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第六章 四種族大戦編
トーマス VS マモン
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僕とユーゴの前には、元凶である二つの影――魔神ルシフェルと魔王マモンが立っている。
この戦を仕掛けた理由が「暇潰し」だと言い放つほど狂った奴らだ。魔王と言えど、後方でどっしり構えるなんてことはしないだろう。
そう読んでユーゴと行動を共にし、乱戦の中でついに二人を探し当てた。
ルシフェルは腕を組んだまま、殺気を隠そうともせずにユーゴを睨みつけている。
先に口を開いたのは、妖艶な笑みを浮かべるマモンだった。
「久しぶりね二人共、元気そうで良かったわ」
「お前の暇潰しのお陰で、今も多くの兵士が血を流して倒れてるんだ。ゆっくり話してる暇は無い」
ユーゴが冷たく言い放つ。
「まぁ、そう目くじらを立てないでちょうだいよ。ワタシだって、仲間を亡くしてるんだから」
マモンが肩をすくめる。
さっきユーゴの通信機に、鬼王シュテンが落ちたと連絡があった。斃したのは里長だ。
里長も瀕死の状態らしい。胸が痛むが、今は誰が倒れようとも後ろを振り返るなときつく言われている。何があろうと、目の前の敵を倒すだけだ。
「あぁ、そうらしいな。龍王を瀕死に追い込むとはな、鬼王も相当だったらしい」
「……まさかテンが負けるなんてね」
マモンの顔から笑みが消える。
「薙刀はリーチは長いけど、懐に入られたら不利な武器。でもあの子は、その弱点を克服するために『見切り』の能力を開眼したの。それからは誰一人としてシュテンに一本入れた者はいなかったわ。……龍王は相当ね。流石は二千年以上、王として君臨した男だわ」
眼の力とは『願望』。
自分の武器の弱点を憂いているうちに、それを補う力が開眼したんだろう。それを斃した里長も、命を削るほどの無理をしたに違いない。
ユーゴは『不動』を脇に構え、牽制の剣風を放つ。ルシフェルはそれを最小限の動きで軽々と避けた。
ユーゴも当てる気はなかったようだ。自分に敵意を向けさせ、マモンから引き剥がすための布石。
「魔神ルシフェル、お前の相手はオレだ」
「威勢がいいな若造が。オレ様に勝てると思ってるらしい」
ユーゴとルシフェルは互いに術を撃ち合いながら、余波で味方を巻き込まぬよう、戦場の彼方へと移動していった。
残されたのは、僕とマモン。
「ワタシの相手はアナタなのね。盾役なんでしょ? ワタシの相手が務まるかしら?」
マモンが値踏みするように僕を見る。
「僕たちは、龍族の戦闘技術の全てを叩き込まれてる。パーティー内では役割として盾役を担っているだけだよ。……まぁ、舐めてもらった方が僕もやり易い」
マモンの眼は、かつて会った時はあんな色じゃなかった。今は、血のように紅く輝いている。何かの『眼の力』を開眼していると見て間違いない。
『守護術 堅牢・夜刀神』
僕の『臨眼』は、身に付けている物だけでなく、自身の異空間内に収納している物の特性さえも写し取ることができる。
あの日回収し、鞣して保管してあるSSSランク相当の魔物、ヤトノカミの素材。その特性を全身に纏った。
『火魔術 炎魔召喚!』
マモンが先手を打つ。紅蓮の炎が襲い来る。
『守護術 堅牢・八岐大蛇』
僕は盾を構え、属性防御に特化したヤマタノオロチの特性を展開する。
業火が盾に触れた瞬間、霧散する。
ヤマタノオロチの革の属性耐性は凄まじい。中距離魔法の類なら、これで完封できる。
「へぇ、良い守護術じゃない。……いや、良い『眼の力』って言った方がいいかしら?」
マモンは感心したように目を細める。
喋りながら相手を探り、分析するタイプだ。だが、それに答えてやる義理はない。
「つれない子ね。どうせなら楽しく戦いましょうよ」
「戦を楽しむなんて事はない。つべこべ言わずに、かかってきたらどうだ」
