諦念

諦念

ついに君はわかってくれなかったね
このまま戦争を続ければロシアはどうなるかウクライナがどうなるか…

わかっていてやめないなら君は卑怯者だ！
私は戦争をやめろと再三君に優しく言ってきた時に強く諭した

戦争を続ければロシア経済は崩壊し国は立ち行かなくなると！極貧国になりさがり惨めな道を行くことになると！

ウクライナ人とは袂を分つことになり
長らく恨まれるだろう。ロシア人、もしくはロシアに住んでいたウクライナ人というだけで

だが君は私の意見を無視した
無視したあげく私を遠くへ追いやった
あれだけ長く君の側にいたのに…

もう何もかも遅い
終わりだ


書いた手紙に封をすると男はそれを背広の内ポケットにしまう。読まれない手紙、読まれても意味がない手紙を…

彼はずっとロシアの大統領に寄り添ってきた戦争に反対したのはせめてもの良心だたが当の大統領は彼の意見を受け入れることはなかった。

「戦争は残酷なものだ、どうしてこんなことに」

男は深いため息をついて部屋を後にした

人間はかつて起こした過ちを都合よく忘れ欲望を満たそうとまた同じ過ちを繰り返してしまう。かつてのアフガン戦争の虚しい敗戦、帰還兵の暴動の記憶などとっくにロシアでは風化してしまったのだ。
果たしてあの当時の亡くなった息子を悼む母親の顔を真っ直ぐ見られる者がどれくらいいるのか…





諦念







おわり