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おまけ 花酒の夜
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窓から指すのは月明かりだけ。
私は薄暗い室内で、手元の明かりを頼りに、一心に刺繍を刺していた。
こんな静かな夜は、一人でいるのが心細くなる。こうして何か熱中できるものがあるのは、正直助かる。
キィ……
「あ……! おかえりなさい!」
私は刺繍の手を止めて、声を掛けた。振り返らなくとも、こんな時間にこの部屋にノックもなしに入ってくるのは一人しかいない。
扉の方へ振り返ると、机の上の小さな明かりに照らされて、その赤い髪が浮き上がった。大好きな彼の久々の姿に、思わず頬が緩む。
出迎えるため勢いよく椅子を立つと、小走りに私はライの胸に抱きついた。久々に感じるライの香りに、胸の奥から安堵の気持ちが湧き出すのを感じる。
「あぁ……、ただいま」
「――どうしたの? 疲れている?」
溜めた息を吐きだすようなその声に、ライの顔を見上げるとその金色の瞳は幾分疲れに陰ってるようだった。
最近ライはどこかへ出かけていくことが多い。
数日で戻ってくることもあれば、一か月近くかかることもある。一族の名代として出向かなければならない用事があるということだけれど、その用事というのは私に教えてくれることはない。
ライは一族のなかでも強い魔力を持っているため、次期の長になることが決まっているらしく、色々と忙しい。
……まぁ、私に言えないような危険なことをしているだろうとは、察しがつくけれど……。
「あぁ、今回はなかなか戻れなかったからな」
私の肩に鼻をうずめるようにして、ライがぎゅっと抱きしめてくる。
「忙しいのね……。まだ落ち着かなさそう?」
「そうだな……、しばらくはかかるだろう、な。お前はどうだった? 何か変わったことはなかったか?」
「えぇ、大丈夫。レイとリンが良くしてくれるから」
ライに限らず、里のひとにライが何をしているのか尋ねても曖昧に濁されるだけなので、もう尋ねるようなこともしなくなっていた。
ただ、ライがいない間に危険がないように、私には護衛を兼ねて二人の里の少女と少年がつけられていた。
二人はそれぞれライ程ではないけれど、鮮やかな赤い髪を持っていて、どこかライに似た雰囲気をしていた。何故、安全なはずの里のなかで護衛が必要なのかわからないけれど……。
ライが少年を私の傍におくことを許すだなんて意外だったけれど、その二人は幼くして出会った番同士らしい。一族のなかで出会える、まして幼いうちに出会えることはとても稀らしく、片時も離れず仲睦まじくしている。
そして二人はお互い生き写しのようによく似た容姿で、私の世話を細々と焼いてくれていた。
「見て、これリンが教えてくれた模様なのよ。リンはとっても刺繍が上手だから、すごく勉強になるの」
そう言って私はつい先ほどまで刺していた刺繍をライに向かって広げて見せた。
里に伝わる伝統的なものであるらしいその特徴的な文様は、大輪の華とそれを彩る唐草のような模様で構成されていて、色彩もとても鮮やかだ。
「そうか」
そうして胸元を乱暴に緩めたライがいつもの椅子に腰かけると、脇机にゴトッと何かの瓶を置いた。透き通った瓶のなかで、何かの液体が明かりを反射してたぷん、と揺れた。
「それは? お土産?」
「あぁ、珍しいものを見つけたからな。花酒といって、蜂蜜と花の酵母を発酵させて作られた酒だそうだ。たまにはいいかと思ってな」
「えぇ……! お酒!?」
私は思わずその瓶を手に取った。瓶の中で白く薄く濁ったお酒が揺れている。
前世ではお酒をほぼ毎日のように飲むくらい大好きだったけれど、今世では教会育ちだったこともあって、何か特別なお祝いの時くらいしか口にすることはなかった。
しかもこちらのお酒は、アルコール度数が高い蒸留酒が多くて、私の好きな醸造酒というのはあまり目にすることはなかったのだ。
それでも、お菓子作りのためにと言って、こっそりと教会で果実を漬け込んだ果実酒を自作していたくらいには、お酒が好きだ。多分マキアにはバレていなかったはず。多分。
