えてやることにした。
エレンの魂が神の世界の住人のものだと知った彼の顔は忌々しそうに歪んだが、それも徐々に消え、俯いて膝を抱えた。
彼は命乞いはしなかった。
だが彼らにそれを言ってもジェラールの胸が空くことはなく、彼は心の中で二人の心臓に剣を突き刺した。
そしてまだカレンの処刑が残っている。
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