- Mix blood -

久悟

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第三章 大陸冒険編

ジュリエット

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「ジュリエットよ。お前は口には出さないが、本当はまた世界を旅したいのだろう?」

 仙王の言葉に、今まで快活に喋っていたジュリアさんが一瞬言葉を詰まらせた。

「え……? そりゃ、まぁ……行きたいけど……」
「ならば、行ってくるといい」
「え!? いいのか!?」
「この者たちが受け入れてくれるのなら、連れて行ってもらうといい」
「やったー! お祖父ちゃん大好き!」

 ジュリアさんは子供のように仙王に抱きついた。仙王は威厳のある顔を崩し、目尻をだらしなく下げて孫娘の頭を撫でている。デレデレだ。
 
「でも、エミリーは良いとして……ユーゴとトーマスは嫌じゃないか?」

 ジュリアさんは少し不安そうな顔でこちらを見た。

「いや、オレは問題ないですよ。エミリーの恩人ですし、話に聞いた通りの活発な人だ」
「僕も文句はありません。ジュリアさんのような明るい人が一緒なら、旅はもっと楽しくなる。それに越したことはないでしょう」
「私は言うまでもないよ! 一緒に行こうよ、ジュリア!」
「……本当に? 本当に、ついて行っちゃうぞ!?」

 突然の提案には驚いたけど、こうしてオレ達のパーティに、四人目の仲間が加わることになった。

「あぁ、行ってこい。もしアレクサンドが悪事を働くようなことがあれば、お前達の手で仕置きしてやれ」

 仙王の言葉に、ジュリアさんは満面の笑みで力強く頷いた。
 
「さて、他に聞きたいことはあるか?」

 オレは挙手をして、発言を求めた。
 
「オレの父と、魔人、そしてアレクサンドが『宝玉』というものを求めてリーベン島に来たんです。ここには来ていませんか?」
「あぁ、龍王からの手紙にも書いてあったな。さすがに仙族と人族、全てを敵に回してまで乗り込んでくる度胸は奴らにはないだろう。宝玉は我が空間魔法で管理している。……そうだ、我が空間をジュリエットの空間と『契約』させておこう。万が一我に何かあれば、外界にいるジュリエットに宝玉が渡るように。まあ、万が一などあり得ないがな」
 
「……契約?」
「あぁ、空間魔法は持ち主が死ぬと、中身ごと消えてしまうんだ。そうならないように、信頼する者の空間へ中身が移動するように、あらかじめ『契約』しておくんだよ。アタシは、ママと相互に契約を結んでいる」
「我は今、長男のライアンと相互契約している。だが、よく考えれば同じ城にいる者に飛ばしても意味がない。外界にいる方が安全だ。ジュリエットが帰ってきたら、ライアンと契約をし直すとしよう」

 仙王とジュリアが互いに手をかざし、淡い光と共に契約とやらを結んだ。

「そうなんだ。私もこないだ、自分が死んだら荷物はどうなるんだろうって疑問に思ったんだよね。じゃあ、私はジュリアと契約しようかな!」
「おいおい、何を言ってるんだ。もうとっくにアタシと契約済みじゃないか」
「え……? そうだっけ?」
「この話もしたぞ? 寝ぼけてたのか?」
「全然覚えてない……。まだ小さかったからかな?」
「あぁ、そうかもな。出会った時は、まだ七歳くらいだったもんな」

 とにかく仲間が増えた。
 この旅は、もっと楽しくなりそうだ。
 

「よし、いい時間だ。君達に昼食を用意している。食べていくといい」
「え? よろしいんですか?」

 オレ達が座っている円卓に、メイドたちが手際よくナイフやフォーク、ナプキンなどを並べ始めた。

 これはもしかして……。
 また、あの難解な料理が始まるらしい。昨日の練習が、早速役に立ちそうだ。

「前菜の、クルスティアン・デゥ・フロマージュでございます」

 昨日より、何て言ってるか分からんぞ……。
 目の前に置かれた料理を見ても、何が何だかさっぱり分からない。これが王族の食事か。
 
 次々と運ばれてくる名前の難解な料理を、皆で笑いながら楽しんだ。ジュリアさんは噂通りの快活な女性だ。彼女がいれば、旅が明るく楽しくなるのは間違いない。

 
 食事を終え、紅茶を楽しんでいる。高級茶葉なんだろう、香りが素晴らしい。

「魔人達の目的は、一体何なんでしょうか?」
「昔、アレクサンドに宝玉の話をしたことがある。我も、四つ集めると何が起こるかは知らないがな。それを思い出して、世界を巡っているんだろう。数人で国を攻めるのは無理だと分かっているから、まずは国の規模が小さい龍王の所へ聞きに行った。今のところ、そこまで大きな悪事を働いているわけではないが……アレクサンドのことだ、何を企んでいるか分かったものではない」

 本当に、仙王はまるで自分の目で見てきたかのように話すな……。

「これから旅をするなら、王都に行くこともあるのか?」
「そうですね。オレ達の目的は魔人達を探すことですから、一番情報が集まりそうな王都には行くことになると思います」
「そうか、ならば……いや、まだ早いか」
「えっと……何か?」
「あぁ、いや、何でもない。こちらの話だ」

 仙王は何かを言いかけてやめた。気になるけど、問い詰める訳にもいかない。

「では、ウェザブール王国の二人の王への手紙を書いておこう。会いたければ会うがいい」
「本当ですか? ありがとうございます」

 仙王はエミリーに顔を向ける。

「あと、エミリー。君は青い眼を隠しているようだが、我はその眼を人族に晒すことを禁止してはおらんぞ? ジュリアの十年は、あくまで人族として生活させるために、我が隠すように命じただけだ」
 
「私がこの眼を隠しているのは、これを見られると、昔のトラウマが蘇ってしまうからなんです。信頼するユーゴとトーマスに見られただけでも、過呼吸で倒れてしまったくらいなので……」
「なるほどな……。私が定めた規律のせいで、苦しむ者が出ようとは……悪いことをした」
「アタシも、これから隠して旅をするよ。前回の十年もそうだったけど、その方が何かと生活しやすいんだ。この青い眼は、良くも悪くも目立つからね」

 紅茶のおかわりも頂き、十分に楽しんだ。あまり長居するのも気が引ける。
 いい話も聞けたし、何より仲間も増えた。そろそろ、おいとましよう。

「仙王様、いきなり押しかけた上に、食事までご馳走になり、ありがとうございました」
「いや、我も楽しめた。また来るといい。……ジュリエットを頼む。こいつは、なかなか強いぞ。仙族が誇る天才だからな」
「はい。ジュリアさん、改めてよろしくお願いします」
「おいおい、仲間になるのに、その堅苦しい話し方はやめてくれよ! エミリーと話すみたいに、気軽に喋ってくれ。ジュリアでいい」
「分かったよ。よろしくな、ジュリア! じゃあ、行くか!」

 仙王に深く一礼し、オレ達は城を後にした。
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