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8 育てる者

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 カリスマスキルとCV〇〇〇〇の合せ技の効果が高いことはわかった。だが、あの女神様の言う通り万能ということでもなさそうだった。

 あの酔っぱらいたちは、結局自分の意志を通した。僕の部下になるという選択をとらず、舌戦で逃げるという道を選んだ。

 つまり『部下になれ』『わかった』という簡単な勧誘は不可能ということらしい。きちんと人間関係を築く必要があるのだろう。苦手分野だ。

「何? 平和主義者気取り?」

 ランが若干不満そうに声をかけてきた。そういえばこんな人と一緒に来たんだったな。恐怖のあまり忘れていた。

「戦うこと、力を誇示することだけが強さではない。許す、ということも強さの証なのだ」
「ふーん……そう、かな? よくわかんないや」
「わからないことを認めることも、また強さだ。それに、私と同じ強さを追い求める必要などない」
「というと?」
「強さというのは1つだけではない。2つでも3つでもない。人の数だけ、強さはあるんだ」

 僕ちょっとカッコいいこと言ってない? 名言放ったんじゃない? テンション上がってきた。

「強さ……か」ランは多少納得してくれたようだ。「じゃあ、さ。シャフトの思うって何?」
「……」

 シャフト……僕のことだっけ? そうだよね? 
 しかし……最強か。難しい問いだ。『最強とは私だ』とか言うか? なんとなくそんなキャラじゃない気がする。
 
 ならば……

「育てる者、だ」
「育てる者?」
「ああ。伝承や伝統、技術や思考。それらを後世に残し、人々が生きる土壌を作り上げる。そして肉体的にだけではなく精神的にも強い人材を育成できるもの……それこそが最強だ」

 適当に思いついたまま喋ったが、あながち間違った意見でもない気がしてきた。
 要するに、一人では意味がないのだ。たとえその人物がいかに傑物でも、いつかは衰退する。盛者必衰という言葉通りに、最終的には最強ではなくなる。
 だが、その者の意思を受け継ぐものがいたとしたら? 意志と技術を受け継ぐものがいたら、いわばその者の生き様が最強だったと証明し続けてくれる。

「100の力を持つ相手に挑むとき、自分自身が100の力を得る必要はない。30の力を持つ人材を4人ほど育成すればいい話だ」
「ふぅん……100の力か……面白い話が聞けたよ。ありがとう」
「礼には及ばん。会話というのは、相手がいなければ成立しないからな。こちらこそ楽しませてもらった」
「謙虚だねぇ……そんなに強いのに」

 だから弱いんです。強くないんです。あなたの勘違いなんです。僕自身はクソザコなんです。

 ……こうやってを言い続けるだけで、僕は異世界生活を乗り切れるのだろうか? いつか僕の真の実力がバレて……考えたくもない。
 
 バレたくなければ、頑張って虚勢を張ろう。そうしなければすぐに僕の嘘がバレてしまう。

 そのためには勉強する必要があるな……今現在は僕の中二病のおかげて助かっているが……

 ……まぁせっかくの異世界生活だ。このまま楽しませてもらおう。僕の実力がバレさえしなければ問題がないのだ。

 そう……バレなければいいんだ……たぶん。
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