「マジメな子。……良いわ、魔術は効かないみたいだし」
そう言って、マモンは異空間から一振りの剣を取り出した。
刀身が妖しく輝く片手剣。グリップが長めで、両手持ちも出来る形状だ。
確実に特級品。
僕も『鈴燈』を抜き、下段に構えて対峙する。
僕は様子見。
先に動いたのはマモンだった。
『剣技 刺突剣!』
速い。
里の剣技にはない、鋭い刺突技。
『守護術 堅牢・風黒龍!』
とっさに物理防御最強のニーズヘッグの硬い鱗を写した守護術を展開する。
だが――。
キィン! という音と共に、守護術が貫かれた。切っ先が革鎧を浅く切り裂く。
ヤトノカミの特性を身に纏い、術にはヤマタノオロチ、剣技にはニーズヘッグ。
三枚の堅牢による鉄壁の防御。それを、マモンの剣技は一点突破してくる。
厄介だな……そして速い。一瞬たりとも気は抜けない。
僕には、ユーゴの龍眼やジュリアの予見眼の様に、先を見る能力は無い。
里長たち達人の様な、神速の見切りの境地に達している訳でもない。
だからこそ、僕はただひたすらに守護術を磨き、いかに破られないかを突き詰めた。
守護術を突破されなければ負けることは無い。それが、僕が行き着いた戦闘法だ。
まだ身体は傷ついていない。問題ない。
「……無傷とはね。少しショックだわ」
マモンが軽く舌打ちする。言いながら構えは崩していない。来る。
『剣技 剣光の舞!』
踊るような連撃。僕の堅牢が全てを弾く。
『剣技 五月雨』
打ち終わりの隙に合わせた、雨のような剣戟。
殆どを剣と守護術で受け流された。ヒットしたところで浅い。
「なかなかやるわね。でも残念、ワタシも防御はかなり修練を積んだのよ」
マモンの剣には闘気と変質魔力を纏っているようだ。あの魔術とは少し違う使い方。自然エネルギーも組み込んで剣速を高めている。
ベースは仙神剣術で、そこにルシフェルの戦闘法を組み込んだハイブリッドといったところか。
厄介だな……。
ただ、僕の攻撃も確実に当たってはいる。
鎧も全身を守っているわけじゃない。金属鎧以外の部分は軽装のクロースアーマーだ。隙さえあれば、僕の剣技も通用するはずだ。
「さぁて。アナタはワタシに恨みがあるって言ってたわね」
マモンが距離を取る。
「でも、強い人達がいっぱいいる戦場で、アナタだけに構ってるのも勿体ないわ。悪いけど……終わりにさせて貰うわね」
マモンの瞳が怪しく光る。
何かしてくるな。堅牢をかけ直しだ。
「守護術 堅牢・夜刀神!」
「止まりなさい!」
マモンの声が響く。
同時に、身体が鉛のように重くなる感覚。
『剣技 光創の一撃!』
マモンが必殺の一撃を放つ。
正面から堅牢二枚で受け止める――ふりをして。
大技を放つ瞬間、マモンは珍しく大きな隙を見せた。
今だ。
『剣技 朧』
地を強く蹴って踏み込んだ。
一閃。
僕の剣技は、マモンの左腕を深々と斬りつけた。
「ぐっ……!?」
くそ……浅かったか……流石に立て直しが速い。
マモンは腕を押さえ、呆然としている。
ただ、僕は警戒を怠らない。
「ちょっと……何で動けるの……?」
やっぱり、何か『眼の力』を使った様だ。
斬り掛かる前に、「止まりなさい」と叫んでいた。相手の動きを強制的に止める能力か。確かに体が一瞬重くなった。強力だけど、僕には通じない。
「アナタの能力も底が知れないわね……それよりアナタ、このクロースアーマーお気に入りなのに、良くも切りつけてくれたわね……」
マモンの眼の力を無効化したのは、僕の能力ではなく『ヤトノカミ』の能力だ。
素材を持ち帰って研究したところ、ヤトノカミには、自身に向けられた敵性能力を無効化する力があった。どうやらその力の源は、空間内に収納している目玉にある様だった。
眼にその特性を写した僕には、マモンの拘束能力は通用しない。
マモンが肩で息をしている。
顔色が悪い。苦しそうだ。
「アナタ……何かしたわね……身体が……熱い……」
「さぁ、どうかな。僕は、お前みたいにベラベラと手の内を喋るタイプじゃないからね」
