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ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》
06《成長》
しおりを挟む子供の時間が過ぎていくのは速いという。
知ってる、だって実際めっちゃ時間経つの早いしな。
「マテ!!」
「にゅ!!」
この世界に産まれなんだかんだひと月が経った。
俺はなんと、普通に走るし喋れるようになってたりする。
たぶんあれだ、これは成長というより……
前世の記憶がある云々よりも、赤子の身体を気遣うことも無く、自分の思うがままいじり倒してくる、このねこのこから助かる為の進化だと思う。
俺が手を翳しマテと言うととりあえず止まってくれるんだがな。
「じゅるり……」何故こいつはヨダレを垂らすんだ……
緑色の綺麗な目、前世だと可愛いとしか思わなかった。
不思議なものだよな……こう、命の危機に晒されると、この緑の瞳がすっごい怖く感じるのだからさ。
「にゃ!」「マッマテ!!」
ほら、一瞬でも気を抜いてねこのこから目を逸らすと今にも飛びかかろうとしてきている。
「ふふ、ねこのこちゃんいつもススムの面倒見てくれてありがとうね」
やっぱこの母さんの目は節穴だ。いや……脳内お花畑なのかもしれない。
「かあしゃん!! ボク、ねこのこに食べら……ぎゃーー!!」
「ふふ、お母さんちょっと洗濯干してくるからね~」
やられた。油断した。死ぬ!!
「むにむに~むにむにむに~」
母さんに物申した途端にねこのこに押し倒された俺、まぁねこのこは押し倒す際にはさっと抱きつくように押し倒してきて、後頭部のとこに手を当てぶつけるのは防いでくれるが……
俺の下半身に乗り逃げられないようにホールド、からのお腹を両手でむにむにしてくる。
「やめろーー!! お前は猫か~!!!」
コクコクと頷かれた。まぁたしかに……名前も耳も猫だけど……猫なんだが、人語を喋る生き物としてそれでいいのかよ!!
「やっやめっ、こっこしゃば……うひゃ、あはははは」
絶対いつか笑い死にさせられる日が来ると思うわ。
♢
生後3ヶ月の夏。
最近知ったが超がつくほどのど田舎の村に生息中の俺。
今は小さな足をぶらぶらさせ縁側に座っている。
「ねこのこのこのこのっこのこ~!」
最近ねこのこが母さんの手伝いを初め、俺はそれをぼけーっと見るのが好きなんだよな。
なんせ、水色の髪をした美少女が赤毛美女(母さん)と洗濯物干してんだぜ? 襲われさえしなければ目の保養、最高の映像でしかないからな。
「本当にねこのこちゃんは凄いわねぇ、まさか風操作が出来ちゃうなんて」
コクコクと頷くねこのこ、母さんが撫でるとドヤって顔してる。
まぁこれに関してはドヤるのも頷けるものだな。
この世界はユグシルトの世界に似た異世界、とはいえ魔法が使えるのはほんの限られた才能ある者だけ見たいだからさ。
あっでも、才能がなくても簡単な魔法ぐらいは修行したら使えるようになるらしいぞ? でも洗濯物を干すような繊細な操作を可能とする、操作をくわえた魔法は生まれつきの才能が殆どらしいな。
この間母さんに読んでもらった絵本《勇者物語》と、家に沢山ある教材《勇者になる為の本》に書かれてたから間違いないと思う。
「僕もいつか使えるようになるのだろうか……」
あーそうそう、喋れるようになって間もなく、俺って一人称は母さんが激おこするのでボクに変えられた。
変なとこ厳しい母さんでもあるようだな。流石にママって呼ぶのだけは勘弁願ったけどな……。
「ちち!」
「マテ!!」「にゃ!」
最近……ねこのこが目の前に来ると反射的にしてる気がする。
「……えと、なんか用か?」
「にゅ、ちちも魔法使え! 手伝え!」
なぜに命令口調なのか、まぁなんか慣れたけどな。
ん? ああもちろん俺も魔法は使える。なんたって……一応勇者みたいだからな。将来的にだけどさ。
目の前には大量に干された洗濯物。
なのだが、今日は風が強いのでこのままだと飛んでいってしまうだろう。
ねこのこの繊細な操作魔法は確かに凄い。
けどな、俺はその更に上をいくのさ、ふふん。
「悠久たる大気の子にして、自由を司る風の精霊達よ──汝求めし答えを示すため、心通わせ我が身と踊れ──」
これは風魔法の詠唱、ねこのこはなんか独特な詠唱で何故か魔法を発動させているが、本来は魔法を使うにはその魔法に見合った詠唱を唱える必要がある。
詠唱を唱えると、他者には見えない呼び出した精霊たちが見えてくる。
今回呼び出したのは風の精霊、強い魔法じゃないので微精霊だろう、緑色に光る粒って感じだな。
これが出たら後は魔法名を唱えるだけで発動する。
「ウィンドハンド!」
風の精霊が俺の手に宿り、僕の手は他者に見える程に濃い緑色の光を纏う。
あとは感覚だな、手を器用に操作すると俺が見る目標、洗濯バサミは風に舞い、あとは風の力でぎゅっと開き、全部の洗濯物に付けてくだけだ。
「これでいいか?」
ねこのこはコクコクと頷いた。
「がはっ、やっやめっ、あは……あははは、やっやめてく…!」
何故、ここで終わればかっこいいと言うのに、このねこのこだけは俺をこう揉みくちゃにしなきゃ気が済まないのか……
「ふふ、本当に仲良しね~……それにしても、本当に我が子が勇者になる子で、こんなに高等な魔法をいとも簡単に扱っちゃうなんて、未だに信じられないわ」
笑いながらで申し訳ないが、俺もこの俺を押し倒すねこのこが、勇者をサポートする為に生まれた存在ってのが信じられません。
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