宝石♢男子

西神 幸徒

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第8話 セレブ=キケン⁉︎(2)

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「単刀直入に言わせてもらいますわ、カナメさん。わたくしに、ガーネットさんを売ってくださらないかしら?」
「はぁ⁉︎ ちょっ、なに言って――っ」
「そうですわね、急ぎすぎましたわ……まずは本物かどうか、たしかめてみましょう?」

 このっ、まだあたしが話してるとちゅうだってのに‼︎
 黒服のムキムキマッスルな男たちが、いっせいにおそってきたのっ!
 こういうときこそ冷静に、敵をよーく観察するのよ、カナメ‼︎
 どうやらやつら、全員武器はもっていない……素手のようね?
 宝石男子を傷つけたくないから、なんだろうけど――おかげでなんとかなりそう‼︎

「どりゃあぁぁぁぁぁ‼︎」

 あたしはとにかく、むかってくる敵を投げて投げて投げまくった‼︎

「おわっ、ちょいまち、なんなのさこいつら⁉︎」

 その調子その調子、思ったよりかわすのがうまいじゃないの、ガーネット!
 ブラックはかるい身のこなしで、敵をつぎつぎとけりたおしてるし……うん‼︎
 これならどーにか勝てそうだわ――って、思ったそのときだった。

「あぶない、カナメ――っ‼︎」

 ビビりまくっていたはずのガーネットに、肩をおされて――あ、かばわれたんだって、気づいたときにはもうおそかった。
 黒服の男が、ガーネットの胸ぐらをつかんで、顔をなぐったの‼︎
 これは、まずいことになったわ……っ‼︎

「カナメってば、まーた心配しちゃってるでしょ? オレはかたいから、このていどのパンチなんともないんだってば! ほーらね、ぜんぜん痛くないし!」
「……っだから、それがまずいってのよ‼︎」

 ああもう、ガーネットのバカバカバカ‼︎
 あんたいま、ぶんなぐられたのよ⁉︎
 それなのに、痛くもなければ血もでないなんて、おかしいでしょうが‼︎
 言わんこっちゃない……ほっぺの皮膚がすりきれて、下の宝石が見えちゃってる‼︎

「やっぱり、わたくしの目にくるいはありませんでしたわ。ガーネットさん、そしてブラックさん――おふたりは宝石男子。ですわよね?」

 チトセがとくいそうな顔で、ニコッと笑った。

「な、なんでそう言いきれるのよ‼︎ だいたい、どうしてチトセが宝石男子のことを知ってるの⁉︎」
「まずはおふたりの瞳――そのかがやきは名前のとおり、ガーネットとブラックダイヤモンドと見て、まずまちがいありませんわ」
「くっ……そ、そんなの、ちょっと見ただけでわかるわけが――っ」
「なにより、わたくしのきたえあげられた執事になぐられて、平気なほどかたい人間なんているはずがありません……ふふ、ほっぺのガーネットがまる見えですわよ?」

 あたしはグッと奥歯をかみしめて、だまるしかなかった。
 だってチトセの言っていること、ひとつもまちがっていないんだもの……!

「ほかの生徒はだませても、わたくしの目だけはごまかせませんことよ。なんせ、わたくしの家は先祖代々つづく宝石商なんですもの。三千院商事、ごぞんじない?」
「さ、三千院商事って、あの……有名な宝石ブランドの⁉︎」

 三千院宝石店と言えば、世界のだれもが知っているような超有名店よ⁉︎
 チトセはセレブのなかのセレブ――本物のお嬢様だったのね。

「わたくしは三千院家の跡とりなのよ? 宝石男子の存在くらい、知っていてトーゼンでしてよ。ふふ、安心してね。カナメさんのほしいぶんだけ、いくらでもお支払いしますわ――夢の億万長者になれるのよ? ガーネットさんを売りはらうだけでね?」
「なにが夢の億万長者よ、だれがガーネットを売りはらうって……?」