「……そんなに喜ぶとは、思わなかった」
「え、そう? 学園に行っていたし、お酒なんてずーっと飲んでなかったから嬉しい。これ、今飲んでもいい?」
「あぁ、構わん」
「嬉しい! 今用意するわね」
私は我ながら弾んだ声で、酒器を用意するために、台所へと向かった。
◇◇◇◇◇
「……だからぁ、わたしはがんばったのよぉ……! だって、監禁とか死ぬのとかぜっったい嫌だったからぁ!」
「ほぉ、そうか」
「そうよぉ……、すっごくすっごく怖かったんだからぁ……、ぐすっ……」
「なるほどな」
私は寝台に肘をつき、寝そべるようにしてグラスを傾けるライに背中をあずけて、またグラスをあおった。
背中に感じるライの体温が嬉しい。ふ、と背中越しに覗くと、ライは何か思案気な表情をして、あまりグラスが進んでいないようだった。
こんなにおいしいのになー。私は身を起こすと、またテーブルの上に置いた瓶から手元のグラスに花酒を注ぐ。
この花酒は花の芳しい香りが強く、とろりと甘くて、それでいて水のようにぐびぐびと飲めてしまう、美味しいお酒だった。
前世の日本酒に似た舌ざわりで、大変私の好みだ。あぁ、美味しい。
また一口、花酒を口に含んだところで、背後のライが私を抱き寄せた。
「んにゃ? ライ?」
「それで? お前の前世のげーむの話とやらを、もっと聞かせてくれないか?」
「ん、そう?」
ライがこんなに私の話を興味深く聞いてくれるなんて、あまりないから嬉しいなー。背後にいるから表情まではわからないけれど、きっと楽しいんだろうな。
だって私もこんなに楽しいから。うふふ。
「それで、ライのことは、当然入学する前から知ってたけど、絶対近づいちゃいけないって思ってたのよ。だからライのことはずっと避けてたの」
「ほぉ」
「だって、ライとうまくいくならいいけど、嫌われちゃったり、他のひとのルートに入ったりしたら、殺されちゃうかもしれないでしょ?」
「あぁ」
ライはそう相槌を打っているけど、本当にわかってるのかなぁ。このゲームをプレイしてもらうことが出来たらわかってもらえると思うのに。
本当に、ライは大好きで、格好良くて、そして怖いんだから。
「確かオーランドと逃げる時に、追ってくるのがライだったと思うのよねー。顔は隠してたけど金色の目が見えていたし」
「オーランドと……?」
「そう、オーランドと恋に落ちて逃げるルートもあったのよねぇ。割とオーランドは好きなルートだったなー。ライの次にオーランドの話が好きだったかなぁ、切なくて。それにオーランドはこう、あんまり変なことしないし、一途に甘い感じの話、で……?」
調子よく話していた私の背筋をゾクッと寒気が走った。
――ん? これは……?
突然感じた寒気に困惑していると、酔いの回った頭に、地の底から鳴るような低音の声が背後から響いた。
「ほぉ……、もっと聞かせてくれないか? セレーネ」
「……え……?」
――ナンカ怒ってらっしゃる?
恐る恐る背後を振り返りながら、そう気が付いた時には遅かった。僅かな灯を映して揺れる黄金の瞳は、確かに怒りの色を濃く揺らしていた。
「お前が、俺を避け、他の男と恋をした話を、もっと聞かせてくれないか、と言ったのだ」
そうして口元だけ笑んだ形を作ったその表情は、全く目が笑っていなかった。
そこで私の上気した頬から血の気が引くのをはっきりと感じた。
「……んー? なんだか、眠くなっちゃったカナー」
そう言って寝台から立ち上がろうとした腰を、ぐっと力強く抱き寄せられた。
「きゃっ……、あ、あ、あの……!」
「ほら、聞かせてみろ。まだ夜は長いだろう?」
「えぇっ!? いえいえ、その、ライも疲れてるでしょ? 私も眠いなー、なんて……。明日リンと約束もあるし……」
「眠気など感じてる暇があると思うか?」
そう言うや否や、吸血鬼が首筋に牙を立てるかのような力強さで、背後からガブリと首筋に噛みつかれた。
その突然の痛みに、勝手に筋肉がびくんっと収縮して身体が震えた。
「いた……ッ」
「ほら、聞かせてみろ、セラ……。オーランドと、なんだって?」
「えぇえ……」
――私は、ここに、ライの前では酔っぱらわないことを誓います。
ライのいう長い夜が、一晩で終わってくれることを願いながら、私は心の中でそう誓った。
