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ススム編、第二章。《Lv255の赤ちゃんギルド》
55《副作用》
しおりを挟むまーるい机に四角い椅子が無秩序に散りばめられた室内。
壁や棚等、ありとあらゆる物に紐が繋がれ、その紐にはカラフルな紙やタペストリーが飾られ、がらんどうな部屋を彩っている。
いつもならドアを開けて入るとシーンとしたリズ以外に誰もいないギルドだってのにな。
一瞬で見て、一瞬で俺は気付いたよ。
前世で……正直、何度か憧れた事はある。……と思う。
なんせ、こんなシーンを俺は見たことあるからさ……たぶん、夢、だったんだけどな。
……さて、どう反応したらいいのやら?
「お誕生日おめでとうススム──」
まず、第一声と共に飛び出してきたのは母さん。
魔力感知で居たのは知ってたが……なんとなくここは……
「へ?」知らなかったふうを装った方がいいと直感した。
そして続くように──
「団長! おめでとうございます!」
絶対これ、リズが徹夜して作ったっぽいな……目の下にこうもくっきりクマが出来るとは……わかりやすい。
「ススム殿、おめでとうございます」
シルマはまぁ……相変わらず紳士的な感じ
「だんちょ! おめでと!」
リオンって……本当に女、なんだよな? その軽装はやめた方がいいと思う、せっかく可愛いんだしさ。
「はわわ!! だっ団長様、本当に赤ちゃんだったのです、えと……その、3歳のおっお誕生日おめでとうございますですぅ」
ほらこの子を見習いなさい、ミルクは相変わらず可愛いなぁ~
「ふぇ!? ねっねこのこさま!?」
「ミルク、今日は牛さん」
…………ねこのこ、お前はもう色々ツッコミどころが多いい……ミルクのローブになぜ入ってる……とか、今は俺の誕生日を祝うとこだろ? とか……
「もぐもぐ、うまま~」……なぜ誰よりも先に料理を食べてんだってとことかな。
まぁいいや、ねこのこに関してはもう……色々諦めよう。
とにかくだな。
「「「「団長!! 3歳のお誕生日おめでとうございます!!」」」」
俺は今、すっげぇ嬉しい。
俺は今日で3歳となった。
20人ぐらいの大多数の人達、こんなにたくさんの人に祝福されている。
前世? なのかはわからんが、前の俺では絶対ありえなかった。
まぁでも、うちのギルドってば……馬鹿ばかり、一言祝いの言葉を言ったなら……俺の事なんて置いてけぼりだな。
飲むわ騒ぐわ踊り出すわ、好き放題やりたい放題。
「ふむ」
「だんちょうさま~~にゃ~~」
「………………はぁ」
真っ白な肌を桜色に染めて、猫みたいにゴロゴロ俺にくっついてるやつ、こいつ……ミルクな。
……誰だよ、こんな子供に酒のませたの……
「ミルク、これ飲んだら、おもろい」
「………………………………………」
ミルクのローブからニョキっとでてきたかと思えば……
このバカ猫、マジで1回捕まった方がいいと思うわ。
♢
酔っぱらい共がぶっ倒れたギルド内。
散らかる部屋の中、俺はリズに悩みを聞いてもらっている。
いやさ、これ……結構マジに悩んでたことなんだけど、3歳になって……あっヤバいって思ったから訪ねてるんだ。
そう、俺の悩みは……
「なぁリズ、2歳~3歳にかけて、赤ちゃんって成長しないのか?」
そう、俺の肉体についての悩みである。
「……? それはないと思いますよ? 人それぞれではありますが……私の知る子供達は、その年齢であっという間に大きくなったと感じる程の成長を遂げてますし」
「……やっぱそう……だよな」
「えと……2歳~3歳というと、もしかして……」
「うん……」
母さんにも、ススムは突然大きくならなくなったわね~いっそこのままずっと赤ちゃんだったらいいのに~……なんて──
……………………………………………ッ!
ぜってぇ嫌だよ!! この肉体……赤ちゃんの癖に、赤ちゃんの癖に……最近わかったんだが……無駄に性欲あるんだよ!!!?
なんかこうムラムラするというか……ぐぬぬとなるというか……
こんな美女美少女ばかりの世界で一生赤ちゃんだとか、なんの生殺しだよ!!
って話なんだ! ……俺だって男、今はこんな赤ちゃんの肉体だが、元は大人だったんだ……しかも童貞で終えた残念な……
異世界でぐらい……1度ぐらい!!
「そうですねぇ……私はまだ子作りを行った事がないので深くはわかりませんが」ふむふむ、リズさんは……ってそうじゃなくて、真剣に聞こう。うん。
「んーでも、……いえ、団長なら……」
リズは悩んだ様子……えっと、俺……なんかやばいのか!?
