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ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》
22《覚悟》
しおりを挟むしくっ……しくっ……
「はぁ……」女々しいな、こいつ本当にこれで冒険者してるのか? 冒険者ってのは死んで当たり前の職業だってのに……
「おじいちゃん……ごめんなさい、ボクを守ってたから……うぅ」
いや、確かに守ってはいたが……あの攻撃だと、剣で防ごうとしてたこのおじいさんにそもそも防ぐ術はなかっただろ。
俺達が居なかったとしても結果は同じだ……むしろ
「ゴブリンってのは学ぶ魔物だ、村から戦える奴を集めて一度この森に向かわせたって言ってたからな、その中に矢を使う奴と剣を扱う奴がいたんだろ……あんな数の矢に狙われたら、ちょっとやそっとの剣士だとどうしようもないからな」
こんな子供に命の責任を持たせたという方が、おじいさん的にきついもんがあるんじゃないか? と思ってフォローを入れて見たつもりなんだけどな。
少年は俺の方を向き立ち上がり、泣きじゃくった瞳を俺に向け叫ぶように言ってきた。
「おじいちゃんは……おじいちゃん……は!! 弱くなかった!! ちょっとやそっとの剣士じゃなかった!! ボク、今回のクエスト……おじいちゃんが嘘つきだって、強い訳ないって付いてきたんだ……ボク……ボク……どうして……うあーーーーーん!!」
まじか……この子供、まさかあのおじいさんと知り合いだったとわ。
つまりあれか、このおじいさんを焚き付けてきた張本人って訳かよ。
膝を折り泣き崩れる少年を前にかける言葉が見当たらない。
たしかに可哀想だが、こうしてる間にも、巣穴からゴブリンがまた湧いてくるかもしれないんだよな……
かなりの魔力を消費するが……仕方ないか
童話の中にある、人間が行うには不可能とさえされる魔法。
だからこそ、童話の中に当たり前のように載るそれを、本物の詠唱だなんて信じる者は少ない。
ゲームの世界だと、確かラスボス前にヒロインに教えられるんだっけ……えぇと、ヒロインの名前……名前……あれ???
──歳かな、全然思い出せん……まぁいいか。
「おい子供」
「うぅ……ごめんなさい、ごめんなさい」
全く聞いてないな。
名前も知らない冒険者をわざわざ助けるってのは、俺的には得も無いしやってやる道理はないんだけどな。
この子供が、これからこんな感じに泣いてんだなって考えながら生きるのも、中々にしんどい。
だからまぁあれだ、これは俺のためにすることであって……こいつの為じゃないんだからな!!
「あーもう、どけ! そろそろ時間が無くなる!!」
「えっ!?」
少年を風魔法で横に吹き飛ばした
この魔法には時間制限がある。
とはいえ、こればかりは童話の中にあった言葉からの情報だからな、かなり曖昧なものだが……たぶんまだ間に合うだろ。
本当なら、童話の中の勇者が、魔王を倒した後に殺されたヒロインを蘇生するって話だからな。
俺はおじいさんの前に立つ。
さすがの俺も、これ程大きな魔法を扱うにはそれなりの集中力を使うことになるからな。ウィンドウェアなんて使いながらはさすがに無理ってもんだ。
「おい子供!」
「ぼっボクは子供じゃない!! リオンって言う名前が」
今は中途半端な怒りを聞いてる暇はない。
「ならリオン! 今から僕はこのおじいさん生き返らせる魔法を使うからかなり集中する……だからまぁ、今からはお前が俺たちを守れ、いいな!!」
「へ!?」
驚くようだが、これはマジな話だ。
なんせゴブリンを殲滅してから数分は経っている。巣穴のゴブリンがさっきの俺の魔法の異常に気付き、巣穴から出てきてしまったら間違いなく襲ってくるからな。
とはいえ、まずは……
「まずは偵察のゴブリンが来るはずだ、確実に仕留めろ!! お前のその腰に指してる短剣は飾りじゃないんだろ?」
少年は腰を見る。柄を握りゴクリ吐息を飲み言う。
「……飾りじゃない……!」
