11 / 65
太陽の章 王族
魔法鍛冶職人
しおりを挟む
***ロータス
異世界へ入り洞窟を抜けると、褐色の肌と魔鉱石のような玉虫色の瞳を持つ背の高い男が俺を見つけて走ってきた。
「ロータス殿下、ようこそお出でくださいました。黒髪なので一瞬誰かと思ってしまいました」
「アペロス、久しぶりだな」
「もっと頻繁に来られるかと思っておりましたよ」
「想像もできない事が起こってね。因みに俺はもう殿下ではないんだ」
「それはまたどうして」
「カラスティアがシタールに滅ぼされたのさ」
「なんと! 我々には外界の出来事は全く分からないとはいえ、そんなことがあったのですか」
ここは俺たちの住む世界とは次元が違う、いわば異世界。
魔鉱石を魔法の武具として加工できる魔法鍛冶職人が住む世界だ。
ここに入ることができるのはカラスティアの王族の血筋の者のみで、それはカラスティア王族にわずかながら彼らと同じ血が流れていることに起因する。
洞窟はこの異世界と共有されていて、出入りできる者は魔鉱石の林立する場所に足を踏み入れると異世界へ通じる輪っかが現れる。
俺はその輪っかをくぐってこの世界に入ったのだ。
洞窟から出ると、そこは全く別の世界が広がる。
ここの住人の身長は百八十の俺が見上げるくらいで、みな二メートルから三メートル近くはある。
植物の大きさも全体的に大きい。
見知らぬ花や、球体から手足だけが出たおかしな形の昆虫などもいて、以前ここを見つけて来た時はそれはもう驚いたものだ。
今も頭から触角のようなものを垂らした黄色い胴体に青い羽の鳥がカラスのようにカーカーと鳴きながら上空を旋回している。
俺がここに来たのはその時に頼んだ魔剣を取りに来たのと、新たに魔法の武具の作成を依頼するためだ。
魔鉱石は彼らが加工しなければただの宝石と同じなのだが、シタール国王はそれを知らずに魔鉱石さえ手に入れば魔法の武具が作れると思って必死に探しているのだ。
ただ、魔鉱石は二つの世界で共有されているため、どちらかで採取されれば片方の世界でもなくなってしまう。
むやみやたらに採取されたら魔法の武具を作る材料が減ってしまうため、その場所を他国に知られないようにしなければならない。
「アペロス、悪いが頼みがある。武具一式を作ってほしい」
「一式……それはやはりシタールとの戦いの為ですか」
「そうだ」
「殿下が我々の所に導かれたのもそういう理由からでしょうし……。断ることなどできませんよ」
俺が魔鉱石を見つけることができたのは、それが必要になったからだとアペロスは言っている。
何故ならカラスティア王家には、“それが必要になった時に見つかるだろう” という魔鉱石に関する言い伝えがあるからだ。
つまり今まで見つからなかったのは必要じゃなかったから。
俺が見つけた時はどうしてこのタイミングでと思ったが、その後シタール王国に国が侵略されたことでその理由が分かった。
魔剣で国を取り戻せということなのだ。
「武具一式はお仲間にもお渡しするつもりですか」
「仲間はこれから探すが、もちろんそのつもりだ」
「でしたら魔剣は殿下お一人だけが持った方がいいかもしれません」
「なぜ?」
「魔剣は一太刀で大きな力を発揮します。共に戦う仲間にもよりますが、もしその者が魔剣を持つことで良からぬことを考えでもしたら大変なことになります。ですからお仲間には盾と鎧、兜のみをお渡しした方がよろしいかと」
アペロスの言葉は疑り深くなっている今の俺の心にすんなり入って来た。
彼によると、盾にはどんな強力な攻撃も跳ね返し、鎧は身に着ける者に無限の耐久力を与え、兜は危機察知能力を上げることが出来るらしい。
それなら剣を渡さなくても十分戦うことができるだろう。
俺たちはこのあと鍛冶場に向かった。
鍛冶場は鉄を叩く音が響き、地金や鉄を熱する熱気が籠っていて暑い。
奥に入ると一部の者が魔鉱石の加工を行っている。
魔鉱石自体は玉虫色に美しく輝く石だが、完成している農具やナイフを見るとどれも真っ黒で、それが魔鉱石で作られているなどとは誰も思わないだろう。
