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第三章 大陸冒険編
ロナルド少年 昇級試験
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今日はロンをSランク狩猟者に昇格させる日だ。まずは腹ごしらえをして、その足で新しい刀を買いに行く約束をしている。
窓の外にはすでに眩しい陽射しが降り注いでいるというのに、ロビーにロンの姿はなかった。
仕方ないやつだな……。
オレは階段を上がり、ロンの部屋の前まで行った。
コン、コン、コン。
三回ノックするも反応がない。さらに強く叩いて、ようやくドタドタという足音が聞こえ、眠そうな顔をしたロンが出てきた。
「寝過ごした! ごめんなさい、ユーゴさん!」
「おはよう。これが騎士団の宿舎なら、お前は初日でクビだな」
「俺、朝弱いんだ……」
「弱いんだ、じゃ済まないぞ。起きなきゃダメなんだ。よし、目覚ましも買ってやるよ」
「ホントに? ありがとう!」
昨日は子供が寝る時間には帰したはずだ。
ルナポートでの漁師仕事は夜がメインだったんだろう。朝、日の出と共に活動する生活リズムが身についていないのかもしれない。
「ロン、よく聞け。人は東の空に日が昇る前に目覚めて朝食を摂り、準備を整える。太陽が真上に来たら昼食を頂き、日が沈んだら夕食を食べる。これは一年間、毎日ズレることはない。それがこの世界に生きる者の生活だ」
オレは窓から差し込む光を指さした。
「太陽の動きに合わせて時計の針も回っているんだ。このサイクルを当たり前にこなせて、初めてスタートラインだぞ?」
「分かりました……頑張る……」
少しシュンとしたロンを連れて食堂へ行き、たっぷりと朝食を腹に収めてから、オレたちは活気あふれる中心街の武器屋へと向かった。
店に入ると、鉄と油の混じった独特の匂いが鼻をつく。
壁一面に並べられた剣や槍を眺めながら、オレはロンの腰にある剣に目を向けた。
「なんでその刃こぼれした剣をずっと使ってるんだ? 思い入れのある物なのか?」
「Aランク試験の報酬は当面の生活費に当てたかったんだ。どれだけ要るかも分からないし。それに、特に問題無かったから買わなかった。次買うなら絶対に刀って決めてたけどね」
「もしかして、Aランク試験は一人で行ったのか?」
「うん、一人で行くもんじゃないの?」
さらりと言うが、Aランク依頼の報酬といえば一般労働者の年収六年分に相当する。それを十二歳の子供が、しかもこのナマクラで一人で達成したというのか。
呆れるのを通り越して感心してしまった。
「いらっしゃい。何をお探しで?」
店主が声をかけてくる。
「刀を探してるんですが、一番いいので二級品の上位か」
「120万ブールするよ……二級品の下位でも六十万か……」
ロンが値札を見て溜息をつく。
「鍛冶場から直に買うと、一級品の上位で500万って言ってたな。ここじゃ流通のマージンが発生してるんだろう」
「500万……凄いね……」
参考までに、オレは腰の『龍胆』と『春雪』を少しだけ鞘から抜いて見せた。
店内の照明を反射し、妖しい輝きを放つ刀身に、ロンが息を呑む。
「こっちが特級品、こっちが一級品の上位だ」
「すっげーキレイ! 憧れるなぁ……」
「どっちも貰い物だから、偉そうには言えないけどな……」
ロンは食い入るように刀を見つめている。その瞳は純粋だ。
オレはロンの肩にポンと手を置いた。
「よし、一番いいの買ってやるよ。いや、違うな、これはロンへの投資だ。強くなって、何かで返してくれ」
