神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

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26 神月の宴4

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 弟の光矢と叔父様、そしてどこか既視感のある少年が駆けつけ、共に戦い始めた。
 叔父様は、意外にも驚くほど強かった。刀に神気を纏わせ、容赦なく敵を斬り伏せていく。鋭い斬撃と共に閃光が走り、そのたびに偽の家臣たちが呻き声を上げて崩れ落ちた。
 光矢は薄い結界を自身に張りながら、離れた位置から神気の矢を次々と放っていく。的確に叔父様の死角を補い、敵を撃ち抜いては援護していた。
 そして――少年。彼はしなやかに舞うように身を翻し、敵の攻撃を軽やかに躱しては、神気を込めた一撃を返す。その華麗な動きに、私は強く心を揺さぶられた。以前、一度だけ見たことのある戦い方。けれど、あのときよりもはるかに冴え渡り、洗練されている。
(まさか……彼は――)

 やがて激しい戦いが終わり、辺りが静けさを取り戻していく。倒れ伏した敵の気配を確かめ、私はようやく結界を解いた。
「皇女殿下、ご無事ですか」
 駆け寄る少年の声。

 皇女殿下は、私の腕の中で興奮気味に身を乗り出し、少年へと向かって叫んだ。
「あお!だいじょうぶだったのよ!このおねえちゃんがすぐにきてくれたの!このけっかいはね、てきがどんどんこうげきしてきても、びくともしなかったんだから!ぜんぜんこわくなかったのよ!」

 あどけない声に、思わず私は微笑む。
 『あお』そう呼ばれた少年――は静かに頭を下げて言った。
「それは……本当によかったです。姫様がご無事で、僕も安心しました」

 (もしかしてアオくん?)

 そうしていると、慌ただしい足音と共に新たな一団が駆け寄ってきた。
「紗那!!!」
 切羽詰まった声。皇太子妃殿下が駆け出してこられた。

「おかあしゃま~っ!」
 皇女殿下はその姿を見た途端、我慢していたものが堰を切ったように大声で泣き出し、手を伸ばした。私はしっかり抱きかかえたまま妃殿下のもとへ早足で歩み寄り、殿下をそっとお渡しする。

「紗那、紗那! 無事で……ほんとうに、よかった。どこも痛くない? 怖い思いをしたでしょう……」
「ううん……おかあしゃま。しゃなはね、けがなんてしてないの。ぜんぜんだいじょうぶだったのよ」

 泣きながらも必死に笑顔を作る皇女殿下。その小さな頭を、妃殿下は震える手で何度も撫でられた。

 そして私たちの方へ視線を向け、深く頭を下げられる。
「……感謝します。天璽家の者として、そして何より、この子の母として。あなたたちがいなければ、紗那は今ここにいなかったでしょう」

 私は膝を折り、頭を垂れて答えた。
「恐れ入ります。殿下を怪我なくお守りできて、幸いでした」

「妃殿下、行きましょう」
 側付きの者が小声で促す。

「このお礼は必ず」
 妃殿下はそう言い残し、一団は奥へと消えていった。

 私は念のため、一団の背を見送り、光矢に目で合図を送った。
 光矢は小さく頷き、「大丈夫」と目で返す。

「――助太刀、ありがとうございました」
 叔父様が少年に礼を述べる。

「いえ。国の臣下として、当然のことをしたまでです」
 少年は簡潔に答え、その姿を後にした。

 その背中が気にかかったが、今は立ち止まっている暇はない。

「叔父様、護衛の方々を診ます」
「ああ、俺たちも手伝おう」

 叔父様と光矢と手分けして確認すると、幸い全員まだ息があった。私は胸をなで下ろし、重症の者から順に治療を施していく。叔父様は神具を用いて処置を補い、光矢は意識が戻るよう声をかけ続けてくれた。

 やがて、治療の甲斐あって数人が意識を取り戻す。この場を彼らに託し、私たちは再び急ぎ会場へと戻った。

 そこにはなお喧騒が残っていたが、大量の禍憑はすでに数々の実力者たちによって倒されており、戦いは終息へと向かっていた。

 私と光矢は、真っ先にお母様のもとへ駆け寄る。
「お母様!」
「瑞葉、光矢!」

「あなたたち、無事でよかったわ」
 お母様の声に、緊張が一気にほどける。

「皇女殿下を、お助けできました」

 私がそう報告すると、お母様は深く息を吐き、私たちを力強く抱きしめてくださった。

「よくやったわね……。あなたたちなら大丈夫と思って送り出したけれど、それでも心配でしかたなかったの。本当に、よかった……」

 その言葉に、胸の奥がじんと熱くなる。
 けれどお母様の袖の下からのぞく腕には、穢れが残る傷が見えた。おそらく結界を維持しながら、禍憑と戦っておられたのだろう。

 私はそっと神気を流し込み、治療を施す。
「……ああ。あなたの神気は、とても暖かいわ」

 安堵に満ちたお母様の声を聞き、ずっと張りつめていた私自身の心もようやく解けていった。

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