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ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》
01《カフェオレ》
しおりを挟む地平線が見えるぐらい遠くが見渡せる燦々とした平原。
空を超え、宇宙空間にまで達する断崖絶壁の壁。
荒れ果てた荒野には家を1件丸呑みにしてしまいそうな生物の骨があり、それを住処にする二本足で経つ生物がいる。
年中無休で鳴り止まない、恐ろしく轟く雷雲。
いつからか毒素を帯び、ぐつぐつと何故か煮えている緑色の沼地には様々な生き物の死骸が浮いている。
天から降る雷帝の一撃を空に翳した掌で受け止める。
海を渡り、空を駆け、とうとう辿り着いたんだ。
「ようやくかぁ~」
ここは世界の果て? 終焉の地? などでは無く。
どこにでもある、ごく平凡な国の、ごく平凡な家の、ごく平凡な少年の部屋。
パチリパチリと変化するのはテレビの画面、2本の腕、10本の指を必死に使い叫んでいる。
「ふぁ~一旦ボス戦前に休憩~」
手に持つコントローラーを地面に置いて、両手両足を精一杯地面にくっつけ広げるそれは、どこにでも当たり前にいるゲーム好き。
俺の名は《桜木 進》
どこにでも居る普通の引きこもりである。
♢
ミーン……ミンミンミンミンミー。
ミーーーーン……ミンミンミンミンミー
夏に照り付ける太陽というのは、引きこもりにとっては目を殺しにくる最悪にして最凶の剣だと思う。
「あっづーーー……」
家から出て10秒。控えめに言って死ぬかもしれない。
「……今日は曇りだって言ってたじゃん……」
天気予報お姉さんの言葉を思い出す俺。
「明日は全国的に曇り、風も強く久しぶりに涼しい一日となるでしょう」
・
・
・
「うそつき悪女……」
ポロッと愚痴を零す引きこもりの俺、何故そんな俺が今日外に出てきたかと言うと
「やっぱ戻ろかな……いや!!」
顔を横にブンブン振る。
「俺は……ユグシルトの新作、絶対手に入れるんだ」
つまり、家でやってるゲームの最新弾が出たからに他ならない。
「ふぅ……行こう」
空から襲い来る熱光線に対し、手に持ったチラシにより最強のシールド魔法を展開する。
「……うん、死ぬ」
まぁ当然ただチラシで顔を隠すだけで熱を防げるか? なんて問われたら無理だわな。厨二病を患ってるんだ変な目で見ないで欲しい。
久しぶりの外、のそのそと歩く足、ていうか汗なんていつぶりにかいた? お風呂に入ってから出てきたはずなのに、なんだか身体が臭い気もする28歳の夏であった。
♢
まぁ本当に死ぬなんてことはそうそう無い。
例え数年にも渡り引きこもりして体力皆無だからといっても、1キロも無い近所のゲーム屋まで歩くなんてわけない事だからさ。
「はぁぁ~! はぁ……はぁ~! はぁ……!」
いや、うん。そりゃ膝ぐらい押えて下向いて息整えるぐらい誰だってする事だろ??
「ねぇねぇママ~」
「どうしたの?」
「あそこの人、工事現場にある機械みたいな音してる~」
「こっこら! そういうこと言うのはやめなさい!!」
……俺の事、発電機か何かって言いたいのか?
だが俺はその程度のことで怒りはしない。めちゃくちゃ恥ずかしいけど
なんせもう目と鼻の先、ていうか1枚ドア向こうにはめちゃくちゃ欲しかったゲームが売ってるんだからな。
元々、魔法要素しか無かったユグシルト、今作からは剣や斧、ハンマーや双剣、様々な武器要素が追加されるらしいんだ。
「これでつまらなかったら、レビューに文句書いてやる!!」
1歩踏み出すと俺を迎え入れるようにドアが横に開いていく。
まるで目に見えるんじゃないのか? そう思えるきらきらして感じる冷たい風を全身に纏いいざ出陣!!
前もって情報は手に入れている。向かうは一直線、レジ前のおすすめコーナー!!
だっ、だっ、だっだっだっだっ! だっ! だっ!
ドン!!!!
