転生した月の乙女はBADエンドを回避したい

瑞月

文字の大きさ
39 / 39

おまけ 眠り姫を起こすには ※

しおりを挟む
とん

 軽い音を立てて、竜の背から飛び降りた。
 ゴツゴツとした岩場に着地すると、俺の到着を待っていたのであろうレイが、手をぶんぶんと振りながら走り寄ってきた。

「ライ! おかえりなさい!」
「あぁ」

 そう告げた吐く息が、微かに白く染まった。肌に感じる温度も、引き締まるように冷たい。もうじきこの山間にも白い雪の訪れがあるだろう。
 ここほどではないが、昨晩までいた王都にも例年にない寒気が流れてきていた。
 常春のように年中を通じて温かかったアルストロメリアはもうない。あの国には、これまで経験したことのない冬が来るのだろう。

「セラはどうしている?」
「あぁ、また寝てる。今回は3日前から」

 竜の背に着けていた荷物を降ろしながら、レイはどこか気まずそうに、そう言った。思わず自分の眉間に皺が寄ったのを感じる。

「今回は?」
「わっ! 俺に殺気向けないでくれよ! ……ライがいない間に、眠り姫になるのは2回目かな。前回は2週間くらい前だよ。その時は丸2日間くらいだったけれど」
「――そうか」
「ずっとリンがついてるよ。俺もリンが休む時に交代でついてる。変わったことはなかったよ。そっちはどうだった? 相変わらず落ち着かない?」
「収束には程遠いな」

 女神の加護を失ったことに、民衆も気づき始めている。気候が乱れ始めてるからなおのことだ。穏便になんて生ぬるいことを言っていた革命軍側が悪い。

「あれ? ライ、里長への報告はー? また怒られるよー!?」

 そして俺はレイの声を無視して、そのまま自分の邸へと急いだ。


 ◇◇◇◇◇


「――あぁ、戻ったんですね。ライ」

 俺の姿をみとめると、寝台の脇に置いた椅子に腰掛けているリンが微笑んだ。
 赤茶色の髪を頂きに丸くまとめ、レイによく似た大きな丸い目を細めていた。

 こうして出迎えてくれるのが、愛しいセラではないことに、胸のなかに渋い思いが広がる。

「あぁ。セラは?」
「よく眠っています。息しているのか心配になるくらいに、深く。でもさっき寝返りを打ったから、そろそろ起きるのかもしれません。ライが帰ってきたのが分かるのでしょうね」

 そう言ってリンは、やっとライが帰ってきてくれて良かったですね、などとセラに声を掛けた。
 セラの眠る寝台からは返事がない。そしてリンは寝台の傍らで広げていたひざ掛け程の大きな刺繍をしまい、部屋を後にした。
 俺は羽織っていたローブを、長椅子にバサッと音を立てて投げると、セラの眠る寝台へと腰かけた。

「セラ」

 セラの身体の上に体重をかけないように馬乗りになり、その表情を覗き込む。
 寝台の脇に置いた燭台の明かりに照らされて、セラの顔が白く浮かび上がる。
 頬に確かに体温は感じるものの、微かに感じる寝息は小さく、唇にのった血色は薄い。閉じられた睫毛は、どこか濡れたように艶目いてはいるが、それはまるで魂の入っていない脱け殻のようだ。

 セラはあの塔から逃れここにたどり着いた後、一月程ずっと眠り続けていた。
 そして目が覚めてからも時折、こうして不定期に眠りにつくことがある。
 それは最近では、決まって俺が不在にしている時だった。
 ――まるで魂が、どこかへ旅に出ているかのように。
 眠り続けているという実感はセラにはないようだ。本人にとっては、刺繍の手を休めてちょっとうたた寝したはずが、朝だった程度のことらしい。長い夢を見ていた気がする、と。
 目を覚ました時に、二日や三日も経っているということにセラは気づいていない。

 ふと、鼻を花の香りが掠めた。
 視線を向けると、リンが生けたのであろう白い花が寝台の横に置いてあった。
 そこには、いつセラが目覚めてもいいように、水差しが。そして、セラの好きな花酒と砂糖を固めた菓子も置かれていた。

 ――以前、花酒を土産にした時、珍しく酔いがまわったセラが話していた違う世界の記憶。
 こことよく似た体験をしたという、ゲームという箱庭の世界の話。
 セラは前世の記憶、と言っていた。――それは果たして本当に前世なのか?

