【完結】愛の輪廻~愛する人の為に別れを決意したら運命の人と出会いました~

今井杏美

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太陽の章 王族

魔法鍛冶職人

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 ***ロータス

 異世界へ入り洞窟を抜けると、褐色の肌と魔鉱石のような玉虫色の瞳を持つ背の高い男が俺を見つけて走ってきた。

「ロータス殿下、ようこそお出でくださいました。黒髪なので一瞬誰かと思ってしまいました」
「アペロス、久しぶりだな」
「もっと頻繁に来られるかと思っておりましたよ」
「想像もできない事が起こってね。因みに俺はもう殿下ではないんだ」
「それはまたどうして」
「カラスティアがシタールに滅ぼされたのさ」
「なんと! 我々には外界の出来事は全く分からないとはいえ、そんなことがあったのですか」

 ここは俺たちの住む世界とは次元が違う、いわば異世界。
 魔鉱石を魔法の武具として加工できる魔法鍛冶職人が住む世界だ。

 ここに入ることができるのはカラスティアの王族の血筋の者のみで、それはカラスティア王族にわずかながら彼らと同じ血が流れていることに起因する。

 洞窟はこの異世界と共有されていて、出入りできる者は魔鉱石の林立する場所に足を踏み入れると異世界へ通じる輪っかが現れる。
 俺はその輪っかをくぐってこの世界に入ったのだ。

 洞窟から出ると、そこは全く別の世界が広がる。

 ここの住人の身長は百八十の俺が見上げるくらいで、みな二メートルから三メートル近くはある。

 植物の大きさも全体的に大きい。
 見知らぬ花や、球体から手足だけが出たおかしな形の昆虫などもいて、以前ここを見つけて来た時はそれはもう驚いたものだ。
 今も頭から触角のようなものを垂らした黄色い胴体に青い羽の鳥がカラスのようにカーカーと鳴きながら上空を旋回している。

 俺がここに来たのはその時に頼んだ魔剣を取りに来たのと、新たに魔法の武具の作成を依頼するためだ。

 魔鉱石は彼らが加工しなければただの宝石と同じなのだが、シタール国王はそれを知らずに魔鉱石さえ手に入れば魔法の武具が作れると思って必死に探しているのだ。
 ただ、魔鉱石は二つの世界で共有されているため、どちらかで採取されれば片方の世界でもなくなってしまう。
 むやみやたらに採取されたら魔法の武具を作る材料が減ってしまうため、その場所を他国に知られないようにしなければならない。

「アペロス、悪いが頼みがある。武具一式を作ってほしい」
「一式……それはやはりシタールとの戦いの為ですか」
「そうだ」
「殿下が我々の所に導かれたのもそういう理由からでしょうし……。断ることなどできませんよ」

 俺が魔鉱石を見つけることができたのは、それが必要になったからだとアペロスは言っている。
 何故ならカラスティア王家には、“それが必要になった時に見つかるだろう” という魔鉱石に関する言い伝えがあるからだ。
 つまり今まで見つからなかったのは必要じゃなかったから。

 俺が見つけた時はどうしてこのタイミングでと思ったが、その後シタール王国に国が侵略されたことでその理由が分かった。
 魔剣で国を取り戻せということなのだ。


「武具一式はお仲間にもお渡しするつもりですか」
「仲間はこれから探すが、もちろんそのつもりだ」
「でしたら魔剣は殿下お一人だけが持った方がいいかもしれません」
「なぜ?」
「魔剣は一太刀で大きな力を発揮します。共に戦う仲間にもよりますが、もしその者が魔剣を持つことで良からぬことを考えでもしたら大変なことになります。ですからお仲間には盾と鎧、兜のみをお渡しした方がよろしいかと」

 アペロスの言葉は疑り深くなっている今の俺の心にすんなり入って来た。

 彼によると、盾にはどんな強力な攻撃も跳ね返し、鎧は身に着ける者に無限の耐久力を与え、兜は危機察知能力を上げることが出来るらしい。
 それなら剣を渡さなくても十分戦うことができるだろう。

 俺たちはこのあと鍛冶場に向かった。

 鍛冶場は鉄を叩く音が響き、地金や鉄を熱する熱気が籠っていて暑い。
 奥に入ると一部の者が魔鉱石の加工を行っている。
 魔鉱石自体は玉虫色に美しく輝く石だが、完成している農具やナイフを見るとどれも真っ黒で、それが魔鉱石で作られているなどとは誰も思わないだろう。

 アペロスがちょっと待っていて下さいと言って奥に入って行き、一本の剣を持って笑顔で戻って来た。

「ずっとお待ちしていたんですよ」

 俺が頼んでいた魔剣は既に出来上がっていた。
 光りすら飲み込んでしまいそうな漆黒の魔剣。
 手に取るとあり得ないほど軽いことに驚いた。

「素晴らしいな……」

 これでシタール王国を倒せる。

 アペロスは俺が仲間を探してシタールを攻撃するその日まで、この異世界を拠点とすることを許してくれた。


 それから四年の月日が流れ仲間も着々と増えていき、俺は二十四歳になった。



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