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その依頼者、無謀にすぎる
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膠で雑に修復した粗悪品を、また掴まされたのだろう。
ギヨームは宝物級の花瓶であったもの(過去形)を抱えて、壁に向かって座り込んでしまった。
めそめそと泣き濡れるギヨームに歩み寄り、シルヴァはぽんぽんと背中を叩いてやる。
「……ま、気にすんな!
だってお前も言ってたじゃん? 美術品の目利きは一生修行って。
そのうち本物にも当たるだろ、気長に行こうぜドンマイ!」
無駄に陽気な笑い声が、空しく部屋に響いた。
そこにようやく、本日ゲットした淡いベージュの新作ドレス姿のアリエッタがやってきた。
フロアの中央でくるくると二回転して、裾を持ち上げてみせる。
「どう? 可愛いでしょ?」
「……良いですな、春らしい優しい色目がとてもお似合いですな」
ギヨームは涙目のまま、それでも律儀に応えてみせる。
それに対してシルヴァは一瞥してほんの一言だ。
「へえ、いいんじゃね?」
「ちょっとそこ! もっとちゃんと褒めなさいよ!」
「褒めるのは確定なのかよ」
「当然でしょ?
新しいドレスを着たリーダーは褒める。
我がパーティーの基本中の基本だわ」
「……イエッサー」
椅子から腰が浮きかけていた少年に、アリエッタはその活気に満ちた視線をびしりと向けた。
「改めて、ようこそ救援隊『黄金の鈴』の本拠地へ!
リーダーのアリエッタよ。
わたしたちとの契約に来てくれたのかしら?」
差し出した手に、少年は硬い表情を返す。
「……まだ契約するとは言っていない」
「あら、そう。
じゃあわたしたちの隊に何のご用かしら。
ルドマン王国の王子様?」
「何故それを……!」
少年は思わず立ち上がった。
驚きのあまり見開いた水色の瞳に向けて、アリエッタの若草色の瞳が勝ち誇るかのような強い光を放つ。
「いい感じに汚れた服を着て誤魔化せてるけど、袖口にも気をつけたほうがいいわよ?
ブナと大角鹿の紋章が刻まれた金のブレスレットなんて着けて外を歩いてる人は、不用心な盗人か、不用心な王族のどちらかだわ」
先程広場で荷物を受け渡したあの瞬間に、手袋と上衣の隙間からわずかにのぞいた手首の装飾品を、アリエッタは見逃さなかったのだ。
少年はひとつ息をつき、視線を落とすと、再び椅子に腰を下ろす。
その様子を確かめたアリエッタは、テーブルを回り込んでイシュアの向かいに掛けた。
「……ぼ……わたしはユリウス五世の第六子、イシュアだ。
わたしの信頼する臣から金貨一枚を手渡された。
迷宮に降りるなら、これであらかじめ『黄金の鈴』と契約していくとよい、と」
アリエッタは両手を合わせて、にっこりと微笑んだ。
「あら王子様、いい情報を掴めたわね。
良質な情報は良質な武器よ。
その家臣にはたっぷりご褒美をあげないとね」
「さあて、それはどうだかな」
「なによシルヴァ」
ご満悦一転、眉をつり上げたアリエッタに、テーブルを挟んだシルヴァは肩をすくめて首を振ってみせる。
「いや、大事な主が冒険者ごっこなんてヤベえ遊びに手を染めるのを止めないあたり、ご褒美どころか処罰モンじゃねえの?」
ギヨームは宝物級の花瓶であったもの(過去形)を抱えて、壁に向かって座り込んでしまった。
めそめそと泣き濡れるギヨームに歩み寄り、シルヴァはぽんぽんと背中を叩いてやる。
「……ま、気にすんな!
だってお前も言ってたじゃん? 美術品の目利きは一生修行って。
そのうち本物にも当たるだろ、気長に行こうぜドンマイ!」
無駄に陽気な笑い声が、空しく部屋に響いた。
そこにようやく、本日ゲットした淡いベージュの新作ドレス姿のアリエッタがやってきた。
フロアの中央でくるくると二回転して、裾を持ち上げてみせる。
「どう? 可愛いでしょ?」
「……良いですな、春らしい優しい色目がとてもお似合いですな」
ギヨームは涙目のまま、それでも律儀に応えてみせる。
それに対してシルヴァは一瞥してほんの一言だ。
「へえ、いいんじゃね?」
「ちょっとそこ! もっとちゃんと褒めなさいよ!」
「褒めるのは確定なのかよ」
「当然でしょ?
新しいドレスを着たリーダーは褒める。
我がパーティーの基本中の基本だわ」
「……イエッサー」
椅子から腰が浮きかけていた少年に、アリエッタはその活気に満ちた視線をびしりと向けた。
「改めて、ようこそ救援隊『黄金の鈴』の本拠地へ!
リーダーのアリエッタよ。
わたしたちとの契約に来てくれたのかしら?」
差し出した手に、少年は硬い表情を返す。
「……まだ契約するとは言っていない」
「あら、そう。
じゃあわたしたちの隊に何のご用かしら。
ルドマン王国の王子様?」
「何故それを……!」
少年は思わず立ち上がった。
驚きのあまり見開いた水色の瞳に向けて、アリエッタの若草色の瞳が勝ち誇るかのような強い光を放つ。
「いい感じに汚れた服を着て誤魔化せてるけど、袖口にも気をつけたほうがいいわよ?
ブナと大角鹿の紋章が刻まれた金のブレスレットなんて着けて外を歩いてる人は、不用心な盗人か、不用心な王族のどちらかだわ」
先程広場で荷物を受け渡したあの瞬間に、手袋と上衣の隙間からわずかにのぞいた手首の装飾品を、アリエッタは見逃さなかったのだ。
少年はひとつ息をつき、視線を落とすと、再び椅子に腰を下ろす。
その様子を確かめたアリエッタは、テーブルを回り込んでイシュアの向かいに掛けた。
「……ぼ……わたしはユリウス五世の第六子、イシュアだ。
わたしの信頼する臣から金貨一枚を手渡された。
迷宮に降りるなら、これであらかじめ『黄金の鈴』と契約していくとよい、と」
アリエッタは両手を合わせて、にっこりと微笑んだ。
「あら王子様、いい情報を掴めたわね。
良質な情報は良質な武器よ。
その家臣にはたっぷりご褒美をあげないとね」
「さあて、それはどうだかな」
「なによシルヴァ」
ご満悦一転、眉をつり上げたアリエッタに、テーブルを挟んだシルヴァは肩をすくめて首を振ってみせる。
「いや、大事な主が冒険者ごっこなんてヤベえ遊びに手を染めるのを止めないあたり、ご褒美どころか処罰モンじゃねえの?」
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