【完結】愛の輪廻~愛する人の為に別れを決意したら運命の人と出会いました~

今井杏美

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太陽の章 王族

シタール王国の滅亡

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 ***ロータス

 月の冷たい光が赤く染まった地面を照らす。
 俺は小高い山の上に立ち、遠くにそびえるシタール城を見据えた。

 足元には多くのシタール兵が血を流し横たわっている。
 金属の匂いが鼻を突く。

 隣りにはエリノーとドレイン、そして後ろには黒い甲冑と盾を手にした腕に覚えのある旧カラスティアの兵士や平民たちが控えている。

 エリノーは俺の従弟でシマナー公爵家嫡男。
 カラスティアの元貴族を探していた俺は、鉱山の力仕事で大けがをして施設に収容されていた彼を見つけた。
 そこは死を待つのみの者が置かれている場所だったからか見張りもおらず、彼を運び出すことに成功して異世界に連れて行った。

 ドレインはカラスティア王家が雇っていた暗殺者だ。
 金目当てで偶然襲った人物が俺だとわかると、カラスティアを取り戻すために俺の部下として働く道を選んだ。

 皆、カラスティアを取り戻すことに命を懸ける猛者だ。
 士気は最高潮に高まり、俺の合図を今か今かと待っている。

 月が雲に隠れて辺りが暗くなったのを見計らって、俺は漆黒の魔剣を高く掲げ叫んだ。

「我がカラスティアの魂よ、時が来た! 突撃だ!」
「おーーーーー!!!」

 一斉にシタール城へと馬を駆った。


 シタールの兵士たちは、突如現れた見知らぬ真っ黒な集団に慌てふためいている。
 俺は魔剣一太刀で抵抗する兵士たちを次々となぎ倒し肉を切り刻んでいく。

 城を掌握し、宮殿へと更に馬を進める。
 そこにクリビアがいる。
 早く会いたくて仕方がない。

 宮殿に着くと使用人たちの影もなく、国王一家は既に逃げた後かと思われたが、仲間の兵の手によって逃げている所を捕まえることが出来た。
 彼らはゆったりとした夜着のままで、着替える暇なく急いで逃げたのがわかる。

「貴様ら何者だ! こんなことをしてただで済むと思うなよ!」

 シタール国王が威嚇した。
 自分の状況を理解していないらしい。
 兜を取ると、シタール国王は目を剥いて大声を上げた。

「ロータス!?」
「久しぶりだな。シルベスタ国王」
「今までどこに! ガ、ガルシアか?」

 なるほど見当はついていたらしい。
 だがガルシア宗教国がからんでいると疑ったとしても、この国に証拠も無しに言いがかりをつけることはできない。
 そして異世界を拠点にしている俺を見つけることなど不可能だ。

 俺が何も答えないでいると、シタール国王は突き付けられている剣に目を移した。

「これは……まさかこの漆黒の剣が魔剣なのか? どうすれば魔剣になるんだ!?」
「お前たちがそれを知る必要は無い」

 シタール王国は魔鉱石を一年ほど前に発見した。
 そのせいで、異世界とこの世界とを行き来するのに最新の注意を払わなければならなくなって本当に迷惑だった。
 それにかろうじて仲間の分の武具は作れたが、魔法の武具の材料である魔鉱石がどんどん減っていくのは痛手でもあった。

 しかし彼らがただの装飾品を作っていたと思うと笑いが込み上げてくる。
 魔剣は魔鉱石の輝きなど微塵も感じさせないこの漆黒の剣だ。

「クリビアはどこだ」
「クリビア? はっ、お前はまだクリビアに未練があるのか」

 その言い草だとやはり彼女を家族として大事にしていないのだ。
 ドレインに目くばせすると、彼は国王の横で打ち震えているベルロイの太腿に剣を突き刺した。

「ぎゃあああっ!」
「ベーール!」

 王妃は息子が悲鳴を上げた瞬間、気を失って倒れた。

「やめろ! やめてくれ!」
「早く言え。待ってやるほど俺は寛大ではない」
「クリビアはここにはいない。バハルマ国王に嫁いだ。王妃として嫁いだんだ!」
「な、なんだと!?」


 ***クリビア

 ここ二日訪ねてこなかったアナスタシアが、昼食を持って訪れてくれた。
 しかし彼女の様子はいつもと違って、何かを言いそうになってやめるというのを繰り返すばかり。
 どうしたのか聞くと、気まずそうな顔でここ数日起こったことを話してくれた。

 それは、ダキアという集団がシタール王国の王城に攻め込んでたった一日であっという間に征圧してしまったということだった。
 シタールが占領していたカラスティアの王城もその者たちの手に渡ったという。

 シタール国王たちはどうなったのか聞くと言い淀んだので察しは付いた。

「処刑されたのね。斬首?」
「それは……」
「身内の最後がどんなだったか知りたいの」
「……シルベスタ国王は斬首、王妃と王子は首を括られ城門に吊るされているらしいです」

 アナスタシアは心配そうに私の顔色を窺っているけど、正直悲しくない。
 でもどうしてあの二人だけが斬首じゃないんだろう。
 ダキアとは?

「王妃様、あまり感情を押し殺しますと体にも良い影響はないと思います」
「大丈夫よ、心配してくれてありがとう。こんな世の中だしいずれそうなるかもしれないとは思っていたわ」

 この世界は日本の戦国時代くらいの社会情勢だろうか。

「そういえばシタールはバハルマと軍事同盟を結んでいたわよね。ヴァルコフ国王は援軍を出さなかったのかしら」
「出さなかったようです……あまりにも突然の事だったのではないでしょうか」
「そうね、一日で制圧されたんじゃ駆けつける暇もなかったのでしょうね」
「今、父や兄たちはそのダキアという集団を必死で調べているんです。そんなに強いと我が国の脅威にさえなりかねません」


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