 あの日セラの語りだした世界の話に、俺は心臓に杭を打たれたかのように衝撃をうけていた。
 ――言い伝えとは違う、赤い星のもとに生まれた巨大な力を宿した白銀の娘。そして恐らく、輪廻を終えた最後の月の乙女。
 そんなセラが語る、別の世界の話はただの夢物語だとは考えにくかった。
 酔ったセラはそんな俺の様子にも気がつかぬまま、酔いに任せてそれは愉快そうに話をしていたが。

 セラの少し乾いた唇に口づける。
 その閉じられた唇に、そっと舌を差し入れると、セラのいつもよりは少し低いが、甘い体温を感じて、安堵する。
 水音がたつほどに、深く交わらせても、未だセラからの応えはない。
 そうして唇を離すと、心臓の動きを確かめるように、胸のふくらみに手を伸ばした。こうして俺が触れているにも関わらず、乱れることもなく一定の鼓動しか刻まないことが、歯痒い。

「セラ、戻ってこい」

 俺には、そのセラの前の生は未だ終わりを告げていないのではないかと思える時がある。ここにこうしてあるのは、セラの形をしたただの入れ物で。セラの魂はあちらの世界とこちらの世界を自由に行き来しているのではないかと。
 セラの手に委ねられていた、数多の選択肢。この世界での様々な出会いも別れも、気の赴くままに自由に体験をして、そしていつかはこちらから消えてしまうのではないか。

「セラ」

 纏っていた寝衣をすっかり開けさせると、セラの肌が少しだけ粟立った。
 その強張りをほどくように、滑らかな肌に口づけを落としながら、一つ一つ俺の痕を残していく。
 ――こんなに長い間、離れなければならないのが悪い。
 ひと月も離れたりしなければ、セラもこんなに眠ることもないだろう。次は必ずこの痕が残っている間に帰ってこなければならない。そう固く誓う。

 いつもは恥じらって、易々とは受け入れはしない茂みへと顔を寄せても、セラはピクリとも動かない。

「早く起きろ。――早く起きないと、何をされるか分かっているだろう?」

 セラの秘部を舐め上げ、舌を差し入れる。その柔らかな感触と甘い芳香に、己自信が、じんと熱を持つのを感じる。そうしてセラの蕾を飴玉を舐めとかすように、舌でころがし続けると、次第にとぷりと俺の唾液以外の蜜が溢れ出してきた。
 それをまた丹念に舐め上げ、きつくしまった蜜口をほぐすように、その隘路を指で拡げていく。

「んっ……」

 あぁ、やっとセラの吐息が聞こえた。
 徐々に意識が覚醒してきているのだろう。いつもより低い温度の身体も、徐々に温もりを取り戻し、次第に赤みを帯びてくる。
 その意思を持った吐息の一つで、心が安堵と歓喜で震えるのを感じる。自分の服を脱ぎ捨てて、体温を分け与えるように素肌でセラをきつく抱きしめた。
 セラの足の間に自身の身体を沈めると、まだ俺自身を受け入れるには固く閉じたままのそこに怒張をこすりつける。

「セラ……、早く起きろ。俺を屍を暴く哀れな墓守りにでもさせるつもりか?」
「ん、ぅ……?」
「俺がおとなしくお前の墓守などすると思うか? お前が俺を残して死ぬというのなら、その肌を食み、血肉を一滴残らず啜り食らいつくしてやろう」
「……ライ……?」
「そうしてお前をこの体内に取り込んだ後に、必ずそれがどこであってもお前を追う。逃げられるなどと思うな」

 そして力なく横たわる腰を抱き寄せると、一息に腰を押し進める。未だ強張り、押し返すように固まる媚肉を、無理にわり拓いていく。
 若干の苦痛を感じながらも、抉じ開ける愉悦に口角が上がる。

「ん……っ!、て、ラ、イ!?」
「くっ……!」

 セラが目を覚ました途端、楔を飲み込んだ媚肉がぐちりっと音をたてんばかりに、締めあげた。
 そして意識の覚醒と共に、その先端を甘やかし、より内部へと深く導こうと蠢きはじめる。
 俺はその急激に背筋を駆け上がる快楽を、詰めていた息を浅く吐き出して堪えた。

「はっ……、お前、食いちぎるつもりか?」
「やぁッ! あぁあ……! な・に……!? ライ……?」
「すぐに起きないお前が悪い」
「……ッ、なんで、こんな起こし方……ぁ、やぁん……! 普通に、……っ起こしてくれ、ればいいのに……」

