願いのあとで、神が笑った

㋰稿堂

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親友の悩み

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かがりと一緒に暮らすようになって、もうすぐ二週間になる。
朝はいつまでも起きてこないし、昼にはしょっちゅうこけている。
そして夜は「お供え物の味見」と称して俺の夕飯を半分食べる。

……神様って、もっと崇高な存在じゃなかったっけ。

でも、不思議と悪い気はしなかった。
かがりの笑い声がこの家の静けさを壊してくれて、
俺の中のなにかも少しずつ、温かさを取り戻していた。

――今日は違う。
春休みが終わり、学校が始まる。

「お留守番、ちゃんとできるか?」
「まっかせなさい!」
そう言って胸を張ったかがりは、五分後には居間で寝息を立てていた。
不安しかない。

昇降口のざわめき、掲示板の貼り紙、春の風。
心なしかぼくの門出を祝福しているように思う。今日から高校2年生だ。

教室に入ると、席には親友、仁がすでに座っていた。
「久しぶりだな」と仁が軽く手を振る。
「元気そうだね」とぼくも笑った。

授業が始まる前、ぼくたちは近況を話す。
「春休みはどうだった?」
「ずっと寝てた」
「そりゃお前らしいな」
「俺は美琴といれて幸せだったぞ」
その時、ほんの少しだけ、仁の表情が曇った気がした。
「妹か…そういえばぼくも」
と言った声は先生が教室に入ってきたことでかき消されたのだった。

昼休み。
二人で並んで座り、箸を取りながら黙って弁当をつつく。

「あそういえばさ、うちに居候が出来たんだ」
「居候?」
「そうそう!なんか僕の神社の神様らしいけど、すんごいドジだしアホだし信じらんないよね」
「不思議なこともあるもんだなぁ…いやあるか」
「どうかしたの?」
「……実はさ、美琴の様子が変なんだ」
「え……?」
「最近、夜中にうなされてたり、独り言が多かったり。笑わなくなったし、俺の顔も見ない」
「……何かあったのか?」
「わからない。でも、ずっとこんな状態で……」

いつもの仁と違うその弱々しい声は、校舎のざわめきや遠くのチャイムの音でかき消されたような気がした。
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