「うん、分かったよ! 絶対強くなる!」
いや、すでにこの歳でAランクを単独突破している。末恐ろしいんだけども。
「これがいいな」
ロンが選んだ一本を手に取る。
すらりとした太刀だ。鞘から抜くと、湾れ刃の美しい刃紋が波のように走っている。『春雪』より少し長いか。
「お目が高いね。その刀はリーベン島の名工の刀だ」
「へぇ、どなたのものかは分かりますか?」
「茎に刻印してあるよ。ヤンガス・リー作だね」
茎とは、刀身が柄に収まる部分のことだ。
「ロン、オレのこの『春雪』を打った人の刀だ。オレが知る中で一番の刀鍛冶だよ。あの人は刀に名前を付けない。いずれ、ロンが自分で刀に名前をつけてやるといい」
「名前か、ゆっくり考えよう。ユーゴさん、ありがとう。大事にするね」
「これ、頂きます」
「はいよっ」
数ある武器の中から、まさかヤンさんの刀を引き当てるとは。これも縁だろう。
「防具は、自分で狩った魔物の革で作ったら愛着が湧くぞ」
「なるほど。今日いいの採れるかな」
そのまま狩猟者協同組合へ向かった。
王都のギルドを見慣れているせいかこぢんまりと感じるが、活気は十分だ。掲示板の前には多くの狩猟者たちが群がっている。
「単体Sランクの魔物より、Aランクを複数狩る方が良いかもな」
掲示板を探すと、ロックリザード三体討伐の依頼がまだ残っていた。
「これどうだ? 練気を纏った今の刀なら難なく斬れると思うぞ」
「あぁ、こいつAランク試験で倒したやつだ!」
え? あの刃こぼれした剣で、硬いロックリザードを斬ったのか……?
「そうか……じゃあ、問題ないな……」
内心戦慄しながら、依頼書をカウンターに持っていく。
三人の受付のうち、顔見知りの男の前に依頼書を差し出した。
「へぇ、まだ子供なのにSランクか。なぁユーゴさんよ、あんたが手伝うのはルール違反だぜ?」
「当然、ランクアップ試験の規定はわきまえてますよ。オレは見てるだけだ」
疑いの眼差しを向ける受付に軽く手を振り、オレたちは現場へと急いだ。
途中で昼飯用の弁当を買うのも忘れない。
◇◇◇
指定されたポイントは、荒涼とした岩場だった。
ロックリザードはその名の通り、岩場に生息する巨大なトカゲだ。岩山の洞窟を巣にしているらしい。ゴルドホークの鉱山での戦いを思い出す。
「この中だな。さぁ、オレは見てるだけだぞ」
「うん、分かった!」
ロンが呼吸を整える。
高いレベルで強化術が施され、身体の周囲に薄い守護術の膜が張り巡らされた。
抜刀した刀身には、すでに濃密な練気が注がれている。
『火遁 紅蓮!』
ロンが洞窟に向けて掌を向ける。
轟音と共に紅蓮の炎が洞窟内へとなだれ込んだ。炙り出す作戦か。オレでもそうするだろう。
ロックリザードは魔法耐性が高い。熱さというよりは驚きで飛び出してくるはずだ。
予想通り、ドタドタと地響きを立てて三体の巨体が這い出てきた。
突然の炎に驚き、浮足立っている。
『剣技 斬返三段!』
ロンの姿が掻き消えた。
一気に距離を詰め、すれ違いざまにまず一体。流れるような動きで反転し、二体目の首を飛ばす。そして返す刀で三体目を撫で斬りにした。
一瞬の静寂の後、三体のロックリザードがほぼ同時に崩れ落ちた。
「凄い斬れ味だ……今までの剣は本当に斬れなかったんだな……」
刀を振って血糊を払い、ロンが嬉しそうに刀身を見つめている。
「もたつかずに一気に仕留めたな、見事だよ。刀の振りも剣技のチョイスも完璧だ。文句なしのSランクだな」
「これで鎧作れるかな?」
「あぁ、オレ達が初めてオーダーメイドした防具も、ロックリザードの革鎧だ」
「そうなんだ!」
