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第四章 魔人の過去編
魔王 リリス・シルヴァニア
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翌日の正午前。
戦場となる平原には、緊張した空気が張り詰めていた。
鬼族三万の軍勢は、テンとベンケイを先頭に、一糸乱れぬ陣形で布陣している。
対する魔族軍は数万。
先頭にはワタシの兄たち、次男アグレスと三男マルバスが立っている。長兄ベアルは作戦通り、リリスを連れてくる手筈だ。
ワタシ達四人は、魔族達の動きを一望できる高台に潜んでいた。極限まで魔力を抑え、気配を消して待機する。仙族や龍族の特異な魔力、そしてワタシの魔力が漏れ出せば、勘の鋭いリリスに感づかれる恐れがあるから。
太陽が中天に差し掛かった頃、空気が重く澱んだ。
肌にまとわりつくような、不快で濃密な魔力を感じる。
「……これが魔王の魔力ですの……?」
サランが息を呑む。
「えぇ、平常時でこれよ。相変わらずとんでもない化け物だわ」
魔族軍の上空に、巨大な影が現れた。
豪奢な装飾が施された空飛ぶ輿だ。風魔法で浮かせているのだろう。四方に護衛の手下を侍らせ、その中央で優雅に扇子を扇いでいる女がいる。
魔王リリス・シルヴァニアだ。
「おいおい……魔王って二千歳超えてるよな……? なんだあの若さは……サランと変わらないぞ」
アレクサンドが目を丸くする。
リリスの見た目は、人族で言えば二十代半ばといったところ。その妖艶な美しさは、敵ながら認めざるを得ない。
「えぇ、あの女は性交で相手の精気と魔力を奪いながら、永遠の若さを保ってるのよ。男を虜にして全てを吸い尽くす、歩く吸精鬼。それがあの異常な魔力の源泉よ。あんな量の他人の魔力を取り込んで正気を保っているなんて、ある意味尊敬に値するわね」
「……それは流石のボクもご遠慮願いたいね……」
魔族軍の最前線に、リリスの輿が静かに着地した。
彼女が降り立つと、周囲の魔族たちが一斉に頭を下げる。でも、そこにあるのは敬意じゃなく、純粋な恐怖だ。
「鬼どもや、あの猪王を落として図に乗っておるようじゃの。妾がわざわざ見に来てやったぞぇ。せいぜい良い死に様を見せてたも。……おい、妾を安全な高台へ連れて行くがよいぞ」
リリスが扇子で指図するが、魔族達は微動だにしない。
「これ、聞こえぬか。早うせぬか。妾を護るのが貴様らの役目ぞ」
苛立ちを露わにするリリス。
もういいでしょう。舞台は整ったわ。
ワタシは合図を送り、四人で鬼族の前線へと躍り出た。
「久しぶりねリリス、覚えてるかしら?」
リリスは目を細めてワタシを一瞥し、不愉快そうに鼻を鳴らした。
「……誰じゃ貴様は。気色の悪い」
「相変わらずね、自分の子を忘れるとは。まぁ、驚きもしないけど。ワタシはマモンよ。アナタと人族の間に生まれた子よ」
「あぁ、あの欠陥品かぇ。何故鬼側におる? 早うそ奴らを蹴散らさぬか。役立たずめが」
ワタシは微笑みを浮かべたまま、リリスに向かって歩を進めた。
リリスの周りを囲んでいた魔族たちが、モーゼの海割りのように左右に退いて道を開ける。
リリスがようやく異変に気づき、眉をひそめた。
