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第五章 四種族対立編
因子
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オーベルジュ王の玉座の間、その隣にある特別会議室。
この国の大事な会議や軍議はいつもここで行われる。けど、今日ばかりは重みが違う。今から、世界がひっくり返るような真実が語られようとしているのだから。
円卓の上には、回収したばかりの『蒼』と『翠』、二つの宝玉が妖しく輝いている。
重苦しい沈黙を破り、仙王が口を開いた。
「お初にお目にかかる。我は仙王ラファエロ・ノルマンディだ。我々仙族の始祖であるゼウスは、ただの思念であった。貴殿が思念でなく、こうして実体として現れたのには我々も驚いている所ではあるが……どうやら、貴殿が一番驚いている様だな」
「いかにも……。ここに来る間に、少し整理させてもらった」
神龍レイは、自身の両手を握りしめ、確かめるように動かしながら話し始めた。
「ゼウス殿の思念を見たという事は、天界で起きた事は把握している前提で話を進める。まず、誤解なきよう言っておくが……某と悪鬼ラセツに、この世界を創造するような力は無い。ゼウス殿とサタンが初めて協力し、この世界そのものを創造したのだ。我々は、天界と下界を繋ぐ道の封印を解く鍵としてその封玉を創り、各々が思念を封じた。そして最期の力で各々自身の因子を持った種族を創り上げ、消滅した……はずだった」
誰も口を開かない。皆、神話の真実に聞き入っている。
神龍レイは頭の中を整理しながら、慎重に言葉を選んでいるようだ。
「某が何故、実体として現れたのかについてだが……。最期の力を込めて龍族を創造したつもりでいたが、ゼウス殿やサタンの様に世界の創造そのものには関わっていない我々には、多少の余力があったのかもしれん。その余力が、某の強い思念と共に封玉の力と反応し、この世界に肉体を再構成して蘇った……そう考えるのが妥当だろう」
あくまでもこれはレイの推測だ。しかし、当事者である彼の言葉には説得力がある。
一呼吸置いて、レイがオレの方を見て目を細めた。
「ところで、先程から気になっているのだが……何故下界に『神族』がいるのだ? しかも其方は黒髪だ。黒髪の神族など見たこともない。それに、そちらの者は緑色の眼……下界で一体何が起きている?」
レイの視線が、母さん、オレ、そしてトーマスを行き来する。
レイの眼も、オレや母さんと同じ鮮やかな青紫色だ。
龍族の始祖が、なぜ神族と同じ眼の色をしているのか。オレも気になっていた。
仙王が説明を引き取った。
仙族を退化させ、他種族の抑えとして人族を創った事。
天界の二種族の間に生まれた子がソフィアに憑依して下界に降りてきた事。
そして、オレが神族であるソフィアと龍族の間に生まれた子である事。
要点を掻い摘んで話すと、レイは驚きを隠せない様子だった。
「なるほど……あの二種族の混血か。まさかそんな事が起こり得るとはな……。とすれば、全ての因子が揃った者という事だ。あの道を通れたのにも納得がいく」
「レイ殿、一つ問いたい。何故あなたの眼は、神族と同じ青紫色をしておるのだ? 我々仙族の眼は青、龍族の眼は黒だ。創造主の因子にも、その色は無いはずだが」
仙王の問いに、レイは自分の目元を指差した。
「この眼は、我々の因子を合わせて神族を創る際に、ついでにゼウス殿から付与された物だ。ゼウス殿の眼は仙族の其方達の様に青い。仙と龍の因子が混ざれば、この青紫色になるようだ」
なるほど。因子の掛け合わせで眼の色が変わるのか。
確かに母さんは、魔神ルシフェルの眼の色は琥珀色だったと言っていた。あれはまた別の組み合わせなのだろう。
「仙族の因子を大幅に削れば緑色になるのか……それは知らなんだ。わざわざ種族を弱体化させる意味も無かった故にな」
「我々は、それを『仙人』と呼んでいる。仙人同士の子は人族として生を受け、眼の力は無く寿命が短いが、その分、子を多く産み繁栄する。今やこの下界で一番多い種族は人族だ」
「なるほど……。数の論理か。良く考えたものだ」
レイは感心したように頷く。
そして話は本題、魔神ルシフェルの話題へと戻った。
母さんが緊張した面持ちで口を開く。