流石は即効性の猛毒だ。
僕の眼の力『臨眼』は、なにも守護術に特性を写すだけの能力じゃない。もちろん、攻撃に転用することも出来る。
『聯気』と共に、ヤトノカミの猛毒を持つ牙の特性を、『鈴燈』に乗せている。
かすり傷一つでも、そこから致死性の猛毒が侵入する訳だ。
「これは……不味いわね……解毒が……追いつかない……」
マモンが膝をつく。
好機だ。
『剣技 乱れ氷刃!』
猛毒に犯され、動きの鈍ったマモンに連撃を叩き込む。
もはや剣を受け止める力もなく、傷が増えていく。みるみるうちに顔色が悪くなり、瞳の焦点が合わなくなってきている。
「マモン。今、自分が何をされているか分からないだろう?」
僕は冷ややかに見下ろす。
「僕の家族たち、センビア族の皆も……何が起きたか分からないまま、お前の手で理不尽に殺されて行ったんだ。お前は、誰に殺されるか分かっているぶん、多少は幸せだろ?」
マモンは額に脂汗を浮かべ、必死に焦点を合わせようと僕を見る。その目に、初めて恐怖の色が浮かんだ。
「ちょっと……待ってちょうだい……。ワタシの最期が……こんな……だなんて……」
「お前が今まで殺してきた人たちの気持ちが、少しは分かったようだね。……向こうで懺悔するがいいよ」
鈴燈に、ありったけの聯気を込め続ける。刀身が唸りを上げる。
もうマモンは動けない。
『剣技 斬罪!!』
思いっきり地面を蹴り、一思いに首を飛ばした。
マモンの首が宙を舞い、胴体が崩れ落ちる。
「お前を処断するのに、いい技を教えてもらったもんだよ」
マモンの亡骸の横に、コロンと音を立てて『紅』と『黄』、二つの宝玉が転がり落ちた。
マモンが二つとも持っていたのか。皆はアレクサンドと一つづつ持っていると予想をしていたけど、こいつはアレクサンドすら信用していなかったのかもしれない。もしくは、アレクサンドが既に斃れたか。
確認は後だ。僕は二つの宝玉を拾い上げ、異空間に厳重にしまった。
僕の復讐は、これで終わったのか……?
まだ実感がない。胸の奥に空いた穴は塞がらない。
でも、まだ戦は終わっていない。感傷に浸る時間は後でいい。今は、大事な人がこれ以上犠牲にならないように。
僕は刀を構え、目の前の敵を斬るだけだ。
この戦を仕掛けた理由が「暇潰し」だと言い放つほど狂った奴らだ。魔王と言えど、後方でどっしり構えるなんてことはしないだろう。
そう読んでユーゴと行動を共にし、乱戦の中でついに二人を探し当てた。
ルシフェルは腕を組んだまま、殺気を隠そうともせずにユーゴを睨みつけている。
先に口を開いたのは、妖艶な笑みを浮かべるマモンだった。
「久しぶりね二人共、元気そうで良かったわ」
「お前の暇潰しのお陰で、今も多くの兵士が血を流して倒れてるんだ。ゆっくり話してる暇は無い」
ユーゴが冷たく言い放つ。
「まぁ、そう目くじらを立てないでちょうだいよ。ワタシだって、仲間を亡くしてるんだから」
マモンが肩をすくめる。
さっきユーゴの通信機に、鬼王シュテンが落ちたと連絡があった。斃したのは里長だ。
里長も瀕死の状態らしい。胸が痛むが、今は誰が倒れようとも後ろを振り返るなときつく言われている。何があろうと、目の前の敵を倒すだけだ。
「あぁ、そうらしいな。龍王を瀕死に追い込むとはな、鬼王も相当だったらしい」
「……まさかテンが負けるなんてね」
マモンの顔から笑みが消える。
「薙刀はリーチは長いけど、懐に入られたら不利な武器。でもあの子は、その弱点を克服するために『見切り』の能力を開眼したの。それからは誰一人としてシュテンに一本入れた者はいなかったわ。……龍王は相当ね。流石は二千年以上、王として君臨した男だわ」
眼の力とは『願望』。
自分の武器の弱点を憂いているうちに、それを補う力が開眼したんだろう。それを斃した里長も、命を削るほどの無理をしたに違いない。
ユーゴは『不動』を脇に構え、牽制の剣風を放つ。ルシフェルはそれを最小限の動きで軽々と避けた。