アペロスがちょっと待っていて下さいと言って奥に入って行き、一本の剣を持って笑顔で戻って来た。
「ずっとお待ちしていたんですよ」
俺が頼んでいた魔剣は既に出来上がっていた。
光りすら飲み込んでしまいそうな漆黒の魔剣。
手に取るとあり得ないほど軽いことに驚いた。
「素晴らしいな……」
これでシタール王国を倒せる。
アペロスは俺が仲間を探してシタールを攻撃するその日まで、この異世界を拠点とすることを許してくれた。
それから四年の月日が流れ仲間も着々と増えていき、俺は二十四歳になった。
異世界へ入り洞窟を抜けると、褐色の肌と魔鉱石のような玉虫色の瞳を持つ背の高い男が俺を見つけて走ってきた。
「ロータス殿下、ようこそお出でくださいました。黒髪なので一瞬誰かと思ってしまいました」
「アペロス、久しぶりだな」
「もっと頻繁に来られるかと思っておりましたよ」
「想像もできない事が起こってね。因みに俺はもう殿下ではないんだ」
「それはまたどうして」
「カラスティアがシタールに滅ぼされたのさ」
「なんと! 我々には外界の出来事は全く分からないとはいえ、そんなことがあったのですか」
ここは俺たちの住む世界とは次元が違う、いわば異世界。
魔鉱石を魔法の武具として加工できる魔法鍛冶職人が住む世界だ。
ここに入ることができるのはカラスティアの王族の血筋の者のみで、それはカラスティア王族にわずかながら彼らと同じ血が流れていることに起因する。
洞窟はこの異世界と共有されていて、出入りできる者は魔鉱石の林立する場所に足を踏み入れると異世界へ通じる輪っかが現れる。
俺はその輪っかをくぐってこの世界に入ったのだ。
洞窟から出ると、そこは全く別の世界が広がる。
ここの住人の身長は百八十の俺が見上げるくらいで、みな二メートルから三メートル近くはある。
植物の大きさも全体的に大きい。
見知らぬ花や、球体から手足だけが出たおかしな形の昆虫などもいて、以前ここを見つけて来た時はそれはもう驚いたものだ。
今も頭から触角のようなものを垂らした黄色い胴体に青い羽の鳥がカラスのようにカーカーと鳴きながら上空を旋回している。
俺がここに来たのはその時に頼んだ魔剣を取りに来たのと、新たに魔法の武具の作成を依頼するためだ。
魔鉱石は彼らが加工しなければただの宝石と同じなのだが、シタール国王はそれを知らずに魔鉱石さえ手に入れば魔法の武具が作れると思って必死に探しているのだ。
ただ、魔鉱石は二つの世界で共有されているため、どちらかで採取されれば片方の世界でもなくなってしまう。
むやみやたらに採取されたら魔法の武具を作る材料が減ってしまうため、その場所を他国に知られないようにしなければならない。
「アペロス、悪いが頼みがある。武具一式を作ってほしい」
「一式……それはやはりシタールとの戦いの為ですか」
「そうだ」
「殿下が我々の所に導かれたのもそういう理由からでしょうし……。断ることなどできませんよ」
俺が魔鉱石を見つけることができたのは、それが必要になったからだとアペロスは言っている。
何故ならカラスティア王家には、“それが必要になった時に見つかるだろう” という魔鉱石に関する言い伝えがあるからだ。
つまり今まで見つからなかったのは必要じゃなかったから。
俺が見つけた時はどうしてこのタイミングでと思ったが、その後シタール王国に国が侵略されたことでその理由が分かった。
魔剣で国を取り戻せということなのだ。
「武具一式はお仲間にもお渡しするつもりですか」
「仲間はこれから探すが、もちろんそのつもりだ」
「でしたら魔剣は殿下お一人だけが持った方がいいかもしれません」
「なぜ?」
「魔剣は一太刀で大きな力を発揮します。共に戦う仲間にもよりますが、もしその者が魔剣を持つことで良からぬことを考えでもしたら大変なことになります。ですからお仲間には盾と鎧、兜のみをお渡しした方がよろしいかと」
アペロスの言葉は疑り深くなっている今の俺の心にすんなり入って来た。
彼によると、盾にはどんな強力な攻撃も跳ね返し、鎧は身に着ける者に無限の耐久力を与え、兜は危機察知能力を上げることが出来るらしい。