「さぁリリス、立ちなさい。殺してあげるわ」
ワタシは掌をかざす。
『火魔法 煉獄』
自然エネルギーを限界まで圧縮した、渾身の火炎弾が放たれた。
だが──
『水魔法 魔力の洪水』
リリスが軽く杖を振ると、莫大な水流が出現し、ワタシの炎を飲み込んで相殺した。
……やるわね。
さすがは前魔王アスタロスの妻。魔法の発動速度が異常に速い。しかも、今の水魔法には明らかに自然エネルギーが混じっていた。仙術の理を取り込んでいる。相手の人族に仙術よ遣い手がいたのね。
「貴様ら……この魔王リリスに弓を引くとは……相応の覚悟をもつが良いぞ」
リリスの美しい顔が、怒りで醜く歪む。
「覚悟するのはアナタの方よ。自分が誰からも尊敬されていない事に気付かないなんて、可哀想な裸の王様。……でも安心して、相手はワタシ一人よ」
「貴様一人で妾の相手じゃと? 笑わせるな!」
激昂したリリスが杖を構える。
杖の先端には、見た事も無いほど巨大な魔晶石が嵌め込まれている。さっきの水魔法の威力は、あれによる増幅効果も大きそうだ。
「今の妾はアスタロスよりも強い。後悔しながら死ぬがよい!」
「ふん、強がりはよしなさい。愛する旦那様に直ぐに会わせてあげるわ」
ワタシに純粋な魔法は効かない。
仙術が混じっていても、守護術で防げばいいだけのこと。
さぁ、どうするリリス。
『氷魔法 氷柱の矢』
――え……?
水でも風でもない。鋭利な氷の矢が無数に生成され、音速で飛んできた。
『守護術 堅固な城壁!』
反射的に守護術を展開する。
ガガガガッ! と激しい衝撃。
一本の氷の矢が守護術を貫通し、アズガルシスのガントレットを掠めて頬に傷を作った。
……氷の魔法。
こんな希少な特異能力まで持っていたなんて。これは純粋な魔力だけの攻撃じゃない、物理的な質量を持っている。吸収できないわ。
連発させる訳にはいかない。
『火魔法 火焔流』
炎の自然エネルギーと魔力をふんだんに圧縮した、溶岩の如き熱線を放つ。
『氷魔法 絶対零度』
リリスが杖を一閃させると、空間そのものが凍りついた。ワタシの放った熱線が空中で凍結し、砕け散る。
さらに、砕けた氷の礫が散弾となって襲いかかってきた。ワタシは守護術を多重展開して防ぐ。
……舐めていたわ。ここまでとはね。
「その顔は、妾の能力を知らなんだかぇ。愚かな息子じゃ、自分の弱さを償って死ぬが良いぞ」
「ここまで強いとは予想外よ。でも、ワタシはもっと強いわ」
「ふん、強がりも大概にせぇ」
ワタシは腰に下げたデュランダルを抜き放った。
今やワタシは、立派な剣士だ。
「杖使いが仇にならないと良いわね」
『剣技 流星斬り』
地面を爆発的に蹴り、一瞬で間合いを詰める。
リリスの喉元めがけて袈裟斬りを放つ。
『氷魔法 氷の障壁』
キィィ――ン!!
甲高い金属音が戦場に響き渡った。
リリスの前に出現した氷の壁が、ワタシの斬撃を受け止めている。魔力の障壁なて比ではない硬度だ。
「ほぉ、魔族が剣とな。剣を扱うのが自分だけだと思うな、たわけ」
『氷魔法 氷剣創造』
リリスの手元に、氷で出来た長剣が出現した。わざわざ装飾まで施された美しい剣だ。
『剣技 魔突』
速い!
リリスが氷剣を突き出してくる。
ワタシはアズガルシスの篭手で受け止めた。
ガギンッ!
氷で出来た剣だと思って甘く見てはいけない。鉄をも切り裂く切れ味だわ。
……さすが魔王を名乗るだけあるわね。ゾクゾクする。
相手が強ければ強いほど、ワタシの中の炎が燃え上がる。
「ワタシの全てをぶつけられるわ! 楽しいわねぇ! 全力で叩き潰してあげるわ!」
練気を練り直し、自然エネルギーを込めた強化術を全身にかけ直す。
聖剣デュランダルには、風のエネルギーを極限まで薄く、鋭く纏わせる。
森の中をひたすら駆け続けて鍛え上げた脚力。本気のスピードで翻弄してやるわ。
「覚悟なさい、暗君リリス!」
正面から突っ込む。
リリスは氷の障壁を多重展開し、防御を固める。
だが、ワタシの狙いはそこじゃない。
接触の直前、足裏の練気を爆発させ、直角に近い角度で方向転換する。
リリスの視界から消え、一瞬で背後へ回り込んだ。
『剣技 刺突剣!』
練気による超高速移動の運動エネルギーを乗せた、渾身の突き。
リリスは完全にワタシを見失っていた。
ドスッ。
鈍い音が響き、辺りが静まり返る。
ワタシのデュランダルは、リリスの背中から心臓を貫き、胸から切っ先を覗かせていた。
リリスの氷の障壁は前面に集中しており、背後は無防備だった。この速度で回り込まれれば、反応できるはずがない。
「なっ……」
「禁呪を撃たせる程、ワタシの詰めは甘くないわよ」
『剣技 斬首一閃!』
剣を引き抜きざまに、横薙ぎに一閃。
リリスの首が宙を舞った。
『火魔法 炎熱葬送』
間髪入れずに、首と胴体に極大の火魔法を叩き込む。刺された自覚も無いまま、灰になるまで焼き尽くしてやる。
炎が消え、後には何も残らなかった。
……勝った。ワタシの復讐は成った。
暫しの静寂が辺りを包む。
やがて、誰かが声を上げた。
『ウォォォ――ッ!!!!』
それは波及し、魔族軍全体から割れんばかりの歓声が沸き起こった。
解放の叫びだ。
「あいつ……本当に……」
「兄さん達、これで解放ね。長い間、お疲れ様」
ワタシが振り返ると、兄達三人は呆然と立ち尽くしていたが、やがてその目に涙を浮かべた。千年の苦労と恐怖から解き放たれた安堵は、言葉には出来ないだろう。
魔族たちの歓喜の声は、いつまでも止むことは無かった。
戦場となる平原には、緊張した空気が張り詰めていた。
鬼族三万の軍勢は、テンとベンケイを先頭に、一糸乱れぬ陣形で布陣している。
対する魔族軍は数万。
先頭にはワタシの兄たち、次男アグレスと三男マルバスが立っている。長兄ベアルは作戦通り、リリスを連れてくる手筈だ。
ワタシ達四人は、魔族達の動きを一望できる高台に潜んでいた。極限まで魔力を抑え、気配を消して待機する。仙族や龍族の特異な魔力、そしてワタシの魔力が漏れ出せば、勘の鋭いリリスに感づかれる恐れがあるから。
太陽が中天に差し掛かった頃、空気が重く澱んだ。
肌にまとわりつくような、不快で濃密な魔力を感じる。
「……これが魔王の魔力ですの……?」
サランが息を呑む。
「えぇ、平常時でこれよ。相変わらずとんでもない化け物だわ」
魔族軍の上空に、巨大な影が現れた。
豪奢な装飾が施された空飛ぶ輿だ。風魔法で浮かせているのだろう。四方に護衛の手下を侍らせ、その中央で優雅に扇子を扇いでいる女がいる。
魔王リリス・シルヴァニアだ。
「おいおい……魔王って二千歳超えてるよな……? なんだあの若さは……サランと変わらないぞ」
アレクサンドが目を丸くする。
リリスの見た目は、人族で言えば二十代半ばといったところ。その妖艶な美しさは、敵ながら認めざるを得ない。
「えぇ、あの女は性交で相手の精気と魔力を奪いながら、永遠の若さを保ってるのよ。男を虜にして全てを吸い尽くす、歩く吸精鬼。それがあの異常な魔力の源泉よ。あんな量の他人の魔力を取り込んで正気を保っているなんて、ある意味尊敬に値するわね」
「……それは流石のボクもご遠慮願いたいね……」
魔族軍の最前線に、リリスの輿が静かに着地した。
