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偶然と言う名の必然
待ちに待った八月。約束の三年が過ぎた。
「殿下!」
(え!?)
神の世界に入る体を貰うため神殿に行ったジェラールは固まった。
神殿に入るや否や、エレンが自分の名前を呼び、愛する者にするように胸に飛び込んできたのだ。
三年振りの感動の再会を噛みしめるどころではない。
ジェラールの顔から火が出て細胞一つ一つが喜びにはじけ飛んだ。
彼女を抱きしめ返すことすら忘れるほどだ。
「思い……出した?」
「はい!」
銀色の瞳をキラキラと輝かせ嬉しそうにジェラールを見上げるエレン。
彼は状況を飲み込み我に返ると彼女を強く抱きしめた。
「ありがとう! ありがとう、エレン!」
この三年、ジェラールに不安が無かったと言えば嘘になる。
これまでも愛していると言われたことはないから思い出したとしても拒否されたらどうしようかと自分に問いかけたこともある。
もちろんそうなったとしても諦めはしないが。
でもこの状態から少なくとも好意は持たれているのがわかる。
それが友だちとしてであっても、これから愛されるよう努力するまで。
長い歳月の彼方から愛する彼女がやっと戻って来てくれた、それだけでも感謝すべきことなのだ。
ジェラールのそんな考えを分かっているかのように、アルマン神が彼を喜ばせることを言ってウィンクした。
「エレンは海の神の世界の住人になったことで純粋に愛を表現することができるようになったんだよ。神の世界では人間の世界でよくある駆け引きとか嫉妬、そういう面倒くさいものは一切ない」
(愛を表現? ということは!)
「エレン、君は俺を……愛しているのか?」
「もちろん、愛しております、殿下」
(なんてことだ! 神よ! エレンが俺を“愛している”って!)
ジェラールは今にも小躍りしそうになった。
「エレン。俺はもう皇太子でも皇帝でもなんでもないただの男だ。ジェラールと呼び捨てにしてくれ」
「ジェ、ジェラール……」
「愛しているよ。どれほど会いたかったか!」
「私も思い出してから早くお会いしたくて……」
「いつ思い出したんだ?」
「確か人間の世界だと二月の始め頃だったと思います」
「そんな前に?」
二月と言えばプリエールと出会った月だ。
神殿に行ったのは中旬だったから、その時は既に思い出していたことになる。
「マルセラン神よ、どうしてもっと早く教えてくれなかったんですか?」
「言った所でエレンと会うのが早くなるわけじゃない」
「モチベーションが全く違います」
「ちゃんと務めを果たせていたではないか」
「それは約束だし俺の義務です。それにプリエールのことだって……。俺は前世とは違う人間です」
「そうだな。君は立派だった。魂の成長を感じる」
「……有難うございます」
ジェラールは思いがけず褒められ少し恥ずかしくなってアルマン神の方に顔を向けた。
ちょうど聞きたいことがあったのだ。
「あの……ジュリアのことですが」
「ジュリア? ああ、あの馬ね。ロバに生まれ変わったな」
「ジュリアはアルマン神に導かれてこの時代に転生したと言いました。もしかしたら俺もそうなのですか?」
「そうだよ。じゃなければ都合よくエレンと同じ時代に生まれ変わることなど普通の人間の魂にはできやしないよ」
「やっぱり」
「でも私が手助けしたのはそこまでだ」
だから偶然が織りなしたエレンとの出会いにジェラールは感じ入って彼女の手をギュッと握り締めた。
「ほんの少し時間がずれていたらエレンとジュリアに出会わないことだってあったのに、なんていう偶然だ……」
「偶然は必然だ。望み通りになったのは、これまでの君の選択が正しかったからだ。ジュリアと出会ったのは君の魂がそれだけ成長していたからで、だからこそ君はジュリアを助ける選択ができたんだよ。プリエールの事も、彼女を拒否した選択が、前世を思い出すという結果を引き寄せた」
その時エレンが「プリエールって?」と聞いた。
まさか嫉妬? とジェラールは嬉しくなったが神の世界のエレンが嫉妬するわけはない。
愛を試す為に神が見せた幻の女性だと言うと、エレンはとても興味深そうにして自分も見てみたかったと言った。
「でももし前世を思い出さなかったら?」
「その時はその時。だが君の記憶はずっと前から徐々に戻って来ていた。だから時間がかかったとしてもいつかは思い出していただろうね。ただその時にジュリアが生きているかどうかは分からないけどね」
そう言われてジェラールが思い当たる節はあの夢や動悸、動物との意思疎通能力だ。
あれがその片鱗だったのだろう。
「ところで最初にジェロモンにした提案は思い出したか?」
俄かにアルマン神が話を変えた。
その提案はジェラールにしたのと似ているが違う所がいくつかある。
「……はい」
「君たちにもそうして欲しいと言ったらどうする」
「えっ」
アルマン神の話はこうだ。
神の世界の住人同士の子どもは人間の世界では一年しか生きることが出来ない。
しかし人間とのハーフは人間とほぼ同じ寿命を人間の世界で生きることが出来る。
だからジェラールが神の世界に入る前にエレンとの間に子どもを作ってほしい。
そしてその子をガイアマーレ帝国の皇帝にしてほしいということだった。
「エレンの記憶が戻っていなければ言うつもりは無かったんだけどね。君たちがこれを受け入れてくれれば、今後千年はこの文明を見守っていこうじゃないか。つまり君たちの子どもを新たな文明の初代皇帝とみなすということだ」
「殿下!」
(え!?)
