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ねこのこ編予告、第一章《偽りのねこのこ》
07《決意の魔法》
しおりを挟む魔王達は恐れていた。
それは敵にでは無い。自身が産んだ、自身を産んだ者。
魔王……いや、魔王の力を超えし存在、魔神王となった者に
近付くだけで精神を容赦なく食いつくし、洗脳し、傀儡とする。
産まれながらにして魔王となるべくして魔王となった少女。
それは人間だけに飽き足らず、自身が産んだ存在である魔王達にまで及ぶ、罪悪の力。
そう、とうとう勇者はたどり着いた。
魔王達が近付くことを拒む場所へ。
魔王達すら近付くこと叶わぬその場所へ。
けれどようやくたどり着いた勇者は足を止めてしまう──
それは恐怖……魔神王となった彼女の力に恐れた。
そんな訳はない、勇者が足を止めたのは……何度も心に決めた想いがまた折れてしまいそうになったからだ。
「……俺は、本当にこれで……いい……のか?」
些細な気の迷い、けれどそれを許すほど……魔王達の怨念は甘くなかった。
「やだ……やだ……ススム、なんで……なんで……」
頭を抱え泣くねこのこが見える。
必死に抑えているのだ、この気を逃さまいと、勇者を襲おうとする自身の能力を、ただ必死に──
けれどその力は抑えようとして抑えられるものでは無い。
「いや……やめて……すすむを……私の力でこわさないでぇえええええ、いやぁああああああ!!!!!!」
とうとう留めきれず、ねこのこの身体からおぞましい、悲鳴をあげるような闇の魔力が溢れ出した。
立ち止まった勇者の心を我が物にしようと襲う、傀儡の魔力。
「……くそ!!」
勇者の足は既に魔王の邪気に捕まれ身動きが取れずにいた。
けれど、勇者のそんな気持ちを……立ち止まってしまうことなど、初めから──この戦いが始まった時……いや、大好きな親友が魔王に侵食されたその日に彼女は理解していた。
だからこそ紡いでいた。
「遍く星の聖者達よ──
我が願い、我が想いを紡ぎ問う──
悪しき衣と聖なる衣、内なる想いは互いて落ちる、なれば我は想い訴えたる──
友との約束を果たす為、我が存在をここに示す為、泣く友の為、我が想いを貫く為、1片の迷い無き我が心へ、想いを繋げ、業なる力を授けよ」
ハルは大賢者の中でも突飛した天才児であった。
故に、20の頃にはほぼ全ての魔法を扱えてしまった。
故に、成長はそこで終わると思われていた。
けれど、ハルは違った。力が足りない、まだ足りない、足りない足りない足りない!! 嘆きどこまでも追求し求めた。
それは全てねこのこの為に……世界一大切で……世界一幸せを与えられなかった友の為に、ハルは存在しない新たな扉を開いた。
ユニーク魔法。
現在存在する全ての魔法を知った彼女だからこそなし得たそれは、自身の想いと想像により新たな魔法を紡ぎあげる。
故に、その魔法に名前はない。
けれど……のちに人々は語り継いだ。
ユニーク魔法《大賢者の到達点・慈愛》
「これは……ハルの魔法……!! ごめん……俺達が折れたら……誰があいつを助けるんだって話しだよな!!!」
ねこのこより溢れ出した闇の魔力。
1片にでも触れたなら、刹那に勇者の心は侵され崩壊するであろう邪悪の根源。
けれど、それを許さないのは相反する白の魔力。
友を想う白き魔力は、黒に染まる所か、黒の魔力を取り込み次々にその内に飲み込んでいく。
ハルの想いの魔法、ねこのこの闇を受け入れる覚悟をそのまま形にした魔法。
「……っ!! ……あはは、ねこのこちゃん……こんなに怖いの、ずっと1人で抑えてたんだね……やっぱり、ねこのこちゃんは凄い……でも、だからこそ、今日だけは……負けないよ!!!」
勇者は再度走る。
襲い来る闇の魔力はハルが全てその身をもって受け止める。
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