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老人の故郷へ
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そして先程見せたマジックでわしの千円札を万札に変え、それを旅の資金として使う為に、わしの故郷群馬までの新幹線代に変えよった。
心配になり新幹線内でわしはアンジに尋ねた。
「しかし、大丈夫かの?」
「ご安心を、往復してもお釣りが来ますので、それに万札でちょっとした買い物をしてまた千円札を増やせば、逆にお金は増えますよ」
「それがまずくないのかと聞いとるんじゃ、わし犯罪者にならんかの」
「なあに、死神の力は証明できませんし、あなたはご自身の未練を解消することを考えれば大丈夫です」
そう言ってからアンジが今度はわしに尋ねた。
「その住野様は一体どういうお方で?」
「れんはわしと同じ小学校に通っておった。田舎生まれにしては妙にきらびやかで、今考えるとわしの一目ぼれじゃ」
「それで?」
「まあ、他の奴らも一緒じゃったが一緒に遊んだりして楽しかったわい」
更にアンジは疑問を覚え、わしに尋ねた。
「告白はしなかったのですか?」
「できるわけないじゃろ、れんは地元の有力者の娘、わしは貧乏な家の子供、交際すら許されん空気じゃった」
少しアンジが黙るとわしはその後の事を話した。
「結局わしは中学を卒業して田舎を出て働きに出たんじゃ、そこから1度も会っておらんし、今生きてるかどうかも分からん」
「とりあえず、まずは生死の確認ですね」
どうにかわしの田舎に着いたが、足跡をたどる為に昔れんが住んでおった家まで行ってみた。とにかくこの田舎はバスが何時間に1本じゃから、待ちながら行くのが大変じゃ。
レンタカーを借りる手もあったが、わしは既に免許を返納しておるし、アンジにいたっては死神は免許を持たないと言い張る。
千円札を万札に帰れるくせに、免許を作れないのはどういう事じゃと言いたかったが、そんな事を言ってもどうにもならんからあきらめたわい。
そして久しぶりの生まれ故郷に帰って来たわい。
最後に帰って来たのが親の葬式以来じゃし、約30年ぶりじゃな。
あの時は婆さんや子供もおったし、とてもれんの事を気にする余裕はなかった。
もう当時のわしの実家は取り壊したし、れんの家の方にわしらは向かっていった。
そこにたどり着くと、見知らぬ家があり、わしは戸惑いながらもインターホンを押す。
インターホンをおすと中年女性が出てきた、わしとは親子ほどの年齢差と思われる。
「ええと、どちら様でしょうか?」
「ああ、申し訳ない、わしは古橋源三と言いまして、住野れんさんを訪ねてきたのですが……」
「住野……れん……、ああ、母の旧姓。はい、私の母です」
「娘さんでしたか、あの、それでれんさんは?」
次の瞬間、申し訳なさそうな顔でれんの娘と言う女性は話しだした。
「遠くからわざわざおこしいただき申し訳ないのですが、母は10年程前に亡くなりました」
その事は予想できたはずじゃった。じゃがどこかわしはショックを受けてた。そんなわしの心中を知ってか知らずか、アンジはこの娘に声をかける。
「そうでしたか、こちらの古橋様に頼まれ、お連れしたのですが」
「あの、あなたは?」
「申し遅れました、私は安治丈、古橋様の身元引受人をしております」
「そうなんですか、あの古橋さんはどうして母を?」
わしが答えに窮していると勝手にアンジが答えおった。
「実は初恋の人に会いたいというお願いをされましてね、それで私がお連れしたんですよ」
「初恋……あ、もしかしてゲンちゃんって呼ばれていたりしませんでした?」
突如、娘は昔わしがれんから呼ばれていた呼び方をわしに尋ね、わしはそれに反応した。
「はい、そうですが」
「やっぱり、いえ、実は母が生前にといっても、父が亡くなってからなんですけど私に話してくれました。昔好きだった人がいたんだけど、自分が地元の有力者の娘で好きって事を言いにくかったって」
