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最終章 命を救う魔剣
命を救う魔剣(二)
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***クリビア
「クリビア先生、今日はお勉強が終わったらクリーヴと一緒に東屋でお茶しよ?」
「あら、いいわね。お天気もいいしそうしましょう。でもクリーヴはまだお菓子食べられないしお座りもできないからまた今度ね。誘ってくれてありがとう」
「そっかぁ。王子様は?」
「今日は来る予定ないわね」
「なーんだ」
「さぁさぁ、お茶の前にちゃんとスペルを覚えましょうね」
「はーい」
ランス伯爵がマリウスを迎えに行っている間、アスター王子は連日訪ねてきており、昨日も来たばかり。
ラミアは彼が来るたび美味しいお菓子を持って来てくれるので、それを心待ちにしているのだ。
私としては婚約者に悪い気がして、これでは王子としての業務に差し支えるのでは……と遠まわしに言うと、友達として会うくらいいいではないかと言葉の意図を汲みとられて半ば開き直られた。
授業が終わり、ラミアに手を引っ張られて庭の東屋へ行くと、メイドがちょうどテーブルにお皿を並べている所だった。
ラミアはその中にアスター王子が持って来た焼き菓子が綺麗に並べてあるのを見つけて目を輝かせた。
「昨日のお菓子、まだ残っていたんだ!」
「昨日アスター王子殿下の従者からお菓子の入った箱を二箱渡されまして、一つは明日のお茶の時間にお出しするようにと仰せつかっておりました」
「あら、今日来れない分まで持って来てくださっていたなんて。よかったわね、ラミア」
「うん」
焼き菓子を食べるラミアの手は止まらず、紅茶もすぐに飲み終えて紅茶ポットの中もすぐ空になった。
王宮シェフの作ったお菓子はさすがに美味しい。
メイドが紅茶のお代わりを用意しに一旦下がり私とラミアの二人だけになった。
アスター王子がいる時は近衛騎士が庭の至る所にいるけど今日は誰もいない。
伯爵家の護衛には遠くから見ているよう頼んでいる。
邸はすぐそこだし別に危険などないだろう。
東屋から少し離れた所にある木に目をやると、幹からリスが下りてくるのが見えた。
ラミアにそれを教えてあげると側に行きたそうにそわそわしだしたので「見てきていいわよ」と言ったらすっとんで行った。
どうにかしてリスを捕まえようと奮闘するラミアを微笑んで見ていると、背後から一陣の風が吹いた。
長い金髪が前方に靡いて邪魔だ。
まとめて後ろに流そうと髪をかきあげたその時、肩に強烈な痛みが走って一瞬呼吸が止まった。
「うっ」
何、何、この痛みは……。全身から脂汗が滲み出て来る。
「あ……っ、……っ」
声が出ない。
全身が痺れだして呼吸がどんどん苦しくなっていく。
余りの苦しさにテーブルクロスを握り締め、椅子から転げ落ちた拍子に食器が落ちた。
ガシャン
視界は丸くすぼまりながら遠ざかっていく。
クリーヴ……ランス……。
***ロータス
魔鉱石は出現していた。
エリノーは当たったと興奮しているが、どこかの国がカラスティアを狙っているということだ。
怖れることは無いが命知らずな国もあったものだ。
考えられる国としては東の国、北の国、そして……バハルマあたりか。
シタールの例もあるのだからアナスタシアと結婚したからといって油断はならない。
俺はエリノーと騎士たちを残して一人で異世界へ入って行った。
エリノーを残したのは、元の世界で何かあった時にすぐ異世界にいる俺に知らせることができるようにするためだ。
そしてそれが現実となった。
最悪の形で。
アペロスから命を救う魔剣の話をちょうど聞き終わった時、エリノーが慌てふためいてやって来た。
「陛下、大変です! ドレインがサントリナから戻って来たのですが、クリビア様が!!」
急遽王宮に戻り、すぐに魔剣を持ち出してその日の内にサントリナへ出発した。
カラスティアの王宮からタンスクまで早馬で三日かかるところを、途中馬を変えながら寝ずに走って一日半で到着。
タンスクの港にはカラスティア王家の所有する大型船が泊まっている。
船の整備点検も終わったばかりですぐ出航することができたのは幸運だった。
サントリナ王国まで船で丸二日。
空は晴れ渡り追い風で、行く手を阻むものは何もない。
まるで俺を歓迎するかのように何もかもが順調に進んだ。
それでもその間にクリビアの容態が悪化したらと思うと、信仰心の無い俺でもどうか間に合ってくれと、魔剣を握り締めながらガルシア神に祈り続けた。
