ゴールド・ノジャーと秘密の魔法

たまごかけキャンディー

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【二章】ゴールド・ノジャーの祝福編

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 さて、ツーピーの魔人薬酔いが収まった翌日。
 久しぶりに勇者ノアと弟子のレオン少年、そしてバルザックたちの様子を見に転移で彼らのもとを訪れていた。

 現在は学院がある魔法王国ルーベルスの王都、城下町ルーンの冒険者ギルド支部である。
 まあ支部といっても、この世界の冒険者ギルドは国ごとに本部クラスの支部が展開されているので、魔法王国にとっての本部という認識で差し支えはない。

 ロデオンス中央大陸の全てをまとめる本当の冒険者ギルド本部もあるにはあるが、この国ほどの大国に置かれている支部ともなれば、対等に意見交換できるくらいにはデカい。
 だから結局は、冒険者ギルドの置かれている国や街の力関係の方が重要だったりする。

 そうなると冒険者ギルドは置かれている国の権威を借りるわけだから、政治的な影響力を完全に無視することは出来なくなるわけだが、それも当然といえば当然だね。
 いくら冒険者が国境を越えて自由に動けるといっても、そんな武力集団を国々が野放しにしておくわけがない。

 あくまでも建前上は権力とは無関係で自由な冒険者。
 でも実質はある程度制御下にあり、無茶なことはできない。
 要するにそんな感じである。

 さて、余談はさておき。
 まずは唐突にはじまった、もしくはなるべくしてなった勇者ノアとツーピーのガチンコ路上バトルに、そろそろ終止符を打たなければならないだろう。

 ……どうやって止めればいいのかという、そこに対する完璧な回答はアカシックレコードを使っても出ないけどね。
 俺の超能力さんでさえお手上げとは、まったく恐ろしいやつらである。

「今日こそはそのカワイイ顔を屈辱で歪ませてあげるわっ! 覚悟しなさいノジャー妹!」
「やれるものなら、やってみるといいのよ? シュッシュッシュッシュッ!! イェーーーーーー!!」

 いったい何をやっているんだお前らというくらいノリノリな二人。
 勇者ノアは旅の中で考えてきたであろう挑発的な剣舞でツーピーを威嚇し、ツーピーは魔人薬を飲んで編み出したとか言っていたシャドーボクシングで勇者ノアを威嚇する。

 正直俺には今何が起こっているのか分からないレベルなのだが、こういう煽り煽られに慣れている冒険者たちには二人の攻防がしっかりと認識できているご様子。

 ちなみに、周囲でどちらが勝つかの賭け事をして盛り上がる冒険者たちのノリ的には、今のところツーピーがやや優勢らしい。
 外野からはノアちゃんに向かって、負けるな嬢ちゃんとか、そんなちびっこに負けるのは許さねぇぞとか、こっちは金貨を賭けたんだぞとか、そんなどうでもいいヤジが飛び交い収拾がつかなくなっている。

「それにしても、久しぶりです神様。約二、三か月くらいでしょうか? ノアもツーピーさんに中々会えず。最近は少しスネておりましたので……」

 ふむふむ、なるほどそんなことがあったのか。
 いらぬ混乱を起こさぬよう冒険者ギルドでは身分を隠している勇者ノアではあるが、まさかツーピーへのリベンジマッチができずにスネるほどだったとはね。

 どおりで路上パフォーマンスに対しやる気満々なわけである。

「そうだぜえゴールド・ノジャーさんよ。俺様やあの冒険者たちのことを救うだけ救って、すぐどっかに行っちまうんだもんな。今日はもう少しゆっくりしていけや。酒なら一杯おごるぞ? 今回の賭けは俺様の勝ちが決まったようなもんだからな」

 バルザックもお祭り騒ぎとなった城下町ルーンの冒険者ギルドで酒を飲み、なぜか賭けに乗っかっている様子だ。
 賭けに対するあまりの自信から、まさか勇者ノアが路上パフォーマンスに対する逆転の秘策を持っているのかと思ったものの、アカシックレコードで確認するとそうではないらしい。