「私は『魔封眼』を開眼しました。天界での混乱の最中、偶然私に魔神ルシフェルが憑依し、この世界に来ました。そして様々な事があり……こちらの息子のユーゴの中に、私の眼の力で魔神を封印していたんです」
レイは興味深そうに頷きながら聞いている。
話の続きを、仙王が引き継ぐ。
「その後の事だが、我とそちらのユーゴの異空間に、それぞれこの二つの封玉を入れていた。そして敵方にいる魔族、マモンの持つ異空間には、残りの二つの封玉が入っていた。我々三人が重なり、空間が接触した時、四つの封玉が共鳴し……ソフィアの封印が解かれ、あろうことか二人の身体まで創造したのだ。レイ殿、封玉とは一体何なのだ?」
レイは腕を組んで天を仰ぎ、少し考え込んだ後、静かに語り出した。
「まず、某も封玉の全てを理解しているわけでは無い。それを前提として話すが……天界と下界を繋ぐ道は、ゼウス殿とサタンの強力な封印術で閉ざされている。その鍵である四つの封玉の力は、その封印術式を『反転』させ、道を『創造』する」
創造。その言葉が重く響く。
「異空間の中にあれど、封玉同士は共鳴するだろう。その強大なエネルギー干渉によって、其方の体内にあった封印術式が反転し、解かれた。そして封玉の持つ『創造の力』が暴発的に作用し、二人の魂を核として、かつての肉体を創り上げた……そう見るのが自然だろう」
神々の御業だ。何があっても不思議じゃない。その一柱であるレイの言葉だ、信憑性はこの上ない。
謎が解けると同時に、事態の深刻さを改めて突きつけられた気がした。
ふと時計を見ると、いつの間にか正午を回っていた。
緊張が続いたせいか、空腹を覚える。
シャルロット女王の計らいで、円卓にそのまま昼食が運ばれてきた。
「少し休憩にしましょうか」
運ばれてきたのは、話をしながらでもつまめる様なサンドイッチと、香り高いコーヒーや紅茶。
豪華なフルコースもいいけど、王たちは意外と普段のランチにはこういう軽い物を好んで食べるようだ。
神龍レイは、皿に盛られたサンドイッチをじっと見つめると、一つ手に取った。
そして、大きな口を開けてかぶりつく。
「……む、これは美味いな」
数千年ぶりの食事なんだろう。とても美味しそうに頬張っている。だが、その所作には品があり、丁寧だ。
オレたちもサンドイッチを手に取る。
食事をしながら、会議はさらに深い部分へと進んでいく。
この国の大事な会議や軍議はいつもここで行われる。けど、今日ばかりは重みが違う。今から、世界がひっくり返るような真実が語られようとしているのだから。
円卓の上には、回収したばかりの『蒼』と『翠』、二つの宝玉が妖しく輝いている。
重苦しい沈黙を破り、仙王が口を開いた。
「お初にお目にかかる。我は仙王ラファエロ・ノルマンディだ。我々仙族の始祖であるゼウスは、ただの思念であった。貴殿が思念でなく、こうして実体として現れたのには我々も驚いている所ではあるが……どうやら、貴殿が一番驚いている様だな」
「いかにも……。ここに来る間に、少し整理させてもらった」
神龍レイは、自身の両手を握りしめ、確かめるように動かしながら話し始めた。
「ゼウス殿の思念を見たという事は、天界で起きた事は把握している前提で話を進める。まず、誤解なきよう言っておくが……某と悪鬼ラセツに、この世界を創造するような力は無い。ゼウス殿とサタンが初めて協力し、この世界そのものを創造したのだ。我々は、天界と下界を繋ぐ道の封印を解く鍵としてその封玉を創り、各々が思念を封じた。そして最期の力で各々自身の因子を持った種族を創り上げ、消滅した……はずだった」
誰も口を開かない。皆、神話の真実に聞き入っている。
神龍レイは頭の中を整理しながら、慎重に言葉を選んでいるようだ。
「某が何故、実体として現れたのかについてだが……。最期の力を込めて龍族を創造したつもりでいたが、ゼウス殿やサタンの様に世界の創造そのものには関わっていない我々には、多少の余力があったのかもしれん。その余力が、某の強い思念と共に封玉の力と反応し、この世界に肉体を再構成して蘇った……そう考えるのが妥当だろう」
あくまでもこれはレイの推測だ。しかし、当事者である彼の言葉には説得力がある。
一呼吸置いて、レイがオレの方を見て目を細めた。
