神守の少女、二度目の人生は好きに生きます〜因縁相手は勝手に自滅〜

雪水砂糖

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48 両親(碧人視点)

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 その日は解散し、次も二人で出かける約束をした。
 瑞葉の結界にはまだ多くの可能性がある。二人で試しながら伸ばしていこう──そう話し合った。

 家に戻ると、俺はすぐに執事に尋ねた。
「父はご在宅か?」
「はい。奥様と執務室にいらっしゃいます」

 すぐに執務室の扉を叩く。
「失礼します。碧人です。今よろしいでしょうか?」
「ちょうど休憩を入れようと思っていたところだ。お茶を頼む」

 父が執事に指示を出す。母は少し意外そうにこちらを見て、にこやかに微笑んだ。
「執務室に来るなんて珍しいわね。私も聞いていい話かしら?」
「お二人に、ぜひ聞いていただきたいことです」

 席につき、お茶が整ったところで父が切り出す。
「それで、話とはなんだ?」
「はい。──水無瀬家の瑞葉嬢と、婚約させていただきたいのです」

 二人の顔に驚きが浮かんだかと思うと、次の瞬間には笑い声が響いた。
「はっはっは。思ったより早かったな」
「ふふふ、やっぱりね」

 呆気に取られた俺は思わず尋ねる。
「……お二人は、僕が瑞葉嬢との婚約を望むと思っていたんですか?」
「ああ」
「ええ」
 揃ってうなずく両親の顔は自信に満ちていた。

「だってなあ」
「ねえ」
 二人ともにやりと笑ってから、父が言う。
「お前の交友関係は常に調査している」
「知っています。それなら彼女は文句のつけようのない人物だと分かっているのでしょう」

「まあ、そうだな。問題があれば神殿通いもできていない」
 父がうなずくと、母が前のめりに身を乗り出した。

「人物調査は通常、一度問題なしと判断すれば終わるものよ。でも今回は違った。碧人の様子が普段と違ったから、調査を続けさせたの」

「何故ですか?」
「友人ではなく──婚約者に相応しいかを確かめるためだ」
「その結果、文句なしよ。家格も性格も評判も申し分ない。加えて透子様の御息女。義娘に迎えたいと、私も思っていたわ」

 母の言葉は熱を帯びて止まらなかった。
「それにね、瑞葉さんはただ”よい家柄のお嬢さん”というだけじゃないの。控えめなのに芯が強くて、誰に対しても分け隔てなく優しく接する。孤児院の子どもたちからもとっても好かれているわ」
「神気の扱いも見事。あれほど緻密に結界を張れる子はそうそういないわ。あの正確さは才能以上に努力の賜物。将来性だって抜群よ」
「それに──皇女殿下を守った時のあの勇気。自分の危険を顧みずに、迷いなく動けるその心意気。あの年頃の娘で、あれほどの覚悟を持てる子は滅多にいない。気品と責任感を兼ね備えた、本物の”神守”だわ」
「性格も申し分ないし、家庭教師からも絶賛の声ばかり。しかも妖精のように美しくて、笑顔がとても柔らかいでしょう?あんなに可愛らしいのに、驕るところがまったくない。……もう、完璧じゃない!」

 母は勢い余ってテーブルを軽く叩く。
「私はね、前から碧人のお嫁さんに来てくれたらいいと密かに願っていたの。あなたが言い出さなくても、いずれはこちらから正式に話を持ちかけようと思っていたくらいよ!」

 圧倒的な熱量に、俺は思わず引きながらも、諸手を挙げて賛成なのはよく分かった。
「……では、さっそく水無瀬家へ婚約の申し込みをしていただけませんか?」

 すると二人は顔を見合わせた。
「もちろん良いが──お前、本人に言ったのか?婚約者になってほしいと」
「え?婚約は家から申し込むものでは?」

「政略結婚ならそうだが、これは違う」父が静かに告げる。
「まず本人の許可を取れ。仮に嫌だと言われたらどうする?水無瀬家と軋轢が生じるぞ」

 母も少し熱を抑えつつ言った。
「そうよ。どれだけ私たちが気に入っていても、瑞葉さんの気持ちが第一だわ」

 俺は思わず反論した。
「ですが、悠長にしていたら、あんなに素晴らしい子はすぐに他の家から婚約の話が来てしまいます」
「何を弱気なことを言っている」父が諭すように言う。
「お前は清瀧家の次期当主だ」
「そうよ」母もすかさず畳みかける。
「自分の力で瑞葉さんを振り向かせなさい。それとも、自信がないのかしら?」

 挑発めいた言葉に少し苛立ちながらも、きっぱりと言い返す。
「いいえ。ただ、急がねばと思っただけです。それでは失礼します」

 執務室を出ると、胸の奥に熱いものが残っていた。
 ──まずは、瑞葉に直接伝えなければならない。

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