「そうじ」の力で異世界は救えるか?

掃除屋さん

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『外伝』 スナック魔王城④

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魔王城の片隅に不思議な扉があった。普段は鍵がかかったその部屋に時折、看板プレートが掛かることがある。

『スナック 魔王城』

 今宵はどんな話が聴けるのだろうか…


―――店内――――

カランコロン

「おや、早いですね。レサーナ」
「サスタス、お疲れ様」
「ママ、『シンデレラ』を」
「ねぇ、長老様の鱗どう思う?」
「どう思うって何がですか?」

 ママからシンデレラを受け取るとサスタスはレサーナに向かって軽くグラスを持ち上げた。

「いやだからね、おかしいと思わない?今までこんな事は無かったじゃない。多少泥が固まって汚れたりはあったけど、雨とか嵐で流れてたはずなのよ。でもここ数年あの辺りって雨が降ってないらしいの」

 セスタスはカウンターに頬杖をつきながらレサーナの方を見る。

「確かに、不思議な話ですねぇ…」

 ツイナッツをポリポリ食べながらレサーナは自論を語る。

「これはきっとニンゲンの陰謀よ!きっと魔道具で雨を降らせないようにしているんだわ!」
「それをして、人間側に何のメリットがあるんですか?」
「それは……長老を体調不良にさせて、ドラゴン族の士気を下げようとしてるのよ!」
「ずいぶん気の長い作戦ですね!」

 サスタスは体をのけぞらせながら笑った。

「分かってるわよ!間違ってる事くらい。でも絶対おかしいと思うのよ」
「まぁ本当の部分もあるかもしれませんね。コレはあくまで噂ですが、雨を降らせる魔道具があるらしいんですよ」
「サスタス…あのね、今は雨が降らないって話をしてるの!」
「実はその魔道具は、周辺の雨の元となる水のエレメントを吸収して雨を降らせるらしいんです。」
「だから?」
「吸収された側はどうなります?」
「……ハッ!雨が降らない!」
「まぁそんな魔道具が本当にあれば、の話ですけどね」
「でも、可能性としてはありえるわよね…」

 腕を組んで考え込むリサーナ。

「もし…もし仮にサスタス、貴方が人間だとして雨を降らせる理由はなんだと思う?」
「そうですね…安定的な食糧の確保の為でしょうか」
「でも今まで食糧難になったという話は聞いた事がないわ」
「新しい大規模農地の水源確保の為でしょうか」
「これ以上増やす必要がある?」
「人口が急増すればあるいは…」
「人口が急激に増える理由は?」

 矢継ぎ早に聞いてくるリサーナ。サスタスはグラスに口を付け飲み干すと、少し考えてから答えを出す。

「移民や徴兵といった所でしょうか」
「もし王都が徴兵してたとしたら。人間同士の争いだと思う?」
「現状では、我々への攻撃の為と考えるのが妥当でしょうね。ただ、話が飛躍し過ぎてるとは思いますけど」
「別にね、取り越し苦労ならそれでいいの。私は誰かが傷付く事さえ無ければ何だっていい」

 サスタスは抜けた自分の羽を指で摘んでクルクルと回しながら冷たく笑った。

「誰も傷付かず事を成そうなんて絵空事だとは思いませんか?」

 レサーナは黙ったまま、じっとグラスを見つめる。

「私はレサーナさんを困らせようとしてるわけではありません。ただ『覚悟』をして欲しいのです。誰かが傷付いた時、1秒でも早く対処出来るように」
「分かってるわよ!」

 リサーナは残ったお酒を飲み干した。

「貴方って天使のくせに厳しいわよね」

 まるで天使の輪のように頭の上にカクテルコースターを持ったサスタス。

「私は堕ちた天使ですので」

 そう言ってコースターから手を離した。床に落ちるコースター。それを拾いながらリサーナはサスタスに近づいた。

「この堕ちた天使は私が貰っていいのかしら?」

 コースターをひらひらとさせながら、いたずらっぽく笑う。リサーナの腰に手を回す堕天使。

「お好きにどうぞ」

 絡み合うような2人の視線は徐々に近づき、唇が触れ合おうとした刹那――


 『気配断ち』のスキルを使っているフィティアは思った。
(目の保養になります!ごっつぁんです!)

 
 魔王城の夜は更ける。
 
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