神の世界に入る体を貰うため神殿に行ったジェラールは固まった。
神殿に入るや否や、エレンが自分の名前を呼び、愛する者にするように胸に飛び込んできたのだ。
三年振りの感動の再会を噛みしめるどころではない。
ジェラールの顔から火が出て細胞一つ一つが喜びにはじけ飛んだ。
彼女を抱きしめ返すことすら忘れるほどだ。
「思い……出した?」
「はい!」
銀色の瞳をキラキラと輝かせ嬉しそうにジェラールを見上げるエレン。
彼は状況を飲み込み我に返ると彼女を強く抱きしめた。
「ありがとう! ありがとう、エレン!」
この三年、ジェラールに不安が無かったと言えば嘘になる。
これまでも愛していると言われたことはないから思い出したとしても拒否されたらどうしようかと自分に問いかけたこともある。
もちろんそうなったとしても諦めはしないが。
でもこの状態から少なくとも好意は持たれているのがわかる。
それが友だちとしてであっても、これから愛されるよう努力するまで。
長い歳月の彼方から愛する彼女がやっと戻って来てくれた、それだけでも感謝すべきことなのだ。
ジェラールのそんな考えを分かっているかのように、アルマン神が彼を喜ばせることを言ってウィンクした。
「エレンは海の神の世界の住人になったことで純粋に愛を表現することができるようになったんだよ。神の世界では人間の世界でよくある駆け引きとか嫉妬、そういう面倒くさいものは一切ない」
(愛を表現? ということは!)
「エレン、君は俺を……愛しているのか?」
「もちろん、愛しております、殿下」
(なんてことだ! 神よ! エレンが俺を“愛している”って!)
ジェラールは今にも小躍りしそうになった。
「エレン。俺はもう皇太子でも皇帝でもなんでもないただの男だ。ジェラールと呼び捨てにしてくれ」
「ジェ、ジェラール……」
「愛しているよ。どれほど会いたかったか!」
「私も思い出してから早くお会いしたくて……」
「いつ思い出したんだ?」
「確か人間の世界だと二月の始め頃だったと思います」
「そんな前に?」
二月と言えばプリエールと出会った月だ。
神殿に行ったのは中旬だったから、その時は既に思い出していたことになる。
「マルセラン神よ、どうしてもっと早く教えてくれなかったんですか?」
「言った所でエレンと会うのが早くなるわけじゃない」
「モチベーションが全く違います」
「ちゃんと務めを果たせていたではないか」
「それは約束だし俺の義務です。それにプリエールのことだって……。俺は前世とは違う人間です」
「そうだな。君は立派だった。魂の成長を感じる」
「……有難うございます」
ジェラールは思いがけず褒められ少し恥ずかしくなってアルマン神の方に顔を向けた。
ちょうど聞きたいことがあったのだ。
「あの……ジュリアのことですが」
「ジュリア? ああ、あの馬ね。ロバに生まれ変わったな」
「ジュリアはアルマン神に導かれてこの時代に転生したと言いました。もしかしたら俺もそうなのですか?」
「そうだよ。じゃなければ都合よくエレンと同じ時代に生まれ変わることなど普通の人間の魂にはできやしないよ」
「やっぱり」
「でも私が手助けしたのはそこまでだ」
だから偶然が織りなしたエレンとの出会いにジェラールは感じ入って彼女の手をギュッと握り締めた。
「ほんの少し時間がずれていたらエレンとジュリアに出会わないことだってあったのに、なんていう偶然だ……」
「偶然は必然だ。望み通りになったのは、これまでの君の選択が正しかったからだ。ジュリアと出会ったのは君の魂がそれだけ成長していたからで、だからこそ君はジュリアを助ける選択ができたんだよ。プリエールの事も、彼女を拒否した選択が、前世を思い出すという結果を引き寄せた」
その時エレンが「プリエールって?」と聞いた。
まさか嫉妬? とジェラールは嬉しくなったが神の世界のエレンが嫉妬するわけはない。
愛を試す為に神が見せた幻の女性だと言うと、エレンはとても興味深そうにして自分も見てみたかったと言った。
「でももし前世を思い出さなかったら?」
「その時はその時。だが君の記憶はずっと前から徐々に戻って来ていた。だから時間がかかったとしてもいつかは思い出していただろうね。ただその時にジュリアが生きているかどうかは分からないけどね」
そう言われてジェラールが思い当たる節はあの夢や動悸、動物との意思疎通能力だ。
あれがその片鱗だったのだろう。
「ところで最初にジェロモンにした提案は思い出したか?」
俄かにアルマン神が話を変えた。
その提案はジェラールにしたのと似ているが違う所がいくつかある。
「……はい」
「君たちにもそうして欲しいと言ったらどうする」
「えっ」
アルマン神の話はこうだ。
神の世界の住人同士の子どもは人間の世界では一年しか生きることが出来ない。
しかし人間とのハーフは人間とほぼ同じ寿命を人間の世界で生きることが出来る。
だからジェラールが神の世界に入る前にエレンとの間に子どもを作ってほしい。
そしてその子をガイアマーレ帝国の皇帝にしてほしいということだった。
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