ユーゴも当てる気はなかったようだ。自分に敵意を向けさせ、マモンから引き剥がすための布石。
「魔神ルシフェル、お前の相手はオレだ」
「威勢がいいな若造が。オレ様に勝てると思ってるらしい」
ユーゴとルシフェルは互いに術を撃ち合いながら、余波で味方を巻き込まぬよう、戦場の彼方へと移動していった。
残されたのは、僕とマモン。
「ワタシの相手はアナタなのね。盾役なんでしょ? ワタシの相手が務まるかしら?」
マモンが値踏みするように僕を見る。
「僕たちは、龍族の戦闘技術の全てを叩き込まれてる。パーティー内では役割として盾役を担っているだけだよ。……まぁ、舐めてもらった方が僕もやり易い」
マモンの眼は、かつて会った時はあんな色じゃなかった。今は、血のように紅く輝いている。何かの『眼の力』を開眼していると見て間違いない。
『守護術 堅牢・夜刀神』
僕の『臨眼』は、身に付けている物だけでなく、自身の異空間内に収納している物の特性さえも写し取ることができる。
あの日回収し、鞣して保管してあるSSSランク相当の魔物、ヤトノカミの素材。その特性を全身に纏った。
『火魔術 炎魔召喚!』
マモンが先手を打つ。紅蓮の炎が襲い来る。
『守護術 堅牢・八岐大蛇』
僕は盾を構え、属性防御に特化したヤマタノオロチの特性を展開する。
業火が盾に触れた瞬間、霧散する。
ヤマタノオロチの革の属性耐性は凄まじい。中距離魔法の類なら、これで完封できる。
「へぇ、良い守護術じゃない。……いや、良い『眼の力』って言った方がいいかしら?」
マモンは感心したように目を細める。
喋りながら相手を探り、分析するタイプだ。だが、それに答えてやる義理はない。
「つれない子ね。どうせなら楽しく戦いましょうよ」
「戦を楽しむなんて事はない。つべこべ言わずに、かかってきたらどうだ」
「マジメな子。……良いわ、魔術は効かないみたいだし」
そう言って、マモンは異空間から一振りの剣を取り出した。
刀身が妖しく輝く片手剣。グリップが長めで、両手持ちも出来る形状だ。
確実に特級品。
僕も『鈴燈』を抜き、下段に構えて対峙する。
僕は様子見。
先に動いたのはマモンだった。
『剣技 刺突剣!』
速い。
里の剣技にはない、鋭い刺突技。
『守護術 堅牢・風黒龍!』
とっさに物理防御最強のニーズヘッグの硬い鱗を写した守護術を展開する。
だが――。
キィン! という音と共に、守護術が貫かれた。切っ先が革鎧を浅く切り裂く。
ヤトノカミの特性を身に纏い、術にはヤマタノオロチ、剣技にはニーズヘッグ。
三枚の堅牢による鉄壁の防御。それを、マモンの剣技は一点突破してくる。
厄介だな……そして速い。一瞬たりとも気は抜けない。
僕には、ユーゴの龍眼やジュリアの予見眼の様に、先を見る能力は無い。
里長たち達人の様な、神速の見切りの境地に達している訳でもない。
だからこそ、僕はただひたすらに守護術を磨き、いかに破られないかを突き詰めた。
守護術を突破されなければ負けることは無い。それが、僕が行き着いた戦闘法だ。
まだ身体は傷ついていない。問題ない。
「……無傷とはね。少しショックだわ」
マモンが軽く舌打ちする。言いながら構えは崩していない。来る。
『剣技 剣光の舞!』
踊るような連撃。僕の堅牢が全てを弾く。
『剣技 五月雨』
打ち終わりの隙に合わせた、雨のような剣戟。
殆どを剣と守護術で受け流された。ヒットしたところで浅い。
「なかなかやるわね。でも残念、ワタシも防御はかなり修練を積んだのよ」
マモンの剣には闘気と変質魔力を纏っているようだ。あの魔術とは少し違う使い方。自然エネルギーも組み込んで剣速を高めている。
ベースは仙神剣術で、そこにルシフェルの戦闘法を組み込んだハイブリッドといったところか。
厄介だな……。
ただ、僕の攻撃も確実に当たってはいる。
鎧も全身を守っているわけじゃない。金属鎧以外の部分は軽装のクロースアーマーだ。隙さえあれば、僕の剣技も通用するはずだ。
「さぁて。アナタはワタシに恨みがあるって言ってたわね」
