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はじめての迷宮
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「あ……あ……」
骸骨の騎士が、がしゃりと一歩踏み出す。
悲鳴にならないかすれた息をのどから漏らし、それでもイシュアは立ち上がった。
足に激痛が走ったが、このまま座り込んでいたら骸骨騎士の刃の餌食になるだけだ。
重い腕で剣を構え、そろそろと壁に沿って骸骨騎士に対峙する。
すると背後の壁に木製の扉があった。
(この扉を閉めてしまえば……骸骨騎士から逃れられる!)
剣で牽制しながら必死にノブを回し、隣室へとその身体を滑らせた。
大きな音を立てて乱暴に扉を閉める。刹那、強烈な異臭が襲ってきた。
もう目の前の事実を信じたくなかった。
黒い魔犬たちが、血まみれの獲物、イシュアを取り囲んでいた。
魔犬の群れに囲まれて、それでも気丈に戦いを挑んだイシュアだ。
数頭にダメージを与え、魔犬がひるんだ一瞬の隙に鞄から護符を取り出し結界陣を巡らすことは出来たが、それまでだった。
市場で手に入るような簡易の護符では、結界陣が保つ時間もわずかなものだ。
怪我の手当をする間もなく、結界陣はその輝きを失いつつあった。
(……もう……無理だ……)
はっきりと死を意識する。
その時はじめてイシュアは懐を探り、小さな鈴にすがろうとした。
「頼む……助けてくれ……!」
澄んだ音色が不気味な暗闇に響く。
返ってくるのはくぐもった反響音だ。
何も起こらない。
魔物の荒い息づかいと、喉を鳴らす嫌な音が続くのみだ。
誰も、現れない。
(……当たり前だ……こんな深い階層まで、すぐに来られるはずなんてないのに……!)
欠片ほどの希望は、身を守っている結界陣とともに、あっけなく消えようとしていた。
結界に近づけず周りをうろうろしていた魔犬たちは、結界の魔力が次第に消えていくにつれ、さらに荒々しく喉を鳴らして陣を取り囲む。
不気味に赤く光る目が、イシュアをとらえた。
もう最期のようだ。脳裏に、老爺の優しい声がよみがえってきた。
『我が若君。貴方様の幸せだけが、この老いぼれの望みでございまする』
(……幸せ、か……)
自分の幸せとはなんだったのだろう。
思わず歪んだ笑みが浮かぶ。
自分という存在を自分のために使うことなど、一度として許されなかったものを。
「……仕方ない……仕方ないんだ……」
守りの光が、消える。
一斉に猛って吠えた魔犬がイシュアに飛びかかる。
瞬間、膨大な魔力が嵐のようにその場を薙ぎ払った。
もうろうとした意識の片隅で、どこか懐かしい、力強い声が、イシュアを呼んだ気がした。
骸骨の騎士が、がしゃりと一歩踏み出す。
悲鳴にならないかすれた息をのどから漏らし、それでもイシュアは立ち上がった。
足に激痛が走ったが、このまま座り込んでいたら骸骨騎士の刃の餌食になるだけだ。
重い腕で剣を構え、そろそろと壁に沿って骸骨騎士に対峙する。
すると背後の壁に木製の扉があった。
(この扉を閉めてしまえば……骸骨騎士から逃れられる!)
剣で牽制しながら必死にノブを回し、隣室へとその身体を滑らせた。
大きな音を立てて乱暴に扉を閉める。刹那、強烈な異臭が襲ってきた。
もう目の前の事実を信じたくなかった。
黒い魔犬たちが、血まみれの獲物、イシュアを取り囲んでいた。
魔犬の群れに囲まれて、それでも気丈に戦いを挑んだイシュアだ。
数頭にダメージを与え、魔犬がひるんだ一瞬の隙に鞄から護符を取り出し結界陣を巡らすことは出来たが、それまでだった。
市場で手に入るような簡易の護符では、結界陣が保つ時間もわずかなものだ。
怪我の手当をする間もなく、結界陣はその輝きを失いつつあった。
(……もう……無理だ……)
はっきりと死を意識する。
その時はじめてイシュアは懐を探り、小さな鈴にすがろうとした。
「頼む……助けてくれ……!」
澄んだ音色が不気味な暗闇に響く。
返ってくるのはくぐもった反響音だ。
何も起こらない。
魔物の荒い息づかいと、喉を鳴らす嫌な音が続くのみだ。
誰も、現れない。
(……当たり前だ……こんな深い階層まで、すぐに来られるはずなんてないのに……!)
欠片ほどの希望は、身を守っている結界陣とともに、あっけなく消えようとしていた。
結界に近づけず周りをうろうろしていた魔犬たちは、結界の魔力が次第に消えていくにつれ、さらに荒々しく喉を鳴らして陣を取り囲む。
不気味に赤く光る目が、イシュアをとらえた。
もう最期のようだ。脳裏に、老爺の優しい声がよみがえってきた。
『我が若君。貴方様の幸せだけが、この老いぼれの望みでございまする』
(……幸せ、か……)
自分の幸せとはなんだったのだろう。
思わず歪んだ笑みが浮かぶ。
自分という存在を自分のために使うことなど、一度として許されなかったものを。
「……仕方ない……仕方ないんだ……」
守りの光が、消える。
一斉に猛って吠えた魔犬がイシュアに飛びかかる。
瞬間、膨大な魔力が嵐のようにその場を薙ぎ払った。
もうろうとした意識の片隅で、どこか懐かしい、力強い声が、イシュアを呼んだ気がした。
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