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15.夜の落とし物 2
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そうでーす!
いやいやいや、この状況で正直に答えられるほど、私の脳内もおめでたくない。
いや、これ、思いっきり私が月の乙女だってバレてるし。
どうしようofどうしよう!?
ひーん! 絶対知られてはならない人じゃん! ……でも、ライのルートで月の乙女って関係してたっけ??
(うーーーーん、私の月の魔力をどうにかして記憶喪失に……)
なんてことができるのか……!?
(土の魔力でふんわり埋もれて、どうにかして記憶喪失に……)
いやいやいやいや、まともなことが考えられない!!
こちらを真っ直ぐに見つめる金色の瞳から、ふいっと不自然に目をそらしてしまった。
「ち、違う、よ……?」
はい、これ絶対ばれたー!
どうしよううううう、ライの方を見ることが出来ない……。
「お前は……」
ため息交じりの声が聞こえたかと思うと、ライが私を抱き寄せた。
(えええええええ)
そして、ぎゅっとだきしめられた。鼻腔いっぱいに、ライが纏う香の香りが広がる。高鳴る鼓動に、息が苦しい。
「お前が月の乙女なら丁度良かった……。俺と来い」
「へ?」
「俺の住処にこい」
「それって?」
「竜の里だ」
「は?」
どうしよう、全然単語の意味がわからない。脳内に全然言葉が入ってこない。ただ呆けている私に、ライがくつくつ笑うのが聞こえる。
わー推しの笑顔だー。ライが笑うの見れるなんて不吉―。
絶対碌なこと考えてない笑顔だ―かっこいいー。
「……」
「……」
「……ええ? 竜の里に来いって……言いました?」
「ようやく理解したか。そうだ」
「え? なんで?」
「お前は俺の番だからな」
「わーナルホドー! ……ってなんで!?」
「今度は理解するまで早かったな」
真っ赤になる私をライは楽しそうに見下ろしてる。
「なななななんで!? 私とライって何もなくない!?」
「何もないとは薄情だな。俺はお前を気に入ったと言っただろう」
「それだけの理由!?」
「それだけとはつれないな? 月の乙女がお前だったならいっそ都合がいい。お前を連れ帰って俺の嫁にしてやろう。喜べ」
(えええええええええええ!!!)
またライが唇を寄せてくる。すっごい機嫌よさそうな笑み、即ち怖い。
え、嘘、そういうルート!? いつの間に!? 私なんかしたっけ??
あ、また唇が重なっちゃう……!
「--------誰だ!? そこで何をしている?」
こ、この声はっ!
近づいてくる二つのランタンの灯。
アルレーヌに、キース……!! 普段は絶対にお近づきになりたくない二人だけど、助けてぇぇ!
私は咄嗟にライの腕から逃れ、落ちたランタンと髪留めを拾いあげて、アルレーヌ達に向き合った。
「すみません! セレーネ・アイルスといいます! お、落し物をして、探しに来ていました!」
「ん……? 君はCクラスの者か? そちらの君は?」
「……Cクラスのライ・アスカルト。夜分に一人で出歩く彼女の姿を見て、何か危険があってはと思い、共だっていたのです、アルレーヌ殿下」
(はぁ!?)
さっきまでの傍若無人ぶりからは、想像もつかないような殊勝な受け答えをするライを、思わず見上げた。
「……そうか……。ちょうど近くの回廊を通りかかった時に園庭から妙な気配を感じてね……。キースと見に来たところだったんだ」
「大丈夫ですか? このような夜分は危険ですよ。探し物は見つかりましたか?」
あぁキースだ……。
っていうか、さっきの同級生(男子)と何をどうしてきたの……、マジで。
……と余計なことを考えていて、返事が遅れてしまった。
「……セレーネ」
ライにこつ、と背中を小突かれる。
「はいっ! ライが手伝ってくれたおかげで見つかりました! 今戻るところです!お騒がせしました!!」
急いで私はぺこっとお辞儀をした。
(逃げる……こんな地雷三人と相対するなんて……! ここは逃げるに尽きる……!)
お辞儀したまま地面を見つめ、ここから猛ダッシュしようと決心する。
ちらり、と見上げるとアルレーヌが、こちらをじっと見ている。
(え、なに……?)
「……ふむ、それでは、こんな夜分だ、僕達も一緒に送っていこう」
「!! そ、そそそそんなっ! 恐れ多いです!!」
「僕はこの学園の、引いては王国の者を守るのが務めだよ。こんな夜更けに女性を一人では帰せないよ。君を送り届ける名誉を僕にくれないのかい?」
アルレーヌはキラキラとした王子様スマイルでそう言った。
(うっ)
王子様にそこまで言われてしまっては、私はそれ以上言葉を返すことが出来なかった。
「申し訳ありません……。よろしくお願いします」
そうして私は、何故かライとアルレーヌとキースに送ってもらうことになってしまった……。
なんでだ、何故こうなった。
(え? っていうかライのさっきのあれって何? え、正気? 私、正気? 嫁とか里とか、好感度上がった時のかなり終盤じゃないと出ない言葉じゃなかった?? なんで今?? え??)