 そして眠りから覚醒したばかりで、状況をいまいち把握しきれていないだろうその細い身体に、深く己自身を打ち付け始めた。

「ひ、ぁ……!! ぁああ!」

 突然の快楽に戸惑い喘ぎ、すがりつくようにセラの手が、俺の首に回される。
 律動に身を揺らし、潤んだアメジストの瞳で俺を恨めしそうに見上げながらも、必死に寄せてくる唇を重ねる。
 熱を帯び、汗ばみ始めるセラの肢体。
 あぁ、その温度が、甘さが、今のお前が躯などではないと教えてくれる。

 そうしてセラの嬌声をこの身に浴びながら、ひときわ大きな蜜音を立てて突き上げると、欲望のままにその最奥に白濁を吐き出した。

「ラ・いぃ……」

 荒い息でこちらを窺うセラを、繋がったまま抱き起こして、胡坐をかいて座った上に乗せると、その身体を抱きかかえた。

「……まだ、だ」

 にやりと口角を上げて見せれば、向かい合ったセラの表情が僅かに青ざめたように見える。それを無視して、未だ昂ぶりの収まる兆しのみえない楔を深く埋め込んだ。
 この身体に胎内にもっと俺という存在を刻みつければ、お前をこの世界に留める枷となりえるだろうか。

 お前のいく末がどの世であったとしても、お前が誰であったとしても決して離しはしない。俺から逃げられると思うなよ? セレーネ。
しおりを挟む
感想 4

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(4件)

まお
2019.10.17 まお

ライーもうニヤニヤが止まりません(/▽\)♪カッコいいわぁ。早く続きが読みたいですー

2019.10.17 瑞月

感想ありがとうございます🥰
ライは私の性癖の塊なので、私もライが一番好きです 笑
お楽しみ頂けると嬉しいです❤️

解除
スピカ
2019.09.30 スピカ

面白くて一気に読みました
私はアルレーヌ推しです( ◜௰◝ )
続き楽しみにしてます!!

2019.09.30 瑞月

感想ありがとうございます~❤️
なんと初めてアルレーヌ推しの方に会いました!え……アレでも大丈夫でした? 笑
更新頑張ります💪
お楽しみ頂けると嬉しいです😊

解除
むに丸
2019.09.30 むに丸

初コメ失礼します♪
16話まで一気読みでした〜(*^^*)
もっともっと読みたいです♪
先が楽しみ過ぎです
個人的にはライ推しですが
キースも好きです( •̤ᴗ•̤ )♡
更新楽しみです(੭˙꒳​˙)੭ハヨハヨ

2019.09.30 瑞月

感想ありがとうございます♥️
私自身も今回読み返してて、敬語攻めいいな……🤭とキースを見直してました 笑
今後も楽しんでいただけたら幸いです!

解除

あなたにおすすめの小説

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

男嫌いな王女と、帰ってきた筆頭魔術師様の『執着的指導』 ~魔道具は大人の玩具じゃありません~

花虎
恋愛
魔術大国カリューノスの現国王の末っ子である第一王女エレノアは、その見た目から妖精姫と呼ばれ、可愛がられていた。  だが、10歳の頃男の家庭教師に誘拐されかけたことをきっかけに大人の男嫌いとなってしまう。そんなエレノアの遊び相手として送り込まれた美少女がいた。……けれどその正体は、兄王子の親友だった。  エレノアは彼を気に入り、嫌がるのもかまわずいたずらまがいにちょっかいをかけていた。けれど、いつの間にか彼はエレノアの前から去り、エレノアも誘拐の恐ろしい記憶を封印すると共に少年を忘れていく。  そんなエレノアの前に、可愛がっていた男の子が八年越しに大人になって再び現れた。 「やっと、あなたに復讐できる」 歪んだ復讐心と執着で魔道具を使ってエレノアに快楽責めを仕掛けてくる美形の宮廷魔術師リアン。  彼の真意は一体どこにあるのか……わからないままエレノアは彼に惹かれていく。 過去の出来事で男嫌いとなり引きこもりになってしまった王女(18)×王女に執着するヤンデレ天才宮廷魔術師(21)のラブコメです。 ※ムーンライトノベルにも掲載しております。

婚約者の本性を暴こうとメイドになったら溺愛されました!

柿崎まつる
恋愛
世継ぎの王女アリスには完璧な婚約者がいる。侯爵家次男のグラシアンだ。容姿端麗・文武両道。名声を求めず、穏やかで他人に優しい。アリスにも紳士的に対応する。だが、完璧すぎる婚約者にかえって不信を覚えたアリスは、彼の本性を探るため侯爵家にメイドとして潜入する。2022eロマンスロイヤル大賞、コミック原作賞を受賞しました。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。