マモンが距離を取る。
「でも、強い人達がいっぱいいる戦場で、アナタだけに構ってるのも勿体ないわ。悪いけど……終わりにさせて貰うわね」
マモンの瞳が怪しく光る。
何かしてくるな。堅牢をかけ直しだ。
「守護術 堅牢・夜刀神!」
「止まりなさい!」
マモンの声が響く。
同時に、身体が鉛のように重くなる感覚。
『剣技 光創の一撃!』
マモンが必殺の一撃を放つ。
正面から堅牢二枚で受け止める――ふりをして。
大技を放つ瞬間、マモンは珍しく大きな隙を見せた。
今だ。
『剣技 朧』
地を強く蹴って踏み込んだ。
一閃。
僕の剣技は、マモンの左腕を深々と斬りつけた。
「ぐっ……!?」
くそ……浅かったか……流石に立て直しが速い。
マモンは腕を押さえ、呆然としている。
ただ、僕は警戒を怠らない。
「ちょっと……何で動けるの……?」
やっぱり、何か『眼の力』を使った様だ。
斬り掛かる前に、「止まりなさい」と叫んでいた。相手の動きを強制的に止める能力か。確かに体が一瞬重くなった。強力だけど、僕には通じない。
「アナタの能力も底が知れないわね……それよりアナタ、このクロースアーマーお気に入りなのに、良くも切りつけてくれたわね……」
マモンの眼の力を無効化したのは、僕の能力ではなく『ヤトノカミ』の能力だ。
素材を持ち帰って研究したところ、ヤトノカミには、自身に向けられた敵性能力を無効化する力があった。どうやらその力の源は、空間内に収納している目玉にある様だった。
眼にその特性を写した僕には、マモンの拘束能力は通用しない。
マモンが肩で息をしている。
顔色が悪い。苦しそうだ。
「アナタ……何かしたわね……身体が……熱い……」
「さぁ、どうかな。僕は、お前みたいにベラベラと手の内を喋るタイプじゃないからね」
流石は即効性の猛毒だ。
僕の眼の力『臨眼』は、なにも守護術に特性を写すだけの能力じゃない。もちろん、攻撃に転用することも出来る。
『聯気』と共に、ヤトノカミの猛毒を持つ牙の特性を、『鈴燈』に乗せている。
かすり傷一つでも、そこから致死性の猛毒が侵入する訳だ。
「これは……不味いわね……解毒が……追いつかない……」
マモンが膝をつく。
好機だ。
『剣技 乱れ氷刃!』
猛毒に犯され、動きの鈍ったマモンに連撃を叩き込む。
もはや剣を受け止める力もなく、傷が増えていく。みるみるうちに顔色が悪くなり、瞳の焦点が合わなくなってきている。
「マモン。今、自分が何をされているか分からないだろう?」
僕は冷ややかに見下ろす。
「僕の家族たち、センビア族の皆も……何が起きたか分からないまま、お前の手で理不尽に殺されて行ったんだ。お前は、誰に殺されるか分かっているぶん、多少は幸せだろ?」
マモンは額に脂汗を浮かべ、必死に焦点を合わせようと僕を見る。その目に、初めて恐怖の色が浮かんだ。
「ちょっと……待ってちょうだい……。ワタシの最期が……こんな……だなんて……」
「お前が今まで殺してきた人たちの気持ちが、少しは分かったようだね。……向こうで懺悔するがいいよ」
鈴燈に、ありったけの聯気を込め続ける。刀身が唸りを上げる。
もうマモンは動けない。
『剣技 斬罪!!』
思いっきり地面を蹴り、一思いに首を飛ばした。
マモンの首が宙を舞い、胴体が崩れ落ちる。
「お前を処断するのに、いい技を教えてもらったもんだよ」
マモンの亡骸の横に、コロンと音を立てて『紅』と『黄』、二つの宝玉が転がり落ちた。
マモンが二つとも持っていたのか。皆はアレクサンドと一つづつ持っていると予想をしていたけど、こいつはアレクサンドすら信用していなかったのかもしれない。もしくは、アレクサンドが既に斃れたか。
確認は後だ。僕は二つの宝玉を拾い上げ、異空間に厳重にしまった。
僕の復讐は、これで終わったのか……?
まだ実感がない。胸の奥に空いた穴は塞がらない。
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