この溜めてる間、すっごい怖いからさっさと言って欲しいんだけど!?
「本来ならばありえないとおもうのですが……えぇと単刀直入にお尋ねしますが……」
「はっはい!」
「……? あのですね、団長はもしや……時の魔法を使用されたことはありますでしょうか?」
「ん?」時の魔法?? 時の魔法なんて使ったことは……ない筈、そもそも時の魔法ってのは……魔導図書館にもあるかないかわからないもので、もしもあったとしても最上階にあるような……
「その様子だと、時の魔法は使用したことは無いようですね……良かったです、時の魔法は使用した際、副作用で自身の肉体の時を止めてしまったり、早めてしまったり、もしくは遅らせる、戻すなんてこともあるそうですので」
淡々と語るリズであるが……どうしてだろうか?
なんかすっごい悪寒がする。
「……そんな副作用、初耳なんだが……」
「そりゃそうですよ、団長は赤ちゃんですし、最近魔法学園で習う様になった事を知らないのが普通です」
「へぇ~」
時の魔法の副作用か気をつけないとなぁ~
そういや、俺ってば一つだけ時の魔法っぽいの使ったような……
「あれ?」「どうしました?」
1つ、なんかすっごい事思い出したんだが?
冷や汗がサァーーーッと額から流れる。……あっ俺……1回使ってるわ……でっでも……
「あのさ、もしもだぞ? 時の魔法を1度使ったことがあるとしよう。1回ぐらいじゃそんな副作用ないよな?」
……そういや、死者を復活させる魔法《リザレクション》
あれって、時の魔法を第2詠唱に含ませて唱えるものだったような……いや、でも、1回だけだし……そんな……
「んー1回だけの使用でどうかなる、なんてことは聞きませんね、時の魔法の副作用は何度も使用することで、少しづつ肉体に変化が訪れると習うものですし」
「あっそうなのか」と、クール気取る俺だが内心は凄い。
よ……………………よがっだぁーーーーーー!!!!
まさか、まじで一生赤ちゃんの可能性出てきちゃったよ!!
なんて思ったが……俺が使ったのは1度だけ、リズが言う言葉的に問題はないってことだな。
なんかそうと分かれば、早く大人になってリア充の仲間入りしたくなるなぁ
……あーはやく大人になれないかなぁ~
「けれど、英雄が使うという聖級や、魔王や勇者等が使用する王級にもなると、1度の使用で肉体に影響があるかもしれませんが、確か時の魔法でまだ上級以上は未発見ですし、その辺は気にする必要は……必要……へ?」
なんだろう、全力で身体から力が抜けてゆく。
ウィンドウェアを解きカウンターの上にぽつりと座る。
……えぇと、なっないよなぁ……
メニューを開き、詳細を確認してみた。
蘇生魔法
魔法名《リザレクション》聖・時属性。神級
「天界の神樹に成る、母神が護りし禁断の果実──
無知ゆえの過ちは怒りに触れ、禁断の知識と共に堕とされた──
死の罪と転生の罪、繰り返すが我らの罪と知り償おう、なれば母神よ、その名に恥じぬ寛大な心、今一度我らへ示し、今宵、死の罪を祓う事を許せ──」
「悠久なる、時の精霊達よ──
時に縛られし我が身に一刻の解放と改正を許せ──
罪深き日の理は許された、母神の名において命ずる、生命に満ちし器、若き血潮の息吹の時を与えよ──」
ひとつ聞きたい。
「神級って……聖級、王級よりやばいかな?」
「神級……って、えぇ!?」
この反応から察するに、どうやら俺……結構まずいかもしれん。
「時の魔法で聖級より上の魔法、唯一判明はされてるけれど……使用方法は一切不明、聞いた事があります……まさか、団長……《リザレクション》を……」
あっ知ってたのね? そうそうそれだわ、でっどうなの?
「……《リザレクション》に関しては、時の女神と言われる童話で取り上げられるほどに有名で……そしてその話しは小さな頃から良く読み聞かせられててよく知ってるのですが……」
うん、俺もよーく知ってる……知ってるから、もう俺……アウトじゃね? なんて思ってるんだが……やっぱそうなるよね……
「時の女神とは、時の魔法を使用出来る少女が、自身の寿命と引き換えに大切な方を蘇生したってお話しです、寿命に関しては諸説ありますが、内容から察するに……寿命を支払い死ぬ……でなく、寿命が無くなったとは、歳をとることが無くなった。が有力……つまり」
「もし仮に俺が《リザレクション》を使用したなら、一生この姿のままかもしれないって訳か……?」
リズはいい辛そうに、コクっと頷いた。
ああそうか、つまりあれだな……俺の、男としての人生はもう終わりを告げたって事なんだな。
不老の赤ちゃん……えぇと「最悪なんだけど……」
人生やり直したい。
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