……私の頭は混乱でいっぱいで、私の白銀の色が残った一筋の髪をアルレーヌが凝視していることになど、気が付かなかったのだった。
いやいやいや、この状況で正直に答えられるほど、私の脳内もおめでたくない。
いや、これ、思いっきり私が月の乙女だってバレてるし。
どうしようofどうしよう!?
ひーん! 絶対知られてはならない人じゃん! ……でも、ライのルートで月の乙女って関係してたっけ??
(うーーーーん、私の月の魔力をどうにかして記憶喪失に……)
なんてことができるのか……!?
(土の魔力でふんわり埋もれて、どうにかして記憶喪失に……)
いやいやいやいや、まともなことが考えられない!!
こちらを真っ直ぐに見つめる金色の瞳から、ふいっと不自然に目をそらしてしまった。
「ち、違う、よ……?」
はい、これ絶対ばれたー!
どうしよううううう、ライの方を見ることが出来ない……。
「お前は……」
ため息交じりの声が聞こえたかと思うと、ライが私を抱き寄せた。
(えええええええ)
そして、ぎゅっとだきしめられた。鼻腔いっぱいに、ライが纏う香の香りが広がる。高鳴る鼓動に、息が苦しい。
「お前が月の乙女なら丁度良かった……。俺と来い」
「へ?」
「俺の住処にこい」
「それって?」
「竜の里だ」
「は?」
どうしよう、全然単語の意味がわからない。脳内に全然言葉が入ってこない。ただ呆けている私に、ライがくつくつ笑うのが聞こえる。
わー推しの笑顔だー。ライが笑うの見れるなんて不吉―。
絶対碌なこと考えてない笑顔だ―かっこいいー。
「……」
「……」
「……ええ? 竜の里に来いって……言いました?」
「ようやく理解したか。そうだ」
「え? なんで?」
「お前は俺の番だからな」
「わーナルホドー! ……ってなんで!?」
「今度は理解するまで早かったな」
真っ赤になる私をライは楽しそうに見下ろしてる。
「なななななんで!? 私とライって何もなくない!?」
「何もないとは薄情だな。俺はお前を気に入ったと言っただろう」
「それだけの理由!?」
「それだけとはつれないな? 月の乙女がお前だったならいっそ都合がいい。お前を連れ帰って俺の嫁にしてやろう。喜べ」
(えええええええええええ!!!)
またライが唇を寄せてくる。すっごい機嫌よさそうな笑み、即ち怖い。
え、嘘、そういうルート!? いつの間に!? 私なんかしたっけ??
あ、また唇が重なっちゃう……!
「--------誰だ!? そこで何をしている?」
こ、この声はっ!
近づいてくる二つのランタンの灯。
アルレーヌに、キース……!! 普段は絶対にお近づきになりたくない二人だけど、助けてぇぇ!
私は咄嗟にライの腕から逃れ、落ちたランタンと髪留めを拾いあげて、アルレーヌ達に向き合った。
「すみません! セレーネ・アイルスといいます! お、落し物をして、探しに来ていました!」
「ん……? 君はCクラスの者か? そちらの君は?」
「……Cクラスのライ・アスカルト。夜分に一人で出歩く彼女の姿を見て、何か危険があってはと思い、共だっていたのです、アルレーヌ殿下」
(はぁ!?)
さっきまでの傍若無人ぶりからは、想像もつかないような殊勝な受け答えをするライを、思わず見上げた。
「……そうか……。ちょうど近くの回廊を通りかかった時に園庭から妙な気配を感じてね……。キースと見に来たところだったんだ」
「大丈夫ですか? このような夜分は危険ですよ。探し物は見つかりましたか?」
あぁキースだ……。
っていうか、さっきの同級生(男子)と何をどうしてきたの……、マジで。
……と余計なことを考えていて、返事が遅れてしまった。
「……セレーネ」
ライにこつ、と背中を小突かれる。
「はいっ! ライが手伝ってくれたおかげで見つかりました! 今戻るところです!お騒がせしました!!」
急いで私はぺこっとお辞儀をした。
(逃げる……こんな地雷三人と相対するなんて……! ここは逃げるに尽きる……!)
お辞儀したまま地面を見つめ、ここから猛ダッシュしようと決心する。
ちらり、と見上げるとアルレーヌが、こちらをじっと見ている。
(え、なに……?)
「……ふむ、それでは、こんな夜分だ、僕達も一緒に送っていこう」
「!! そ、そそそそんなっ! 恐れ多いです!!」
「僕はこの学園の、引いては王国の者を守るのが務めだよ。こんな夜更けに女性を一人では帰せないよ。君を送り届ける名誉を僕にくれないのかい?」
アルレーヌはキラキラとした王子様スマイルでそう言った。
(うっ)
王子様にそこまで言われてしまっては、私はそれ以上言葉を返すことが出来なかった。
「申し訳ありません……。よろしくお願いします」
そうして私は、何故かライとアルレーヌとキースに送ってもらうことになってしまった……。
なんでだ、何故こうなった。
(え? っていうかライのさっきのあれって何? え、正気? 私、正気? 嫁とか里とか、好感度上がった時のかなり終盤じゃないと出ない言葉じゃなかった?? なんで今?? え??)
……私の頭は混乱でいっぱいで、私の白銀の色が残った一筋の髪をアルレーヌが凝視していることになど、気が付かなかったのだった。
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