私は薄暗い室内で、手元の明かりを頼りに、一心に刺繍を刺していた。
こんな静かな夜は、一人でいるのが心細くなる。こうして何か熱中できるものがあるのは、正直助かる。
キィ……
「あ……! おかえりなさい!」
私は刺繍の手を止めて、声を掛けた。振り返らなくとも、こんな時間にこの部屋にノックもなしに入ってくるのは一人しかいない。
扉の方へ振り返ると、机の上の小さな明かりに照らされて、その赤い髪が浮き上がった。大好きな彼の久々の姿に、思わず頬が緩む。
出迎えるため勢いよく椅子を立つと、小走りに私はライの胸に抱きついた。久々に感じるライの香りに、胸の奥から安堵の気持ちが湧き出すのを感じる。
「あぁ……、ただいま」
「――どうしたの? 疲れている?」
溜めた息を吐きだすようなその声に、ライの顔を見上げるとその金色の瞳は幾分疲れに陰ってるようだった。
最近ライはどこかへ出かけていくことが多い。
数日で戻ってくることもあれば、一か月近くかかることもある。一族の名代として出向かなければならない用事があるということだけれど、その用事というのは私に教えてくれることはない。
ライは一族のなかでも強い魔力を持っているため、次期の長になることが決まっているらしく、色々と忙しい。
……まぁ、私に言えないような危険なことをしているだろうとは、察しがつくけれど……。
「あぁ、今回はなかなか戻れなかったからな」
私の肩に鼻をうずめるようにして、ライがぎゅっと抱きしめてくる。
「忙しいのね……。まだ落ち着かなさそう?」
「そうだな……、しばらくはかかるだろう、な。お前はどうだった? 何か変わったことはなかったか?」
「えぇ、大丈夫。レイとリンが良くしてくれるから」
ライに限らず、里のひとにライが何をしているのか尋ねても曖昧に濁されるだけなので、もう尋ねるようなこともしなくなっていた。
ただ、ライがいない間に危険がないように、私には護衛を兼ねて二人の里の少女と少年がつけられていた。
二人はそれぞれライ程ではないけれど、鮮やかな赤い髪を持っていて、どこかライに似た雰囲気をしていた。何故、安全なはずの里のなかで護衛が必要なのかわからないけれど……。
ライが少年を私の傍におくことを許すだなんて意外だったけれど、その二人は幼くして出会った番同士らしい。一族のなかで出会える、まして幼いうちに出会えることはとても稀らしく、片時も離れず仲睦まじくしている。
そして二人はお互い生き写しのようによく似た容姿で、私の世話を細々と焼いてくれていた。
「見て、これリンが教えてくれた模様なのよ。リンはとっても刺繍が上手だから、すごく勉強になるの」
そう言って私はつい先ほどまで刺していた刺繍をライに向かって広げて見せた。
里に伝わる伝統的なものであるらしいその特徴的な文様は、大輪の華とそれを彩る唐草のような模様で構成されていて、色彩もとても鮮やかだ。
「そうか」
そうして胸元を乱暴に緩めたライがいつもの椅子に腰かけると、脇机にゴトッと何かの瓶を置いた。透き通った瓶のなかで、何かの液体が明かりを反射してたぷん、と揺れた。
「それは? お土産?」
「あぁ、珍しいものを見つけたからな。花酒といって、蜂蜜と花の酵母を発酵させて作られた酒だそうだ。たまにはいいかと思ってな」
「えぇ……! お酒!?」
私は思わずその瓶を手に取った。瓶の中で白く薄く濁ったお酒が揺れている。
前世ではお酒をほぼ毎日のように飲むくらい大好きだったけれど、今世では教会育ちだったこともあって、何か特別なお祝いの時くらいしか口にすることはなかった。
しかもこちらのお酒は、アルコール度数が高い蒸留酒が多くて、私の好きな醸造酒というのはあまり目にすることはなかったのだ。
それでも、お菓子作りのためにと言って、こっそりと教会で果実を漬け込んだ果実酒を自作していたくらいには、お酒が好きだ。多分マキアにはバレていなかったはず。多分。
「……そんなに喜ぶとは、思わなかった」
「え、そう? 学園に行っていたし、お酒なんてずーっと飲んでなかったから嬉しい。これ、今飲んでもいい?」
「あぁ、構わん」
「嬉しい! 今用意するわね」