 あたしがビンボー人だからって、ちょっとバカにしすぎじゃない? 
 もうだめ、がまんできない――怒りの糸が、ブツンとキレた音がした。

「三千院商事の娘? だからなによ?」
「え……か、カナメさん? 急にどうなさったの?」
「カナメー‼︎ ケンカしてる場合じゃないし、オレのことはいいからはやく逃げてー‼︎」
「だまってなさいガーネット‼︎ これはケンカじゃないわ、家族をかけた戦いよ……‼︎」

 ムキムキ執事につかまって動けないくせに、なにあたしの心配してんのよ?
 こっちはね、あんたを救うために必死こいてる真っ最中なの‼︎
 柔道ができるだけのあたしが、本物のセレブ相手に完全勝利といかないのは承知のうえ――だとしても、できることはある‼︎
 あたしの本当の気持ちを、まっすぐ伝えるそれだけは、絶対にゆずれないんだから‼︎

「お金がたくさんあるからって、なんでも買えると思ったらおおまちがいよ‼︎」

 あたしは、チトセをまっすぐに見て、心のままに言ってやったの。

「ガーネットは売らないわ‼︎ だいたいね、宝石男子はものじゃないの――あたしの大切な家族よ‼︎」

 あたしの大声がひびきわたって、空気がビリビリとふるえた。

「いきなりおそってきて、家族を売れだなんて、あんまりだわ‼︎ 自分がされたらどんな気持ちになるか、考えてもみなさいよ‼︎」
「あ、わ、わたくしはっ……そんなつもりじゃなくて――っ」

 チトセはこれでもかってくらい、もうおおあわて。
 ついには、その場にしゃがみこんじゃった。
 ひっく、ひっくと泣く声が聞こえてきて……アスファルトに、チトセの涙が黒いしみをえがいてゆくのを見て――ようやく、スッと頭がひえた。

「チトセ、その……泣かないで? よかったら、これつかって?」

 なんだか、かわいそうになっちゃって、ハンカチをわたしたらね?
 チトセは乱暴にそれをうけとって、あたしをキッとにらんだの!

「こ、こんなことであきらめるわたくしではなくってよ‼︎ き、今日のところは、これくらいで見逃してさしあげますけどね――っ!」
「あっ、ちょっとまって……いっちゃったわ」

 チトセと黒服の執事たちは、すばやく車にとびのるなり、嵐のように走りさってしまった……のこされたあたしたちは、もうボーゼン。

「なんだったのよ、いまの」
「……チトセだったか? あいつ、よっぽどガーネットがお気にいりらしいな……気をつけないと、なにをされるかわからんぞ……」

 さすがのブラックも、制服のよごれをはらいつつ、ちょっとつかれた表情。
 あたしもいまになって、どっとつかれがおそってきたわ。
 なんか体が重いなぁ……って、ガーネット‼︎
 あんたが腕にだきついてるから、重たいんじゃないのこれ⁉︎

「やれやれ、チトセもあまいね! そうかんたんにオレをうばえると思ったら、おおまちがいだよ。だって、オレのことはカナメが守ってくれるし。ああああ! 推しに守られるオレ、しあわせすぎるー‼︎」
「あーもうあんたは、マイペースすぎ。ちょっとは危機感もちなさいよね?」

 ……それにしても、気になるのはチトセよね。
 あたしたちをおそってまで、ガーネットを買おうとしていたけど、なんで?

 あ……そういえば今朝、握手しようとさしだした手を、チトセにたたかれたんだっけ。
『仲よしにはなりたいけど、友達にはなりたくない』っていう、ナゾの理由でね。
 やっぱり、あたしのことが気にいらなくて、ガーネットをうばおうとしたのかな?
 つまり、いやがらせってやつ……?
 って、いやいや、まさかそれはないわよね⁉︎
 宝石商の娘として、ガーネットにキョーミがあっただけよ。そうに決まってる‼︎

 チトセと友達になれる可能性は、まだゼロじゃないわ。
 だれがなんと言おうと、あたしはそう信じてるから‼︎


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