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ススム編、第二章。《Lv255の赤ちゃんギルド》
47《突然の凶報》
しおりを挟む夜を迎える、冒険者がぽつりぽつりと帰ってくる。
満身創痍な奴だっている。これはゲームじゃなくリアル、それをひしひしと実感させられる気がする。
俺が行けば余裕な依頼なんだろうけど、こいつら全員に俺がついてやれる訳でもない。
団長ってのは、待つことしか出来ない役職、出来るのは無事帰ってきてくれと願うだけなんだ。
「一日目、おわりましたねぇ~つかれました……」
「おつかれさん」
ギルドのカウンターにポツリと座る俺の横で、疲れた様子のリズ、この言葉からしてさっき受付に来た冒険者で最後だったってとこかな?
まぁ時間も今は夜の11時、リズの体力も限界ってとこなんだろ。
「それにしても、よかったですよね」
何が? ってこれだけだと思うかもしれないが、流石に団長を務めてる俺だ。なんとなくわかる。
「そうだな、初日から殉職する冒険者が居ないってのはかなり大きいと思う、行方不明者も無しなんだろ?」
「はい、とはいえ大きな依頼は遠征依頼が多いですし、数日後に帰ってくるので、全員が無事かどうかは正確にはわからないですよね、依頼者の方から報告がないって事は大丈夫だとは思うんですが」
「まぁうちのギルドの奴らは、なんだかんだで熟練者が多いもんな~新人が増えるとこうはいか無くなるからいやだよな」
「ですです……実は受付嬢って言うのは、1番冒険者の死を知る機会が多いですので精神的に来るんですよ~」
リズがカウンターにだらんともたれ愚痴をこぼすのも仕方ないだろうと俺は思う。
冒険者ってのは死を間近に生きる職業、ゲームとかでは死んでもロス無しで復活&宝だけとってきた~が出来るものだが、そんなのは通用しないのがゲームでないリアルってもんだからな。
死ねば終わり。実績積もうが、どれだけ修行しようが、高ランク冒険者になろうが同じだ。
たった一度の冒険で、ほんの少しの油断で、怠慢で、そんな些細な事で死んで終わる。
そしてそれらが冒険や魔物に対して起きたことなら、自分の責任なのでまだいい、最悪なのは……
ばーーん!!! と、ギルドのドアが突如開いた。
このパターンは、嫌な予感がした。
「もう今日の営業は終わって……え!? ハピナさん!? どうしたのですかその怪我!!!」
「!?」
慌てるリズに釣られ、俺も見るギルドの入口の方面。
全身に刺さってるのは矢、腕は切り落ち負傷なんて騒ぎではない。
力尽きるように倒れているのはハピナ、リズが急いで駆け寄ろうとしている。
これは……まずい!!
一瞬吐きそうになる。
ハピナには何度か抱っこしてもらったから温もりを知ってる。
そんな相手が今、俺の目の前で死にそうになってて、俺は……俺は……
「違う、俺は団長だ!!!!」
ぱーーんとカウンターを蹴るように飛ぶ、《ウィンドウェア》を息をするように展開、ハピナの方へ飛びつつメニュー画面を開く、取り出すのはエリクシール、まだ死んでないのならなんとかなる。
普通は飲んで回復しないといけないが……さっき一瞬見えたハピナの顔は潰れていた、飲ませる事はできない可能性が高い。
かといって一旦回復魔法で……なんて、時間を待ってる間、今この時にも死なれると蘇生なんてそう易々とできるものでは無い。
《ウィンドハンド!!》
エリクシールを空中へぶちまける!!
風に乗せ、駆けるリズより早くハピナを風で包み込んだ。
包み込む風にはエリクシールが含まれている。この薬は体内にさえ侵入したら効果があることは知っている。
突き刺さる剣や矢を風で抜き、エリクシールの成分を出血部から浸透させた。
「……すぅ……すぅ……」
「団長!! ハピナさんは無事です!!」
……よかったぁーーーーー!!!!!