 なんとバルザックは賭けに対してはものすごくシビアで、身内への情は切り捨てて勝ち負けを判断するような奴だった。
 いまも賭けているのは身内の勇者ノアに対してではなく、全力でシャドーボクシング中のツーピーに対してだ。

 さすが元最強のアウトロー。
 こういうところでは裏社会育ちのセンスが妙に光るね。

「……それで。今日はお前さん、何を伝えに来たんだ。どうせまたノアやレオンのおせっかいを焼きにきたんだろう? 顔を見ればわかるぜ。まったく、本来は人類に敵対するのが魔族の宿命だっつうのに、律儀なことだ」

 周囲の注意を引いている路上パフォーマンス中の女子二人から意識を外し、そう語りかけてくるバルザック。
 おやおや、まだレオン少年から俺の正体は明かされていないのだろうか。

 ……いや、違うか。
 この様子だとレオン少年から聞いた話があまりに荒唐無稽で、いつまでたっても年老いることが無いとか言われたあたりで、本当は魔族なんだろうとか勝手に推測したんだろうね。

 魔族って人間種よりも圧倒的に寿命が長いらしいし。

 ただ今回ばかりは助言というよりも、ただツーピーの気晴らしとして仲の良い勇者ノアのもとへお邪魔しにきただけだ。
 仲が良いというと二人は怒るだろうけど、ゴールド・ノジャー的にこういうのは仲が良いというのである。

 まさに悪友って感じ。

「いんや。今回はちょっと前に良い仕事をしたツーピーへの労いとして、少しばかりお主らのもとへ出向いたまでよ。ほれ、あんなに楽しそうなツーピーを見るのは中々ないからのう?」

 ほんのちょっとだけ、いま暗躍しているアンネローゼ・クライベルの情報を流すつもりではあるが。
 それは別れ際の一言くらいで十分だ。

 なんでもかんでも手取り足取りおぜん立てしなきゃいけないほど、このパーティーは弱くはない。

「んだよ。そういうことか。なら存分にゆっくりしていけ。俺たちだって急ぐ旅じゃねえんだ。じっくり勇者ノアを育てつつ、そのうち魔王に対抗するくらいの傑物になりゃあいいと思っている程度だからよ」

 確かにまだまだ時間はあるからね。
 なんたって、いまの魔王軍は帝国と激しい領土争いをしている最中だ。

 帝国がよっぽどヘマをしないかぎり、あともうしばらく戦況は拮抗したままだと思われる。

 でもってその日の夜。
 最終的にツーピーに煽られて泣きべそかいちゃった勇者ノアが敗北したり。

 勝利したツーピーがそのままテンション爆上げでヒップホップが合いそうなダンスを披露しつつ、最後に「最強奥義なのよ?」とか言って羽スライムとの合体技であるスラスラトレインを披露したりして幕を閉じた。

 特に最後のスラスラトレインの完成度は異常だったよ。
 なんとまさかまさかの、勝利の歌詞つき路上ダンスだ。

 妙にサマになってた。
 なお、このスラスラトレイン。
 いまからほんの少し前、俺が勝利の舞いで悩んでいたツーピーの目の前で、ちょっとだけ前世のノリで踊ってあげたことがきっかけで出来上がった必殺技だ。

 まさかここまで完成度をあげたフリ付けをしてくるとは思わなかったけど、さすが我が遺伝子を受け継いだホムンクルスである。
 あっぱれだね。

 ただし、なんで勝負の内容よりも勝利したあとのダンスに力を入れてるんだよと思わなくもないが、きっとこれがツーピークオリティなのだろう。

 そんな感じで今日一日は平和なひと時を過ごしつつ。
 明日からはどうせまた学院に戻り忙しくなるだろうし、今日のところはゆっくり休むといいと思うゴールド・ノジャーであった。

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