それなら剣を渡さなくても十分戦うことができるだろう。
俺たちはこのあと鍛冶場に向かった。
鍛冶場は鉄を叩く音が響き、地金や鉄を熱する熱気が籠っていて暑い。
奥に入ると一部の者が魔鉱石の加工を行っている。
魔鉱石自体は玉虫色に美しく輝く石だが、完成している農具やナイフを見るとどれも真っ黒で、それが魔鉱石で作られているなどとは誰も思わないだろう。
アペロスがちょっと待っていて下さいと言って奥に入って行き、一本の剣を持って笑顔で戻って来た。
「ずっとお待ちしていたんですよ」
俺が頼んでいた魔剣は既に出来上がっていた。
光りすら飲み込んでしまいそうな漆黒の魔剣。
手に取るとあり得ないほど軽いことに驚いた。
「素晴らしいな……」
これでシタール王国を倒せる。
アペロスは俺が仲間を探してシタールを攻撃するその日まで、この異世界を拠点とすることを許してくれた。
それから四年の月日が流れ仲間も着々と増えていき、俺は二十四歳になった。
0
あなたにおすすめの小説
背徳の恋のあとで
ひかり芽衣
恋愛
『愛人を作ることは、家族を維持するために必要なことなのかもしれない』
恋愛小説が好きで純愛を夢見ていた男爵家の一人娘アリーナは、いつの間にかそう考えるようになっていた。
自分が子供を産むまでは……
物心ついた時から愛人に現を抜かす父にかわり、父の仕事までこなす母。母のことを尊敬し真っ直ぐに育ったアリーナは、完璧な母にも唯一弱音を吐ける人物がいることを知る。
母の恋に衝撃を受ける中、予期せぬ相手とのアリーナの初恋。
そして、ずっとアリーナのよき相談相手である図書館管理者との距離も次第に近づいていき……
不倫が身近な存在の今、結婚を、夫婦を、子どもの存在を……あなたはどう考えていますか?
※アリーナの幸せを一緒に見届けて下さると嬉しいです。
全部私が悪いのです
久留茶
恋愛
ある出来事が原因でオーディール男爵家の長女ジュディス(20歳)の婚約者を横取りする形となってしまったオーディール男爵家の次女オフィーリア(18歳)。
姉の元婚約者である王国騎士団所属の色男エドガー・アーバン伯爵子息(22歳)は姉への気持ちが断ち切れず、彼女と別れる原因となったオフィーリアを結婚後も恨み続け、妻となったオフィーリアに対して辛く当たる日々が続いていた。
世間からも姉の婚約者を奪った『欲深いオフィーリア』と悪名を轟かせるオフィーリアに果たして幸せは訪れるのだろうか……。
*全18話完結となっています。
*大分イライラする場面が多いと思われますので苦手な方はご注意下さい。
*後半まで読んで頂ければ救いはあります(多分)。
*この作品は他誌にも掲載中です。
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
婚約七年目、愛する人と親友に裏切られました。
テンテン
恋愛
男爵令嬢エミリアは、パーティー会場でレイブンから婚約破棄を宣言された。どうやら彼の妹のミラを、エミリアがいじめたことになっているらしい。エミリアはそのまま断罪されるかと思われたが、彼女の親友であるアリアが声を上げ……
それは報われない恋のはずだった
ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう?
私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。
それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。
忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。
「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」
主人公 カミラ・フォーテール
異母妹 リリア・フォーテール
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる