理学療法士だった俺、異世界で見習い聖女と診療所を開きました

異世界生活は大変です

治せ！内臓の病気

長期契約と報酬の月払いに良い食いつきを見せてくれた傭兵のミーザさんであったが、お母さんの病気を理由にこの街を離れられないと俺達に告げ、更に詳しい話を始める。

「おっ母はもう何ヶ月もお腹や胸が苦しいと訴えていたんだ。だけど、治癒士に頼むには相当なお金が必要だから、傭兵の報酬で薬を買ってなんとかもたせているってところだよ」
「ミーザさん、それならお母さんを俺達に診せてくれないか？」
「でも今、あんたらに払う金はあたしにはないよ」
「それについては考えがある。ミーザさん、案内してくれ」

　治療代の話はひとまず後にして、お母さんが良くなればミーザさんが俺達と契約しやすくなるはずだし、何より病気で苦しんでいる人を俺とミミが見過ごすわけにはいかない！

　俺が案内を懇願するとミーザさんが返答をする。

「分かったよ、時間がかかっても治療代は必ず払うから」

　ミーザさんがそう言って、ギルドの応接室の扉を開けて、先程の受付さんの所へ向かう。

「あ、ミーザさん、ミヤシタ様のご依頼は受けるの？」
「ごめん、ひとまず保留にして、先にこの人達にやってもらいたい事があるから」
「え？どういう事？」

　受付さんが困っているのを見て、俺も声をかける。

「すいません、こちらからも保留でお願いします。彼女の家で先にすることがあるので」
「私達が戻るまでどうかお願いします」
「え？ええ……」

　状況が呑み込めず、戸惑っている受付さんをよそに俺達はミーザさんの案内でミーザさんの家に向かう。

　しばらく歩いているとミーザさんの家にたどり着き、ミーザさんが扉を開け、俺達に呼びかける。

「さ、あんたらも入って」

　ミーザさんに促された俺達はミーザさんの家に入り、とりあえず挨拶をする。

「お邪魔します」
「さ、こっちだよ」

　少し小さい家だが、少なくともミーザさんとお母さんの部屋の2部屋は存在しているようで、ミーザさんはお母さんがいると思われる部屋に俺達を案内し、部屋に入ってまずベッドで寝ているお母さんらしき人物に声をかける。

「おっ母、おっ母を診てくれる人を連れてきたよ」
「ミーザ、うちには治癒士に診てもらう金はないはずだろう、もうあたしの事はいいから、帰ってもらいな」

　お母さん、やっぱり娘さんにこれ以上負担をかけたくないのか、だがここで退く俺達ではない。

「ご安心ください、治療代については考慮させていただきますので、私達に診せてください」
「あんたは？」
「申し遅れました。私はユーイチ・ミヤシタと申します。キッコの街で診療所を開いております」

　さあ、まずはお母さんの病気を治さないとな。