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はじめての迷宮
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グラータ大迷宮の地上部分は、底知れぬ巨大な迷宮の入り口とは思えないほどささやかに存在している。
街の最奥、春の陽光が降り注ぐ小さな丘の中腹に、廃墟としか見えない粗末な建築物がある。
古代紋様の刻まれた石造りの柱が四隅に立ち、雨をしのげるだけの屋根に覆われている。
十人も立ち入ればいっぱいになりそうな、狭い空間だ。
壁はなく、四方から床に刻まれた魔法陣を確認できる。
魔法の素質に恵まれたものなら、魔法陣から発せられる魔力のほのかなゆらめきを見ることもできるだろう。
攻略に向かう冒険者たちは、何の気負いもなく無造作に次々とその陣の中へ消えていく。
その姿は皆、歴戦の強者のように、イシュアの目には映った。
心臓の音がばくばくと激しく耳に響く。周りの人に気付かれてしまうのではないかと思うほどだ。
「行かなければ……仕方ない、仕方ないんだ」
呪文のようにつぶやいて足の震えを誤魔化し、なんとか前へと進む。
ためらって足を止めたら、動けなくなるかもしれない。
イシュアはぎゅっと目をつむって、思い切り魔法陣の中へと足を踏み入れた。
次の瞬間、イシュアの体は迷宮地下第一階層に降りたっていた。
「……うわあ……!」
思わず歓声を上げた。
そこは見たこともないような大きな広間だった。
石造りの壁には美しい彫刻が施され、等間隔で燭台が並んでいる。
魔力によって十分な灯りがともされていて、地下とは思えない、昼間のような明るさだ。
床は大理石だろうか、燭台の灯りを反射して、白く輝いている。
先程までの震えも忘れ、イシュアは小走りで転移の陣のあった台から駆け下りて、周りを見渡した。
父王の城の謁見の大広間に少し似た、それよりも遙かに壮麗な空間だ。
広間の四方には、神話に登場する守護獣の石像が据えられていた。
これから迷宮探索に向かう冒険者たちを見守っているかのようだ。
子どもの頃に読んだ冒険譚の世界が、今、目の前に広がっている。
冒険者たちの熱気に当てられたか、イシュアは頬が熱くなるのを感じた。
彼らに続いて広間をまっすぐ進んで突き当たり、広間出口のアーチをくぐる。
出発前アリエッタたちに教えられたとおり、そこは左右に延びる廊下になっていた。大人が数人並んで歩けるほどの幅がある。
広間と同じように、白い壁と白い床を並んだ燭台が照らしてはいたが、左右のどちらも先は薄暗く、どこまで続いているのかこの場所からはわからない。
アリエッタの話によると、地下第一階層では、大回廊と呼ばれる廊下が長方形にぐるりと一周つながっていて、脇道にそれたり、廊下から入れる数々の小部屋に寄り道したりしなければ、迷うことなく第二階層へ降りる転移門へとたどり着けるのだという。
第十までの階層はだいたい同じ構造で、大回廊を通るルートが下の階層へと向かう基本のルートになるらしい。
本来、そのような情報は、対価なしでは得られないものだ。
冒険者同業組合の株を買えば、基本的な情報はギルドから得ることが出来るし、街には情報を売ることで生計を立てている情報屋も多くいる。
いずれにしろ精度の高い情報を得るのは、それなりの金と引き換えなのだ。
気前よく攻略のイロハを語ってくれたアリエッタは、不憫な境遇の王子に同情してか、それともただのお節介か。
有難いことだ。心の中で改めて謝意を抱く。
ギヨームからも、迷宮に出現する魔物の情報を教えられた。
柔らかな語り口で、迷宮初心者のイシュアがなんとか無事に攻略を進められるよう、精一杯の言葉を尽くしてくれるのが判った。
街の最奥、春の陽光が降り注ぐ小さな丘の中腹に、廃墟としか見えない粗末な建築物がある。
古代紋様の刻まれた石造りの柱が四隅に立ち、雨をしのげるだけの屋根に覆われている。
十人も立ち入ればいっぱいになりそうな、狭い空間だ。
壁はなく、四方から床に刻まれた魔法陣を確認できる。
魔法の素質に恵まれたものなら、魔法陣から発せられる魔力のほのかなゆらめきを見ることもできるだろう。
攻略に向かう冒険者たちは、何の気負いもなく無造作に次々とその陣の中へ消えていく。
その姿は皆、歴戦の強者のように、イシュアの目には映った。
心臓の音がばくばくと激しく耳に響く。周りの人に気付かれてしまうのではないかと思うほどだ。
「行かなければ……仕方ない、仕方ないんだ」
呪文のようにつぶやいて足の震えを誤魔化し、なんとか前へと進む。
ためらって足を止めたら、動けなくなるかもしれない。
イシュアはぎゅっと目をつむって、思い切り魔法陣の中へと足を踏み入れた。
次の瞬間、イシュアの体は迷宮地下第一階層に降りたっていた。
「……うわあ……!」
思わず歓声を上げた。
そこは見たこともないような大きな広間だった。
石造りの壁には美しい彫刻が施され、等間隔で燭台が並んでいる。
魔力によって十分な灯りがともされていて、地下とは思えない、昼間のような明るさだ。
床は大理石だろうか、燭台の灯りを反射して、白く輝いている。
先程までの震えも忘れ、イシュアは小走りで転移の陣のあった台から駆け下りて、周りを見渡した。
父王の城の謁見の大広間に少し似た、それよりも遙かに壮麗な空間だ。
広間の四方には、神話に登場する守護獣の石像が据えられていた。
これから迷宮探索に向かう冒険者たちを見守っているかのようだ。
子どもの頃に読んだ冒険譚の世界が、今、目の前に広がっている。
冒険者たちの熱気に当てられたか、イシュアは頬が熱くなるのを感じた。
彼らに続いて広間をまっすぐ進んで突き当たり、広間出口のアーチをくぐる。
出発前アリエッタたちに教えられたとおり、そこは左右に延びる廊下になっていた。大人が数人並んで歩けるほどの幅がある。
広間と同じように、白い壁と白い床を並んだ燭台が照らしてはいたが、左右のどちらも先は薄暗く、どこまで続いているのかこの場所からはわからない。
アリエッタの話によると、地下第一階層では、大回廊と呼ばれる廊下が長方形にぐるりと一周つながっていて、脇道にそれたり、廊下から入れる数々の小部屋に寄り道したりしなければ、迷うことなく第二階層へ降りる転移門へとたどり着けるのだという。
第十までの階層はだいたい同じ構造で、大回廊を通るルートが下の階層へと向かう基本のルートになるらしい。
本来、そのような情報は、対価なしでは得られないものだ。
冒険者同業組合の株を買えば、基本的な情報はギルドから得ることが出来るし、街には情報を売ることで生計を立てている情報屋も多くいる。
いずれにしろ精度の高い情報を得るのは、それなりの金と引き換えなのだ。
気前よく攻略のイロハを語ってくれたアリエッタは、不憫な境遇の王子に同情してか、それともただのお節介か。
有難いことだ。心の中で改めて謝意を抱く。
ギヨームからも、迷宮に出現する魔物の情報を教えられた。
柔らかな語り口で、迷宮初心者のイシュアがなんとか無事に攻略を進められるよう、精一杯の言葉を尽くしてくれるのが判った。
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