ここからは解体作業だ。口は出すけど手伝わない。
ロンは購入したばかりの解体用ナイフを取り出した。ルナポートで魔物の解体指南は受けてきたらしいが、硬い皮に少々手こずっている。
それでも根気強くナイフを入れ、三体の処理を終えた。
「よし、残りを火遁で燃やしてみようか」
小さい魔石が数個と大きな魔石が二個。
そしてキラリと光る結晶が出てきた。魔晶石が一個だ。
「おぉ、出たな。この魔晶石は防具に使おう」
「防具に?」
「あぁ、籠手に着けとくと遁術等の増幅効果があるんだ」
「へぇ、なるほど!」
依頼品と素材をオレの空間魔法に収納する。
太陽はまだ真上にまで来ていない。昼食までは時間がある。
魔族の戦闘法も少し教えておこう。
「遁術を更に強化する方法を教える」
「はい!」
オレは手本を見せた。練気のボールを作り、そこに自然エネルギーで強化した風遁を強引に詰め込み、解放する。
圧縮された風が暴風となって弾けた。
「すっごいな……」
「ロンならすぐにできる。練気術をすでに習得しているのが大きい。全ての基本は練気術のように『練る』ことだ」
ロンは見よう見まねで試みた。
やはり才能がある。難なくこなし、風遁で岩山の一部をズタズタに切り裂いてみせた。
「次はこれを刀に詰め込む。刀身と纏った練気の間に、術を流し込んで圧縮する感じだな」
ロンが刀を構え、意識を集中する。刀身を覆う空気が揺らいだ。
一閃。
放たれた風遁の剣風が、空間を削り取るような音を立てて飛翔し、岩山に深々と突き刺さった。
まだまだ精度は低く、SSランクには届かないだろう。けど、センスが良すぎる。何でもスポンジのように吸収してしまう柔軟さがある。
人族ゆえの魔力と気力の絶対量の問題はあるけど、ロンは幼い頃から龍族に鍛えられている下地がある。
十二歳の時点で、すでに並の人族を遥かに超えている。十五歳から十八歳にかけて魔力量と気力量が安定して増える時期が来れば、さらに化けるだろう。
ロンは並の人族よりも潜在能力が高い。
練気術さえ極めれば、人族の気力の少なさはカバーできる。ロンはいずれ、人の枠を超えて昇化するかもしれない。
「あとは繰り返し修練して、術の精度を高めることだ。技術に関しては問題ない」
「俺、もっと強くなれるね!」
「あぁ、オレも追いつかれないように頑張るよ……よし、昼飯食って帰るか!」
岩場に腰を下ろして弁当を平らげると、オレたちはレトルコメルスの方向へと空を飛び立った。
窓の外にはすでに眩しい陽射しが降り注いでいるというのに、ロビーにロンの姿はなかった。
仕方ないやつだな……。
オレは階段を上がり、ロンの部屋の前まで行った。
コン、コン、コン。
三回ノックするも反応がない。さらに強く叩いて、ようやくドタドタという足音が聞こえ、眠そうな顔をしたロンが出てきた。
「寝過ごした! ごめんなさい、ユーゴさん!」
「おはよう。これが騎士団の宿舎なら、お前は初日でクビだな」
「俺、朝弱いんだ……」
「弱いんだ、じゃ済まないぞ。起きなきゃダメなんだ。よし、目覚ましも買ってやるよ」
「ホントに? ありがとう!」
昨日は子供が寝る時間には帰したはずだ。
ルナポートでの漁師仕事は夜がメインだったんだろう。朝、日の出と共に活動する生活リズムが身についていないのかもしれない。
「ロン、よく聞け。人は東の空に日が昇る前に目覚めて朝食を摂り、準備を整える。太陽が真上に来たら昼食を頂き、日が沈んだら夕食を食べる。これは一年間、毎日ズレることはない。それがこの世界に生きる者の生活だ」
オレは窓から差し込む光を指さした。