「へ?」間抜けな声が出たと思う。それは頭の中でめっちゃ鮮明に何度も再生されたから、よーく理解してる。
「なんで??」
レジ前、おすすめコーナー、その前で呆然と立ち尽くす俺に声がかかる。
「すみませんお客様、こちらに陳列していたゲームは大人気で、今朝完売しましたよ」
「あっ……そうですか……」
ガクッと膝から崩れる俺。
「お客様! お客様!」心配そうに店員は俺にそういった後告げる。
「他のお客様のご迷惑になりますので、すみませんが……」
あっ全っ然心配してなかったのね、むしろ少しウザそうな視線を俺に送ってることは、店員の方見てないけど感じるわ。
ウィーーーンと開く自動ドア。
地獄へようこそと言わんばかりに熱風が俺を歓迎する。
「ははは……はぁ」
自動ドアから外へ。
なんだろう、楽しみもなく帰路に着くのってこんなにも辛いものなんだっけ?
いつもなら急ぐ様に家に向かうのだが、今日はそんな気分にもなれない。
店前の自販機でジュースでも買って帰ることにするかな……
「んーしょ、んーしょ……!」
ショックを受けたまま自販機の正面に突っ立っている俺。
何故買わないのかと言うと、流石にショックが大きすぎて買い方も忘れたって訳では無い。
「ジュース……どして出てこない」
流石にぼーっとしてる俺でもそれはわかるぞ。
たぶんちっこい君がお金を入れてないからだろ。
辺りをキョロキョロと見渡す。親らしい人物は居ない。
子供……だよな?
身長はパッと見俺の胸ぐらいだから130cmぐらい、ピンクの帽子を被り、ピンクと白のローブを着ている服装的に女の子だな。
この辺は超ド田舎で、ジュースを買える自販機は俺の家に帰るまでで、ここに1つしかない。
かといって親が現れる気配もない。
「喉乾いた、ふにゅーー!! ──」
必死に背伸びし1番上の列にある、カフェオレを押してるな。
……子供がコーヒーってあまり良くないんじゃないのか?
まぁたぶん、それを押してる理由は……カフェオレに付いた可愛らしい生物の絵が理由なんだろうけどさ。
「ねこのこか」つい零した言葉、なんせ俺はこの絵にうつる生き物を知ってるのだからな。
……ユグシルト……新キャラだったよな……はぁ
名前《ねこのこ》種族《ねこのこ族》
人間でも魔物でも獣人や魔人でも無い、新たな種族ねこのこ。
新作のユグシルトの世界で冒険者をサポートする為に産まれた、猫耳としっぽが付いた美少女。
今作の目玉で、色々な物とコラボしてるって聞いたが……まさかカフェオレともコラボしてるとはおもわなかったな。
じーっとカフェオレに載る美少女を見る俺。
「ふぇ?」「ん?」
違和感に気付き下を見る。
ねこのこだな。
「ねこのこ、好き?」
まぁ好きか嫌いかを訊ねられたとしよう。
水色の長い髪に透ける様な白い肌、虚ろに携えた緑色の瞳に無邪気に飛び出す八重歯。
身長130~140、体重25~35、主人公を父と仰ぐその様はまさに
──ザ・ロリ!!! だがそれでいい!!
世間でこれを好きなんて言ったら俺は変態ロリコン野郎と言われてしまうかもしれないだろうな、だがゲームのキャラ、現実とは違い現実ではありえない事、だからこそいいんだ!!
だから答えはNO!! ではなく。
「好きに決まってんだろ」
俺は引きこもりで変態ロリコングと呼ばれようが、どーーーでもいい!! 推しのゲームだぞ? 可愛い美少女だぞ? んなもん好きは好きに決まってんだ。世間体など、どーーーでもいい!!
可愛いは愛でる、可愛いこそ正義、俺はそのオタク精神を忘れること無くゲームに取り組んでんだ! 文句あるか?
・
・
・
・
あれ
「ねこのこ?」
「ふぇ? ねこのこはねこのこ」
コクコクと頷く目の前の美少女はさっき自販機でジュース買おうとしてた女の子……だよな?
「えぇと、ユグシルトの?」
「ねこのこはユグシルトから来たねこのこ」
コクコクと再度頷く目の前の美少女は、さっき必死に背伸びしてた女の子……だよな?
「あれ飲みたいのか?」
コクコクと頷く目の前の美少女、もちろん俺はジュースを買ってあげる。
ガコンッ!
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