20 / 37
『外伝』 スナック魔王城④
しおりを挟む
魔王城の片隅に不思議な扉があった。普段は鍵がかかったその部屋に時折、看板プレートが掛かることがある。
『スナック 魔王城』
今宵はどんな話が聴けるのだろうか…
―――店内――――
カランコロン
「おや、早いですね。レサーナ」
「サスタス、お疲れ様」
「ママ、『シンデレラ』を」
「ねぇ、長老様の鱗どう思う?」
「どう思うって何がですか?」
ママからシンデレラを受け取るとサスタスはレサーナに向かって軽くグラスを持ち上げた。
「いやだからね、おかしいと思わない?今までこんな事は無かったじゃない。多少泥が固まって汚れたりはあったけど、雨とか嵐で流れてたはずなのよ。でもここ数年あの辺りって雨が降ってないらしいの」
セスタスはカウンターに頬杖をつきながらレサーナの方を見る。
「確かに、不思議な話ですねぇ…」
ツイナッツをポリポリ食べながらレサーナは自論を語る。
「これはきっとニンゲンの陰謀よ!きっと魔道具で雨を降らせないようにしているんだわ!」
「それをして、人間側に何のメリットがあるんですか?」
「それは……長老を体調不良にさせて、ドラゴン族の士気を下げようとしてるのよ!」
「ずいぶん気の長い作戦ですね!」
サスタスは体をのけぞらせながら笑った。
「分かってるわよ!間違ってる事くらい。でも絶対おかしいと思うのよ」
「まぁ本当の部分もあるかもしれませんね。コレはあくまで噂ですが、雨を降らせる魔道具があるらしいんですよ」
「サスタス…あのね、今は雨が降らないって話をしてるの!」
「実はその魔道具は、周辺の雨の元となる水のエレメントを吸収して雨を降らせるらしいんです。」
「だから?」
「吸収された側はどうなります?」
「……ハッ!雨が降らない!」
「まぁそんな魔道具が本当にあれば、の話ですけどね」
「でも、可能性としてはありえるわよね…」
腕を組んで考え込むリサーナ。
「もし…もし仮にサスタス、貴方が人間だとして雨を降らせる理由はなんだと思う?」
「そうですね…安定的な食糧の確保の為でしょうか」
「でも今まで食糧難になったという話は聞いた事がないわ」
「新しい大規模農地の水源確保の為でしょうか」
「これ以上増やす必要がある?」
「人口が急増すればあるいは…」
「人口が急激に増える理由は?」
矢継ぎ早に聞いてくるリサーナ。サスタスはグラスに口を付け飲み干すと、少し考えてから答えを出す。
「移民や徴兵といった所でしょうか」
「もし王都が徴兵してたとしたら。人間同士の争いだと思う?」
「現状では、我々への攻撃の為と考えるのが妥当でしょうね。ただ、話が飛躍し過ぎてるとは思いますけど」
「別にね、取り越し苦労ならそれでいいの。私は誰かが傷付く事さえ無ければ何だっていい」
サスタスは抜けた自分の羽を指で摘んでクルクルと回しながら冷たく笑った。
「誰も傷付かず事を成そうなんて絵空事だとは思いませんか?」
レサーナは黙ったまま、じっとグラスを見つめる。
「私はレサーナさんを困らせようとしてるわけではありません。ただ『覚悟』をして欲しいのです。誰かが傷付いた時、1秒でも早く対処出来るように」
「分かってるわよ!」
リサーナは残ったお酒を飲み干した。
「貴方って天使のくせに厳しいわよね」
まるで天使の輪のように頭の上にカクテルコースターを持ったサスタス。
「私は堕ちた天使ですので」
そう言ってコースターから手を離した。床に落ちるコースター。それを拾いながらリサーナはサスタスに近づいた。
「この堕ちた天使は私が貰っていいのかしら?」
コースターをひらひらとさせながら、いたずらっぽく笑う。リサーナの腰に手を回す堕天使。
「お好きにどうぞ」
絡み合うような2人の視線は徐々に近づき、唇が触れ合おうとした刹那――
『気配断ち』のスキルを使っているフィティアは思った。
(目の保養になります!ごっつぁんです!)