「太陽の動きに合わせて時計の針も回っているんだ。このサイクルを当たり前にこなせて、初めてスタートラインだぞ?」
「分かりました……頑張る……」
少しシュンとしたロンを連れて食堂へ行き、たっぷりと朝食を腹に収めてから、オレたちは活気あふれる中心街の武器屋へと向かった。
店に入ると、鉄と油の混じった独特の匂いが鼻をつく。
壁一面に並べられた剣や槍を眺めながら、オレはロンの腰にある剣に目を向けた。
「なんでその刃こぼれした剣をずっと使ってるんだ? 思い入れのある物なのか?」
「Aランク試験の報酬は当面の生活費に当てたかったんだ。どれだけ要るかも分からないし。それに、特に問題無かったから買わなかった。次買うなら絶対に刀って決めてたけどね」
「もしかして、Aランク試験は一人で行ったのか?」
「うん、一人で行くもんじゃないの?」
さらりと言うが、Aランク依頼の報酬といえば一般労働者の年収六年分に相当する。それを十二歳の子供が、しかもこのナマクラで一人で達成したというのか。
呆れるのを通り越して感心してしまった。
「いらっしゃい。何をお探しで?」
店主が声をかけてくる。
「刀を探してるんですが、一番いいので二級品の上位か」
「120万ブールするよ……二級品の下位でも六十万か……」
ロンが値札を見て溜息をつく。
「鍛冶場から直に買うと、一級品の上位で500万って言ってたな。ここじゃ流通のマージンが発生してるんだろう」
「500万……凄いね……」
参考までに、オレは腰の『龍胆』と『春雪』を少しだけ鞘から抜いて見せた。
店内の照明を反射し、妖しい輝きを放つ刀身に、ロンが息を呑む。
「こっちが特級品、こっちが一級品の上位だ」
「すっげーキレイ! 憧れるなぁ……」
「どっちも貰い物だから、偉そうには言えないけどな……」
ロンは食い入るように刀を見つめている。その瞳は純粋だ。
オレはロンの肩にポンと手を置いた。
「よし、一番いいの買ってやるよ。いや、違うな、これはロンへの投資だ。強くなって、何かで返してくれ」
「うん、分かったよ! 絶対強くなる!」
いや、すでにこの歳でAランクを単独突破している。末恐ろしいんだけども。
「これがいいな」
ロンが選んだ一本を手に取る。
すらりとした太刀だ。鞘から抜くと、湾れ刃の美しい刃紋が波のように走っている。『春雪』より少し長いか。
「お目が高いね。その刀はリーベン島の名工の刀だ」
「へぇ、どなたのものかは分かりますか?」
「茎に刻印してあるよ。ヤンガス・リー作だね」
茎とは、刀身が柄に収まる部分のことだ。
「ロン、オレのこの『春雪』を打った人の刀だ。オレが知る中で一番の刀鍛冶だよ。あの人は刀に名前を付けない。いずれ、ロンが自分で刀に名前をつけてやるといい」
「名前か、ゆっくり考えよう。ユーゴさん、ありがとう。大事にするね」
「これ、頂きます」
「はいよっ」
数ある武器の中から、まさかヤンさんの刀を引き当てるとは。これも縁だろう。
「防具は、自分で狩った魔物の革で作ったら愛着が湧くぞ」
「なるほど。今日いいの採れるかな」
そのまま狩猟者協同組合へ向かった。
王都のギルドを見慣れているせいかこぢんまりと感じるが、活気は十分だ。掲示板の前には多くの狩猟者たちが群がっている。
「単体Sランクの魔物より、Aランクを複数狩る方が良いかもな」
掲示板を探すと、ロックリザード三体討伐の依頼がまだ残っていた。
「これどうだ? 練気を纏った今の刀なら難なく斬れると思うぞ」
「あぁ、こいつAランク試験で倒したやつだ!」
え? あの刃こぼれした剣で、硬いロックリザードを斬ったのか……?