そうは言うが……握ってる短剣、震えてるぞ……
仕方ない、少し背中押してやるかな。
「なら、次はお前がおじいさん守ってやれ」
少し荷が重いことを言うかもしれないが、それほどまでに集中力が必要なんだ。
まっでも、ゴブリンの攻撃が俺に届きそうなら……魔法を中断させてもらうがな。
「おじいちゃん……ボク、頑張るから……絶対帰ってきて!!」
ふむ、ようやく短剣が様になったな。これなら大丈夫だろ。
俺は俺で、そろそろはじめないとな。
背後をリオンに任せ、俺は手をおじいさんに当てる。
大気に漂う、優しく包み込んでくれるような純白な魔力のみを集め、おじいさんの身体を包み込み唱える。
蘇生魔法ってだけに、まず使用するのは聖属性の詠唱。
想像するのは神、見たことも無い存在であるが……不思議と想像すると頭の中にその姿は浮かび上がる。
絹糸の様に美しく靡く、長い金色の髪。
全てを知ってるが故、哀しむことを辞めた瞳は何者も移さぬ灰色に染まっている。
美しい外見に隠した、暗く辛い神と生まれし業。
なぜ俺は……これをこうもハッキリと、浮かべることが出来るのだろう。疑問もあるが、今はとりあえず集中する。
「天界の神樹に成る、母神が護りし禁断の果実──
無知ゆえの過ちは怒りに触れ、禁断の知識と共に堕とされた──
死の罪と転生の罪、繰り返すが我らの罪と知り償おう、なれば母神よ、その名に恥じぬ寛大な心、今一度我らへ示し、今宵、死の罪を祓う事を許せ──」
俺が大気から集められる魔力なんて微量。
けれど魔法による精霊の力を借りると、魔力は何倍にも膨れ上がり、俺とおじいさんを包み込む程の巨大な1粒の光となる。
そして、童話の中の勇者が唱える詠唱はここで終えている。
もちろん、聖属性の強い魔力を利用した魔法とはいえ、未完の魔法に人を甦らせるほどの力はない。
けど、俺は気付いたんだ。
時の女神と呼ばれる少女の物語、これも童話なのだが……その話にも蘇生魔法の詠唱があり、そしてそれも未完であるが……詠唱の中にある言葉の違和感にな。
俺は続けて唱える。
大気に漂う灰色の魔力、本来全ての魔力にはその魔力に見合った行動が見られるのだが、この灰色の魔力にその行動は一切無い。
それもそのはず、この魔力は時の魔力。
精霊にも当然存在する、生と死の概念から零れし存在。
母神が世界に堕とした者たちを監視する為に遣わせた者に、感情などあるわけも無い。
だからこそこの魔法は大変なんだよな。
ちょっとやそっとの魔力操作では全く言うことを聞いてくれない。
強く、ただ強く、俺の存在を知らしめ、時の魔力に興味を与える必要がある。
「……ほとんど魔力持ってかれた……」
だけどまぁ、俺とおじいさんを包む光に灰色の魔力が加わった。
あとは魔法を唱える。
「悠久なる、時の精霊達よ──
時に縛られし我が身に一刻の解放と改正を許せ──
罪深き日の理は許された、母神の名において、かの者へ、生命に満ちし器、若き血潮の息吹の時を与えよ──」
魔力は宙へ舞い、無数の時計の姿へと変化を遂げる。
それらを一気に集約するように、おじいさん目掛け放つ。
「《リザレクション》」
カチッカチッカチッカチッ、ゆっくり動いていた秒針は突如壊れたように遡りはじめる。
ガッチっ! と、音を止めおじいさんの肉体へと入り消えていった。
「ふむ、成功だな……ああ、忘れてた《ヒーリング》」
肉体に魂が戻っても、肉体に損傷が凄かったらまた死んでしまうからな、矢を抜いて回復させといた。
「がふっ!?」
ふむ、息を吹き返したようだな。たぶん矢を抜いた痛みからだろうけどさ。
「さて」
リオンはおじいさんに飛びつくことはない。
なんせ「やっやーー!!!」
ゴブリン共と戦ってたようだな。
ゴブリン相手に防戦一方だが、腕や足に深い傷を負ってるってのに頑張ったと今回は褒めておいてやろう。
「《ウィンドハンド》」
5体ぐらいだったので、風魔法で空高くぶっ飛ばしてやった。
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