「え?」
「結局1度も会うことなく父と結婚したんですが、父の死後、会いたがっていたんですが、段々と体が弱っていって、そのまま……」
心配になり新幹線内でわしはアンジに尋ねた。
「しかし、大丈夫かの?」
「ご安心を、往復してもお釣りが来ますので、それに万札でちょっとした買い物をしてまた千円札を増やせば、逆にお金は増えますよ」
「それがまずくないのかと聞いとるんじゃ、わし犯罪者にならんかの」
「なあに、死神の力は証明できませんし、あなたはご自身の未練を解消することを考えれば大丈夫です」
そう言ってからアンジが今度はわしに尋ねた。
「その住野様は一体どういうお方で?」
「れんはわしと同じ小学校に通っておった。田舎生まれにしては妙にきらびやかで、今考えるとわしの一目ぼれじゃ」
「それで?」
「まあ、他の奴らも一緒じゃったが一緒に遊んだりして楽しかったわい」
更にアンジは疑問を覚え、わしに尋ねた。
「告白はしなかったのですか?」
「できるわけないじゃろ、れんは地元の有力者の娘、わしは貧乏な家の子供、交際すら許されん空気じゃった」
少しアンジが黙るとわしはその後の事を話した。
「結局わしは中学を卒業して田舎を出て働きに出たんじゃ、そこから1度も会っておらんし、今生きてるかどうかも分からん」
「とりあえず、まずは生死の確認ですね」
どうにかわしの田舎に着いたが、足跡をたどる為に昔れんが住んでおった家まで行ってみた。とにかくこの田舎はバスが何時間に1本じゃから、待ちながら行くのが大変じゃ。
レンタカーを借りる手もあったが、わしは既に免許を返納しておるし、アンジにいたっては死神は免許を持たないと言い張る。
千円札を万札に帰れるくせに、免許を作れないのはどういう事じゃと言いたかったが、そんな事を言ってもどうにもならんからあきらめたわい。
そして久しぶりの生まれ故郷に帰って来たわい。
最後に帰って来たのが親の葬式以来じゃし、約30年ぶりじゃな。
あの時は婆さんや子供もおったし、とてもれんの事を気にする余裕はなかった。
もう当時のわしの実家は取り壊したし、れんの家の方にわしらは向かっていった。
そこにたどり着くと、見知らぬ家があり、わしは戸惑いながらもインターホンを押す。
インターホンをおすと中年女性が出てきた、わしとは親子ほどの年齢差と思われる。
「ええと、どちら様でしょうか?」
「ああ、申し訳ない、わしは古橋源三と言いまして、住野れんさんを訪ねてきたのですが……」
「住野……れん……、ああ、母の旧姓。はい、私の母です」
「娘さんでしたか、あの、それでれんさんは?」
次の瞬間、申し訳なさそうな顔でれんの娘と言う女性は話しだした。
「遠くからわざわざおこしいただき申し訳ないのですが、母は10年程前に亡くなりました」
その事は予想できたはずじゃった。じゃがどこかわしはショックを受けてた。そんなわしの心中を知ってか知らずか、アンジはこの娘に声をかける。
「そうでしたか、こちらの古橋様に頼まれ、お連れしたのですが」
「あの、あなたは?」
「申し遅れました、私は安治丈、古橋様の身元引受人をしております」
「そうなんですか、あの古橋さんはどうして母を?」
わしが答えに窮していると勝手にアンジが答えおった。
「実は初恋の人に会いたいというお願いをされましてね、それで私がお連れしたんですよ」
「初恋……あ、もしかしてゲンちゃんって呼ばれていたりしませんでした?」
突如、娘は昔わしがれんから呼ばれていた呼び方をわしに尋ね、わしはそれに反応した。
「はい、そうですが」
「やっぱり、いえ、実は母が生前にといっても、父が亡くなってからなんですけど私に話してくれました。昔好きだった人がいたんだけど、自分が地元の有力者の娘で好きって事を言いにくかったって」
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