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やりたいこと
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「愚弄するのもいい加減にしろ!
王の子であろうと容赦はせぬ!」
踏み込んで、イシュアの鼻先にぴたりと剣を突きつける。
結構、遅い。
そうイシュアは感じた。
大鎧百足の攻撃は、もっと速かった気がする。
そういえば、と、ぽんと手を打つ。
「わたしが仕留めたこれがお気に召さぬというなら、仲間が仕留めた大鎧百足の細切れが、第十四階層に山程放置されております。
今ならいくらでも死骸が拾えますゆえ、どうぞご存分に」
晴れやかな微笑みがとどめを刺した。
「……実は王子様、無意識にさくさく殺していくスタイルなのかしら……?」
「攻撃力高えなあ……えっぐ」
「無邪気な子どもほど残酷だと昔から言われておりますからねえ……」
「……ぷう」
ひそひそと語り合う三人と一匹である。
まだ諦めきれない騎士が叫ぶ。
「……あ、あなたはどうなのだ!
炎蜥蜴の核石は手に入れられたのか?」
「そうだそうだ! ご自分のことを棚に上げて我が君をあげつらうなど!」
「あげつらってなどいないのだが……」
確かにイシュアは炎蜥蜴の核石を手に入れてはいない。
そう答えようとしたとき、シルヴァがイシュアの背をぽんと叩いた。
悪戯を仕掛けるように片目を閉じて合図する。
そして、鞄から羊皮紙を取り出すと、さあっと広げた。
神々しいほどの輝きを放ち、白橙色の炎をまとった煉獄蜥蜴の核石が、大量に石畳に転がった。
大通りの両脇から、冒険者たちのどよめきが沸き起こる。
「……炎蜥蜴の核石……?
……いや、違う! この白橙色の炎は……。
まさかこれは…………煉獄蜥蜴の核石……だと?」
騎士団の魔導士が腰を抜かし、へなへなと座り込んだ。
書物の上でしか知らない、伝説の、超特級の宝物が周り中にごろごろと転がっているのだ。
頬をつねってみるものさえいる。
今度こそ身動き一つ出来ず、ルーファスたちは生きた彫像と化す。
彼らに、イシュアは誇らしげに微笑んで告げた。
「わたしの頼りになる仲間たちが頑張ってくれたのだが……。
残念ながら煉獄蜥蜴しか討伐することができなかったのだ。
命題を果たせぬわたしは、勇者ではないのだろう?
仕方ない。
兄上、我こそ勇者だというあなたが王となるがいい」
少し照れて振り返ると、シルヴァが、ギヨームが、そしてアリエッタが、最高の笑顔をイシュアに贈っていた。
成り行きを見守っていた通りの冒険者たちから歓声が上がる。
勝ちどきの声が、グラータの街に響き渡った。
王の子であろうと容赦はせぬ!」
踏み込んで、イシュアの鼻先にぴたりと剣を突きつける。
結構、遅い。
そうイシュアは感じた。
大鎧百足の攻撃は、もっと速かった気がする。
そういえば、と、ぽんと手を打つ。
「わたしが仕留めたこれがお気に召さぬというなら、仲間が仕留めた大鎧百足の細切れが、第十四階層に山程放置されております。
今ならいくらでも死骸が拾えますゆえ、どうぞご存分に」
晴れやかな微笑みがとどめを刺した。
「……実は王子様、無意識にさくさく殺していくスタイルなのかしら……?」
「攻撃力高えなあ……えっぐ」
「無邪気な子どもほど残酷だと昔から言われておりますからねえ……」
「……ぷう」
ひそひそと語り合う三人と一匹である。
まだ諦めきれない騎士が叫ぶ。
「……あ、あなたはどうなのだ!
炎蜥蜴の核石は手に入れられたのか?」
「そうだそうだ! ご自分のことを棚に上げて我が君をあげつらうなど!」
「あげつらってなどいないのだが……」
確かにイシュアは炎蜥蜴の核石を手に入れてはいない。
そう答えようとしたとき、シルヴァがイシュアの背をぽんと叩いた。
悪戯を仕掛けるように片目を閉じて合図する。
そして、鞄から羊皮紙を取り出すと、さあっと広げた。
神々しいほどの輝きを放ち、白橙色の炎をまとった煉獄蜥蜴の核石が、大量に石畳に転がった。
大通りの両脇から、冒険者たちのどよめきが沸き起こる。
「……炎蜥蜴の核石……?
……いや、違う! この白橙色の炎は……。
まさかこれは…………煉獄蜥蜴の核石……だと?」
騎士団の魔導士が腰を抜かし、へなへなと座り込んだ。
書物の上でしか知らない、伝説の、超特級の宝物が周り中にごろごろと転がっているのだ。
頬をつねってみるものさえいる。
今度こそ身動き一つ出来ず、ルーファスたちは生きた彫像と化す。
彼らに、イシュアは誇らしげに微笑んで告げた。
「わたしの頼りになる仲間たちが頑張ってくれたのだが……。
残念ながら煉獄蜥蜴しか討伐することができなかったのだ。
命題を果たせぬわたしは、勇者ではないのだろう?
仕方ない。
兄上、我こそ勇者だというあなたが王となるがいい」
少し照れて振り返ると、シルヴァが、ギヨームが、そしてアリエッタが、最高の笑顔をイシュアに贈っていた。
成り行きを見守っていた通りの冒険者たちから歓声が上がる。
勝ちどきの声が、グラータの街に響き渡った。
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