私は我ながら弾んだ声で、酒器を用意するために、台所へと向かった。
◇◇◇◇◇
「……だからぁ、わたしはがんばったのよぉ……! だって、監禁とか死ぬのとかぜっったい嫌だったからぁ!」
「ほぉ、そうか」
「そうよぉ……、すっごくすっごく怖かったんだからぁ……、ぐすっ……」
「なるほどな」
私は寝台に肘をつき、寝そべるようにしてグラスを傾けるライに背中をあずけて、またグラスをあおった。
背中に感じるライの体温が嬉しい。ふ、と背中越しに覗くと、ライは何か思案気な表情をして、あまりグラスが進んでいないようだった。
こんなにおいしいのになー。私は身を起こすと、またテーブルの上に置いた瓶から手元のグラスに花酒を注ぐ。
この花酒は花の芳しい香りが強く、とろりと甘くて、それでいて水のようにぐびぐびと飲めてしまう、美味しいお酒だった。
前世の日本酒に似た舌ざわりで、大変私の好みだ。あぁ、美味しい。
また一口、花酒を口に含んだところで、背後のライが私を抱き寄せた。
「んにゃ? ライ?」
「それで? お前の前世のげーむの話とやらを、もっと聞かせてくれないか?」
「ん、そう?」
ライがこんなに私の話を興味深く聞いてくれるなんて、あまりないから嬉しいなー。背後にいるから表情まではわからないけれど、きっと楽しいんだろうな。
だって私もこんなに楽しいから。うふふ。
「それで、ライのことは、当然入学する前から知ってたけど、絶対近づいちゃいけないって思ってたのよ。だからライのことはずっと避けてたの」
「ほぉ」
「だって、ライとうまくいくならいいけど、嫌われちゃったり、他のひとのルートに入ったりしたら、殺されちゃうかもしれないでしょ?」
「あぁ」
ライはそう相槌を打っているけど、本当にわかってるのかなぁ。このゲームをプレイしてもらうことが出来たらわかってもらえると思うのに。
本当に、ライは大好きで、格好良くて、そして怖いんだから。
「確かオーランドと逃げる時に、追ってくるのがライだったと思うのよねー。顔は隠してたけど金色の目が見えていたし」
「オーランドと……?」
「そう、オーランドと恋に落ちて逃げるルートもあったのよねぇ。割とオーランドは好きなルートだったなー。ライの次にオーランドの話が好きだったかなぁ、切なくて。それにオーランドはこう、あんまり変なことしないし、一途に甘い感じの話、で……?」
調子よく話していた私の背筋をゾクッと寒気が走った。
――ん? これは……?
突然感じた寒気に困惑していると、酔いの回った頭に、地の底から鳴るような低音の声が背後から響いた。
「ほぉ……、もっと聞かせてくれないか? セレーネ」
「……え……?」
――ナンカ怒ってらっしゃる?
恐る恐る背後を振り返りながら、そう気が付いた時には遅かった。僅かな灯を映して揺れる黄金の瞳は、確かに怒りの色を濃く揺らしていた。
「お前が、俺を避け、他の男と恋をした話を、もっと聞かせてくれないか、と言ったのだ」
そうして口元だけ笑んだ形を作ったその表情は、全く目が笑っていなかった。
そこで私の上気した頬から血の気が引くのをはっきりと感じた。
「……んー? なんだか、眠くなっちゃったカナー」
そう言って寝台から立ち上がろうとした腰を、ぐっと力強く抱き寄せられた。
「きゃっ……、あ、あ、あの……!」
「ほら、聞かせてみろ。まだ夜は長いだろう?」
「えぇっ!? いえいえ、その、ライも疲れてるでしょ? 私も眠いなー、なんて……。明日リンと約束もあるし……」
「眠気など感じてる暇があると思うか?」
そう言うや否や、吸血鬼が首筋に牙を立てるかのような力強さで、背後からガブリと首筋に噛みつかれた。
その突然の痛みに、勝手に筋肉がびくんっと収縮して身体が震えた。
「いた……ッ」
「ほら、聞かせてみろ、セラ……。オーランドと、なんだって?」
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――私は、ここに、ライの前では酔っぱらわないことを誓います。
ライのいう長い夜が、一晩で終わってくれることを願いながら、私は心の中でそう誓った。
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