救援隊(レスキューパーティー)『黄金の鈴』出動します!~最強賢者パーティーはダンジョンで誰かの野望をレスキューする~

高村渚

文字の大きさ
13 / 43
はじめての迷宮

2

しおりを挟む
そしてシルヴァ。

 なんとも不思議な人物だ。

 と、イシュアは思った。

 賭事ギャンブルに没頭する遊び人だが、それだけではない。
 肩に置かれたシルヴァの手のひらの感触は、何故だがイシュアに、金貨を握らせたときの老爺の手を思い出させた。
 今日初めて会っただけの男だが、その笑顔に、手のひらの暖かさに、老爺と同じものが宿っているような、そんな気がしたのだ。

「まあ、そう気負わずのんびり行きな。
 浅い階層なら、大回廊だけ通っていればそれほど危険な魔物には出くわさない。
 特に第一階層なんかは多くの冒険者がひっきりなしに通るからな、襲ってくる魔物もほとんどいないんだ」

 もちろん油断は禁物だがな、と、シルヴァは付け足した。

 その言葉を思い出し、腰の剣を確かめる。
 ルドマンからグラータまでの道中、幾度も遭遇した野盗や獣、そして魔物から身を守ってくれた、実用的で質の良い剣だ。

 イシュアは周りの気配に神経を配りながら、右の通路へゆっくりと歩を進めた。動きに合わせて、懐の鈴がちりんちりんと涼やかな音を立てた。

 さすがは大陸にその名を知られたグラータ地下大迷宮である。長い長い廊下はどこまでもはてしなく、永遠に続くかのようだ。
 まるで人の住む建物のつくりのように、廊下の壁のところどころに扉があり、分岐して別の方向へと続く廊下がある。

 書物で読んだ冒険譚では、迷宮攻略の初心者たちはひとつひとつの小部屋を確かめ、襲ってくるそれほど強くはない魔物たちを倒して経験を積み、さらに深い階層へと冒険の場所を移していった。
 たぶん行き交う冒険者たちも、そうやって腕を磨いて強くなっているのだろう。

 扉を開けてみたい衝動にかられ、慌ててイシュアは首を振った。
 迷宮に遊びに来ているわけではないのだ。
 自分の置かれた境遇を思い出して、深く息をつく。迷宮の廊下は、少しかび臭い、石の匂いがした。

 しばらく歩くと突き当たりで、廊下は左に折れていた。
 さらに進み、地上へつながる転移門がある広間を通り過ぎる。回廊の対称となる場所には、第二階層からの帰りの転移門があるはずだ。
 長い長い廊下を歩き続けて、また突き当たりで左に折れる。

 そして一度も魔物と遭遇することなく、イシュアは大回廊の最奥、第二階層への転移門へとたどり着くことができたのだった。

「……意外とあっさりしたものなのだな」
 イシュアは拍子抜けして、ずっと剣の柄に掛けていた手を下ろす。

 通ってきた廊下は、まるで街の路地のように賑わっており、たくさんの冒険者たちとすれ違った。賑やかに談笑し、魔物を警戒する素振りすらないものたちもいた。
「……もしかして、大げさに構えすぎたのか……?」
 いぶかしげな顔のまま、イシュアは転移門に足を踏み入れた。

 第二階層の廊下は第一階層とほぼ同じつくりだった。
 廊下に掲げられた燭台はまばらで、第一階層より薄暗く、そしてすれ違う冒険者たちも第一階層より少なく感じられる。
 心細さをなんとか誤魔化して、廊下を進む。
 その一歩に付き合って、懐の鈴がまた、ちりんと鳴った。
 第一階層と同じく、長い長い廊下をひたすら進む。
 やはり魔物の姿はない。想定以上に順調に進んでいるようだ。

 前方に転移門の間であろう、ぼんやりとした灯りが廊下に漏れているのが見えてきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

処理中です...