僕の天使には羽がない

桐乃

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僕の天使には羽がない 11

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「湊、帰ったの?」
「うん……」

階下から聞こえる母親の問いに、聞こえるか聞こえないかの声で答えると自分の部屋の扉を閉めた。
家に帰るまでの記憶が曖昧だ。
走って、転びそうになって、我に返って、それでもこの熱をどうにかしたくて早足で自宅へ急いだ。
荷物を適当に放り投げて、ベッドの中に飛び込む。
ふわふわのベッドが自分の身を受け止めてくれると同時に枕に顔を押し付けた。

頭を整理したいのに、こんがらがる。
初めは普通に話をしていただけだった。
コロコロと変わる彼の表情が可愛いと思って心が柔らかくほぐれて自然と笑えるようになっていた。

その時、大翔が自分のことを好きだと言った。
でも「そういう意味じゃない」。

(そういう意味って恋愛ってことだよね)

なのに、彼の見つめてくる視線から瞳が離せなかった。
子供っぽいと思っていた彼から、欲に似た熱いものを感じた。

(大翔、くん)

キスするかと思った。
いや、キスしたい、と思った。

俺も大翔と同じ男なのに。
気の迷いなのかもしれない。
でも、気の迷いにしては熱が強すぎる。

頭の中を占領している彼の姿を振り落とすように身体を起こした。
気がつけば汗でシャツはじっとりと湿っていた。
部屋着に着替えながら姿見を見る。

(そういえば大翔の半裸……見たんだよな)

自分の細腕とは違う、長く筋肉のついた腕。
がっしりとした肩。
うっすらと割れている腹筋。
バレーボール部ならではの整った筋肉とプロポーション、全て自分にないものだ。

(もしかしたらそれに憧れているだけなのかもしれない。でも……)

スケッチブックを広げてため息をつく。
それだけじゃ説明がつかないほど、そこに描かれているのは大翔だけだった。
身体のスケッチだけじゃない。
彼のコロコロ変わる表情、プレイ中の真剣な顔、友達とふざけている時の顔。
女子マネージャーの隣で微笑んでいる顔。

(僕が好きだとしても、大翔くんは……)

自分の描いた女子マネージャーに指を滑らせると、えんびつで描いた線画がぼやけた。



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