彼女が降り立つと、周囲の魔族たちが一斉に頭を下げる。でも、そこにあるのは敬意じゃなく、純粋な恐怖だ。
「鬼どもや、あの猪王を落として図に乗っておるようじゃの。妾がわざわざ見に来てやったぞぇ。せいぜい良い死に様を見せてたも。……おい、妾を安全な高台へ連れて行くがよいぞ」
リリスが扇子で指図するが、魔族達は微動だにしない。
「これ、聞こえぬか。早うせぬか。妾を護るのが貴様らの役目ぞ」
苛立ちを露わにするリリス。
もういいでしょう。舞台は整ったわ。
ワタシは合図を送り、四人で鬼族の前線へと躍り出た。
「久しぶりねリリス、覚えてるかしら?」
リリスは目を細めてワタシを一瞥し、不愉快そうに鼻を鳴らした。
「……誰じゃ貴様は。気色の悪い」
「相変わらずね、自分の子を忘れるとは。まぁ、驚きもしないけど。ワタシはマモンよ。アナタと人族の間に生まれた子よ」
「あぁ、あの欠陥品かぇ。何故鬼側におる? 早うそ奴らを蹴散らさぬか。役立たずめが」
ワタシは微笑みを浮かべたまま、リリスに向かって歩を進めた。
リリスの周りを囲んでいた魔族たちが、モーゼの海割りのように左右に退いて道を開ける。
リリスがようやく異変に気づき、眉をひそめた。
「さぁリリス、立ちなさい。殺してあげるわ」
ワタシは掌をかざす。
『火魔法 煉獄』
自然エネルギーを限界まで圧縮した、渾身の火炎弾が放たれた。
だが──
『水魔法 魔力の洪水』
リリスが軽く杖を振ると、莫大な水流が出現し、ワタシの炎を飲み込んで相殺した。
……やるわね。
さすがは前魔王アスタロスの妻。魔法の発動速度が異常に速い。しかも、今の水魔法には明らかに自然エネルギーが混じっていた。仙術の理を取り込んでいる。相手の人族に仙術よ遣い手がいたのね。
「貴様ら……この魔王リリスに弓を引くとは……相応の覚悟をもつが良いぞ」
リリスの美しい顔が、怒りで醜く歪む。
「覚悟するのはアナタの方よ。自分が誰からも尊敬されていない事に気付かないなんて、可哀想な裸の王様。……でも安心して、相手はワタシ一人よ」
「貴様一人で妾の相手じゃと? 笑わせるな!」
激昂したリリスが杖を構える。
杖の先端には、見た事も無いほど巨大な魔晶石が嵌め込まれている。さっきの水魔法の威力は、あれによる増幅効果も大きそうだ。
「今の妾はアスタロスよりも強い。後悔しながら死ぬがよい!」
「ふん、強がりはよしなさい。愛する旦那様に直ぐに会わせてあげるわ」
ワタシに純粋な魔法は効かない。
仙術が混じっていても、守護術で防げばいいだけのこと。
さぁ、どうするリリス。
『氷魔法 氷柱の矢』
――え……?
水でも風でもない。鋭利な氷の矢が無数に生成され、音速で飛んできた。
『守護術 堅固な城壁!』
反射的に守護術を展開する。
ガガガガッ! と激しい衝撃。
一本の氷の矢が守護術を貫通し、アズガルシスのガントレットを掠めて頬に傷を作った。
……氷の魔法。
こんな希少な特異能力まで持っていたなんて。これは純粋な魔力だけの攻撃じゃない、物理的な質量を持っている。吸収できないわ。
連発させる訳にはいかない。
『火魔法 火焔流』
炎の自然エネルギーと魔力をふんだんに圧縮した、溶岩の如き熱線を放つ。
『氷魔法 絶対零度』
リリスが杖を一閃させると、空間そのものが凍りついた。ワタシの放った熱線が空中で凍結し、砕け散る。
さらに、砕けた氷の礫が散弾となって襲いかかってきた。ワタシは守護術を多重展開して防ぐ。
……舐めていたわ。ここまでとはね。
「その顔は、妾の能力を知らなんだかぇ。愚かな息子じゃ、自分の弱さを償って死ぬが良いぞ」
「ここまで強いとは予想外よ。でも、ワタシはもっと強いわ」
「ふん、強がりも大概にせぇ」
ワタシは腰に下げたデュランダルを抜き放った。
今やワタシは、立派な剣士だ。
「杖使いが仇にならないと良いわね」
『剣技 流星斬り』
地面を爆発的に蹴り、一瞬で間合いを詰める。
リリスの喉元めがけて袈裟斬りを放つ。
『氷魔法 氷の障壁』
キィィ――ン!!
