救援隊(レスキューパーティー)『黄金の鈴』出動します!~最強賢者パーティーはダンジョンで誰かの野望をレスキューする~

高村渚

文字の大きさ
11 / 43
その依頼者、無謀にすぎる

9

しおりを挟む
「決まったことだと言っていた。
 どんな事情かは知らねえけど、引くことができねえんだろ」

 そのさばけた様子がしゃくに障る。アリエッタは声を荒げた。

「あなたも気づいてたなら、なんだってあっさり行かせたのよ!
 炎蜥蜴を倒したいって、第二十一階層の主を倒すんだって、王子様が本心から願ってるのならいいわ。
 たとえそれがどんなに無謀で、愚かな野望でも……迷宮はそういう場所だもの。
 でももし誰かに強要されているなら、それで迷宮に降りて大怪我でもしたら……王子様が可哀想だわ」

 アリエッタは物心ついた頃に先代の『黄金の鈴』リーダーに引き取られ、以来ずっとグラータ地下大迷宮とともに生きてきた。
 だから、迷宮がいかに人々の心を躍らせ、夢を与える存在であるか知っているし、その華やかな光の影にある迷宮の恐ろしさもよく判っているつもりだ。

 朝、いつものように挨拶を交わした知り合いの冒険者が、夕刻に体の一部だけになって還ってきたこともある。
 なんとか生還できたとしても、癒しの術でも治らない傷を負ったり、あまりの恐ろしい体験から心を病む冒険者も少なくはない。

 望まない挑戦と引き換えるには、リスクが大きすぎる。

 責めるようなアリエッタの視線を、シルヴァはひらひらと軽く手を振っていなした。
「『決まったことだ、仕方がない。』
 ……なんて、迷宮に降りる前からもう死んだみてえな目で言う奴に、いくら危険だって止めたところで響かねえよ」

 イシュアの抱えた屈託は、ものの道理を説いたところで晴れることはない。そんな気がしたのだ。

 ギヨームはまだその視線を王子の行った道へと向けている。
「それなりの技倆をお持ちの方とお見受けしましたが……殿下お一人では第六階層に達するのも難しいでしょう。
 最悪の事態に陥る可能性は、少ないとは思いますがねえ……」

 イシュアの力量を察して、あえて誰も教えることはしなかったが、大回廊の転移門は、第十階層から下は魔導士が起動の呪文を唱えるか、目の飛び出るほど高額な魔法道具アーティファクトを使わないと開かない。
 魔法の使えないイシュア一人では、どのみち第十階層までしか降りられないのだ。
 だが、もちろん突発的危機は起こりうる。
 地下第一階層に降りれば、そこにはもう身の安全を保証してくれるものなどなにひとつない。それが迷宮だ。

 重くなった空気を全く気にする様子もなく、シルヴァがのびをしてみせた。

「ま、契約者の身の安全を守るのが俺たちの仕事!
 取り返しのつかない大怪我する前に、助けに行ってやればいいだけさ」

 こんなとき、腹をくくってどんと大きく構えられる器は、どう頑張ってもアリエッタには真似できない。
 今度は本当に眉をつり上げると、アリエッタは思い切りシルヴァを薙ぎ倒した。

「どいて!」

 ずんずんと館の中へ入っていく。
 玄関前の小さな広場まで軽くふっ飛ばされたシルヴァは、さかさまに転がったまま恐る恐る声を掛けた。
「……アリエッタさ~ん、どちらへ……?」

 振り返って、きっ、とこちらをにらみつける。
「着替えるの!
 このドレスじゃ、呼ばれてもすぐに駆けつけられないもの」

 アリエッタはくるりと背を向け、あっという間に自室の方へと姿を消した。

 シルヴァと、そして玄関の脇に残ったギヨームは、顔を見合わせて、同時に吹き出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)

みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。 在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

処理中です...