「そうか……じゃあ、問題ないな……」
内心戦慄しながら、依頼書をカウンターに持っていく。
三人の受付のうち、顔見知りの男の前に依頼書を差し出した。
「へぇ、まだ子供なのにSランクか。なぁユーゴさんよ、あんたが手伝うのはルール違反だぜ?」
「当然、ランクアップ試験の規定はわきまえてますよ。オレは見てるだけだ」
疑いの眼差しを向ける受付に軽く手を振り、オレたちは現場へと急いだ。
途中で昼飯用の弁当を買うのも忘れない。
◇◇◇
指定されたポイントは、荒涼とした岩場だった。
ロックリザードはその名の通り、岩場に生息する巨大なトカゲだ。岩山の洞窟を巣にしているらしい。ゴルドホークの鉱山での戦いを思い出す。
「この中だな。さぁ、オレは見てるだけだぞ」
「うん、分かった!」
ロンが呼吸を整える。
高いレベルで強化術が施され、身体の周囲に薄い守護術の膜が張り巡らされた。
抜刀した刀身には、すでに濃密な練気が注がれている。
『火遁 紅蓮!』
ロンが洞窟に向けて掌を向ける。
轟音と共に紅蓮の炎が洞窟内へとなだれ込んだ。炙り出す作戦か。オレでもそうするだろう。
ロックリザードは魔法耐性が高い。熱さというよりは驚きで飛び出してくるはずだ。
予想通り、ドタドタと地響きを立てて三体の巨体が這い出てきた。
突然の炎に驚き、浮足立っている。
『剣技 斬返三段!』
ロンの姿が掻き消えた。
一気に距離を詰め、すれ違いざまにまず一体。流れるような動きで反転し、二体目の首を飛ばす。そして返す刀で三体目を撫で斬りにした。
一瞬の静寂の後、三体のロックリザードがほぼ同時に崩れ落ちた。
「凄い斬れ味だ……今までの剣は本当に斬れなかったんだな……」
刀を振って血糊を払い、ロンが嬉しそうに刀身を見つめている。
「もたつかずに一気に仕留めたな、見事だよ。刀の振りも剣技のチョイスも完璧だ。文句なしのSランクだな」
「これで鎧作れるかな?」
「あぁ、オレ達が初めてオーダーメイドした防具も、ロックリザードの革鎧だ」
「そうなんだ!」
ここからは解体作業だ。口は出すけど手伝わない。
ロンは購入したばかりの解体用ナイフを取り出した。ルナポートで魔物の解体指南は受けてきたらしいが、硬い皮に少々手こずっている。
それでも根気強くナイフを入れ、三体の処理を終えた。
「よし、残りを火遁で燃やしてみようか」
小さい魔石が数個と大きな魔石が二個。
そしてキラリと光る結晶が出てきた。魔晶石が一個だ。
「おぉ、出たな。この魔晶石は防具に使おう」
「防具に?」
「あぁ、籠手に着けとくと遁術等の増幅効果があるんだ」
「へぇ、なるほど!」
依頼品と素材をオレの空間魔法に収納する。
太陽はまだ真上にまで来ていない。昼食までは時間がある。
魔族の戦闘法も少し教えておこう。
「遁術を更に強化する方法を教える」
「はい!」
オレは手本を見せた。練気のボールを作り、そこに自然エネルギーで強化した風遁を強引に詰め込み、解放する。
圧縮された風が暴風となって弾けた。
「すっごいな……」
「ロンならすぐにできる。練気術をすでに習得しているのが大きい。全ての基本は練気術のように『練る』ことだ」
ロンは見よう見まねで試みた。
やはり才能がある。難なくこなし、風遁で岩山の一部をズタズタに切り裂いてみせた。
「次はこれを刀に詰め込む。刀身と纏った練気の間に、術を流し込んで圧縮する感じだな」
ロンが刀を構え、意識を集中する。刀身を覆う空気が揺らいだ。
一閃。
放たれた風遁の剣風が、空間を削り取るような音を立てて飛翔し、岩山に深々と突き刺さった。
まだまだ精度は低く、SSランクには届かないだろう。けど、センスが良すぎる。何でもスポンジのように吸収してしまう柔軟さがある。
人族ゆえの魔力と気力の絶対量の問題はあるけど、ロンは幼い頃から龍族に鍛えられている下地がある。
十二歳の時点で、すでに並の人族を遥かに超えている。十五歳から十八歳にかけて魔力量と気力量が安定して増える時期が来れば、さらに化けるだろう。
ロンは並の人族よりも潜在能力が高い。
練気術さえ極めれば、人族の気力の少なさはカバーできる。ロンはいずれ、人の枠を超えて昇化するかもしれない。
「あとは繰り返し修練して、術の精度を高めることだ。技術に関しては問題ない」
「俺、もっと強くなれるね!」
「あぁ、オレも追いつかれないように頑張るよ……よし、昼飯食って帰るか!」
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