甲高い金属音が戦場に響き渡った。
リリスの前に出現した氷の壁が、ワタシの斬撃を受け止めている。魔力の障壁なて比ではない硬度だ。
「ほぉ、魔族が剣とな。剣を扱うのが自分だけだと思うな、たわけ」
『氷魔法 氷剣創造』
リリスの手元に、氷で出来た長剣が出現した。わざわざ装飾まで施された美しい剣だ。
『剣技 魔突』
速い!
リリスが氷剣を突き出してくる。
ワタシはアズガルシスの篭手で受け止めた。
ガギンッ!
氷で出来た剣だと思って甘く見てはいけない。鉄をも切り裂く切れ味だわ。
……さすが魔王を名乗るだけあるわね。ゾクゾクする。
相手が強ければ強いほど、ワタシの中の炎が燃え上がる。
「ワタシの全てをぶつけられるわ! 楽しいわねぇ! 全力で叩き潰してあげるわ!」
練気を練り直し、自然エネルギーを込めた強化術を全身にかけ直す。
聖剣デュランダルには、風のエネルギーを極限まで薄く、鋭く纏わせる。
森の中をひたすら駆け続けて鍛え上げた脚力。本気のスピードで翻弄してやるわ。
「覚悟なさい、暗君リリス!」
正面から突っ込む。
リリスは氷の障壁を多重展開し、防御を固める。
だが、ワタシの狙いはそこじゃない。
接触の直前、足裏の練気を爆発させ、直角に近い角度で方向転換する。
リリスの視界から消え、一瞬で背後へ回り込んだ。
『剣技 刺突剣!』
練気による超高速移動の運動エネルギーを乗せた、渾身の突き。
リリスは完全にワタシを見失っていた。
ドスッ。
鈍い音が響き、辺りが静まり返る。
ワタシのデュランダルは、リリスの背中から心臓を貫き、胸から切っ先を覗かせていた。
リリスの氷の障壁は前面に集中しており、背後は無防備だった。この速度で回り込まれれば、反応できるはずがない。
「なっ……」
「禁呪を撃たせる程、ワタシの詰めは甘くないわよ」
『剣技 斬首一閃!』
剣を引き抜きざまに、横薙ぎに一閃。
リリスの首が宙を舞った。
『火魔法 炎熱葬送』
間髪入れずに、首と胴体に極大の火魔法を叩き込む。刺された自覚も無いまま、灰になるまで焼き尽くしてやる。
炎が消え、後には何も残らなかった。
……勝った。ワタシの復讐は成った。
暫しの静寂が辺りを包む。
やがて、誰かが声を上げた。
『ウォォォ――ッ!!!!』
それは波及し、魔族軍全体から割れんばかりの歓声が沸き起こった。
解放の叫びだ。
「あいつ……本当に……」
「兄さん達、これで解放ね。長い間、お疲れ様」
ワタシが振り返ると、兄達三人は呆然と立ち尽くしていたが、やがてその目に涙を浮かべた。千年の苦労と恐怖から解き放たれた安堵は、言葉には出来ないだろう。
魔族たちの歓喜の声は、いつまでも止むことは無かった。
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