もうほんとに心臓に悪い……いやさ、死んだら蘇生させたらいい。なんて思うだろ? けどな……
1度使用した魔法、メニューで確認すると効果が出るんだ。
そして、蘇生魔法なんだが……
一生に1度しか使用できない魔法。とのこと……
つまり、もう二度と使用できないって事なんだよな。
「リズ、これも飲ませろ」
おれはそう行って放り投げたのは気付薬。
「はい!!」リズはびんの蓋をサッと開け、ハピナに飲ませた。
ビクンっと全身が跳ねるような反応の後、ハピナは目覚める。
が……どうやらかなり急ぐ状況のようだな。
まぁ……ハピナのあの姿を見て、すぐにわかったからこうして起こしたんだが……
「ラルフが!!! ラルフ……ラルフをたすけてよぉぉお!! いやぁーー!!!!!!」
エリクシールを与えたから魔法による影響は解除されるはず、だからハピナの状態は凶暴化や呪いなどと言ったものでは無い。
これはショックからくるもの、焦りや恐怖が入り交じった状態、回復の必要は無い……というか出来ない。
だけど……これだと詳細が分からないな。
慌てようからしてラルフがやばいのは分かるが、道も何も分からなければ助けに行きようがないぞ
「……荒技だが仕方ないな、リズ!! 離れろ!!」
「はっはい!!」
エリクシールでは治せない=魔法による混乱や幻惑状態とは違う。
けど、言ってしまえばそれに似た状態だからな、とる方法は……混乱をアイテムを使わず解く方法だ。
右手に火の魔力、左手に水の魔力、両手をハピナの方へ翳し、一気にぶっぱなす!!
「だっだんちょう!?」驚くリズだが、仕方ないだろう。
これをこんなガードも何もしないハピナにぶつけたなら即死は間違いないんだからさ。
けど、俺がするのは……
「猫騙し!!!!」
パッッッーーーーーーーーン!!!!!!
と音が鳴る。
「キャ!?」耳を抑えリズが屈むほどの衝撃。
「……!? なっなに!? …………………?」
ふむ、どうやら成功ってとこかな。
……ねこのこがたまに嫌がらせで寝起きにこれしてくるんだが、まさか役に立つ日が来るなんてな……
人がなにかに困惑してる時、手っ取り早く覚ますには突然の衝撃を与えるのが速いって聞いたことがあるからな。
できるだけ巨大な感じってことも聞いたから、俺の知る限り最も驚いたことだよ……ったく。感謝するのはなんかヤダなので、ねこのこにお礼は言わない!!
「すまないリズ、あと片付け頼めるか?」
「へ? えぇ!?」
まぁ当然こんなことしたら、辺り一面はお湯で水浸し。
リズもハピナも水浸しで、下着が見えそうだから眺めたいが……今はそんなふざける時間はないからな。
何がなんやらなリズを差し置き、少し放心状態となってるハピナを連れて転移する。
移動先はハピナの持つリビングリングにより、最後に転移された場所を辿る!
「ハピナ!! ラルフが心配ならさっさと正気を取り直せ!!」
ハピナは助けてと叫んでいた、ならまだ生きてる可能性は高い。
団長は団員の向かった依頼には関わらず、団員を信じて待つのが決まりではあるが……こうして頼られた場合、あとまぁ……もうひとつの可能性の場合は関係ない。
なんか嫌な予感しかしないんだよな。
「だっだんちょう……だんちょう……どうしたら……わからないの」
まだ少し困惑が残っているが、この状態なら話は通じるだろう。
「俺が絶対何とかしてやる! だからお前はただラルフを見つけることだけを考えてろ!!」
「……うん……うん……ラルフを助けて……」
ハピナのダビングリングから転移場所の特定は済んだ。
ギルドの転移装置に行き場所を登録し向かう。
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