【完結】愛の輪廻~愛する人の為に別れを決意したら運命の人と出会いました~

今井杏美

文字の大きさ
52 / 65
最終章 命を救う魔剣

命を救う魔剣(三)

しおりを挟む
 ***ランス伯爵

 伯爵邸で私とマリウスを待ち構えていたのは、肌は土気色で唇は紫色に変色した意識不明のクリビアだった。

 部屋には私の代わりの医師と憔悴したアスター王子がいて、メイドたちは泣いている。

「パパ!」

 乳母にくっついていたラミアが私を見るとわんわん泣きながら抱き着いて来た。

「私がお庭でお茶しようって言わなければよかった! うわーん!」
「……大丈夫だ……」

 何が起こったのか、護衛、医師と執事、メイドに話を聞いた。
 護衛は遠くから見張っていたら、急にクリビアが倒れたので駆けつけると、肩に小さな矢が刺さっており、すぐに医師を呼んで応急処置を施してもらったと言う。
 医師に依るとその矢は毒矢で、現在薬師が毒の特定に務めているらしい。
 現在も矢が飛んできた方向をくまなく調査しているが、まだ痕跡は見つかっていないと報告された。

「血は絞り出したか!? 吸い出したか!?」
「はい! 解毒作用のある薬湯も慎重に胃に流し込みましたが、効果は見られておりません。毒を特定しない限り、これ以上は……」

 医師の話を聞きながらクリビアの口の中を調べた。
 出血はしていない。
 矢の刺さった個所を見ると、肩から背中にかけて肌が紫色に変色している。
 呼吸は浅く、今にも永遠の眠りにつきそうだ。
 ヘビ毒ではないと思うが万が一と言うこともあるため、刺さったところより心臓に近いところを包帯できつく縛った。
 だがもう遅いかもしれない……。全身を震えが走る。

 一体誰が! どうして!?
 前世で美砂を救えなかった記憶が呼び起こされた。
 また失うのか? 駄目だ、絶対に、もう二度と失いたくない!

「一週間も経っているのにまだ特定できないのか!」
「薬師によると、ヘビや蜘蛛の毒ではないということは分かりました」
「そうか……」
「ですが、植物の毒でしたら、今分かってない事を考えると特定にはもう少し時間がかかると思われます」

 医師がそう言った後、目を真っ赤にしたマリウスが俄かに呟いた。

「二回目だ」
「二回目?」
「トリス川でも襲われて殺されそうになったんだ」

 その場にいる一同が驚愕した。
 私も初めて聞いた。
 彼女を助けた時を思い出して、川に飛び込んだことを責めるような言い方をした事を後悔した。

「逃げるためだなんて思わなかったんだ……」

 クリビアの冷たい手をそっと包み込んでそう呟いた。
 よく考えると、私は彼女の身に起こったことをよく知らない。
 彼女も話そうとしないし。
 自分が不甲斐なくて仕方がない。

 アスター王子がマリウスに話しかけた。

「殺されそうになった理由に心当たりはあるのかい? 二度となると同じ人物の仕業としか思えないが」
「僕は盗賊だと思っていたから……」
「……そうか」

「あ!」

 突然思いついた。
 彼女がガルシアに行きたくないと言っていたのはそれと関係があるのかもしれない。

「マリウス、クリビアがガルシアに行きたくなかった理由は知っているか? 例えば神父とか神殿関係者も含めて嫌いな人がいるとか」
「んー、わからない」
「伯爵、それはどういうことだ?」
「一度目に襲われたあと、頑なにガルシアに行くのを拒んでおりましたので」
「うーむ……ガルシアで彼女と接点のある神殿関係者と言えば、私が知っている限りではネベラウ枢機卿とテネカウ神父だな。でも親睦パーティーでは仲良さそうにしていたが……」
「それだ! マリウス、ジュリアナが君に会いに来るときいつもネベラウ枢機卿と一緒だったって言っていたよな?」
「うん。枢機卿はヴァルコフ国王ととても仲が良かった」
「だからだ」

 だからガルシアに行きたくなかった。
 彼女は自分を襲ったのがヴァルコフ国王だと思ったんだ。
 ネベラウ枢機卿に見つかればヴァルコフ国王に知られる可能性があるから。
 ……いや、待てよ。
 殺すなら恩赦なんかするか?
 枢機卿や神父が暗殺などするはずないし。

 ヴァルコフ国王が怪しいとしてもクリビアを殺してなんの得があるのだろうか。

「伯爵。君はヴァルコフ国王が彼女を殺そうとしたと思っているのか?」
「いえ、まだはっきりとは……」

 この間にもクリビアは死に近づいていく。
 犯人がわかったとて彼女が死んでは意味が無い。

 そうしてなんの進展もないまま二日が過ぎた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

背徳の恋のあとで

ひかり芽衣
恋愛
『愛人を作ることは、家族を維持するために必要なことなのかもしれない』 恋愛小説が好きで純愛を夢見ていた男爵家の一人娘アリーナは、いつの間にかそう考えるようになっていた。 自分が子供を産むまでは…… 物心ついた時から愛人に現を抜かす父にかわり、父の仕事までこなす母。母のことを尊敬し真っ直ぐに育ったアリーナは、完璧な母にも唯一弱音を吐ける人物がいることを知る。 母の恋に衝撃を受ける中、予期せぬ相手とのアリーナの初恋。 そして、ずっとアリーナのよき相談相手である図書館管理者との距離も次第に近づいていき…… 不倫が身近な存在の今、結婚を、夫婦を、子どもの存在を……あなたはどう考えていますか? ※アリーナの幸せを一緒に見届けて下さると嬉しいです。

全部私が悪いのです

久留茶
恋愛
ある出来事が原因でオーディール男爵家の長女ジュディス(20歳)の婚約者を横取りする形となってしまったオーディール男爵家の次女オフィーリア(18歳)。 姉の元婚約者である王国騎士団所属の色男エドガー・アーバン伯爵子息(22歳)は姉への気持ちが断ち切れず、彼女と別れる原因となったオフィーリアを結婚後も恨み続け、妻となったオフィーリアに対して辛く当たる日々が続いていた。 世間からも姉の婚約者を奪った『欲深いオフィーリア』と悪名を轟かせるオフィーリアに果たして幸せは訪れるのだろうか……。 *全18話完結となっています。 *大分イライラする場面が多いと思われますので苦手な方はご注意下さい。 *後半まで読んで頂ければ救いはあります(多分)。 *この作品は他誌にも掲載中です。

愛する人は、貴方だけ

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。 天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。 公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。 平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。 やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。

婚約七年目、愛する人と親友に裏切られました。

テンテン
恋愛
男爵令嬢エミリアは、パーティー会場でレイブンから婚約破棄を宣言された。どうやら彼の妹のミラを、エミリアがいじめたことになっているらしい。エミリアはそのまま断罪されるかと思われたが、彼女の親友であるアリアが声を上げ……

それは報われない恋のはずだった

ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう? 私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。 それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。 忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。 「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」 主人公 カミラ・フォーテール 異母妹 リリア・フォーテール

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

愛しの第一王子殿下

みつまめ つぼみ
恋愛
 公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。  そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。  クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。  そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

処理中です...