魔王城の夜は更ける。
『スナック 魔王城』
今宵はどんな話が聴けるのだろうか…
―――店内――――
カランコロン
「おや、早いですね。レサーナ」
「サスタス、お疲れ様」
「ママ、『シンデレラ』を」
「ねぇ、長老様の鱗どう思う?」
「どう思うって何がですか?」
ママからシンデレラを受け取るとサスタスはレサーナに向かって軽くグラスを持ち上げた。
「いやだからね、おかしいと思わない?今までこんな事は無かったじゃない。多少泥が固まって汚れたりはあったけど、雨とか嵐で流れてたはずなのよ。でもここ数年あの辺りって雨が降ってないらしいの」
セスタスはカウンターに頬杖をつきながらレサーナの方を見る。
「確かに、不思議な話ですねぇ…」
ツイナッツをポリポリ食べながらレサーナは自論を語る。
「これはきっとニンゲンの陰謀よ!きっと魔道具で雨を降らせないようにしているんだわ!」
「それをして、人間側に何のメリットがあるんですか?」
「それは……長老を体調不良にさせて、ドラゴン族の士気を下げようとしてるのよ!」
「ずいぶん気の長い作戦ですね!」
サスタスは体をのけぞらせながら笑った。
「分かってるわよ!間違ってる事くらい。でも絶対おかしいと思うのよ」
「まぁ本当の部分もあるかもしれませんね。コレはあくまで噂ですが、雨を降らせる魔道具があるらしいんですよ」
「サスタス…あのね、今は雨が降らないって話をしてるの!」
「実はその魔道具は、周辺の雨の元となる水のエレメントを吸収して雨を降らせるらしいんです。」
「だから?」
「吸収された側はどうなります?」
「……ハッ!雨が降らない!」
「まぁそんな魔道具が本当にあれば、の話ですけどね」
「でも、可能性としてはありえるわよね…」
腕を組んで考え込むリサーナ。
「もし…もし仮にサスタス、貴方が人間だとして雨を降らせる理由はなんだと思う?」
「そうですね…安定的な食糧の確保の為でしょうか」
「でも今まで食糧難になったという話は聞いた事がないわ」
「新しい大規模農地の水源確保の為でしょうか」
「これ以上増やす必要がある?」
「人口が急増すればあるいは…」
「人口が急激に増える理由は?」
矢継ぎ早に聞いてくるリサーナ。サスタスはグラスに口を付け飲み干すと、少し考えてから答えを出す。
「移民や徴兵といった所でしょうか」
「もし王都が徴兵してたとしたら。人間同士の争いだと思う?」
「現状では、我々への攻撃の為と考えるのが妥当でしょうね。ただ、話が飛躍し過ぎてるとは思いますけど」
「別にね、取り越し苦労ならそれでいいの。私は誰かが傷付く事さえ無ければ何だっていい」
サスタスは抜けた自分の羽を指で摘んでクルクルと回しながら冷たく笑った。
「誰も傷付かず事を成そうなんて絵空事だとは思いませんか?」
レサーナは黙ったまま、じっとグラスを見つめる。
「私はレサーナさんを困らせようとしてるわけではありません。ただ『覚悟』をして欲しいのです。誰かが傷付いた時、1秒でも早く対処出来るように」
「分かってるわよ!」
リサーナは残ったお酒を飲み干した。
「貴方って天使のくせに厳しいわよね」
まるで天使の輪のように頭の上にカクテルコースターを持ったサスタス。
「私は堕ちた天使ですので」
そう言ってコースターから手を離した。床に落ちるコースター。それを拾いながらリサーナはサスタスに近づいた。
「この堕ちた天使は私が貰っていいのかしら?」
コースターをひらひらとさせながら、いたずらっぽく笑う。リサーナの腰に手を回す堕天使。
「お好きにどうぞ」
絡み合うような2人の視線は徐々に近づき、唇が触れ合おうとした刹那――
『気配断ち』のスキルを使っているフィティアは思った。
(目の保養になります!ごっつぁんです!)
魔王城の夜は更ける。
0
あなたにおすすめの小説
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
【完結】国外追放の王女様と辺境開拓。王女様は落ちぶれた国王様から国を買うそうです。異世界転移したらキモデブ!?激ヤセからハーレム生活!
花咲一樹
ファンタジー
【錬聖スキルで美少女達と辺境開拓国造り。地面を掘ったら凄い物が出てきたよ!国外追放された王女様は、落ちぶれた国王様゛から国を買うそうです】
《異世界転移.キモデブ.激ヤセ.モテモテハーレムからの辺境建国物語》
天野川冬馬は、階段から落ちて異世界の若者と魂の交換転移をしてしまった。冬馬が目覚めると、そこは異世界の学院。そしてキモデブの体になっていた。
キモデブことリオン(冬馬)は婚活の神様の天啓で三人の美少女が婚約者になった。
一方、キモデブの婚約者となった王女ルミアーナ。国王である兄から婚約破棄を言い渡されるが、それを断り国外追放となってしまう。
キモデブのリオン、国外追放王女のルミアーナ、義妹のシルフィ、無双少女のクスノハの四人に、神様から降ったクエストは辺境の森の開拓だった。
辺境の森でのんびりとスローライフと思いきや、ルミアーナには大きな野望があった。
辺境の森の小さな家から始まる秘密国家。
国王の悪政により借金まみれで、沈みかけている母国。
リオンとルミアーナは母国を救う事が出来るのか。
※激しいバトルは有りませんので、ご注意下さい
カクヨムにてフォローワー2500人越えの人気作
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる