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7 してみょろ……
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さて僕の異世界初戦闘。通常の戦闘とは趣が違うだろうが、これが僕の戦闘である。
「おい……行くぞ……!」
相手は今にも飛びかかってきそうな酔っ払い5人組。ガタイもよく、話し合いは難しそうな相手。
だからこそ、この声の力を試すときだ。
声と威圧だけで、勝つ。僕にできるのはそれだけだ。
「フフ……」だから、全力でそれっぽいことを言うのだ。「花鳥風月と言うべきか……」
「……は?」
「なかなか趣向を凝らしているようだな。泰山北斗の麟子鳳雛だ」
僕は何を言っているんだ?
知ってる四字熟語を適当に並べたら威圧感あるかと思って喋りだしたが……意味がわからない。そもそも聞いたことがあるだけで、この四字熟語の意味知らない。
「……な、なんだ……? どういうことだ……?」
僕が聞きたい。僕自身が何を言っているのか理解できない。
「くり返し言えばロバにもわかることだ……しっかりと言葉の意味を吟味してみょろ……してみろ」
やべぇ噛んだ。してみょろ……ってなんだ。声が良くなっただけで、滑舌は一般人なんだよこちとら。というか会話苦手なんだよコミュ障なんだよ人見知りなんだよ。
噛んだことを突っ込まれたら終わりなので、ここは勢いでごまかすのだ。
「経験は恐れを呼ぶ……私に対し恐れの感情を抱くことは決して間違ってはいない」
「つまり……?」
「地獄への道はたやすい、ということだ」
「……?」
「わからないか? しかし、それも仕方があるまい……」
僕もわからないから。僕が何を言っているのか、僕がわからない。というか、たぶん会話が成立していない。やはり勢いでごまかすしかない。
「……フフ……沈黙を守っても大声で叫ぶ……見える、見えるぞ。お前達の焦りが」
「……」
何だこの緊張感は。僕は適当なことを言っているだけなのに、この声のせいで……いや、おかげで緊張感が凄い。とてつもなくカッコいいこと言ってるみたいな雰囲気が出ている。中身スカスカなのに。
「しかし……気に入ったぞ。我……私の力を見抜いただけでなく、その上で立ち向かおうとしてくるとは……生かしておく価値くらいは……あるかもしれんな……」
「なんだと……?」
「選択肢をやろう」僕は指を2本立てる。「ここで私と戦い命を散らすか、賢明な判断をし、生きながらえるか」
「……賢明な判断?」
「どの判断をすればよいかは、キミたちほどの男ならわかっているはずだ……期待している」
良し……言い切ったぞ。何が良しなのかはわからんが、とにかく言い切った。支離滅裂で今も心臓がバクバク言ってるけど、一通り喋り終わった。
これでもなお、襲いかかってくるのなら、それは仕方がない。土下座して許してもらおう。本当は弱いことを打ち明けよう。
「おいアニキ……なんかよくわからんが逃してくれるみたいだぞ……」
「お、おう……逃げることが賢明な判断、ってことだよな?」
そうだ、それでいい。そうやって勝手に勘違いして逃げてくれればいいのだ。
酔っ払いたちは完全に戦意は失っているようだ。とりあえず襲いかかってくる心配はあるまい。
それにしても……この声の効果半端じゃないな。言動は意味がわからなくても、勝手に相手が解釈してくれる。
「だけどよぉ……逃げるだけでいいのか?」
おや……? なんだか雲行きが?
「……つまりあれか? ……ってことか?」
「……だろ……?」
酔っ払いたちはヒソヒソと話をしているので、いまいち会話が聞き取れない。……どんな会話をしているのだろう。怖くて仕方がない。
「よし……」リーダー格の男が覚悟を決めたように、「あんたの言いたいことはよくわかった」
「そうか。ならば……」
「あんたの部下になれ、ってことだろ?」
「……」違います。「……ふむ……まぁいいだろう。合格点をやる」
「ああ……だが、俺たちは誰かの下につくつもりはない」
「そうか……では――」
「待ってくれ。部下にはならないが、協力はしよう。あんたが困ってるときに、俺たちを頼ってくれたなら、協力する。それならどうだ?」
それは……とりあず部下にはならないということか。好都合だ。この状況で部下とかいても困るだけだし。
「ふん……まぁいいだろう」
「そうか。悪いな恩に着るぜ」
そう言い残して、男たちは去っていった。
……これは……うまく逃げられたかな……酔っぱらいたちにしても、私にしても、うまく逃げたほうだろう。
おそらくだが、あの酔っぱらいたちが協力に現れることはない。このときだけの方便だろう。
だが、それでいい。私としてはこの場を乗り切れたのだから、それでいいのだ。
ああ……心臓に悪い。死ぬかと思った殺されるかと思った。よくわからんが窮地を脱したぞ。
……この声とカリスマの能力……もしかしてとんでもない力を持っているのでは?
「おい……行くぞ……!」
相手は今にも飛びかかってきそうな酔っ払い5人組。ガタイもよく、話し合いは難しそうな相手。
だからこそ、この声の力を試すときだ。
声と威圧だけで、勝つ。僕にできるのはそれだけだ。
「フフ……」だから、全力でそれっぽいことを言うのだ。「花鳥風月と言うべきか……」
「……は?」
「なかなか趣向を凝らしているようだな。泰山北斗の麟子鳳雛だ」
僕は何を言っているんだ?
知ってる四字熟語を適当に並べたら威圧感あるかと思って喋りだしたが……意味がわからない。そもそも聞いたことがあるだけで、この四字熟語の意味知らない。
「……な、なんだ……? どういうことだ……?」
僕が聞きたい。僕自身が何を言っているのか理解できない。
「くり返し言えばロバにもわかることだ……しっかりと言葉の意味を吟味してみょろ……してみろ」
やべぇ噛んだ。してみょろ……ってなんだ。声が良くなっただけで、滑舌は一般人なんだよこちとら。というか会話苦手なんだよコミュ障なんだよ人見知りなんだよ。
噛んだことを突っ込まれたら終わりなので、ここは勢いでごまかすのだ。
「経験は恐れを呼ぶ……私に対し恐れの感情を抱くことは決して間違ってはいない」
「つまり……?」
「地獄への道はたやすい、ということだ」
「……?」
「わからないか? しかし、それも仕方があるまい……」
僕もわからないから。僕が何を言っているのか、僕がわからない。というか、たぶん会話が成立していない。やはり勢いでごまかすしかない。
「……フフ……沈黙を守っても大声で叫ぶ……見える、見えるぞ。お前達の焦りが」
「……」
何だこの緊張感は。僕は適当なことを言っているだけなのに、この声のせいで……いや、おかげで緊張感が凄い。とてつもなくカッコいいこと言ってるみたいな雰囲気が出ている。中身スカスカなのに。
「しかし……気に入ったぞ。我……私の力を見抜いただけでなく、その上で立ち向かおうとしてくるとは……生かしておく価値くらいは……あるかもしれんな……」
「なんだと……?」
「選択肢をやろう」僕は指を2本立てる。「ここで私と戦い命を散らすか、賢明な判断をし、生きながらえるか」
「……賢明な判断?」
「どの判断をすればよいかは、キミたちほどの男ならわかっているはずだ……期待している」
良し……言い切ったぞ。何が良しなのかはわからんが、とにかく言い切った。支離滅裂で今も心臓がバクバク言ってるけど、一通り喋り終わった。
これでもなお、襲いかかってくるのなら、それは仕方がない。土下座して許してもらおう。本当は弱いことを打ち明けよう。
「おいアニキ……なんかよくわからんが逃してくれるみたいだぞ……」
「お、おう……逃げることが賢明な判断、ってことだよな?」
そうだ、それでいい。そうやって勝手に勘違いして逃げてくれればいいのだ。
酔っ払いたちは完全に戦意は失っているようだ。とりあえず襲いかかってくる心配はあるまい。
それにしても……この声の効果半端じゃないな。言動は意味がわからなくても、勝手に相手が解釈してくれる。
「だけどよぉ……逃げるだけでいいのか?」
おや……? なんだか雲行きが?
「……つまりあれか? ……ってことか?」
「……だろ……?」
酔っ払いたちはヒソヒソと話をしているので、いまいち会話が聞き取れない。……どんな会話をしているのだろう。怖くて仕方がない。
「よし……」リーダー格の男が覚悟を決めたように、「あんたの言いたいことはよくわかった」
「そうか。ならば……」
「あんたの部下になれ、ってことだろ?」
「……」違います。「……ふむ……まぁいいだろう。合格点をやる」
「ああ……だが、俺たちは誰かの下につくつもりはない」
「そうか……では――」
「待ってくれ。部下にはならないが、協力はしよう。あんたが困ってるときに、俺たちを頼ってくれたなら、協力する。それならどうだ?」
それは……とりあず部下にはならないということか。好都合だ。この状況で部下とかいても困るだけだし。
「ふん……まぁいいだろう」
「そうか。悪いな恩に着るぜ」
そう言い残して、男たちは去っていった。
……これは……うまく逃げられたかな……酔っぱらいたちにしても、私にしても、うまく逃げたほうだろう。
おそらくだが、あの酔っぱらいたちが協力に現れることはない。このときだけの方便だろう。
だが、それでいい。私としてはこの場を乗り切れたのだから、それでいいのだ。
ああ……心臓に悪い。死ぬかと思った殺されるかと思った。よくわからんが窮地を脱したぞ。
……この声とカリスマの能力……もしかしてとんでもない力を持っているのでは?
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