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その野望、救援(レスキュー)するぜ!
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「あれらの言ったとおり、わたしの母は片田舎の領主の娘で、わたしを産んですぐ亡くなった。
たとえ建前は、王の子すべてに次の王たる資格があると言っても、現実は話したとおりだ。
次の王にもなれない、政略的に重要でもない家の血しか引かないわたしは、追放同然に母の実家に引き取られ育った」
実家の伯爵家でも、イシュアはお荷物だった。
王の子である以上ぞんざいには扱えず、だからといって家のために何か役立つ訳でもない。
家のものはイシュアによそよそしく接し、家臣たちも腫れ物に触れるような態度を取った。
しかしそれは仕方のないことだと、イシュアは諦めていた。
未だ幼くとも、自分と接するとき、周りのものたちがどこかぎこちない困惑した表情を見せることは、肌で判ってしまう。成長し理由を知ればなおさらのことだ。
自然とイシュアは館の外で過ごすことが多くなった。
いないも同然、何の期待もかけられず、奥深い森が広がる辺境の地で、権力とは無縁の人々に育まれた幼年時代は、それでもイシュアにとって短い幸福の時間だったのかもしれない。
通りすがりの冒険者に、見知らぬ異国の迷宮攻略譚を聞かされ、胸躍らせたこともある。
その昔騎士団の隊長を務め、凶暴な翼竜の群れを討伐したのだという老爺に剣を習った。筋が良いと褒められた。
「貴方様なら、いつか真竜をも倒す勇者にお成りあそばすやもしれませぬなあ……」
そう言って、大きく優しい手で、頭を撫でてくれた。
だが、そんな時間も終わりを告げる。
「……父王の危篤の知らせが来たのだ。
わたしも勇者の試練に参加するよう、王都から遣いが来た。
……すると叔父たちや、家臣たちの態度が一変したのだ」
「なるほどな。
運良くそこそこの命題を引き当てて運良く魔物を倒せたら、自分のところの王子サマが次代の王だ。
王ともなれば中央の人事も好き勝手できるかもだし、王の身内は出世確実!
田舎伯爵家にも運が向いてきたぜ~!……って盛り上がった訳か」
「それなら自分たちも命がけで王子様を助ければいいじゃない。
なんだって一人でグラータに来させてるのよ!
……やっぱり、怖じ気づいたのね。意気地なし」
アリエッタは呆れてぷいと首を振った。その仕草に、イシュアは少しだけ救われた気がした。
わずかに硬くなった表情を緩める。
「仕方ないのだ。
中央の貴族たちからずっと下に扱われていた家だ。
せっかくの好機、なんとしてもものにしたいと思うのが当然だろう。
そして誰しも自分の命は惜しい。
イカサマで引かされた無理な命題のため、命を賭けてわたしに付き従うものなど、いようはずもない」
まだ十四かそこらの少年が、すべてを諦めたような清々しい空虚な瞳で中空を見つめる。
それまで黙って耳を傾けていたギヨームが、穏やかな声で問いかけた。
「殿下には、試練を受けない、という選択もあるのでは?
なにも望まぬ危険に身を晒さずとも」
たとえ建前は、王の子すべてに次の王たる資格があると言っても、現実は話したとおりだ。
次の王にもなれない、政略的に重要でもない家の血しか引かないわたしは、追放同然に母の実家に引き取られ育った」
実家の伯爵家でも、イシュアはお荷物だった。
王の子である以上ぞんざいには扱えず、だからといって家のために何か役立つ訳でもない。
家のものはイシュアによそよそしく接し、家臣たちも腫れ物に触れるような態度を取った。
しかしそれは仕方のないことだと、イシュアは諦めていた。
未だ幼くとも、自分と接するとき、周りのものたちがどこかぎこちない困惑した表情を見せることは、肌で判ってしまう。成長し理由を知ればなおさらのことだ。
自然とイシュアは館の外で過ごすことが多くなった。
いないも同然、何の期待もかけられず、奥深い森が広がる辺境の地で、権力とは無縁の人々に育まれた幼年時代は、それでもイシュアにとって短い幸福の時間だったのかもしれない。
通りすがりの冒険者に、見知らぬ異国の迷宮攻略譚を聞かされ、胸躍らせたこともある。
その昔騎士団の隊長を務め、凶暴な翼竜の群れを討伐したのだという老爺に剣を習った。筋が良いと褒められた。
「貴方様なら、いつか真竜をも倒す勇者にお成りあそばすやもしれませぬなあ……」
そう言って、大きく優しい手で、頭を撫でてくれた。
だが、そんな時間も終わりを告げる。
「……父王の危篤の知らせが来たのだ。
わたしも勇者の試練に参加するよう、王都から遣いが来た。
……すると叔父たちや、家臣たちの態度が一変したのだ」
「なるほどな。
運良くそこそこの命題を引き当てて運良く魔物を倒せたら、自分のところの王子サマが次代の王だ。
王ともなれば中央の人事も好き勝手できるかもだし、王の身内は出世確実!
田舎伯爵家にも運が向いてきたぜ~!……って盛り上がった訳か」
「それなら自分たちも命がけで王子様を助ければいいじゃない。
なんだって一人でグラータに来させてるのよ!
……やっぱり、怖じ気づいたのね。意気地なし」
アリエッタは呆れてぷいと首を振った。その仕草に、イシュアは少しだけ救われた気がした。
わずかに硬くなった表情を緩める。
「仕方ないのだ。
中央の貴族たちからずっと下に扱われていた家だ。
せっかくの好機、なんとしてもものにしたいと思うのが当然だろう。
そして誰しも自分の命は惜しい。
イカサマで引かされた無理な命題のため、命を賭けてわたしに付き従うものなど、いようはずもない」
まだ十四かそこらの少年が、すべてを諦めたような清々しい空虚な瞳で中空を見つめる。
それまで黙って耳を傾けていたギヨームが、穏やかな声で問いかけた。
「殿下には、試練を受けない、という選択もあるのでは?
なにも望まぬ危険に身を晒さずとも」
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