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ススム編、第一章。《Lv255の赤ちゃん爆誕》
30《ゲーム》
しおりを挟むやるって決めたなら、こいつの攻撃なんてどうってことは無い。
俺はユグシルト・オンラインで、このボスを倒せないかと何十回何百回……いや、何千回もこいつと戦ったからな。
攻撃パターンは常に同じ、そして全ての攻撃は物理攻撃のみ、ウィンドウェアで攻撃を受けようとせず、常に回避を維持してさえいれば当たることなんて無い。
ていうか、ガードしたなら次こそ死ぬだろうな。
何故か目覚めることは出来たが、さっき受けたダメージ……正直絶望的に痛い。
もちろん俺の体力ゲージは真っ赤っか、かするだけで即死するかもしれない。
けど、そのギリギリの緊張感……嫌いではない。
リアルで動かす肉体、けれど……段々、不思議と世界が広くなっていく感覚がする。
視野が広くなった? と言うより……これはまるで……
「ちち、かくせ~」
今の俺にはねこのこの言葉も、キビトの攻撃も、攻撃の際割れる地面、崩れる壁、中央で今にも力尽きそうなおじいさん、全ての動きが不思議と見えていた。
この感覚を俺は知っている……まるで第三者目線で自分を見てるような感覚。
……ああ、そうだ、これは……ゲームだった。
2年ぶり、懐かしい。
「なっなんで当たらねぇんだ!! こいつの能力か!?」
ぶんぶん無造作に振り回してる様に見える攻撃だけれど、この攻撃も、あの攻撃も……「その攻撃も見飽きてる」
「見飽きてる??」
分からないのも無理はないだろうな、コイツにとっては俺との戦闘なんて初めてなんだからさ。
上回避、下回避、後ろ下がり、からの全力斜め下から股を通る、上に上がる。
「なっ!? どこに行った!!!」
慌てるのも無理はない。お前の攻撃、未来予知のように俺には見えてて、ちょっと工夫するだけで……赤子の体は大きなお前の股下を通って背後に回れる。
そういや、こいつって……全魔法無効化だったっけ?
消える魔法を使ったと勘違いしてるのか「どこだー!! 姑息だぞ人間がァー!!!」何も無い空間へぶんぶん分厚い腕を振り回している。
まぁでも、確かに……隠者の能力《ハーミット》は使用してるけどな。
気配、魔力共に感知できなくする魔法、感知できないだけで実質普通に見えるからな、ゲームじゃないこの世界では無詠唱なのに使い道ないなーなんて思ってたが役に立つ。
でも、こんなこと……この状態じゃなきゃ出来なかったと思う。
ゲームのコントローラーを握って、第三者目線で自分と自分の周りを見てる様な……自分すら他人事な感じだな。
さて、試してみようか……こいつは全ての魔法攻撃を無効化する、けれど素早い動きのせいで試すことが出来なかった、背後からの攻撃を……姑息姑息と、やたらと誇張する違和感、たぶん……それは
《アクセル──ウィンドガン──》
ウィンドアクセルを使用する要領で、爆発的な風魔力を瞬時に発生させる、それをウィンドガンの要領で一点に集約し、前方、がら空きの巨大な背中へとぶち込む。
「お前のウィークポイント、ここだぁーーー!!!!」
しゅんっと一瞬空気が閉じた様な音がした、途端に俺の視界も瞬時に下がり自身すら後ろへ吹っ飛んでいることを理解する。
前に放った巨砲、放った俺にまで及ぶ絶大な一撃。
現段階、俺が打てる魔法の中では最高の魔法だ。
「成功だ」吹き飛ぶ身体から刹那見える映像に歓喜した。どうしても倒せなかったボスを倒せた、それだけで今から受けるダメージは仕方ないとさえ思える程に──
「ちち、ねこのこ、1人にする、だめ──」
「ぬぁ!?」ぶおんと全身に背後からの俺を包むように現れた風。
「ねこのこ、死んでいい、言ってない」
……あっそうだった。つい忘れてたな、そういやこれ……ゲームじゃなくてリアルだったんだ……あっぶねぇーー!!!
吹き飛ぶ俺の身体を軽々受け止めたのはどうやらねこのこ、しゅたっと俺を抱いたまま地面におりた。
「たったすかったぁ~……」
「ちち、強くなった、偉い……でも、死ぬ、だめ、わかった?」
「あっうん……」
………………………ん? なんで俺こいつに怒られてんだ!?
俺をこの戦闘をやむ無くさせた張本人じゃねぇかよ!!!
「お主……やはりただの勇者の子ではないのぅ」
「あっ……生きてたのね」
そういやこのおじいさんの存在、かんっぺきに忘れてたわ。
ていうかあの戦闘中に、ねこのこがこそこそ~と救出してるの見えたっけ?
「ふむ、お主には2度救って貰ったことになるのか……」
いや、救うとかじゃなくて……全部たまたま? むしろ今回に限っては……そこのねこのこさんが助けたというかなんというか……でもま
「気にすんな!」俺が頑張ったことに変わり無し!!
ちょっと調子乗ってみた、その時であった。
がらがらがらと崩れる岩の音「えっとぉ……」
音のなる方向、やたらといやーな予感がする。
「……姑息……姑息、姑息、姑息!!!」
いやーブチ切れてらっしゃる。
ていうか、そろそろまじで逃げないとやっばいなー
ほら、なんかどすぐろーいのが集まってきてんじゃん? あれって確か……全方面攻撃、鬼王が唯一使う技らしい技、鬼王大激発だっけか? 1時間ぐらい攻撃避け続けてた時……なんか打ってきたんだよな。
「ねこのこ、さすがにそろそろ逃げていいか?」
と、尋ねてみると、何故かぎゅっと抱きつかれてる感触?
「ちち、なにしてる、逃げろ」
あっはい、さっきまで自身の言ってた言葉思い返してもらってもいいですかね?
まぁ逃げろって言うなら……そうさせてもらうけどさ。
なんせ、あの鬼王大激発……全方位攻撃の癖に、最大Lv100の頃に挑んだ俺にダメージ99999999だっけか? オーバーキルも良いとこだよな。
そんな馬鹿みたいな魔王顔負けの攻撃、ねこのこが気付かないわけもないってことか……
「運命を定めし天鏡よ──
旅立つ者へ、一時の平穏と帰郷の運命を齎せ──」
どこまでもどす黒い魔力が、この広い部屋を覆い尽くすよりも早く、真っ白な光が俺達を包みこんだ。
「《テレポート!!》」
画面は一気に切り替わる。
ここはあの吸血の木が群生する森を出た所、キョトンとした緑色の瞳の少年が1匹。
「ふぅ、ギリセーフってとこだな」
どうやらりおん、帰らずに俺たちのことを待ってたみたいだな。
りおんのキョトンとした瞳に映るのは、突然現れた俺たちではなく、どす黒い魔力に包まれ次々に崩れ落ちてゆく、とても大きな毒沼の森であった。
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