「ところで、先程から気になっているのだが……何故下界に『神族』がいるのだ? しかも其方は黒髪だ。黒髪の神族など見たこともない。それに、そちらの者は緑色の眼……下界で一体何が起きている?」
レイの視線が、母さん、オレ、そしてトーマスを行き来する。
レイの眼も、オレや母さんと同じ鮮やかな青紫色だ。
龍族の始祖が、なぜ神族と同じ眼の色をしているのか。オレも気になっていた。
仙王が説明を引き取った。
仙族を退化させ、他種族の抑えとして人族を創った事。
天界の二種族の間に生まれた子がソフィアに憑依して下界に降りてきた事。
そして、オレが神族であるソフィアと龍族の間に生まれた子である事。
要点を掻い摘んで話すと、レイは驚きを隠せない様子だった。
「なるほど……あの二種族の混血か。まさかそんな事が起こり得るとはな……。とすれば、全ての因子が揃った者という事だ。あの道を通れたのにも納得がいく」
「レイ殿、一つ問いたい。何故あなたの眼は、神族と同じ青紫色をしておるのだ? 我々仙族の眼は青、龍族の眼は黒だ。創造主の因子にも、その色は無いはずだが」
仙王の問いに、レイは自分の目元を指差した。
「この眼は、我々の因子を合わせて神族を創る際に、ついでにゼウス殿から付与された物だ。ゼウス殿の眼は仙族の其方達の様に青い。仙と龍の因子が混ざれば、この青紫色になるようだ」
なるほど。因子の掛け合わせで眼の色が変わるのか。
確かに母さんは、魔神ルシフェルの眼の色は琥珀色だったと言っていた。あれはまた別の組み合わせなのだろう。
「仙族の因子を大幅に削れば緑色になるのか……それは知らなんだ。わざわざ種族を弱体化させる意味も無かった故にな」
「我々は、それを『仙人』と呼んでいる。仙人同士の子は人族として生を受け、眼の力は無く寿命が短いが、その分、子を多く産み繁栄する。今やこの下界で一番多い種族は人族だ」
「なるほど……。数の論理か。良く考えたものだ」
レイは感心したように頷く。
そして話は本題、魔神ルシフェルの話題へと戻った。
母さんが緊張した面持ちで口を開く。
「私は『魔封眼』を開眼しました。天界での混乱の最中、偶然私に魔神ルシフェルが憑依し、この世界に来ました。そして様々な事があり……こちらの息子のユーゴの中に、私の眼の力で魔神を封印していたんです」
レイは興味深そうに頷きながら聞いている。
話の続きを、仙王が引き継ぐ。
「その後の事だが、我とそちらのユーゴの異空間に、それぞれこの二つの封玉を入れていた。そして敵方にいる魔族、マモンの持つ異空間には、残りの二つの封玉が入っていた。我々三人が重なり、空間が接触した時、四つの封玉が共鳴し……ソフィアの封印が解かれ、あろうことか二人の身体まで創造したのだ。レイ殿、封玉とは一体何なのだ?」
レイは腕を組んで天を仰ぎ、少し考え込んだ後、静かに語り出した。
「まず、某も封玉の全てを理解しているわけでは無い。それを前提として話すが……天界と下界を繋ぐ道は、ゼウス殿とサタンの強力な封印術で閉ざされている。その鍵である四つの封玉の力は、その封印術式を『反転』させ、道を『創造』する」
創造。その言葉が重く響く。
「異空間の中にあれど、封玉同士は共鳴するだろう。その強大なエネルギー干渉によって、其方の体内にあった封印術式が反転し、解かれた。そして封玉の持つ『創造の力』が暴発的に作用し、二人の魂を核として、かつての肉体を創り上げた……そう見るのが自然だろう」
神々の御業だ。何があっても不思議じゃない。その一柱であるレイの言葉だ、信憑性はこの上ない。
謎が解けると同時に、事態の深刻さを改めて突きつけられた気がした。
ふと時計を見ると、いつの間にか正午を回っていた。
緊張が続いたせいか、空腹を覚える。
シャルロット女王の計らいで、円卓にそのまま昼食が運ばれてきた。
「少し休憩にしましょうか」
運ばれてきたのは、話をしながらでもつまめる様なサンドイッチと、香り高いコーヒーや紅茶。
豪華なフルコースもいいけど、王たちは意外と普段のランチにはこういう軽い物を好んで食べるようだ。
神龍レイは、皿に盛られたサンドイッチをじっと見つめると、一つ手に取った。
そして、大きな口を開けてかぶりつく。
「……む、これは美味いな」
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