一生を共にできなくても、生きていてくれるだけでいい。
そう切実に願った。
「クリビア先生、今日はお勉強が終わったらクリーヴと一緒に東屋でお茶しよ?」
「あら、いいわね。お天気もいいしそうしましょう。でもクリーヴはまだお菓子食べられないしお座りもできないからまた今度ね。誘ってくれてありがとう」
「そっかぁ。王子様は?」
「今日は来る予定ないわね」
「なーんだ」
「さぁさぁ、お茶の前にちゃんとスペルを覚えましょうね」
「はーい」
ランス伯爵がマリウスを迎えに行っている間、アスター王子は連日訪ねてきており、昨日も来たばかり。
ラミアは彼が来るたび美味しいお菓子を持って来てくれるので、それを心待ちにしているのだ。
私としては婚約者に悪い気がして、これでは王子としての業務に差し支えるのでは……と遠まわしに言うと、友達として会うくらいいいではないかと言葉の意図を汲みとられて半ば開き直られた。
授業が終わり、ラミアに手を引っ張られて庭の東屋へ行くと、メイドがちょうどテーブルにお皿を並べている所だった。
ラミアはその中にアスター王子が持って来た焼き菓子が綺麗に並べてあるのを見つけて目を輝かせた。
「昨日のお菓子、まだ残っていたんだ!」
「昨日アスター王子殿下の従者からお菓子の入った箱を二箱渡されまして、一つは明日のお茶の時間にお出しするようにと仰せつかっておりました」
「あら、今日来れない分まで持って来てくださっていたなんて。よかったわね、ラミア」
「うん」
焼き菓子を食べるラミアの手は止まらず、紅茶もすぐに飲み終えて紅茶ポットの中もすぐ空になった。
王宮シェフの作ったお菓子はさすがに美味しい。
メイドが紅茶のお代わりを用意しに一旦下がり私とラミアの二人だけになった。
アスター王子がいる時は近衛騎士が庭の至る所にいるけど今日は誰もいない。
伯爵家の護衛には遠くから見ているよう頼んでいる。
邸はすぐそこだし別に危険などないだろう。
東屋から少し離れた所にある木に目をやると、幹からリスが下りてくるのが見えた。
ラミアにそれを教えてあげると側に行きたそうにそわそわしだしたので「見てきていいわよ」と言ったらすっとんで行った。
どうにかしてリスを捕まえようと奮闘するラミアを微笑んで見ていると、背後から一陣の風が吹いた。
長い金髪が前方に靡いて邪魔だ。
まとめて後ろに流そうと髪をかきあげたその時、肩に強烈な痛みが走って一瞬呼吸が止まった。
「うっ」
何、何、この痛みは……。全身から脂汗が滲み出て来る。
「あ……っ、……っ」
声が出ない。
全身が痺れだして呼吸がどんどん苦しくなっていく。
余りの苦しさにテーブルクロスを握り締め、椅子から転げ落ちた拍子に食器が落ちた。
ガシャン
視界は丸くすぼまりながら遠ざかっていく。
クリーヴ……ランス……。
***ロータス
魔鉱石は出現していた。
エリノーは当たったと興奮しているが、どこかの国がカラスティアを狙っているということだ。
怖れることは無いが命知らずな国もあったものだ。
考えられる国としては東の国、北の国、そして……バハルマあたりか。
シタールの例もあるのだからアナスタシアと結婚したからといって油断はならない。
俺はエリノーと騎士たちを残して一人で異世界へ入って行った。
エリノーを残したのは、元の世界で何かあった時にすぐ異世界にいる俺に知らせることができるようにするためだ。
そしてそれが現実となった。
最悪の形で。
アペロスから命を救う魔剣の話をちょうど聞き終わった時、エリノーが慌てふためいてやって来た。
「陛下、大変です! ドレインがサントリナから戻って来たのですが、クリビア様が!!」
急遽王宮に戻り、すぐに魔剣を持ち出してその日の内にサントリナへ出発した。
カラスティアの王宮からタンスクまで早馬で三日かかるところを、途中馬を変えながら寝ずに走って一日半で到着。
タンスクの港にはカラスティア王家の所有する大型船が泊まっている。
船の整備点検も終わったばかりですぐ出航することができたのは幸運だった。
サントリナ王国まで船で丸二日。
空は晴れ渡り追い風で、行く手を阻むものは何もない。
まるで俺を歓迎するかのように何もかもが順調に進んだ。
それでもその間にクリビアの容態が悪化したらと思うと、信仰心の無い俺でもどうか間に合ってくれと、魔剣を握り締めながらガルシア神に祈り続けた。
一生を共にできなくても、生きていてくれるだけでいい。
そう切実に願った。
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