2 / 43
勇者はギルドの酒場にいるか
2
しおりを挟む
「……客ぅ?」
女の影に、先程の少年の姿があった。
ほとんど死人と化してぴくりとも動かなかったシルヴァだが、瞬間、生き返って飛び起きる。
幸運の神はやはり自分を見放さなかったのだ!
少年の前に滑り込んで、ひざまづいて手を合わせた。
「はじめて見る顔だよな?
もしかして、わざわざ俺に金貸しに来てくれたの?
客っつーよりむしろ神? 君自身が神なの?」
「……は?」
シルヴァは立ち上がると、客の少年ににやりと笑いかけ、決めポーズを取ってみせた。
「心配無用! グラータの天才賭事師シルヴァとは俺様のことだ。
すぐ倍にして、いや三倍にして返すからな!
いや~ピンチにいきなり金貸してくれる神が降臨するとは!
やっぱ俺、幸運の神に愛された男だな!」
「……………………はあ?」
何を言われているのか判らない。少年は助けを求めるように女を仰ぐ。
「あの……これが?」
案内してきた給仕の女も、やれやれと肩をすくめた。
「そう、コレ。
あ、シルヴァ、あんたここのツケもまだ残ってんだからね。
早いとこ耳揃えて払っておくれよ」
「わかってるって。
今度の勝負が本当の本番! 華麗なる大逆転劇を見逃すなよ!
最後に笑うのは俺様さっ……!」
シルヴァはふんぞり返って高笑いした。
周りがはやし立てる声は、常勝賭事師たる己への賞賛にしか聞こえていない。
給仕の女は首を振って、少年の肩をぽんと叩いた。
「……悪いこと言わないよ?
あんた、コレに金貸すのだけはやめときな。
『常敗賭事師シルヴァ』って言ったら、この街で知らない奴はいないんだから」
「え?……えええっっっ?」
少年は思わず、懐に大切に仕舞った金貨に手を遣った。
旅立ちの日、老爺は一枚の金貨を少年の手に握らせて、こう言った。
『グラータの街に着いたら、救援隊『黄金の鈴』を頼りなされ。
攻略の途中で大怪我を負ったり、体力が尽きてしまったり、道を見失って遭難したり……。
迷宮に降りる前に契約を交わしたものの命に危機が迫ったとき、魔法道具の鈴の音に呼応し、たとえどんなに深い階層にでも駆けつけて救助する。
それが彼ら、救援隊『黄金の鈴』でござります。
契約金は、契約者の目標の階層を問わず、金貨一枚。
契約者が何事もなく目的を達し、無事に地上に帰還すれば、掛けた金貨は戻りませぬ。
ですがもし事が起き、契約者が鈴の音で呼べば……
掛けた金貨一枚で、彼らの技倆と命を買うことができまする。
あのものたちは、迷宮最高の救助者にして、迷宮最強の勇者。
必ずや、貴方様のお命を、希望を守ってくれまする……!』
周りのものすべてが離れていくなか、最後までただ一人、少年の味方でいてくれた老爺。
まさか彼の言葉を全力で疑う日が来ようとは。
(じい……本当に、こんな輩を頼れと……?)
少年は憮然として、『最強の勇者(=アホ認定済)』に寒い眼差しを投げた。
女の影に、先程の少年の姿があった。
ほとんど死人と化してぴくりとも動かなかったシルヴァだが、瞬間、生き返って飛び起きる。
幸運の神はやはり自分を見放さなかったのだ!
少年の前に滑り込んで、ひざまづいて手を合わせた。
「はじめて見る顔だよな?
もしかして、わざわざ俺に金貸しに来てくれたの?
客っつーよりむしろ神? 君自身が神なの?」
「……は?」
シルヴァは立ち上がると、客の少年ににやりと笑いかけ、決めポーズを取ってみせた。
「心配無用! グラータの天才賭事師シルヴァとは俺様のことだ。
すぐ倍にして、いや三倍にして返すからな!
いや~ピンチにいきなり金貸してくれる神が降臨するとは!
やっぱ俺、幸運の神に愛された男だな!」
「……………………はあ?」
何を言われているのか判らない。少年は助けを求めるように女を仰ぐ。
「あの……これが?」
案内してきた給仕の女も、やれやれと肩をすくめた。
「そう、コレ。
あ、シルヴァ、あんたここのツケもまだ残ってんだからね。
早いとこ耳揃えて払っておくれよ」
「わかってるって。
今度の勝負が本当の本番! 華麗なる大逆転劇を見逃すなよ!
最後に笑うのは俺様さっ……!」
シルヴァはふんぞり返って高笑いした。
周りがはやし立てる声は、常勝賭事師たる己への賞賛にしか聞こえていない。
給仕の女は首を振って、少年の肩をぽんと叩いた。
「……悪いこと言わないよ?
あんた、コレに金貸すのだけはやめときな。
『常敗賭事師シルヴァ』って言ったら、この街で知らない奴はいないんだから」
「え?……えええっっっ?」
少年は思わず、懐に大切に仕舞った金貨に手を遣った。
旅立ちの日、老爺は一枚の金貨を少年の手に握らせて、こう言った。
『グラータの街に着いたら、救援隊『黄金の鈴』を頼りなされ。
攻略の途中で大怪我を負ったり、体力が尽きてしまったり、道を見失って遭難したり……。
迷宮に降りる前に契約を交わしたものの命に危機が迫ったとき、魔法道具の鈴の音に呼応し、たとえどんなに深い階層にでも駆けつけて救助する。
それが彼ら、救援隊『黄金の鈴』でござります。
契約金は、契約者の目標の階層を問わず、金貨一枚。
契約者が何事もなく目的を達し、無事に地上に帰還すれば、掛けた金貨は戻りませぬ。
ですがもし事が起き、契約者が鈴の音で呼べば……
掛けた金貨一枚で、彼らの技倆と命を買うことができまする。
あのものたちは、迷宮最高の救助者にして、迷宮最強の勇者。
必ずや、貴方様のお命を、希望を守ってくれまする……!』
周りのものすべてが離れていくなか、最後までただ一人、少年の味方でいてくれた老爺。
まさか彼の言葉を全力で疑う日が来ようとは。
(じい……本当に、こんな輩を頼れと……?)
少年は憮然として、『最強の勇者(=アホ認定済)』に寒い眼差しを投げた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる